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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第二十七章:閑話休題

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1291:二人はいつも通り

「まあ十日間もあるし焦って直すところは根本的な不具合だけにして、周りの反応を見てからその辺は考えても悪くはないだろうな」

「そうすることにするよ。とりあえずバグ報告ご苦労様。その件以外にも何かあったらまた教えておくれよ。その都度早めに対応するからさ」

「精々お昼の時間にもう一回スレッド見て不具合が起きてる階層や状態、取りたくても取れない宝箱がある、とかそういうのを報告しておくのが関の山ですかねえ」


 ふむ、そういう意味でも便利だな七十層。飯後の休憩にちょうど眺めてバグ報告を見る、というのも悪くないな。


「そんなところだ。用事があるなら……二時間半後ってところだな。それまでは自前でデバッグ頑張ってくれ。ついでに感想も言づけられるようにしておく」

「期待してるよ。じゃあね」


 ミルコが転移していきしばらくしたところで七十層に到着した。いつも通りリヤカーをエレベーター脇に置いて車を取り出し乗り込んで七十一層側の階段へブロロロっと走って到着。うむ、やっぱり歩かなくていいのは楽だな。


 数分で到着。車を降りて収納すると芽生さんと目を合わせて、さあ行きますかと合図。七十一層の階段を下りてすぐに居るサメを一発雷龍で撃破。フカヒレも魔結晶も落ちてきたのでサッと収納。ここからが午前の部始まりだ。


「さあ、今日も気張って稼いで行くか。ちょっと早歩き気味で行こう。昨日は午前中に二本ポーションを手に入れられて非常に良い発進だった。今日もそのつもりで頑張ればお昼のカレーが美味しく食べられるかもしれない」

「それは良いことを聞きましたねえ。今日も頑張っていきましょう、七十一層の密度なら午前中に二本は確実に取れるでしょうからその上で何かもう一つ……なんでもいいですから確保できると良いですね」


 何か一つを謎のポーションとしておくのは難しいから良いとして、狩りの効率を高めていくことに異議はない。芽生さんもやる気だし、怪我しない範囲、無理しない範囲でペースを上げていくことにするか。


 午前中一時間ほどまずペースを確認しながら探索し、その後の一時間はハイペースで回る。その間に芽生さんの身体強化も上がったようで、更に動きに磨きがかかったように見える。


「さすがにここまで身体強化が上がると目に見えて変化ってのはないですねえ。体感ではちょっと動きにキレが増したのはわかるんですが」

「まあ、そうだな。この階層であと何段階上げられるかは解らないができるだけ上げて次の階層で楽に進みたいところだ」

「その為にもグリフォン討伐頑張らないとですね。あのポーションらしき物体がどんな効果を表してくれるかは解りませんが、深い階層で出るだけの価値があるはずですから……でもどんな効果なんでしょうね。手足を生やすぐらいならヒールポーションのランク5で済むはずですし、キュアポーションのランク5でも大概の神経症やなにやらは治るはずですよね。それ以上ってことは死者蘇生でもしてしまうんでしょうかねえ」


 ランク5以上の性能か。手足が生えてくる以外に神経も復元することはできるだろうから、それ以上の物……うーん、ちょっと思いつかないな。本当に死者蘇生でもしてしまいそうな感じはするが、そこまで行くには階層が浅すぎる気がする。もっともっと深いところで出て来るような代物じゃないかな。


「死んだラットが生きかえったらそうなるだろうが、流石にそこまでの物を用意できるとは思えないかな。とりあえず俺達としては金になればそれでいいんじゃないか? 」

「確かに、そうです、ねっと」


 グリフォンを倒しながら芽生さんが返事を返してくる。戦闘しながら会話ができるだけの余裕も生まれてきたってことだろう。まだまだ慣れきるというまでにはなっていないが、余裕が出てきたのは成長の証拠。この調子で午前中をササっと終わらせよう。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 午前中の戦闘が終わり、ポーションもきっちり二本手に入れてきた。いつもの空中待機のサメをポロッと雷龍で落とすと階段を上って七十層に上がる。さあ昼食の時間だ。そこそこの煮込み時間で少し味染みが足りないかもしれないが、それでもちゃんとレシピ通りには出来ているカレーを取り出し、二人分用意する。


