1292:通常運行七十二層
ダンジョンで潮干狩りを
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「さて、そろそろいい時間かな。腹のほうも落ち着いてきたしこっちは七十二層に向かうことにするぞ」
「もうそんな時間かい? じゃあ引き続き僕は監視のほうを続けることにするよ。また帰りにでも何か面白そうな発言を見つけたら聞かせておくれ」
「そうだなあ……まあ面白そうなネタがあるかどうかはわからんが、そんな面白い所に宝箱が設置される可能性もあるということか」
二十一層の祭壇の真下とか、そういうところにも出現する可能性があるのかどうかというのは割と気になる所だ。確かシートをかぶせて足元は見えないように作ってあるはずだが、めくって確認したら二つぐらい隠れてた、なんてことがあると面白いかもな。
「ついでに貰っていってくれ。監視のおつまみは必要だろう? 」
ミルコにお菓子とミントタブレットといつものコーラを渡す。ミルコの顔がヘラッとほころぶ。
「やあ悪いね。イベント中はみんなもお供え物よりも宝箱のほうが大事らしくてちょっと少なかったんだ」
ミルコは頭の後ろを掻きながら申し訳なさそうに受け取ると、嬉しそうにコーラを飲み始めた。早速飲むのか。お供え物が少ないならそんなに一気に飲むとなくなってしまいそうなもんだが。
「ぷはっ、というわけで僕は自室に引きこもるから何か用事があったら呼んでおくれ。じゃあね」
ミルコは転移していった。芽生さんと目を合わせ、両肩をすくめるとこっちも移動準備だ。午後の五時間探索を精々楽しんで金を稼いで帰ろうではないか。
早速七十一層に入ってすぐのサメを処した後、いつものルートで七十二層へ向かう。もう歩き慣れた道、出てくるモンスターの固定リポップの地点と種類なども頭に入っている。ここも早歩きで良ければ短縮することができるのでその分七十二層で活動する時間を増やすことはできる。七十二層のほうがモンスター密度が濃いので十分二十分の差でも金額には結構差が出て来るのは確か。
鼻歌交じりに次の標的を探す芽生さんを横目に、まだ芽生さんほどの広さはないもののしっかりと黄色に見える範囲に居てくれているモンスターを見られると安心する。
「やっぱり索敵の多重化と隠蔽はここでは必須になるんだろうなあ。索敵一枚でギリギリ襲ってくるモンスターが隠蔽が効いていたとしてもその範囲ギリギリから来るってことは、隠蔽がなかったらもっと先から襲ってくるって事になるからな。この先は隠蔽も多重化するべきなのかな」
「だとしたら洋一さんには頑張ってスノーオウルから拾ってきてもらう必要がありますねえ。また拾ったら教えてくださいね」
三十八層に通う理由がもう一つ増えたな。ただ【隠蔽】以外のスキルオーブが出た場合はどうするかな? と悩むところではある。普段使いの魔法が届くならそれで問題はないはずだが、ちょっと悩みどころではある。
「今年いっぱいはスノーオウル狩りにはいかなくても良いぐらいには溜まってるんだよな……かといってギルドに流すのも今更感はあるし、また一か月位をめどにして一回潜ることにするか」
「三十八層もそこそこ人が居る感じなんですかねえ? 私はここにしか来ないのでネットで様子を見るぐらいしか判断する方法がないのですよ」
じゃあ潜ってみるか? と問いかけても、収入が少なくなるので嫌ですと返ってくるのが目に見えている。ここは俺の発言で興味を煽って考えておいてもらおう。
「階層間のところはそこそこの人通りって感じだったな。俺はいつも東西に歩き抜けて真っ直ぐひたすら倒していくからあんまり人とは出会わないが、面識のあるパーティーはもう四十二層までたどり着いてると考えていいよ。しばらく四十五層で苦労したりボスに挑んだりはしてるんじゃないかな。その内知り合い同士で情報交換会でも開いてみるのもいいかもしれないな」
「そうですねえ。上下関係があるわけではないですが、お互いの今どこにいるか情報やどこで苦戦してる情報は知っておいて損はないかもしれませんねえ。場合によってはこっちから助言できるかもしれませんし、有りだとは思いますよ」
