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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第二十七章:閑話休題

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1296:体内マップを急ぐ

 そのまま六十五層を時計回りに移動していく。途中の戦闘は出来るだけ省略していきたいところだが、結衣さん達の【隠蔽】が全員分には不足しているため、持ってないメンバーを目印に小部屋から元気に飛び出て来るモンスターの姿が見られる。なるほど、隠蔽なしだと小部屋も相手にしなければいけなくなるのか。一つ勉強になった。


「結構戦闘回数多いのよね、おかげで」

「【隠蔽】人数分は結構死活問題ですな。なんとかして手に入れる算段をつけませんとこの先えろう苦労するかもしれまへんで」

「金額と効果がまだ釣り合っていない……というか難易度に対して効果のほどがまだ知られてない内に買うのが良さそうですね。五十二層や五十五層の苦労を考えたらB+探索者がそこまで追いついてくる前に入手しておきたいところです」


 結衣さん達が相談しながら進むが、小部屋のたびにモンスターが現れるので、行く先で出会うモンスターは全部消し飛ばしていくことに決めた。そうなれば俺も頑張って戦っていくのが先導役としての務めというもの。


 かっこよく指を弾いてパチンとならせばファイヤーボールが飛んでいくような感じにしたくはあったが、手袋をしてるおかげでシュッという擦過音が少しするだけ。それでも問題なく出てくれるのはイメージの強さゆえか、それとも俺の気分にスキルが合わせてくれているかのどちらかだろう。後者であるとよりスキルを使いこなしている気がしてとても良い。


 そのまま六十五層で激闘しながら無理矢理進んだため、一時間かけて六十六層側の階段までたどり着くことになった。全戦闘を行いながらもこのペースで進めたのは火魔法三重化のおかげと言っても良いぐらいだろう。消耗も雷魔法五重化に比べれば少ない様子なので、かなり省エネにもなっている。


「緑の丸っこいのはまだええとして、残りは面倒ですな」

「白血球はどうやって倒してたの? 」

「みんなで取り囲んで順番に切り刻んでましたね。二匹居る時は一匹の相手を誰かがしつつ、残りを一気に片付ける……みたいな」

「こっちの手持ちだと【水魔法】【風魔法】ぐらいしか攻撃手段がないからね。切り刻むのは得意なんだけど」

「なるほど。これは苦戦するわけだ」

「そうなんですよ。なのでそろそろ【火魔法】か【雷魔法】を覚えるのもアリじゃないかという相談もしてました」


 こっちはこっちで苦労してるな。しかし、ここさえ乗り切ってしまえばある程度楽にはなれる範囲ではある。そこのお手伝いを俺が今してるってことだな。


「まあ、俺が居るし今回は何とかなるんじゃないかな。自慢じゃないがここを華麗に乗り切る自信が出てきた。【火魔法】多重化は充分俺に恩恵をくれている」

「そうですな、後で何かお礼をしませんと。リーダーにお任せしますわ」

「お礼ってそういう? 」

「安村さんがそれでいいならそうするけど。でも、ダンジョンの中では見られてるんじゃなかったっけ? いいの? そんなことしても」


 結衣さんは少し照れつつもその気になっている。


「そうだな、七十層に無事についたら添い寝でもしてもらうか。ちょっと肌寒いしあそこ」

「そんな環境なのね。そういえば六十九層以降がどんなマップか教えてもらった覚えはないような気がするわ」

「行けば解る。今日中に行くんだから楽しみにしておくと良いよ」


 六十六層に下りて、多村さんがやっぱりなんかおかしいよねここと俺に聞いてくる。


「このマップ……というか次の六十七層も何だけど、多重階層になってるんだよ。だから上下のモンスター情報も拾っちゃってるわけなんだ」

「なるほど、それでこういう感じに見えるわけか。なんか頭がおかしくなりそうだ」


 多村さんに説明するついでにここの階層について地図を見せながら説明する。説明で納得した一同を引き連れて、地図通りに進む。モンスターはもう面倒くさいから手が届く範囲とサナダムシは完全に俺が対処するようにした。そのほうが時間がかからず効率的だからだ。途中、戦闘にあまり参加していない結衣さんの身体強化がレベルアップしたようだが、パーティーを組んでいる、という判定はどういう仕組みで成り立っているのかちょっと不思議な感じがした。


