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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第二十七章:閑話休題

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1295:火魔法三重化試運転

「実は火魔法が三重化できたので、弱点属性が多い体内マップのモンスター相手にちょっと効き具合を調査しに行こうと思ってる」

「そのまま六十八層まで行く予定とかじゃないわよね? 」


 てきぱきと昼食の準備をしながら会話をする。せっかくなので手伝うことにする。


「さすがに一人で行くのはつらいかな。行っても六十六層が限界だと思う。白血球みたいなモンスター相手にするのが一番わかりやすいんだろうけど、残念ながらそれ以上は手数が足りないと思うんだ」

「なるほどね……何なら、一緒に行ける所まで行く? 安村さんが一緒なら慣れてるだろうし、私たちも七十層までたどり着くチャンスになるとは思うし、安村さんも暇つぶしにはなると思うんだけど」


 ふむ……魅力的な提案だな。結衣さん達の今年の目標も達成できることになるわけか。しかし、俺の力を借りて突破することに問題はないんだろうか。そこのところだけ話を詰めておこうか。


「俺は別にいいんだけど、自力達成だけじゃなくて他力を使うことになるけどそこはいいの? 」

「そうね……エレベーターを使うだけ使わせてもらうようにして、その後どうするかを考えるという手があるわ。とりあえず現場まで到着するのを優先しつつってことになるなら私としては構わないかなと思ってるんだけど」

「そうですわ。安村さんも楽に六十七層まで行けることになりますやろうし、いっちょ一緒にいきませんか? 」


 ふむ、結衣さん達はそれでも構わない、というスタンスか。なら俺としてはこれ以上口を挟む理由はないな。


「ならいいよ、一緒に七十層までいこうか。その為には素早く飯を食って移動する時間が欲しいかな。多分、そっちも突破を狙って早めの昼ごはんという感じにしたんだろうけど結構苦戦するところも多いから時間はこの際貴重だ。一泊するならゆっくりでもいいんだけどね」

「私たちは元々一泊する予定できてたから良いけど、安村さんに合わせるには手早くしなきゃいけないか……よし、ちょっと時短するわ」


 結衣さんがやる気を出して時短料理にかかるらしい。俺も自分の分を食べ終えるとこっちのコンロを出してタンドリーボアを焼き始める。ちょっとやる気を入れてやらなければいけないところらしい。


「まあ、間に合わなかったら俺も一泊していくからその際はのんびりやることにするよ。出来れば日帰り、無理なら一泊ってことで」

「申請出さなくてもよくなったのは有り難いことよね。前なら一泊以上は申告制だったのに」

「エレベーターが出来た分だけその必要もなくなったともいえるけどね……っと、五人分にはちょっと物足りないかもしれないがタンドリーボア肉お待ち」


 欠食児童たちに飯をふるまう。自分の分はつまみ食いで済ませた。後は自分のサンドイッチをかじって、食事が終わるのを見ながらのんびりネット……そうだ、ここは繋がらないんだった。スマホを諦めて保管庫に仕舞うと、コーヒーを飲みながら楽しく食事している様子を、使ったスキレットをウォッシュしながら眺める。


 これは……一泊覚悟コースかな。六十九層を無事に歩き抜けられればそれでいいんだろうけど、索敵二重化してないだろうしどこから襲ってくるかわからない恐怖に震えながら進まれるのもちょっと危なすぎるしな。


「ちなみに聞くけど、【索敵】ってどうしてる? 二重化させたりしてる? 」

「さすがに【索敵】の二重化はしてないわね。あれ買い付けるにもお高いし、そもそもオファー出しても出てこないみたいだし」

「そっか。じゃあ六十九層は俺頼りって事になるのか」

「なに、そんなに遠くからこっちを見つけてくるわけなの? 」


 ネタバレになってしまうが知らずに襲われるよりは知ってて襲われる方がまだ覚悟がしやすいだろう。ここは話しておくべきだな。


「育てた索敵範囲ギリギリのところから襲ってくる。なので二重化してると非常に安全な探索が出来るんだけど、そっか、じゃあ俺だよりか。責任重大だな」

「索敵まで二重化したのね。今どんな感じでスキルを育ててたの? 参考までにトップ探索者のスキル構成を聞いておきたいわ」

「えっとね……【雷魔法】五つ分、【火魔法】三つ分、【物理耐性】二つ分、【魔法耐性】二つ分、【生活魔法】二つ分、【索敵】二つ分、【毒耐性】、【隠蔽】ってところかな」