たしかに、俺も毎日六十九層に潜っているだけでは交流という意味ではあまりしてないな。ちょっとノートの補充がてら各階層をまた見回ってみることにするか。
そのままちょっとスピードを上げて七十二層の階段へ向かう。階段までたどり着いたところで七十二層の階段を下りてすぐそこにいるグリフォンとサメを順番に倒す。もうここも慣れた。
「今日は稼ぎを重視していこうと思う。いつもより素早く移動していくことが多分可能になっているから、時間効率を意識して数をとにかく倒していこう」
「ふむふむ。何が出るかを祈りながら戦うより実績を積み上げていくってことですね。魔結晶の数だけでもそれなりの稼ぎにはなりますし、自分の鍛錬にもなるしありですね。ただし、消耗の早い洋一さんのほうが先にへばるでしょうから注意しながら進んでくださいね」
いつもの念押しをされたところで足早に七十二層をいつものルートで進んでいく。歩行速度を上げた分だけモンスターと出会う回数は多い。普段なら三十分かかるクレーターの隙間を二十五分ほどで歩いていく。単純に二割増しの戦闘を行っていることになるので普段よりも確かに消耗はするが、六十九層でしっかり鍛えていることもあり、魔力総量も持久力も肉体的な疲れも見せず、三時間分きっちり歩き抜けることが出来た。
途中で俺も身体強化が上がり、更に体が楽になった。後何回ここでレベルアップしていけるだろうか。何回かレベルアップする頃には次の階層が出来上がるのか、というのも考える所だがその分だけ次の階層で楽が出来ると考えたほうが建設的か。
今日もポーションは満足できるだけの本数を獲得できた。流石にこれ以上の効率で回るのは難しい。お互いレベルアップしてスキルもきっちりこなしてグリフォンも一発で落とせるようにならなければまだ難しいだろう。グリフォンは未だに頭部に当ててもスタンさせるところまでしかいっていない。
やはりここを乗り越えるには六重化させるのが一番手っ取り早く、そして確実な道と言えるだろう。その為にはまた【雷魔法】を買い集めて……と、電話だ。一旦進捗を止めて索敵しながら電話に出る。そう言えば昼に調べたあとスマホを保管庫に入れずにそのまま持っていたんだった。戦闘で壊れなくてよかった。
「こちら、安村様の携帯でよろしかったでしょうか」
「はい、そうです」
「こちらは清州ダンジョンです。安村様のオファーされていた【火魔法】のスキルオーブがドロップされまして、出来るだけ近場で高く買ってくれる人をということなので連絡させていただいているのですが」
このタイミングでスキルオーブの取引の話がかかってくるとは思わなかった。下手に電話が通じるとこういうことにもなるのか。スマホを出しっぱなしにしておいたのがこの際……いや、他の人の手に回ることを考えたらよかったことなのかな? まぁいいや、とにかく取引の話に応じよう。
「はい、わかりました、お受けします。今から向かった方がよろしいでしょうか? 今からだと……三時間ほどかかってしまうことになるのですが」
地上に出るまでと査定とバスと電車と……と考えるとそのぐらいになるだろう。
「三時間ほどですか……できるだけ早くというオファーですので少々確認してまいります、少しお待ちください」
芽生さんに目線で先に行こうという意思表示を示すと、急いで帰り始めた。索敵はしっかりしているので意識的にモンスターを倒しながら電話に出るという今までの探索ではありえなかったこのシチュエーションを体験できるのも小西ダンジョン最深層か、これからのダンジョンか、新熊本第二ダンジョンか、高輪ゲートウェイ官民総合利用ダンジョンか……というぐらいのレアケースだな。
「確認してまいりました。今日中に受け渡しができるのなら問題はないとの事です」
「では、三時間後に清州ダンジョンへ向かいます。遅れる、もしくは早まる際はまた連絡を入れなおしますのでよろしくお願いします」
「はい、お待ち申し上げております。お越しの際は七十八番会議室をお使いになるということでお願いいたします」
