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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第二十七章:閑話休題

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1297:ごちゃごちゃ乱闘戦

 六十七層を三層スロープのほうへ向けて歩いていく。相変わらず俺と多村さんが先頭、後にみんなが続く。後ろの編成は特に決まってないらしい。場合によっては横に結衣さんがいたり平田さんがいたり、前の戦闘の続きでそのまま続いてくる、という感じだ。


 戦いながら、上中下三階層に渡るスロープのある場所までの道を歩いていく。前に通った時よりもモンスター数が多く感じるのは、結衣さん達の中で【隠蔽】を持ってない誰かが呼びよせているのだろう。犯人を見つけ出すつもりもなければそれについてとやかく言うつもりもない。モンスターが増えるということは今日の稼ぎが純粋に増えるということなので悪くない話だと逆に考えている。


 六十七層でも同時に二グループが来るパターンが出てくるとなると、ますます危険なにおいがしてくる。最近こういう緊張感はなかったな、ちょっと楽しくなってきたぞ。調子に乗ってサナダムシを最優先、次に三鎖緑球菌君、最後に白血球という優先度でどんどん焼きながら歩いていく。


「さすがにこの量は厳しいわね。安村さんが来なかったら私たち突破できなかったかも」

「もしくは【隠蔽】を全員が覚えてから来るか、【火魔法】を買い付けるか、そのあたりでしょうかね」

「【水魔法】に【土魔法】をアレンジして使うという方法もあるぞ。威力が増したらしくて芽生さんが喜んでいた記憶がある」

「なるほど、【土魔法】ですか……そんなに高くないはずですし調べてみるのも有りかもしれませんね」


 横田さんと結衣さんとまだ話しながら戦うだけの余裕はある。流石に俺が無口になったら真剣に戦ってると思われるのだろうから、できるだけ口を開いて戦いながらいくことにしよう。


「うーん、出番がないのが悔しいな。これだけ忙しいのにあんまり活躍できてないや」


 多村さんはいまいち戦力としてカウントされていないのが少し申し訳が無さそうにしている。確かに、俺がいる時点で索敵はできているからな。普段はもっと頼れるお兄さんポジションなんだが今日に限っては外から止めを刺したりする役目に徹してもらっている。


「多村さんには六十九層あたりで活躍の場があるかもしれないからそれまではカバーに回ってもらってるほうがいいかな。全員で戦って全員消耗するよりもある程度余裕があるほうが大事だと思うし」

「気遣いをさせてしまってすまないね」

「こっちこそ、普段の仕事を奪ってすまない」


 お互いに顔を合わせてニヤッと笑う。笑う余裕があるうちはまだまだいけるな。サナダムシを火炎波で焼き払いながら三鎖緑球菌君達の相手は結衣さん達に任せる。


「うくっ」


 どうやら横田さんが三鎖緑球菌君からダメージを喰らったらしい。毒が全身に回りだすまでに倒さないとな。横から雷撃で三鎖緑球菌君を焼いて、横田さんにダメージを与えたやつだけをピンポイントで倒す。


「助かりました。どうやらこの緑の丸いのは生きている限りは毒を発生させ続けますが、倒せば元に戻るらしいですね、倒したら楽になります」

「そうらしいな。こっちは【毒耐性】持ちだったんであんまり体感できなかったけど」


 一通り寄ってきたモンスターを排除した後、小休止とまではいかないものの態勢を整えるための時間を少し作る。中々厳しい戦闘だな。俺にとってはダッシュ中の連戦ぐらいで済んでいるが、結衣さん達がそのペースについてこれるとは限らないので出来るだけ戦闘間の軽い小休止を何度かとることにしていこうかな。


「【毒耐性】がここで生きてくるとは思いませんでしたね。やっぱりパッシブスキルはそれぞれ取っておくべきなんですかね」

「あるに越したことはない、と感じたかな。売らなきゃよかったスキルはあるし今となっては遅いけど、まあそれはそれでってところだろうか。結局【毒耐性】も売った後で買い直したし、その金額の差額の分だけもったいなくはあったけどね」


 そのまままた前に進み、二グループのモンスターを相手にする。サナダムシ二匹と三鎖緑球菌君二匹だ。サナダムシは火炎波でサクッと焼き殺してこっちの戦闘は終了。残りはちゃんと結衣さん達に倒してもらう。三鎖緑球菌君二匹と五人の戦闘。いくら戦力差が仮にあったとしても人数で圧倒できる分だけ楽なはずだし、こいつは分裂しても三つまで。なら大丈夫だろうと、自分の取り分を確保してから戦闘の様子を観察する。