 話した途端食事の手を止めて全員がこちらを見る。羨ましいのか、よくもまぁそこまで覚えたもんだと感心するのかは解らないが、とにかく向こうからすれば潤沢なスキル構成に見えるらしい。実際潤沢だと思う。【雷魔法】だけでも充分に性能が高いのだからそれに加えて多重化したスキルがこれだけ列挙されると羨ましくもなるのだろう。


「私たちももっと頑張らないといけないわね。そこまで上げないと二人で最下層に潜るには不十分ってことでもあるのだろうし、七十層までたどり着いたとしてもスキルの買い付けに走り回らないといけないところね」

「まあ、今はまだそこそこ買える範囲で出回ってるから粘り強く地上で待つぐらいしか方法がないんじゃないかな。もしくは自力で出そうな場所で出すか」

「自力で出して覚えていってはいるんだけど、スキルに関しては追いつける気がしないわ……」


 結衣さん達は人数もいるしな。それぞれが均等に伸ばすか、突出して何かを上げていくか、それぞれ悩みどころはあるだろうけど頑張ってもらうしかないな。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 昼食休憩が終わって出立準備を済ませた。なお普段生活魔法で時間をかけてやっていた調理器具や食器のウォッシュは俺がまとめて全部やったのでかなりの時短になった。やはり多重化はさせておくに限る。


「ちなみにだけど、何層までは潜った経験が? 」

「六十七層までは潜ったわね。白血球って安村さんが呼んでた奴よりもサナダムシみたいな奴のほうが苦戦してるわ」


 結衣さん曰く、白血球は四つに切れればそれで終わるけれどサナダムシは分割数が多いのでまとめて殲滅できるスキルがないと面倒くさいらしい。なるほどたしかに。


「じゃあ、まずは六十五層まで急ぎのペースで行きますか。今更苦戦はしないとは思うけどここから先は階段まで結構距離があるマップだから、詰める所は詰めていきたい」

「持久力のほうは大丈夫なの? 結構連戦になると思うけど」

「最悪ドライフルーツがあるしね。それに一人で六十九層をグルグル回ってても問題ないぐらいにはなれたし、多分人数も居るから大丈夫でしょ。一人で相手するわけじゃないからその分楽はさせてもらおうかなと。その代わり荷物持ちはしっかりやるから任せといて」

「そこは気楽に行けるから良いんだけど、六十五層から先ってそんなに重たいドロップありましたっけ? 白血球が特殊なドロップを落とすとかならまた別ですが、僕が知る限りはないはずです」


 横田さんがちゃんとチェックを入れてくれている。流石行程管理がしっかりしている。


「ない。でも、六十四層のドロップは嵩張るが捨てるにはちょっと惜しい。魔結晶でも持ち歩きに不便なほど出るなら保管庫で持ち運んだ方が十全に動けるし、背中が軽く戦えるならそれ以上のことはないだろ? 」

「それもそうですね。ではそこはお言葉に甘えるとしましょうか。僕も久しぶりに背中が軽い戦闘をやりたいところです」


 普段ポーターとしてやってるおかげでしっかり前で戦う姿勢じゃない横田さんも積極的に戦闘に参加したいらしい。俺は三分の一ぐらいを相手にするつもりで進めばいいかな。問題は六十八層の複数グループがまとめて襲い掛かってくるあたりになるだろう。そこは【隠蔽】が全員そろってないことを考えてもかなりの数を相手にする必要が出てくるだろうな。


「念のための確認だけど【隠蔽】持ってるのは? 」

「僕だねえ。後平田君も」


 多村さんと平田さんは隠蔽もち、と。残り三人はまだか。


「となると六十八層がかなり厳しいことになると思うんで、そこまでは真っ直ぐいけそうかな。六十八層からは休憩をいれつつ戦闘って事になると思うのでそこはよろしく」

「安村さんが厳しめっていうんだから相当来るわね」


 安心と信頼の俺の厳しめ発言らしい。期待を裏切ってくれないことを祈ろう。早速出発し、まず六十四層を一直線に抜ける。道中のモンスターで火魔法の試運転もしつつ、ロックタートルの顔の穴にファイアボールの一番威力の高そうなあたりをぶち込んでみたりして色々確かめつつ行く。


「それ、【雷魔法】と組み合わせて何かできそうね」

「何かできそう、までは解るんだけど今のところこれといったものが思いついてないのが難点かな。こういうのじゃなくてもっと何かありそうなんだけど」


 雷の龍に炎をまとわせて発射し、着弾までの時間を犠牲にして複合魔法として撃ってみる。ロックタートルは雷魔法だけでも充分仕留められるので、オーバーキルになりきっちり黒い粒子というか炭にしていく。