「では、早速いただきます。……なんか、いつもより美味しいですね」

「マジか。どれ……」


 芽生さんがいつものより美味しいとの評価を下したカレーを食べてみる。確かに、今までよりも素材の味がカレーに溶け込んでいない分だけ素材の味がする。そういう意味では美味しいのかもしれない。今までは煮込み過ぎていただけなのか。二日目カレーを常に目指していた俺としてはこれは新しい発見だ。


 今後はほどほどの煮込みでとろみがついた辺りで火から上げてしまうことにしよう。カレーは時間をかけて煮込めば何でもおいしいという論理からは今後は頭を離していくことにする。


 人参の甘さとジャガイモのホクホクさが口の中に食感として残り、カレーの風味が後から追いかけて来る。カレーのルゥはまあ日によって違うとしてもちゃんと素材を無駄にしないという意味ではこちらの方が料理としてちゃんとしたものだったかもしれないな。


「うむ……カレーの道は奥深いな」

「感心しているところ悪いですがお代わりです。今日はちょっと多めに胃袋に入れたい食事です」

「半分ぐらいで良いかな」


 芽生さんが珍しくお代わりをする。かなりお気に入りだったらしい。次回のカレーはもっと美味しく出来そうな気がしてきた。俺もお代わりをして炊飯器の中を空っぽにしてしまう。少し残ったカレーは夕食行きだな。


 ご飯を食べ終わり、二人で小西ダンジョンスレを覗く。今のところ好意的な意見のほうが多いが、今後はどうなるかは解らない。イベント期間中に他のダンジョンから流入してくる探索者が出てくるはずだ。それらが押し寄せた時にダンジョンのキャパをオーバーする可能性が考えられる。


 何より、小西ダンジョンは狭い。人数をそれほど詰め込んでモンスターや宝箱のリポップに支障が出る可能性は高い。それまでは何とかなるだろうが、その後はどうなるかわからない、というのは俺もスレ民も共通の意見である。


 バグ報告は……今のところはないようだ。初日の壁に埋め込まれている話は既にミルコが解除していたしな、と眺めていると、建物の屋根の上に出来ていて取り辛い宝箱があったとの報告がある。これはバグとは言えないが、仕様に入る方向性だろうな。ゲーム的に考えれば充分にあり得る話ではある。屋根の上やベランダの隙間に置いてある宝箱なんかはよくある。


 後は建物の影やテーブルの下など、いろんな場所に隠し宝箱的な意味で配置されているが、発見や取得難易度と中身はどうやら比例しないらしい。ただ完全にランダムってわけでもなく、階層ごとにその階層の難易度に見合った報酬が用意されている、というのは確か。二十一層と三十層では出て来る宝箱の中身が違うのは間違いない。


「なあミルコ、スキルオーブって出ないのか? 」


 聞いている前提で虚空に向けて呼びかけてみる。


「スキルオーブはねえ……あれはあれで生成に手間がかかるんだよ。君らにはホイホイ渡してるように見えるけどね」


 やはり聞いていたのか、転移してきた。ミルコとしてはこちらが調べた内容について興味があるらしく、スマホの画面をのぞき込んではしかめっ面をしている。


「君らはよくこんな複雑な記号を文字として認識できるね? そんなに複雑では、言語の統一なんて夢のまた夢というところかな」

「案外、ミルコたちが使っている言葉で統一した方が早かったりする未来もあるのかもしれないな。そうすればどこの国や地域も角が立たない」

「洋一さん、エスペラント語が流行らなかったことを考えたら結局同じことだと思いますよ」


 芽生さんが水を差す。確かに言われてみればそうだな。結局言葉や文字というものは地域性や国の団結感を表すのにちょうどいい一つの形態でもあるのか。そう言われてみるとなるほど、日本語を話せる外国人にちょっとした好意を抱く、というように言葉や文字のつながりは大事だと感じとれるな。


「まあ、それはそれとして、反応はどうなんだい? うまくいってるかい? 」

「そうだなあ、喜ばしいという話のほうが多いな。普段と違うことをやると楽しいのは間違いない。それも戦わなくても金が手に入るなら、多少効率が落ちても初日二日目ぐらいは宝探しに夢中ってところだろう。多分後三日もすればいつも通り探索を始めるだろうが、その頃にはイベントを聞きつけて他のダンジョンで潜ってる探索者が小西ダンジョンに潜りに来て宝探しをするだろうから、イベント中はそれなりに忙しいと思うぞ」

