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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第二十七章:閑話休題

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1293:【火魔法】三重化

 清州駅について徒歩で清州ダンジョンのギルドの建物へ向かう。久々……というわけではない、最近も【雷魔法】の取引で来たばかりだ。ダンジョンに潜っていないという意味では久しぶりである。


 しかし、ダンジョンに潜りたいわけではなく今回は取引に来たのだ。いや今回も、か。早速清州ダンジョンのギルドの建物に入り、受付に用件を伝える。


「本日七十八番会議室を使わせてもらうことになっております安村です。お電話でご連絡した通り少し早めに到着することが出来ました」

「少々お待ちください、確認してまいります」


 受付が裏に行き、そして他のギルド嬢が休憩室のほうへ行く。どうやら仮眠している探索者を起こしに行ったらしい。思わずフフッと笑いがこみあげてしまう。


 しばらくして、奥から別のギルド嬢が出てきた。それと同時に、二人探索者がギルド嬢に呼び出されてこっちへくる。


「お待たせいたしました。ご案内しますのでこちらへどうぞ」


 俺と二人パーティーが連れられて会議室の並ぶ場所へやってきた。ちょっと前もここを使ったしもう慣れてきた。番号が建ち並ぶ中に七十八番の札がかけられた部屋へ通される。この流れも少し前にやった通りだ。


 部屋に入ると、部屋の椅子で眠る人が一人。どうやら三人パーティーだったらしい。他の二人は部屋が狭いので休憩室で寝てたってところかな。


「お待たせしました。両者御到着されましたので取引を進めたいと思います……が、大丈夫ですか? 」

「すぐ起こしますのでちょっと待っててくださいね」


 一人が寝ている男の頭をパンパンと叩き、男がビクッとして目覚める。


「ご到着か? 」

「そうだ、取引相手の御到着だ。目を覚ませよ、三千万の取引だぞ」

「おお……ふぅ、ちょっと待ってくれよ」


 そういうと顔をパンパンと叩き目をこすり、頭の横をコンコンと叩く。どうやらこれがこの男の覚醒の儀式らしい。目が完全に覚めたらしく俺のほうを向く。


「お待たせしました。いや待ってたのはこちらですが」

「こちらこそ待たせてしまって申し訳ない。ちょっと辺鄙な所にいたおかげでここに来るまで時間がかかってしまってね」


 ダンジョンの中から通話してたなんて言えないからな。よほど変な所にいたか時間としてそれなりに係る場所にいた、ということにしておこう。


「三時間もかかるってことはよほど交通に不便な所にいたのかな……いや、深入りは無しだ。今日中に取引が行えてこちらとしては助かる所ですから」

「それはお互い様ですね。俺も明日も通常通りダンジョンに潜れそうです」

「では改めて。御両者揃いましたので取引を開始します。まずは探索者証の確認をお願いします」


 お互いに探索者証を見せ合う。どうやら向こうはCランク探索者のようだ。これも大事なスキルだろうに、売るにはそれなりの事情があるんだろうな。自分で使った方がかえって安上がり、と考えるのは俺がそれなりに金を持っていて買った方が早いと考えているからだろう。


「確認できました。では次にスキルオーブの確認をお願いします」


 ギルド嬢が状況確認をしたところで、順番にスキルオーブに触れ始める。


「ノー」

「ノー」

「ノー」


 向こうの三者が順番にスキルオーブの確認をする。続いて俺の番。スキルオーブを手にする。


「【火魔法】を習得しますか? Y/N 残り二千百六十七」

「ノー、たしかに【火魔法】です」

「御確認が取れたので、続いて振り込みをお願いします」


 俺のほうからまず振り込みをする、三千万円……と。


「……振り込みが確認できました。では、お使いください」

「解りました」


 再びスキルオーブを手にする。何回やってもこの瞬間はちょっと緊張するな。


「【火魔法】を習得しますか? Y/N 残り二千百六十五」

「イエスで」

「あなたは既に【火魔法】を習得しています。それでも習得しますか? Y/N」

「イエスで」


 スキルオーブが体に沈み込み、発光を始める。前の【雷魔法】で失敗した時のことをふと思い出す。流石に三重化で失敗してたら他にも体験者が居るはずだ。ここでスキルオーブキャンセルを起こしたりはしないだろう……しないよな?


