1299:新浜パーティー七十層到着
そのまま一パーティーずつ倒しながら進み、最後の直腸部分にまでやってきた。後は白血球三匹が出てきたら終わりの合図。
「あれで最後……ですかね」
視界にも現れこっちへ近寄ってきた白血球三匹を目視して確認する。
「そうなるかな。ランダムで湧いてなければ、だけど」
索敵で確認したが他にモンスターは居ない。これで打ち止め、六十八層は渡り終わりだ。
「じゃあ、最後ぐらい自力で頑張らないとね」
「そうですね、安村さんは後ろで見守っていてください」
手伝った方が早く終わるし、まだもう少し時間かかるんだけどな……とはさすがに言えないので、大人しく頷いて後ろに下がる。
結衣さん達はそれぞれ一対二対二で対応し、戦い始めた。一人で戦ってるのは村田さんだ。白血球も近接攻撃をしてくるので近寄らせて爆破で終わらせるのだろう。どこかが危なくなったら手を出すつもりでは居たが、三者それぞれの戦い方で無事に白血球を撃破することはできたらしい。
「さあ、これで六十八層は一応通り抜け完了かな。後は六十九層だけど……ここからは俺も未体験ゾーンだからな。どうなるかはちょっと解らない」
「隠蔽なしで歩いたことはないって意味よね。そんなにモンスターの探知範囲広いの? 」
「多村さんの索敵範囲外から襲ってくることは間違いないと思うよ。隠蔽してる状態の索敵範囲でギリギリみえるぐらいの広さからでも赤く探知されるから。まず確認からかな。一応俺のほうが索敵範囲も広いし、下りてすぐ戦闘になったら無条件で手を出すのでそのつもりで」
「解ったわ。こっちは初踏破だし、注意事項は聞いてるし、安村さんでもどうなるかわからないなら大人しくしておくほうが身のためよね」
一同頷く。ここで休憩するかどうか聞いてみたが、そのまま下りて問題ないらしい。俺も問題はないのでそのまま階段を下りていく。
マップが切り替わり一気に気温と湿度が下がる。
「寒っ、何やこの急激な温度変化は」
「確かに、一気に変わったね。程よく寒いというか、なんというか」
「あ、外見えてきた……何これ」
一同、突然の月面ワープに驚いている。俺は慣れているのでまず索敵。まだ範囲には……入ってはいるがぎりぎり探知外ってところかな。
「感動してるところ悪いけど、俺の索敵にはモンスターもう見えてるからね。あの辺に」
そのまま空中を指差し、かろうじて見える範囲で優雅に空を舞っているマンタレイを示す。
「今度の敵は空中でっか……あれ、届きまへんで」
「近接戦挑んだことないんだよね、あいつに。全部遠距離で吹き飛ばしてたから体験がない」
「それを私たちにやらせようってわけなのね」
「そういうわけじゃなく、たまたまそういうタイミングになっちゃっただけで……どうする? 挑んでみる? とりあえず一発で吹っ飛ばすことはできるけど、実際にどんな行動パターンで攻撃してくるかなんかは全然分析してないんだよね」
「じゃあここからが本番……ってこと? 」
俺が頷くと結衣さん含め全員がうなだれる。
「毒を持ってるかとか、そういう知識もないわけ? 」
「マンタレイってしっぽに毒あったっけ。ないならないかも。あるならあるかも」
「毒はないはずです。そこは安心して良いと思います」
横田さんが知ってた。頼りになるなあ。
「だったら噛みつきと体当たりに注意しておくぐらいで良いのかしらね……でも、大きいんでしょう? 」
「まだ遠いから実感ないだろうけど、結構大きい。多分等身大のマンタぐらいには大きい」
「うーん、とりあえず取り掛かってみるしかないわね。呼び寄せてもらってもいいかしら? 」
「近づけば勝手に襲ってくると思うよ。とりあえずこっちに数十歩歩けば向こうから襲いに来てくれると思うんだけど」
「よし、行くわよ」
結衣さん達は覚悟を決めたらしい。俺は少し離れて観察しつつ、他のモンスターが乱入しないようにしっかり見張っておくことにした。
スペースマンタレイ……エイが斜め上から結衣さん達に向かって急降下していく。急降下地点に平田さんが陣取り、【硬化】で全身を固めて待ち構えているらしい。そして受け止めて……あ、ちょっと逸れた。どうやら頭の下にある口で噛みつこうとしたようだ。
