1315:魔結晶発電開始といつもの納品
朝です。布団のぬくもりがちょうどいいです。やはり早めに布団を替えたのは正解だったな。このまま布団に着られたまま一日の活動を行いたいところだが、そこまでは寒くないので大人しく布団から出る。
お祈りの後に朝食を作り、いつものジャムパンも今日で全部消化し終える。リーンは大変な量のジャムを残していきました。明日からはまたお高いバターとの格闘になる。でも、この際だから何か高級なジャムを一瓶ぐらい手元に置いておくのも悪くない気がしてきた。随分汚染されている気はするが、実際に金を使っていく方面としては悪くないので考えておこう。
朝食の後はいつもの昼食作りといこうか。今日は探索はお休み。午前中は社用車で納品、昼食を食べた後に暇つぶしをした後夕飯を食べる前に買い出しに行って、夕飯を作るか……作るかどうかはともかく、買い出しにはいかなければならない。
さて、昼食を何にしようか……シチューもカレーも最近作ったばかりだからな。なにかこう、レパートリーを増やす必要があるな。今日はせっかくの休みだし、レシピの候補を紐解いてバラバラにして何か一品作っていこう。
そういえば昨日の弁当のネギ塩ダレは中々の破壊力だったな。あれをそのまま再現できればいろんな料理に応用できる。味を思い出そう。少なくともごま油と酢は入っていたな。後は大根おろしの……そうだな、大根おろしの酢がけをイメージして、そこをねらい目にしてまずはレシピを色々調べてみよう。
大根おろしの酢がけレシピに小口ネギとごま油……それだけだとうま味が足りないな。とりあえずうま味調味料を足し込んで味見……うむ、なんかピリッと感がない。一味ではない、ここは生姜とニンニクを入れてみるか。後、うま味調味料は鶏だしに変更してみよう。
うん、だんだん味が近づいてきた。生姜を少し多めにしてよりピリッと感を演出してみよう。後はゴマも欲しいな。これでどうだ。
ふむ……中々良い感じになってきた。後はこれに合わせるような食材を……これ、なんでもいけるんじゃないか? 試しに馬肉を出してみて、馬肉刺しの調味料として一つ味見してみる。
うむ、いい感じだ。朝食を食べた後だがこれがあればさらにもう一杯飯が食えるな。ネギ塩ダレのレシピを確認して、分量を記録しておく。生肉でも揚げ肉でもいけるってことは、焼肉でもサラダでも何でもできる万能タレなのではなかろうか。そうなると昼食を何にするか割と悩むな。ここはハズレを引きそうなボア肉のステーキを焼いてみて、それに和えてみることにしよう。美味しければボア肉のネギ塩ダレステーキとして一品加えてみるのもありだな。
ステーキなら事前に作る必要はない。昼に帰ってきた時に焼いて焼き立てを味わうほうが美味しいだろう。ネギ塩だれもステーキを焼きながらかけた方が香りものぼりたつしそのほうがいいな。
ニュースをつけると、魔結晶発電炉の商用炉に火が入ったというニュースが入ってきた。公開されているニュースの映像を見た限りだと大型のものではなく、小型の炉をいくつも並べて発電する、という大を小で兼ねるタイプの安全性と実証性と建設効率を求めた結果の発電炉の建設だったらしい。
たしかに、この大きさは試験炉とあまり変わらない大きさに見える。それが複数機設置されているように見える。早速火入れ式が行われたらしい。実際には危険な状態に陥ることはないはずなので、火入れ式の神事は要らないような気がしないでもないが業界の慣習なんだろう。その後発電システムを起動させて無事に稼働することを確認し、みんなが喜んで握手をしあう、といういつもの流れでニュースは締めくくられた。
ダンジョン関連のニュースと言えば弦間さんだが、今日は弦間さんの出番はないらしい。今日はダンジョン研究家の出勤日ではなかった様子。弦間さんがいればちょっとした情報を仕入れることが出来たんだろうが残念だな。
だが、今後の流れは少しだけわかる。各地で魔結晶発電炉が建設されているので、それを機にして国内の魔結晶の数はどんどん減っていくはずだ。その分魔素を大気中に拡散させる役目も担っているわけだが、それによって魔結晶の現在の電気変換の金銭的効率が示されるようになるはず。そして、魔結晶発電がおこなわれることで暇になることができる他の発電形式の発電所のメンテナンスや立て直し、古い仕組みの物を新しい仕組みへ……と技術更新していく余裕が生まれる。
