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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第二十八章:新ダンジョンラッシュ

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1325/1326

1325:松本で潮干狩りを

 さて、取引を終えたところで先に退出しますね、と言い残して会議室を出る。本当に六重化で来ているのかどうか不安なので今の状態での試し撃ちを行いたいところだ。


 物陰でいつものバッグと探索セットを取り出すと、万能熊手片手にちょっと松本ダンジョンに潜ってみようという気になった。流石に十四階まで潜って……と真剣にやるつもりはないので、スライム相手にちょっと試し撃ちをしてみようという所である。


 一層の地図を購入し、迷わないようにするといつものところとはちょっと違うが入ダン手続きを済ませる。


「スーツで大丈夫ですか? ツナギか何かを着ていかれたほうが良いと思いますが」


 受付で確認をされる。どうやら松本ダンジョン周辺ではスーツで探索に赴く探索者は居ないらしい。


「一応探索用のスーツなので大丈夫です。普段は別のダンジョンに潜っているのですが取引に来たのでついでに一層だけ潜ってみようと思いまして」

「なら大丈夫そうですね。ランクも……はい、ランクも確認できましたしご安全にお願いします」

「ご安全に」


 一層しか巡らないのに安全にも何もないが、せっかく訪れた松本ダンジョン、スライムの二、三十匹ぐらいは狩っていくだけの時間もあるだろう。タクシーの運転手さんを待たせてるのもあるし、手早く済ませて最大火力でのスライムに対するオーバーキルと万能熊手の久しぶりの使い心地を試すだけにとどめておこう。


 ダンジョンに入り、早速横道にそれていくと、スライムは居た。どこのダンジョンでも楽し気にぽよんぽよんと跳ねたり壁を上ろうと失敗して落ちたり、自由を満喫している。


 ダンジョンマスター曰く、ダンジョン内でゴミを発見した場合はスライムがここから転移していってゴミ処理にとりかかるらしいが、その転移の瞬間を我々が目撃することは多分ないんだろう。


 ということは、ドロップ確定騒ぎの間はスライムが一時的に枯渇状態になっていたのだからあの間にゴミに値するものがダンジョンに放置されていても処理に動けなかった可能性はあるのか。まあそれで被害というか問題が出るのは清州ダンジョンぐらいのものだったろうからあまり気にする必要はないか。


 さて、スライムである。まずは足元まで転がってきてこっちをじっと見るようなしぐさをするスライムにそっと手を這わせ、こんにちは、俺は安村、悪い人間じゃないよと言い聞かせるように核を狙って熊手を掻き入れ、プツッとスライムの体内に熊手を差し入れ、そのままコロンと核だけを取り去る。そのまま靴底でパンと核を割ると、スライムは黒い粒子に還っていった。


 久しぶりの潮干狩りである。小西ダンジョンではエレベーターの位置移動に伴ってスライムと顔を合わせること自体が少なくなってしまった昨今、貴重な潮干狩りの機会と言えるな。さて、もうちょっとだけ楽しんでいくか。


 グッ、プツッ、コロン、パン。グッ、プツッ、コロン、パン。


 久しぶりのリズムが俺に懐かしさと初心の大切さを教えてくれている。今では一発シュパンと雷撃を撃つだけで期待値二百万相当のモンスターを倒せる俺にとって、時間的効率の観点から言えば無駄な行為でしかない。しかし、それ以上に自分自身に対する心構えやダンジョンへどう向かっていくか、そういう精神統一に関する作業は最近やってなかったな。


 目標である六重化は多分できた。これでグリフォンも更に余裕を持って戦えることになるだろう。七十一層で戦ってみても今の俺なら多分それなりのスピードで戦うことが出来て、安全も担保されているだろう。


 後はそうだな……一人で六十九層へ潜って帰りの時間で、雷撃衝を何連発までなら耐えられるかというのを試しておく必要がある。ドライフルーツ一個の魔力で雷撃衝を一発撃てることは確認済み。なら後は持久力の問題だな。七十一層に下りたはいいがとたんに息切れを起こしてペースを乱すようならまだ六十九層を素早く回っている方が金になるだろう。


 グッ、プツッ、コロン、パン。グッ、プツッ、コロン、パン。


 スキルオーブ一つ当たりでどれだけの魔力保有量が増えるかなどの情報は一切不明なので、自分でやって確かめるしか方法がない。次のソロ探索の時はそれを試してみるのが大事か。よし、方針は決まったな。