 順調に発光を続け、やがて発光が止まり、元の部屋に戻る。


「スキルオーブの使用が確認されました。後はスキルオーブを提供してくれた方々への振込先のご確認になりますので、退出されて結構でございます」

「ちょっと待ってください」


 向こうの一人……会議室で寝ていた男から呼び止められる。


「なんですか? ご質問なら答えられる範囲ならお答えしますが」

「二回イエスって答えたってことは多重化させたってことですよね。これで何重化させたことになるんですか? 」


 多重段階の話を聞きたいらしい。何重まで出来るかは今のところ情報として挙がってきてないから貴重な情報源だと思われているのだろう。


「今ので三重化させることが出来ました。ありがとうございます」

「三重化か……B+ランクになるとそこまでのものが必要になってくるということですね、参考になりました。本日はありがとうございました」


 頭をスッと下げられ、こちらも下げ返す。


「こちらこそ、良い取引をありがとうございました」


 そして彼らの取引を後にして先に立ち去ることにする。さて、お腹が空いたがまた名古屋駅で夕食を色々見繕うとするか。今日は何が良いかな。今の俺は何腹なんだろう。名古屋駅なら何でも選べるし何でも食える、金には困ってないので一見さんお断りや完全予約制の店でもない限りはスーツでもあるし好きに選ぶことができる。自由があるのはいいことだ。


 清州ダンジョンギルドを後にして名古屋駅に向かい、一端改札を抜けてからその辺の壁の花になり、スマホで店を探す。何にしようかな、この間は味噌煮込みを熱いまま急いで食べて火傷した覚えがあるが、それでも食べたことに違いはないので今日はパスだな。


 きしめん、串カツ、エビフライ、赤福。名古屋で食べられるものは色々あるが名物を上げるとすればこんなものか。赤福は名古屋名物ではないが。このうちきしめんは麺類が被るから除外するとして串カツ屋で良い感じの店を探そうかな。


 そういえば、有名なとんかつ屋が駅前にも店を連ねていたな。試しにそっちへ行ってみて、混んでいたら諦めてすぐ食べられそうならそっちへ行ってみることにしよう。


 線路の下をくぐるように線路の反対側へ行き、店の前に行くとそこそこの人の列と、終業時間のお知らせが。残念、今日はトンカツには与れないようだ。他の店を探そう。流石にこの時間になるともう閉め始める店もそれなりに出て来る。名古屋の夜はそんなに遅くまでやっているわけではないようだ。


 検索して一人でも入りやすい店を探すと、すぐ近くにうなぎ屋があるらしい。うなぎか……そういえば浜松ダンジョンへ行った時にはうなぎパイと白焼きのうなぎを買ってきたっけ。あの甘い辛いタレを思い出すと、胃袋が早く食わせろとしきりに俺を攻めてくる。ここは胃袋の助言に従って素直に行くとするか。でもいいのか胃袋、うなぎは注文が入ってから焼くものなんだぞ?


 そのまま店に入り、メニューを見る。うなぎの種類は重・丼・ひつまぶし・長焼きといったところ。今日は豪勢に金を使うか。特上のひつまぶしだな。後は追加で……串カツも頼もう。飲み物は日本酒があるらしいので甘口っぽいものを一つ頼んでおこう。


 何という小説家だったかな、うなぎの楽しみ方で漬物で酒を一杯やりながらじっくり焼けるのを待つのが楽しみであり作法である、みたいな言い方をしていたのは。俺もそれに倣ってみよう。どうせ【毒耐性】のおかげで多少の酒には酔わない体になっているんだ、酒の味だけを純粋に楽しむ意味でもここは外せないな。


 気を利かせてくれたのか、串カツと日本酒がほぼ同時に届いた。漬物とはいかないが、串カツを齧りながら日本酒を飲む。キリッとしているが芳醇な甘さの立ち上がる酒が良い感じに俺をうなぎ待ちの姿勢へ変化させてくれているような気がする。串カツもしっかりと揚げられていて、かかっている味噌が濃くて非常にいい。日本酒が水であると感じられるような甘い味噌の濃さだ。


 これは味噌が濃すぎてこの後のうなぎの味に問題が出ないだろうか、ちょっと心配である。一般感覚で言えばお高いひつまぶし、インバウンドのおかげで文字通りうなぎのぼりの価格になっているが、俺の財布はこゆるぎもしない。


 胃袋をちょっとだけ満たして酒を呑み、メインディッシュはまだかと待ち続ける。この待ってる間を楽しむのが粋なんだと言われていたが、俺としてはあまり気分に浸れないのが正直なところ。ニュースで紹介されていた『突撃ステーキいちばん』みたいに、入店した瞬間すでに焼かれた状態でテーブルに置かれてくるような素早さのある店のほうが性に合ってる気がしてきた。まあ、注文して待ってる間にお腹空いたから他の店でちょっと食ってくる、なんてこともできないので、じっと待つ。