電力は余っていて安いほうがいいのはみんな同じ考えだと思うので、魔結晶発電で騒いでいる間に充分に必要なメンテナンスや炉の更新なんかを行っていき、いずれは技術としては残してはおくものの、魔結晶発電へ向けてシフトしていくことだろう。
爆発や放射能汚染の可能性がない新しい都市型の発電所として、空いた区画にすっぽり埋め込められるような形で発電所が機能する可能性も考えられる。バッファとしての土地もそんなに取らなくてもいい。
メンテナンスは魔結晶のカスが出るならそれだけ、魔結晶が完全に消滅するような仕組みで出来ているなら、ゴミも出ないクリーンなシステムであることは間違いない。魔素は排出されるけどな。
ここさえ黙っておけば表向きは問題なく使える新しい発電システムとして認知されていくんだろう。その瞬間に立ち会えるのは何とも幸運なことである。もし近所でそういう発電所がオープンするような機会があれば是非とも火入れ式に立ち会ってみたいものだな。
ニュースが芸能人の不祥事に話題が移り始めたところでニュースを切って布団の山本に連絡。いつもの量を持っていくと話すと、今のところ急で必要ではないので問題ないとの返事。これは、よその探索者からスノーオウルも含めた羽根を仕入れる算段が何処かでついたのかな?
まあ俺一人に供給が絞られていた当初に比べればよほど安定している。何事も、仕入れ先は一つよりも複数から仕入れられるようにしておくのが商売をうまくやるコツでもあるらしいので、俺もあまり気取らずに行こう。
社用車を転がしてコロコロと布団の山本に着く。車を降りて収の……おっと危ない、いつもの癖で収納しそうになった。七十層での慣れでついつい車があると収納しそうになる、僕の悪い癖。思い改めて車を離れ店の中に挨拶に。ちょうどのタイミングを見越していたのか、それとも他の客がちょうど誰も居なかったからか従業員一同俺の到着を待っていた雰囲気。
手で、車のほうへどうぞとサインすると、頷いてついてくる従業員たち。レミングスか。ここで俺が爆発したら地面に穴が開いて何人か吸い込まれてステージ失敗になるぞ、いいのか。そんなことはさておき、いつもの流れで順番に品物を受け取っていってもらう。あ、ここからスノーオウルね。混ぜないようにそのところよろしく。
受け渡しを終えて車の鍵をきっちりかけると改めて店内へ。店長は既に商談スペースに座ってまあどうぞと手で示してくれているので素直に座らせていただく。
「本日も納品ありがとうございます。おかげで助かっています」
「電話口の限りですと、それほどまではひっ迫してないように見受けられましたが」
ちょっと前なら厳しそうな声で録音メッセージとして連絡が来ていたものだが、ここのところ落ち着いている。
「まもなく冬が来る、ということで早めに冬布団も作ってしまおうというお客様が一区切りつきまして。これから、やっぱり冬もこの布団でなくてはダメ、という方が出始める前ですのでごらんのとおり店内もかなり落ち着いているところですね」
なるほど、需要の中間の閑散期というわけか。お客さんがいないのはそういうわけか。普段なら朝から布団を選びにくるお客さんも何組か見かけたが今日は……あ、今来たな。
「今来ましたね」
「あのお客様は……夏用布団と枕はご購入された履歴があるはずですね。きっと冬用も用意したいと思ってきていただいたのかと思います」
流石客商売、相手の顔と背格好でおおよそのことは覚えているらしい。俺にはちょっと真似できないな。しばらくして温かめのお茶と羊羹が二つ届いたので早速頂くことに。ここの羊羹はいつも美味しい。それに加えて今回の羊羹は何やら見た目がおしゃれだ。
「儲けさせていただいてるおかげで、羊羹のほうも少し上の良いものを仕入れられるようになりました。毎度毎度ありがとうございます」
「こちらこそ、ちょっと高く卸させていただいてるおかげでその分懐も温かくなってまいりました」