 周りのスライムを掃除したところで、少し離れたところにいるスライムに雷撃衝を放つ。火力過剰なのはわかっているが、それでも使った感じがどう変わったかは知っておくべきだろう。一発二発で変わるわけではないが、とりあえず問題なく雷撃衝を放つことができるようになったのは間違いない。イメージングの時間も少し短くなった気がする。


 今日のところはこんなもんか。さっさと戻ってさっきの運転手さん呼び出してついでにお土産屋も紹介してもらおう。消えもの系で良い店知らない? って聞いたら多分教えてくれそうな気もする。


 退ダン手続きをする。スーツでダンジョンが見慣れない受付担当は俺の姿を見るなり驚いていた。


「もうお帰りになられるのですか? 」

「ええ、覚えたスキルのテストをしたかっただけですので」

「そうでしたか、お疲れ様でした」


 探索者証を返してもらうと、ドロップ品は……ドロップ品は今度まとめて小西で提出しよう。荷物を物陰で隠し直すと、スマホでさっきの運転手さんの電話番号にかける。


「はい、お電話ありがとうございます。松本タクシーの今村です」

「先ほど松本ダンジョンまで送ってもらったものですが」

「おお、さっきの兄さんか。お仕事終わった? すぐそっち行くから待ってて」


 そういうと通話を切り、早速発進した様子。すぐってどのぐらいだろう。一、二分なのか五分ぐらいなのか、十分ぐらいなのか。十分間この寒さを耐えるのはちょっと辛いかもしれないぞ。かといって中で待ってるってのも悪いしな。ここは大人しくダンジョン前で待っていることにするか。


 結局通話から三分ほどでタクシーが到着。運転手が降りて俺の顔を見つけると、ブンブン手を振っている。元気だな。そのままタクシーに乗り込み、松本駅方面へお願いする。


「取引は無事終わりましたか」

「ええ、つつがなく」

「じゃあ、後は帰るだけですか。それとも何処かお土産でも買って帰るんですか? 」

「消え物で色々探そうと思ってるんですが、いいところありますかね? 」


 地元のタクシー運転手なら多少地理にも明るいはず。俺がむやみやたらに歩き回るよりも適切な場所を教えてくれるはずだ。


「だったら駅横のビルに行くと良いよ。消え物から郷土品まで色々揃ってるよ。下手に歩き回るよりも確実に良いものが手に入ると思うよ」

「そうですか、じゃあそのまま駅まで乗せてってください」


 地味にダンジョンから駅までは歩けないほどの距離ではないし、そう遠くはない。しかし寒い中歩きたくないし、歩く時間でお土産を選びたいのが本音。時間は大事に使っていきたい。


 タクシーで十分ほど運転してもらい、松本駅に戻ってくる。駅ビルの前で降車し料金を払い、運転手さんとお別れ。さあ、ここからお土産選びの時間だ。何がいいだろうな……とりあえず人数分の乾麺蕎麦は買っていくとして、それ以外にも何か差し入れというかここでしか手に入らないような珍しいお土産があればそれを選びたい。


 和菓子洋菓子……それなりに選べるな。ふむ、彩りが良いのは女性受けするだろうからこれは買い、と。それからソフトクッキー、これもみんなで分けて食べるにはちょうどいいからこれも買い。後はお焼きか。明日のご飯ついでに摘まむならそれも有りだな。これも購入。野沢菜漬けはどうするかな。ちょっと渋すぎるか? まあ、一応買って帰るか。人気が無かったら自分で消費すればいい。信玄餅……これも買っていくか。


 後は……腹が減ってきたな。駅の中か駅の外に食べる所が……うん、あるな。ここでお蕎麦を食べていこう。生粋の蕎麦っ食いで香りから味から見た目から……とこだわるつもりはないので純粋に腹を満たせて満足できればそれでよしとしよう。


 早速評価のそこそこいいらしいお店に入ると、ざるそばの……サイズはどのぐらいになるんだろう。長野の蕎麦は場所によっては桶で出て来るとも聞くしな。下手に特盛とか頼んで明らかに多い量が来て満腹を越えて残してしまうのもあれだし、かといって少なすぎても……と微妙なラインが見え隠れする。


 これは店員にちゃんと聞いて量を確認したほうがいいな。店員を呼び止めると、各盛りの量について質問をした。店員がわざわざせいろを持ってきてくれて、ざるそばの特ならこれぐらい、大ならこれぐらい……と説明してくれたので、安心して大を注文。ついでに山賊焼きもセットにして注文。