「なるほどね……後は一品物の装備を出すかどうかのチェックだけど、これについては安村は反対の立場だったかな? 」


 ミルコがこちらを見る。ふと目が合い、いい顔に負けて俺が視線を逸らす。


「消極的反対ってところだな。鑑定のスキルがレアスキルじゃなくてもっとありふれたものであったなら充分に一品物が活躍してくれるところではあるだろうけど、今のところは国内に一人って事になってるし、その人を使い倒して鑑定業務をし続けてくれ、というのは無理を言い過ぎだろうって、ネアレスにも答えたがその時から話は進んでないから変わらずってところだ」

「なるほど……真中達の手元でコントロールできる鑑定スキルがあればその限りじゃない、と言うところなのかな? 」

「ダンジョン庁としてはそうだろうし、俺達探索者としてもよく解らない効果のついた装備に命を託して探索できるほど気楽じゃないからな。ダンジョンから出たんだから性能は良いんだろうと思わせて実は微妙な装備だったり、その逆もあり得る。それらを明確にするためにもドロップ品やトレジャーアイテムを確実に鑑定できて安全さを担保できるシステムづくりが必要という所かな」


 ミルコはふーむ……と顎に手を当てて考える。その姿も絵になるのでなんかちょっとくやしい。


「安村の伝手と力なら、鑑定をダンジョン庁の特定の人物に対して渡してそれで運用、ということはできるよね? 」


 ちょっと前向きな意見が出てきた。どうやらダンジョン庁内に鑑定持ちを持たせてその上で物品の鑑定を行わせるなら一品物の装備をいくらか宝箱から出してもいいようにできるのではないか、ということだろうか。


「出来るだろうな。そして今後出来上がるであろうトレジャーダンジョンの仕組みに関しても、同様に鑑定担当者が鑑定することでそれぞれの装備品の性能がハッキリ示せるようになることで、一発あてるために潜り込む探索者も増えるだろうな」

「なるほどね……やっぱりこの問題は僕一人ではちょっと手に余るか。今動けるダンジョンマスター六人だけで決めて出す、というわけにもいかないから今見ている皆全員に向けて話しかけるように言うけど、こういう場合って特例で渡しても良いものなのかな? 僕宛てにメッセージを送ってくれると嬉しい」


 ミルコが俺を見つつ、俺じゃない人に向かって話しかける。まるで俺の肩の後ろに何十人もの人が居るかのように、だ。幽霊でもついてんのかな? と後ろを振り返ってみるが、美しい星空しか目に映らない。


「どうやら俺の目を通じてそれなりの人がそっちを見ている、という認識でいいのかこれは」

「そうなるね。正確に何人ということは計測できないんだけど、少なくともさっきまで美味しそうに食べてたカレーを自分も食べたいと思ったり、そのスマホの内容のやり取りから自前で言語解読しようと息巻いているダンジョンマスターもいる。見えてる世界は他の誰かと共有している、と考えておいてくれていいと思うよ」

「ふむ、これではダンジョン内では愛しの芽生さんを凝視することも叶わないということか」

「別に私は洋一さんにみられてるならそれでいいんですけどねえ」

「はいはいご馳走様。とりあえず不具合はない、一品物を出すなら鑑定も複数個出せ、イベント自体は好評。そういうことでいいかな」


 ミルコは若干呆れながらもこっちの情報を丁寧に咀嚼したようで、彼なりに結論を出してはいた。どうやら【鑑定】に関しては向こうにも色々と出現させるのに問題はあるらしい。


 たしかに彼らとしてはテレビのチャンネルが一つ増えるかどうかという話であり、その上今回の話はそのテレビのチャンネルが確実に増えないであろう所の話になり、で周波数帯を開けておくことに意味はあるのか? というところだろう。別に出現させる数に上限があるという話なら話は別だが、無かったことにしようで誰かに放り投げるぐらいはできるんじゃないだろうか。


 念のため、真中長官にメールを送っておく。


「【鑑定】が手に入った場合の人材のあてを作っておいてください。もしかするかもしれません」

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

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― 新着の感想 ―
鑑定できるアイテムをと思ったが、その鑑定結果をどう出力するんだ? 異世界言語で鑑定結果が出ても読めないわけだし 新たなポーション、虹色なんだっけ? 回復できて病気も治る複合ポーション、つまりエリクサ…
鑑定人が病気になったり老衰で亡くなったりしたら業務が止まらないだろうか…。
緊急のダンマス決議の行方はどうなりますかねえ
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