「安村さんに無理矢理パワーレベリングされてるようであまりいい気分じゃないんだけど、とりあえず分け前をもらってるということで有り難く受け取っておくわ」


 そう言いつつ、あちこち身体の調子を確かめて、レベルアップした体と心と思考のバランスを取っているらしい。


「パーティーを組んだぞ! って宣言でパーティーになるのか、それとも一定距離にいる間はパーティーとしてみなされるのか。やはり黒い粒子の吸着が必須になるのかな」


 横田さんも不思議に思っていた様子。これに関しては俺も結論を出せてなかったはずの話だな。


「そのへんは前に考えたことがあったかなあ。多分、モンスターを倒した際に黒い粒子が還元されていくその黒い粒子を体に付着できたかどうかで決まるんだと思うけど、そうなると超長距離から狙撃して倒したモンスターの分はどうなるのかってのがまだ解ってないんだよね。だからこれもダンジョンの謎になるのかな」

「まだまだ知らないことがあるんでんな。てっきりダンジョンのことは俺に全部任せろぐらいの勢いで物事を知ってると思ってましたわ」

「知ってることしか知りませんよ。ダンジョンマスターになったら解るようになることなのかもしれません。さ、次へ急ぎましょう。もう少ししたら下に下りるためのスロープがあるんで、そこを下りていきます」

「その辺はこっちでもわかってるわ。それが一番の近道なのよね」


 そのままスロープにさしかかり、サナダムシを俺が一人で焼いてさっさと下りる。その後は来た道と並行しないほうの道へ行く。ここもこっちに行くね、と指さすと全員が頷いている。最短ルートで進む道はここまでは心得ているらしい。


 結衣さん達もこの辺は問題ないようだ。かなり気が楽だが、隠蔽がない分だけ戦闘回数が増えるのはどうしようもないらしい。時々ある小部屋からは確実にモンスターが飛び出してくるため、横道もおろそかにできないが全て索敵で見えているので、索敵に引っかかりそうなところを注意しながら進む。多村さんもその辺は心得ているようで、横道を発見すると戦闘準備態勢に入る。


 索敵持ちで先頭を行く俺と多村さんが戦闘準備態勢に入るのを見て、他のメンバーも順次戦闘態勢に切り替えていく、という流れでここは対処していく。だんだんこのパーティーとの付き合い方も心得てきたが、このマップが結構特殊なため、戦闘に出られる人間が限られている。


 例えばサナダムシと相性が悪いのはほぼ全員であるし、唯一平田さんが肉弾戦でサナダムシを物理的に分裂させることなく倒せる人材として貴重な枠を少しは埋めている。三鎖緑球菌君については全員が対処できるので大きな問題はないが、攻撃されると【毒耐性】を持っていない都合上あまり前に出たがらない横田君がいる。白血球は……今度は平田さんが苦戦しそうな感じか。


 それぞれ違った攻撃手段は持っているものの、斬撃属性に偏ったパーティー構成だとも言える。範囲攻撃をするにしても結衣さんが【風魔法】をうまくコントロールできるかどうかで変わってくるし、【水属性】で無数に刃を乱射できるかどうかまだ横田さんには見せてもらったことがない。多村さんは斥候役として主に活動しているのでこれと言った特徴がないのが特徴。


 村田さんは【爆破】で巻き込める範囲のモンスターが居れば問題ないが、爆破する為には爆破用の物品や、モンスターに直接触れる必要があるため三鎖緑球菌君には少々相性が悪い、という感じになっている。


 それぞれのデメリットとメリットを組み合わせればここまでは問題なく来れているんだろうな。この後の六十八層でどのぐらい火力として期待できるのか、そして俺も初体験である六十八層隠蔽なしのモンスター数を考えると、やはり六十八層に入る前に休憩が必要なのは目に見えている。


「とりあえず六十七層に着いたら一回休憩を取ろう。その後で六十八層に入る前にもう一回休憩、六十八層の中で……もう二回ぐらいは呼吸を整えるタイミングは必要になってくるかな? さすがに隠蔽なしでの六十八層は俺も未体験だからどんな乱戦になるかわからない」


 あらかじめ言い伝えておく。情報の共有はパーティーには大事だからな。特に六十八層初体験で突っ走ろうという結衣さん達だ、プレッシャーを与えるではないが事前の知識は入れておくに限る。