 ちびりちびりと水を飲みながら胃袋が緊急コールを鳴らしているのを無視。今はそばを茹でてくれているんだからそんなに慌てなくていいんだよポチ。もう少ししたら出来立てのざるそばが届いてくれるからな、と宥める。


 数分待ち、出来たてのざるそばと揚げたてらしい山賊焼きが届いた。早速食べよう。蕎麦の香りはしっかりと感じられるし、ここは十割蕎麦のようでつなぎの香りもしない。つゆも純粋に今俺は蕎麦を喰っている! 蕎麦を喰っているぞ! という楽しみを見出すことが出来ている。評価をあてにして店に入るではないが、それなりにあたりを引いたことに間違いはないらしい。


 山賊焼きも胸肉一枚を丸ごと使ったような大きさだ。しっかり食べ応えもありそうで……うん、美味い。ニンニクがよく効いていてそして外はカリッとしている。ちゃんと丁寧に揚げられているのがわかる。衣が硬めなのもまたいい。少々油切りが悪いような食感をしているが、値段からすれば十分許容範囲だ。


 蕎麦と山賊焼きを交互に味わいながら、これならちくわ天をさらに追加しても良かったな、と思いながら食べる。蕎麦ももう一つ大きいのでも良かったかな。せっかくなら腹いっぱい食べて帰りたいところだ。ここはあれだな、店を出た後の腹具合を確かめて、まだいけそうならもう一度お焼きを買いに行って食べながら帰ることにしよう。


 帰りの特急しなのでゆっくりお焼きとお茶でも飲みながら、のんびり帰るってのも悪くない。そうと決まればさっさと食事は済ませるべし。残りの蕎麦を一気にずぞぞぞぞっと啜ると、山賊焼きを最後に口の中に入れてその口の中の油分をそばつゆを蕎麦湯で割ったもので洗い流し、御馳走様。


 再びお土産品のコーナーにやってくる。さっき行った店にもう一度来店し、お焼きの色々入ったパックを一つ購入。これを帰りの電車のおやつにと買う。買いたしをしていることについては店員はあまり不思議がらなかったのか、それとも顔を覚えていなかったのかは解らないが、何も言われなかったのでヨシ。


 次の特急しなののグリーン席を買うと、電車が来るまでしばし待合室の中で待つ。今日の旅行はうまくいったしお土産は後で渡せる。雷魔法も無事? に体に馴染んでくれた。後は明日以降の探索できちんとスキルオーブを多重化させた分の働きをしてくれるかどうか、しっかり見極めていこう。


 時間が来て特急しなのが到着する。足も伸ばせるゆったりグリーン席で二時間半。名古屋駅までお焼きを次々と食べながら到着を待つ。しかし、東京行くよりも遠く感じるのは気のせいか。こっちにもより高速な鉄道が走ってくれれば、太平洋側から日本海側に一直線に抜ける道が出来て便利なのになあ。


 胃袋をお焼きで満たしていたら少し眠くなったので、到着予想時刻前ぐらいにアラームが鳴るように設定して少し目を閉じる。久しぶりのお出かけと慣れない土地で緊張したのか、アラームの音で目が覚めて飛び起きると名古屋に到着する数分前。どうやら俺には車窓からの風景を旅の一部として楽しむのはあまり向かないらしい。そういえば東京往復の時もしっかり眠っていたような気がする。


 特にイベントもないからか、それとも料金が高いからか、それほど混んでいないグリーン車を後にして降りる準備。降りたら乗り換えて最寄り駅までまた電車だ。


 帰ったらまたスレチェックと家事を細々として、夕方になったらお焼きをおかずに何か食べ物を探しに行くとするか。今日の夕飯は何腹かな……いや、名古屋駅で見繕っていくという手も有りだな。これは一気に食い物の幅が広がった。駅チカで何か探そう。そのほうが普段の食事に対してバリエーションが出るし悪くない。


 一旦列車を降りると改札を出て駅チカへ侵入。そのまま百貨店の食品店街へ繰り出す。さて、俺の胃袋にかなう夕飯は必ずあるはずだ。探し求めていこう。なんだかんだ今日は結構散財する日だな。たまには良い。

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

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― 新着の感想 ―
仮にリニア新幹線が開通していたとしても名古屋-松本間の移動だと所要時間にあまり影響しなさそうですね
> タクシーの運転手さんを待たせてる」 メーターの音が怖くないおじさん > ここから転移」 脅威!スライムの驚くべき生態 > 目撃することは多分ない」 スライムとダルマさんが転んだをするおじさん …
後半孤独のグルメしてる(笑)
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