 結衣さんが三鎖緑球菌君をスパッと【風魔法】で分割し、三粒のうち二粒を潰すと、残り一粒を横田さんが【水魔法】で切断して倒す。残りの三人が一人一粒ずつを対応して倒していく。一グループには問題なく対処できるのは間違いないらしい。後は俺の動きにかかっているということにもなるか。


 問題は三グループ来てしまった時かな。その時に二グループをまとめて倒せるかどうか、そのあたりを組み立てながら前に進むとしよう。


 六十七層をそのままのペースで歩き続け、上中下と三層構造になっているところまでやってきた。


「上はダミー……というか稼ぎ用の通路だ。中階が今歩いてきたところ。下が正しい道になる。上から来たのに更に上があるという謎の構造だが、細かいことは気にしないで行こう」

「言われてみればそうですな。でもまあ、階段が異次元の隙間を無理矢理こじ開けているギミック、ということになっとるはずですから、逆に下から上に上って階段を下りるというこれまた不思議な現象であっても問題はないっちゅうことになりますけど、今回はどっちへいきますのん? 」


 平田さんが意外にも論理を理解している。適当でとにかくつながってればどうでもいいと言い出しそうなキャラなのにな。


「今回……というか体内マップは全体的に傾斜がついている。そして、傾斜の一番低い所あたりに階段がある。この場合は下りていく際の目印として、と限定されるけどね。なので傾斜を見て低いほうへ低いほうへ向かっていくのがコンセプトになってるみたいなんだ」

「なるほど、我々は食いもんになったつもりで最後にはひりだされるわけでっか。次のマップ辺りはさしずめ腸ってとこなんでしょうなあ」


 平田さんが鋭い。この人こんなに勘が良い人だったっけか。まあいいや、細かいことは気にせずそのまま中段に居たサナダムシを焼き殺し、下段に下りたところの三鎖緑球菌君と白血球のバトルに割り込んでドロップ品を回収していく。


 さて……この後はどっちだったかなと地図を確認する。道は一本なので迷わないが、その分だけ道中の戦闘は濃い。前から見えて来るモンスターは全部倒していくぐらいの気概で行かないといけない。


「さて、こっからはほぼ一本道だ。小部屋が途中にあるが戦闘は全部行っていくつもりでいくが……休憩いる? この後連続戦闘になるだろうからこの辺で休んでおくチャンスだよ」

「私はまだいけるから大丈夫……みんなは? 」

「大丈夫ですわ。安村さんのおかげでえろう楽させてもろうとりますし、進捗を進めるほうが先やと考えます」

「僕もまだ大丈夫。むしろみんなが疲れてきてからが本番だとも思うしね」

「俺も大丈夫ですね」

「僕は荷物が軽いので大丈夫です。十全に行けます」


 全員に確認を取って、先に進む意思を確認する。これなら六十八層までぶっ続けで行っても問題はなさそうかな。三叉路まで一本道で小部屋が各所に存在し、小部屋からモンスターが出てきて戦闘になるのでモンスターが一気に来る密度が非常に高い。この六十七層でも中々の数が出てくるので、六十八層のいわゆる小腸部分に差し掛かった場合、さらに厳しくなるだろうな。


 楽して抜けることをあきらめてすべて倒していく虐殺モードに自分をチェンジさせる。目に見えるモンスターは全部戦い、全てのドロップを拾っていく、そのつもりで行こう。


 後ろの結衣さん達はいっその事撒き餌だと思って存分に力を振い始める。まだまだ魔力には余裕がありそうなので思い切って全力でやっているが、【火魔法】三重化レベルの魔法の連打ならまだ雷龍のほうが消耗が激しいので気楽に打ちっぱなしができるのがこの際利点だな。


 簡単な連携を取りながら進んでいくと、道中の三鎖緑球菌君がスキルオーブをドロップする。そういえば体内マップでスキルオーブが出たのは二回目か? 【火魔法】が出た以来かな。


「お、ええもんでましたな。中身は何ですの? 」

「戦闘が落ち着いたら確認だな。それまではちょっとの間お預けだ」


 まずはこっちに近づいてくるモンスターを倒すことに専念し、全部倒し終わってこっちに近寄ってくるモンスターがいないことを索敵で確認してからスキルオーブを拾う。


「【毒耐性】を習得しますか? Y/N 残り二千八百七十八」

「【毒耐性】だってさ。覚えてない人優先でいこう。横田さんと誰? 」

「安村さんはええんですの? 一応パーティー分配ということになりますけど」


 平田さんが後で金でもめないかの相談を先に始めた。金の話を先にしておくのはプロの仕事だ。


「パッシブスキルは覚えてない人が覚えるのがセオリーだろうし、今金の話をしても直接実弾でやり取りできるわけじゃないからね。とりあえずパーティーで分配するってことにして、実際の金額は後で相談しよう」