「六十八層と小西の十層、どっちがモンスター多いのかしらね」

「一発で倒せない可能性のある分こっちのほうが辛いのは確かかなー、階層も深いし。でも遠距離攻撃をしてこないのが十層とは違って気楽な部分かもしれない」

「そういえば遠距離攻撃してくるモンスターってあんまりいないですね。最近では六十三層付近の亀が水魔法を撃ってくるぐらいでしたか。こっちとしては助かるんですが、砲撃戦みたいなことにならないのは有り難いのかもしれません」

「それこそさっきの話じゃないが、モンスターを遠距離で倒すと経験値にならないとか、あまり見映えがしなくてダンジョンマスター達も楽しめないとかそういう理由かもしれない」


 遠距離でバンバン打ち合うよりも近接戦闘で切り合い殴り合いしてるほうが構図として映えるだろうからな。見る側としても遠距離攻撃同士の打ち合いで損耗していくのを眺めるのはあまり面白くないのかもしれない。


「そういえば安村さんは視界ジャックされてたんでしたな。今も見られとるという自覚はおありで? 」

「いんや、基本的に気にしないようにしてる。気にするのはそれこそカニうまダッシュみたいに高速で駆け巡る時にどっちをどう向いてどう攻撃するか、とかそういう場面でこそ使う手かな。そういう意味では、これからの六十七層や六十八層はちょっと見物かもしれないな」

「あんまり苦労せずに抜けたいところだけど、それは叶いそうにないわね」


 結衣さんがやれやれ……と言った感じでため息をつく。さて、十層以来の通り抜け厳しめのゾーンにどう立ち向かっていくかを考えながら、六十七層への階段へたどり着いた。


「ここらで一旦休憩しようか。バニラバーと簡単なお菓子で良ければ出るけど」

「出来れば欲しい所ですね。甘いものならなおさらいいと思います」

「とりあえず全員にドライフルーツと……飲み物は色々あるから好きなのを。俺は一応索敵で警戒しておく」


 自分もドライフルーツを一応噛みこんでおいてぶるっと体を震わせると、他のメンバーが休みやすいように俺だけ一人歩哨に立つ。結衣さん達は地べたに直接……このマップではあんまりやりたくなさそうな見た目をしているが、気にせず座る度胸は中々のものだと思う。まあ疲れが取れるのが最優先だ、あまり細かいことは気にするのは俺ぐらいのものなのだろう。


 水分を補給し甘いものを食べ、ドライフルーツで清涼感を味わい、十分ほど休憩すると再び立ち上がり始める面々。休憩は終わりでいいのかな。あんまり休むと移動するのが億劫になるし、このぐらいでちょうどよいのだろう。


「じゃ、六十七層下りるか」

「こっから先はちょっとしか潜ったことないのよね。どんなマップなの? 」

「上中下と三段階に階層が分かれてる。それなりに凝って作ってもらってはあるから巡り甲斐はあるかもな」

「ドロップ品も軽いし、ちょっとセーフエリアが遠いことを除けば良さそうな所ね。でも蒸し暑いし長居はしたくないかも。マップがもうちょっと湿度低めだったらいい感じだったのにね」


 大体みんな同じ感想のようで、うんうんと頷きながら階段を下りていく。階段を下りたところで早速戦闘をしている白血球と三鎖緑球菌君に割り込んで、両方に火魔法を照射する。面倒くさいので炎の波をイメージし、範囲まとめて焼きにいく感じで魔法を放ってみた。


 炎の波……解りやすく火炎波(かえんは)だな。火炎波はそのまま全てのモンスターを包み込み、しっかりと焼き上げて黒い粒子に還っていった。こいつを六十八層にたどり着く前に思いつけたのは幸いかもしれん。これは今後に役に立つな、六十七層にいる間に形にして、六十八層で思う存分活躍できるように調整していこう。


「また新しい技が出た」

「共食いでどっちかが倒れてくれるとドロップ品が出ないからな。同時に焼き倒すにはちょうどいい塩梅だった。こいつを形にして次の階層に持っていくつもりだ。さあ、先はこっちだ、行こう」

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

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― 新着の感想 ―
みんな大好き「華麗なるフィッツおじさん」が爆誕しつつあるか…
それこそ指パッチン、、、は要らないけど雷速で飛ばせる火魔法とかが良いかもね! ダンジョンマスターにならないと、か安村向いてそうだなぁ、、、真中長官と組んだら面白いダンジョンが出来そう!
隠蔽の有用性が周知されたら値段跳ね上がりそうだもんなあ オファー出して早めに買っておくべきスキルですよね
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