「うーん、なんか違うんだよなあ。これだとただ雷魔法と火魔法を同時に打ち込んでるだけのような気がする。燃費も悪いし何かこう、コツがあるはずだ。それを自分で見つけないとな」

「威力も火力も充分すぎるとは思うんですけど、まだ不満なのね」

「雷魔法をマスターしてないからな。火魔法も覚えたばかりで三重化をきちんと使いこなせてるとは言い難いし、それぞれ育てていくのが大事かなと」

「使えば使うほど上がっていくなら効果のあるところで精一杯やっていくしかないわね」


 結衣さんもワニを風魔法でスパッと切れ込みを入れては止めを刺しに行っている。平田さんは硬化させた拳と物理耐性を武器にして亀の甲羅を割って中身を取りだしては倒している。そういう倒し方もあるのか……あまりに物理過ぎてちょっと想像していなかった。


 ちなみに中身は可愛いものだった。亀の中身を初めてみた気がする。それを遠慮なくぶん殴って黒い粒子に変えていく平田さんの好感度が少し上がった。


 六十四層を手早く回るため、複数の相手の際には一匹を確実に仕留めて残りを全員の一斉攻撃で倒して行ってもらい、ドロップは俺が回収してすぐ先に向かうという流れのおかげでかなり短い時間で六十四層を歩きとおすことが出来た。このペースなら今日中にも帰れるかもしれんな。


 でも、あえて一泊してイチャイチャはできないが結衣さんに七十層到着おめでとうの添い寝ぐらいはできるかもしれない。そういうサービスもたまには必要だろう。


 六十五層へ下りて、早速火魔法の威力の試す時がやってきた。まずは最初に出会った三鎖緑球菌君からだ。スキルのイメージを固めると、思い切り魔力を込める感じで全力のファイアボールを投げつける。


 スライダー気味に飛んでいったファイアボールは三鎖緑球菌君に直撃し、そのまま燃えて黒い粒子へと還っていった。彼を一発ということは雷魔法四重化と同レベルの威力がここでは見込めるわけだな。これは白血球にぶつけるのが楽しみである。


「さすがに三重化、凄い威力ですね。ここだと水魔法もそれほど威力が出ないみたいで」

「サナダムシ分裂するからなあ。限度はあるけど切れば切るだけ増えるのは厄介だ。出来るだけ楽をして稼いで行こう」


 しばらく三鎖緑球菌君と相手をしていると早速現れたサナダムシ。こいつも【火魔法】で試しに焼いてみると、分裂することなく素直に黒い粒子に還っていってくれた。やはりここは【火魔法】が大活躍する場面なんだな。俄然やる気が出てきたぞ。


「なんか、自分達が普段苦戦してるのを一人で解決してもらってると、本当に引っ張って行ってもらうのが申し訳なくなってきたわ」


 結衣さんがヘルプコールを出し始めている。


「そう思うなら、とりあえずエレベーターだけ登録して普段はここに潜るとか、いろいろ手段はあるはずだからそっちで頑張ればいいと思うよ」

「そうね、そうさせてもらおうかしら。とりあえず追いついたって目標だけは達成したと自分で自分を褒める場面にするわ」

「しかし、あっさり倒していくなあ。ここも何回か通ったんだよね? 」


 多村さんがここぞとばかりに褒めて来る。


「ここのドロップ品をそこそこ集めてサンプルとして渡す仕事があったからね。百個ぐらい持っていかれたけど、ちゃんとその分の報酬はもらったし問題ないよ」

「ここのドロップ品……というかあの醤油差し、いくらなのかしら」

「一応値段は確認してきたけど、一本三十万円らしい。一本でどこまでの薬品を作り出せるのかまでは解らないが、値段相応の価値はあると思ってる」


三十万の醤油差しを培養したり増殖させたりできるのかは解らないが、世の中の役に立つなら何よりだな。

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

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― 新着の感想 ―
> 私たちも七十層まで」 火魔法のテストが七十層キャリーになってしまうおじさん > 魅力的な提案」 感性が壊れているおじさん > そうですわ」 お嬢様になる平田 > 六十七層まで行けることになり…
おお、珍しくキャリーしてますねえ 普段は他パーティーとは滅多に遭遇しませんし珍しい
1261話で醤油差しは一本五十万円とギルマスから聞いていますよ
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