「覚えてないのは横田君と僕だね」

「じゃあ多村さんと横田さんでじゃんけんかな。金は……確か相場は三千五百万ぐらいだったから、六分の一貰うとして五百万。五百万円分ぐらいの価値があるものを別で分けてもらうってことにしようかな」

「安村さんにはガイド役としてのお仕事もしてもらってますからね。分け前で損が出ないように後できっちり相談しましょう」


 多村さんと横田さんがじゃんけんをし、多村さんが勝ったので【毒耐性】は多村さんの手元へ。


「イエス……と。これでようやく前衛としてもまともに戦えるようになるかな」


 多村さんが発光し、しばらくして元に戻る。その間に一匹サナダムシを潰しておいたがさすがにポーションは出なかった。


「【毒耐性】があと一つ、【隠蔽】が後三つですか。どっちもこれから必要だと考えると三十五層辺りに集中して潜って自力で取るか、買い付けるか悩みどころではありますね」

「さすがに【隠蔽】はこのマップで出るってイメージはないからな。雪原マップあたりに潜り込む必要が出て来るね」


 これで一つ結衣さん達が強化されたところで先を急ぐ。戦闘が多いおかげで結構な遅れが出ている。予定よりも移動速度が遅く戦闘に手間取る分だけ時間がかかっているので行程は俺が思ったよりは遅れている。これは泊まりコース確定かな。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 六十七層最後の三叉路まで来た。地図を出して階段の方向を確認してこっちだ、と指示して進む。流石に連続して戦闘してきたからか、みんなにも少し体に疲れが見え始めている。


「六十八層に入ったら広い空間に出るから、そこで一旦休憩だね。そこからはここまでよりも更に多くのモンスターが出てくるはずだから、出し惜しみも休み惜しみもなしで行こう。無理して進むよりもできるだけ安全に行きたい。ワクワクしてきたな、ここまで安全率の低い探索は久しぶりかもしれない」

「安全に余裕を持って探索していくのが安村流でしたか。それでも厳しいってことはやっぱり俺達ではまだ潜り抜けるには早かったのかもしれませんね」

「ここまで来て諦めるって手もあるけど、安村さんが無理って言ってないってことはまだ余裕はあるってことでしょ? 」


 結衣さんの目の付け所が鋭い。そのとおりだよ。六十七層を抜けて六十八層に入り、早速その場にいる三鎖緑球菌君三体をまとめて焼いて、少し離れた位置からにじり寄ってきた白血球を同じく【火魔法】で炙り焼きにする。なんか、牛脂をロースターで焼いてる気分になってきた。索敵範囲で近寄ってくるモンスターがいないことを確認すると、全員そこに座って休憩を始める。全員に飲み物とドライフルーツとバニラバーを配って一休み。


「さっきの話の続きだけど、余裕があるって話はまあ、そうなる。俺が全力で戦闘してたら全体の七割ぐらいまでは安全に倒し切れると思う。その後はみんなに任せつつ戦闘ってことになるけど」

「さすがにそこまで任せると立つ瀬がないというか。完全におんぶにだっこになっちゃうわけなんだけど、安村さんとしてはそれはいいの? 」


 結衣さんが申し訳なさそうに質問してくる。


「俺としては構わないと思ってるけど、俺の目を通してみているほかのダンジョンマスターがどう思うか、じゃないかな。俺が盛大に焼肉してるのを楽しんでみてるか、それとも結衣さん達にあまりいい印象を持たないかは気にしなくていいと思うよ。あんまり目につくほどの無理矢理で連れて来るようなことをしてたら逆にミルコが注意しに来ると思うし、ミルコがそうしないってことはこのぐらいはまあいいか、と考えてるんだと思う」

「なるほど、ちゃんとそれなりに根拠があってガイド役を請け負ったのね」

「後でお小言をもらうかどうかはさておいて、結衣さん達がここでは戦力不足だと感じたならエレベーター使うだけ使って上に戻って鍛え直すのでダンジョン側も納得するかもしれないし、そこは結衣さん達次第だとは思うけど……俺も素直に上の階層で鍛えてるほうがいいかなとは思うよ」

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

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― 新着の感想 ―
まぁパワーレベリングって訳では無いし言い方良く無いけどサブキャラの育成のために到達階層をスキップしてると考えてあとは適正階層で周回してねってところかな?
いつのまにかiPhoneの誤字訂正がgoogle AI モード以上に使いにくくなってた(’〜’) > ますます危険なにおいがしてくる」 口角が上がっているおじさん > 突破できなかったかも」 かも…
隠蔽無しでこの頻度で戦えるのは熟練度稼ぎには悪くなさそうですな
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