鼻っつらを叩くのに失敗した平田さんだったが、その平田さんを足場に多村さんがジャンプ。エイの口から下を切り裂きに行く。上手く刃が刺さり、そのままエイが地面にフラフラと落ちていく。空中というメリットをすべて奪われたエイは全員の一斉攻撃でズタズタにされ、黒い粒子に還っていった。
「なるほど、急降下してくるわけなのね。後は噛みつきは来たけどしっぽがどうなるかはわかんなかったわ。もし尻尾で叩かれたりしてたらもうちょっと状況は変わったはずね」
「もう一種類モンスターが居るんだけど、そっちは完全に噛みつきに来るサメだけどどう対応する予定? 」
「サメの大きさによるわ」
両手を広げてサメの大きさをイメージさせると、相談を始める。その間俺は索敵で次の目標を探す。上手いことサメが探知範囲に入った。
「次、サメ来るけどどうする? 最悪ポーションはあるけど出来るだけ安全策でやってほしいかな」
「やってみるわ。とりあえず遠距離攻撃で減速させながらうまいことスピードを落とせれば何とかなりそうな気がする」
まあ、こっちから手を出すこともできるので最悪の最悪は免れることはできるかな。
「じゃあ、行くわよ」
結衣さん達の作戦が始まった。だが、これ二匹来たらアウトだよな。その時は俺がちゃんと片方を倒すことにしよう。
サメが地面スレスレを高速飛行しながらまっすぐに結衣さん達に突っ込んでいく。結衣さんと横田さんがサメの鼻っ面をそれぞれのスキルで攻撃、攻撃を喰らったサメの勢いが徐々に落ちていく。そしてサメが口を閉じるまでダメージを与えたところで思いっきり平田さんが殴る。平田さんが少し押されるが、きっちり足止めしてサメのスピードを止め切った。
その後はエイと同じく、みんなでボコボコにしてサメは黒い粒子に還っていった。ドロップとしてフカヒレも残していった。
「ほう……高級食材ですね」
「こいつはもう査定に出せるからちゃんと金になるぞ。それほど高くはない、多分醤油差しのほうが金額は上だ」
「醤油差しってなんなんですかね……」
横田さんと少し無言の時を感じた後、改めて索敵を確認、何もいないことを確認するとドローンを飛ばしてマップを確認、東に何かあるぞ、ということをみんなに見せる。みんなで確認したとドローンを仕舞う。
「というわけで、東に行きます。運動がてら時々そっちにモンスター流すけど基本的には俺が倒していくのでよろしく」
「はーい」
全員の反応を見たところでピクニックに出発だ。やってることはいつもと同じだが、いつもよりもモンスターを引き寄せる形になっているので仕事量は多い。なのである程度は自分たちでやってもらうことにはちょうどいい感じではある。流石に三匹同時に飛んでくることこそなかったものの、二匹が同じタイミングで飛んでくることはあり、その時はお任せして殴ってもらうことになった。
そのまま東へまっすぐ進み、オブジェクトが見えたところで周囲確認してまたドローンを飛ばす。今度は階段が見えることを確認させて、全員が納得したところでそっちへ移動。戦闘は変わらず同じ形式で進めていく。
階段まで歩いてきたところで無事到着。階段を下りて七十層にたどり着く。
「ついたー! 」
「「「「ついたー! 」」」」
結衣さん達が勝鬨を上げる。そして念のため周囲確認をして、テントといつものノートセットを見かけてほっと一息つく。
「見慣れたものがあると安心するわね」
「いつでもどこでも小西ダンジョンにはセーフエリアにノートとボールペンがある、そういう環境を作りたかった。ちなみにエレベーターもテントもすぐそばにある」
「好立地な物件を独り占めしててずるいわね……あれ、芽生ちゃんのテントがないわね」
「より大きいテントを一つ用意して二人で使うようにしたからね。もっとも、宿泊コースで仮眠するようなことは今のところないから本当に置いてるだけになってるけど」
「じゃあ、先に使わせてもらおうかな。芽生ちゃん怒るかな」
怒りはしないけど苦情は来るかな。念のため証拠は先に提出して何もなかったことを念押ししておかなければ。スマホを取り出して結衣さんと背景を七十層にして画像を取り送信。「七十層までガイドしてきた。このまま宿泊コースで朝帰りの予定」と。
「これでよし」
「ここ電波通じるのね。これもミルコさんに頼んだの? 」