 しっかりと待ち、再び空腹で腹が鳴り出した頃に到着した特上ひつまぶし。これだよ、これを待ってたんだ。特上を頼んだだけあって、うなぎの量がこんもりとしている。早速まず、うなぎだけをパクリ。濃厚な秘伝の使いまわしのタレを使ってしっかりと焼き上げた甘みと炭火で焼いたうなぎ特有の香り、うま味が口の中に広がる。うむ、待っただけのことはあった。非常に良し。


 早速ご飯と共に食べ始める。うめえ、うめえと言いながら食べたいところだが店内は静か。なので俺も静かに食べて、心の中で叫び続けることにする。まだ旬には早い時期とはいえ、肉厚はしっかりしているので養殖ウナギではあるのだろうが、それでも味に違いはそれほどないだろう。というか俺が食べ比べてどっちがどっちと区別がつくわけでもないので細かいことは気にしないでおく。


 あ、そうだ。食べかけだけど芽生さんに夕飯写真送っておこう。後で怒られるのも込みでのコミュニケーションということでパシャリ。送信。火魔法三重化記念と文章を添えておこう。


 半分ぐらい食べたところでお茶碗にうなぎとご飯を移し、薬味を乗せて出汁をかけてお茶漬け風にして食べる。うむ、ふわっとした身と出汁、そしてうなぎのたれが程よく薄まり口の中で一気に広がる。うむ、美味いな。サクサクっとしたご飯とうなぎの柔らかさ、そして良い感じに調合できた薬味のおかげで満足度がかなり高い。ただでさえ量の多めな特上ひつまぶし、その味わいを最後まで楽しもう。


 と、芽生さんから返信が返ってきた。どうやら向こうはオムライスを作ったらしい。ちゃんと自炊できててヨシ。ついていけばよかった……と文字が付随されている。


 仕方がないので「また今度食べに行こう、中華屋以外で」と返信しておく。


 さて、引き続きひつまぶしを削り落としにかかるか。もう一杯お茶漬けでいただく。お茶漬けだと噛まずに口の中でほどけるように散らばっていくのがいい。噛んだ方が健康に良いのはわかっているが、そのまま歯を使わず舌と上あご部分だけで潰すように噛むのもなかなか楽しい。


 最後は……やはりうな重として楽しもう。茶漬けも良いがやはりそのまま食べるのも美味い。すべて平らげた後、満足して水を飲みながら余韻に浸る。充分に美味さを堪能した後で会計、一万こそ超えなかったもののそこそこのお値段はした。やはり土地代もあるのだろうが、うなぎの値上げや観光客価格で店を出しているんだろうな。


 今日は満腹でいい気持ちで帰れそうだ。何より作らなくていいというのが楽でいい。片付けも店がやってくれるし家に帰ったら……あぁ、残りのカレーは朝食に回すか。揚げないカレーパンというのもたまにはいいだろう。


 満腹でゴキゲンのまま名古屋駅から離れ最寄り駅へ。まだリーンが居るならお土産のパンを買っていくところだが、もうその必要は無くなった。後はどこぞのダンジョンで元気にやってくれているだろう。


 最寄り駅についてそのままコンビニでコーラとお菓子を補充。いつミルコに出会ってもいいようにしておこう。後は……ノートとボールペンの在庫か。何本か買い足しておこう。


 家に着いて片付けと風呂と一通りの家事をこなして明日の準備。明日は何作ろうかな……なんか明日の朝までこのひつまぶしの余韻を残したまま眠ることになりそうだ。久々に贅沢をしたという気がしてきた。また名古屋駅に行ったら新しい店を開拓していくことにしよう。


 風呂に入ってしっかり全身をくまなく洗い、湯にゆったりと浸かる。今日も一杯仕事して、予定になっていた【火魔法】も手に入れた。三重化で何処までの火力が出るかはわからないが、一度六十五層辺りで試運転をするのも悪くないかもしれないな。明日は半日を階層巡りで費やすこともあるし、試しにやってみるのも悪くないか。とすると明日は軽めに摘まめるサンドイッチに緊急変更だな。具材はいつもの物で良いとして、飲み物は……まあコーヒーのペットボトルでも行きにコンビニで買っていくことにするか。


 風呂から上がって後は寝るだけ。あ、寝る前に一応スレッドの確認だけしておくか。特定の階層の特定の部分にだけ出て来るようなバグは……今のところなさそうだな。とりあえず印刷していつでも確認できるようにはしておくか。

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

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― 新着の感想 ―
こないだ名鉄の上で食べたひつまぶし美味しかったなあ。 舞浜と関ヶ原の往復はしんどかったけど。
> 三千万」 端金のおじさん > 「ノー」 > 「ノー」 「イエス… あっ!」 > 壁の花」 自己評価が甘いおじさん > 甘い辛いタレ」 白焼きに叙述トリックを仕込むおじさん > 何という小説…
そういや二回イエスで多重化バレするんだなあ
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