二人、羊羹を挟みながらニコニコと会話。お互いが儲かっているのはいい商売だ。今後も続けさせてもらわないといけない。本来なら続けずに後進に完全に道を譲ったほうが俺にとっては儲けの幅はでかくなるんだが、それは言わない約束というもの。店長側にもそれは伝えてあるので、あえてそこを突っ込まれることはないんだろう。
羊羹を食べながら検品の結果を待つ。窓の外から見えるいくつかの他業種のお店も冬の準備を始めたらしい。分厚いコートや厚手のカーディガンなどが並んでいる様が見える。もうすぐ冬が始まる。探索者を始めて二度目の冬だ。去年は……去年も色々あったな。今年の冬は落ち着いて過ごせると良いのだが。
「結果が来たようです……はい、いつも通り最上級の品物を納品していただいたということで、金額はいつも通り振り込ませていただきます」
「解りました……さて、私もここらで失礼させていただきます。昼からダンジョン、というわけではないですが、買い物とか色々ありますので」
「はい、またよろしくお願いします」
店長に笑顔で見送られ店を後にする。さあ、今日の昼はボア肉のステーキネギ塩ダレスペシャルだ。美味いと出るかイマイチと出るか、それとも別の顔を見せてくれるのか。俺の肉を焼く腕にかかっている純粋な料理勝負。これは中々に難しいラインを攻めなければいけないだろうな。
家に着き、キッチンに立ち向かう。今日は美味しくボア肉を調理してやらなければならない。その為に、ボア肉を一枚肉としてご用意。ついでにレシピもご用意。今日は肉の焼き方はお手本通りにして、ネギ塩ダレ大根おろしが美味しいかどうかを確かめるターンである。
片面に切り込みを入れた後、叩いて適度な広さと厚みに成型してやったところで塩胡椒を振って強火で一気に焼く。今回はステーキソースをネギ塩ダレ大根おろしに決まっているので使わないが、本来なら刻んだニンニクと弱火で油で焼いて香りと味を出すところだが今日は省略。
切り込みを入れたほうを焼き入れ面にして強火で一気に焼いていく。肉の焼き具合を見つつ、今表面になっている実質的裏面に塩胡椒。これで一気に旨味を閉じ込める……らしい。強火で少し焼いたら弱火に戻して肉の色が三分の一ぐらい変わって、そろそろかな? と思うところでひっくり返す。
焼く間に出た脂はこまめにふき取るのが良いらしい。ちょっともったいないと思いつつも素直にレシピに従って油をキッチンペーパーでふき取っていく。
ひっくり返したらまた強火で焼いて、塩胡椒の力でまた旨味を内部に閉じ込める。そして一分ほど強火で焼いたらまた弱火に戻して、アルミホイルをかぶせて蒸す。この蒸す工程が大事らしい。
一分ほど蒸したら後はアルミホイルで完全に包んで火からおろして保温。この肉の厚みなら五分ほど蒸せばいいらしい。
そしてここでダメ出しが。米を炊くのを忘れていた。仕方ないのでパックライスを急遽用意して主食にする。さて、温かいうちにソースをかけて食べよう。そう言えば付け合わせの野菜は用意してないな。まあ、肉と米、それだけの昼食というのもたまにはいいだろう。
肉はしっかりと柔らかく、そして中心まで火が通っているのでナイフでスッと切れる。中心部は温かくもまだ少し赤みを残していて、いい感じのミディアムステーキという感じが見える。
ソースをたっぷりと乗せてフォークを口に運ぶ。モニュ……とステーキ肉が口の中で綺麗にかみ切られる。ボア肉の癖にしっかりと旨味を閉じ込められていて美味しい。塩胡椒もかけ過ぎず程よく振られていたおかげで肉の味と塩コショウの味、そしてネギ塩ダレの味が怒涛の如く流れ込んできて美味しい。
うむ……これはステーキにも合うな。米と肉だけだが、ネギが野菜として入っているから栄養バランスはヨシということにしておこう。いや、野菜ジュースは胃に入れておくか。そうしよう。
ステーキ肉とパックライスとネギ塩ダレの昼食はこうして成功のまま満足した味わいと、もうちょっと食べたかったなという思いが残る結果となった。結局、今朝試し切りした馬肉の残りも刺身として食べたが。
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