「了解しました、では急ぎますので失礼します」
電話を切り、七十八番とメモ帳に書き記すと、芽生さんに状況を伝えて早歩きで帰ろうと提案。遅く帰る理由もないのでいいですよ、と素直に返事をもらう。
「しかし、ダンジョンに潜っててもスキルオーブの取引が出来るのはここのいい所ですね」
「全くだ、おかげで探索も買い取りも進む。やはり全ダンジョン通信可能になってくれると嬉しい所だな」
早歩きで七十一層を突破し、七十層にたどり着くと車を取り出して乗って急ぎ気味に運転。多少荒っぽいがこの際時間のほうが大切だ。リヤカーの横に停めると車を収納して、今度はリヤカーを持って階段へ。倍速で一層を押す。そしていつも通り魔結晶とポーションと大量のフカヒレを積み上げておく。
「今日の帰り分の茂君はなしだ。流石に取引相手を待たせるのもまずいし、一本早いバスに乗れればより早く到着できる。お互い待つ時間は短いほうがいいはずだからな」
「それには賛成ですね。洋一さんも早くスキルを覚えたいでしょうし、今日中に取引が終わって今日中に帰れれば明日もいつも通りの生活が出来ます。明日もダンジョンに通うかどうかはわかりませんが」
「明日は……試運転がてら軽く潜ることにするかな。他の階層でどのぐらいみんなの進捗が進んでいるのかを見つつエレベーターで一つずつ潜りながら確認することにするよ……とそういえば事後報告になっちゃうけど、七層のテント撤去したよ」
「ついに七層も卒業ですか。十四層も二十一層もテントはありませんし、だんだん上の階層から離れていきますね」
それだけの強さになったということだろう。まあいつまでもテントを置きっぱなしというのも悪い気はするからな。三十五層以降は到達の証として残してあるが、目印としてそれなりの活躍はしてくれるものだと考えている。特に四十九層以降は顕著になる可能性が高い。
「あ、午後の分のミルコへの報告するの忘れてたな。明日やるか」
「そういえばバタバタしてスレッドを見る暇もなかったですね。流石にエレベーターの中では……あぁ、ダメですね圏外です」
芽生さんがスマホを見て、確認を取れるかどうか試したけどもう遅かったらしい。まあ間に合わないことなんてよくあること。明日ちゃんとダンジョンに来て、バグがあったらバグを報告して不具合や感想なんかを伝えることで済ませよう。
一層に到着してリヤカーを引き退ダン手続きからの査定。今日もフカヒレが大量なので査定には少しばかり時間がかかるのは承知の上なので、その間に芽生さんに着替えてもらってくる。
芽生さんが着替え終わって戻ってくるタイミングでちょうど査定完了。今日のお賃金二億七千七百四十七万八千二百八十円を手に入れる。効率重視にした分だけ金額が上がった、と考えられるな。
支払いカウンターで振り込みを行うと、バスの時間を確認。五分ぐらいなら余裕があるのでいつものぬるま湯をもらって一息つき、その後でバス停に並ぶ。
「私も早帰りってところですね。帰ったらお夕飯何にしましょうねえ」
「俺は名古屋駅で適当に何か見繕うか。また菓子パンでも買って食いながら移動でも良いし、効率的に動きたいところだ」
バスが来て乗り込み、予定よりも少し早く到着できそうな気がしてきた。後は駅で名古屋駅まで行って路線を変えて清州、かな。
芽生さんとはそれ以上言葉を交わさず、駅で乗り換えても途中までは同じ路線なので引き続き一緒に乗って帰る。芽生さんが降りる駅になって手を振ってバイバイして、そのまま名古屋駅まで一直線に向かう。
この様子だと三十分ほど予定より早く到着できるかな。念のために連絡しておいたほうがいいだろうか。清州ダンジョンに連絡をする……と、電車の中でこっちからかけるのはマナー違反か。乗り換えの時間を使って連絡することにしよう。
予定通り数分の余裕があったので、その間に清州ダンジョンへ連絡を入れる。向こうからはお礼を言われた。どうやら待ちくたびれて休憩室で仮眠をとってしまっているらしい。到着次第そっと起こしてもらうことにしよう。
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