「通じるのと通じないのどっちがいいって聞かれたので通じるほうが便利って答えておいた。おかげでここで探索しながら電話にも出れて便利にはなったかな。多少地上に戻るまでに時間はかかるけど電話が通じなくてスキルオーブの順番を飛ばされるよりは都合が随分いいから」
結衣さんがなるほど、という感じで頷いている。
「で、成果はあったの? 電波が通じる成果」
「火魔法が三重化できたのはそのおかげでもある。たまたま清州で取引があった話を戦闘中に受け取って先日行って来たところなんだ」
「なるほど……便利だけど私たちが恩恵に与るのはまだまだ先になりそうね」
まあ、そうかもな。今年中に上手いことスキルオーブの取引が成立すれば、名実ともに七十層メンバーの仲間入りができるんじゃないだろうか。
グゥ、と俺の腹が鳴る。流石に空腹を覚えるか。時間は……午後八時。急げば帰れないこともないが、芽生さんには一泊してくるって伝えちゃったしな。大人しく一泊して夜にもうちょっと狩りをしてそれから帰ろう。
「とりあえずお腹空いた。六十三層で飯でも作るか」
「そうね、道具一式も六十三層に置きっぱなしだしまずは戻りましょうか」
俺も六十三層に戻るかな……と、芽生さんから返信が来た。「ごゆっくり」とだけ帰ってきた。ちゃんとお互い報告をしておくことが大事だからな。コミュニケーションはきちんととっておくことが大事だからな。
「芽生さんからも返事来たし俺も飯にするか。さてみんなで上がっていこう」
「みんなご飯行くわよー」
それぞれスマホをいじっていたメンバーがぞろぞろと動き出す。エレベーターで六十三層に上がり結衣さんは食事の準備。俺も自分のパックライスを温め、さて主菜は何にしようかなと悩みどころ。何の肉にしておこうかな……いつも通りボア肉でいいんだが今日の昼もボア肉だったな。ボア肉のステーキでも作って結衣さん達に差し入れするにもタンドリーボアでは芸がなさすぎるので他の味で何か一品提供することにしよう。
さて、何にするかな。レモンバジル風味でも出しておくか。分量は間違えなければしっかり味付きにはなるし胃にも溜まるししっかり楽しめるはずだ。後は……疲れを取るための馬肉か。馬肉は刺しで出そう。
まずは馬肉から刺身にすると、結衣さん達のテーブルに並べていく。生姜醤油と一緒に出すと、料理中の結衣さんがひょいぱくと摘まみ、OKを出す。早速料理が出来上がるまでの時間で皆で食べ始める。今日は結構緊張しただろうから胃袋から懐柔するのは良い作戦だろう。
その間に自分の分も作ってしまおう。ここではレシピが限られる。基本的には肉と、保管庫に入っているキノコ類だ。ステーキのキノコ炒めってところだろうな。早速キノコを適度な大きさに切るとボア肉を続けて焼き始め、適度に肉が焼けたところでタレとキノコを入れて加熱。まとめて焼いて火が通ったところで完成。
さて、食べるか。最後にパックライスを水を入れた鍋で温めて、鍋の中のたれの香りを存分に移して味付きご飯を作り上げると、自分の食事の分を確保する。足りなかったらもう一パック開けることにしよう。とにかく今は自分の胃袋を満たすことを最優先していこう。俺もお腹はペコちゃんだ。
食べ慣れた飯だが、場所も気分もその前にした仕事も変わると味もまた変わる。疲れすぎると塩味が欲しくなるが、塩分過多になる可能性もあるので注意が必要だ。でも確かに汗はかいたし、ちょっとぐらい多めでもいいだろう。しっかり栄養分を補充してミネラル不足にならないようにするのも大事だからな。後でミネラルサプリメントを飲んでおこう。
では、早速いただきます。隣の机で静かに食事を始める俺と、ワイワイ隣で騒ぎながら結衣さんと食卓を囲むパーティー。ちょっとだけ疎外感があるが賑やかな食事が始まった。どうやら俺もそれなりに疲れているのか、味をあまり感じ取れなかったので追い食塩と追い味の素をかけて食べることにする。味はしっかりついているはずなんだけどな。俺も珍しく疲れているってことだろうか。後で仮眠してちゃんと疲れを取らないといけないか。さっさと食べて仮眠しよう。
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