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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第二十七章:閑話休題

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1284:試験運転

 昨日は風呂を出た後しっかりと体を乾かし、もう一度自分の身体と洗濯物にウォッシュをかけて、体を充分に休めてから寝た。そうしないとニンニク臭が布団に移ってしまってクリティカルなエラーを起こしてしまうかもしれないと思ったからだ。そして、今朝目覚めて頭の後ろを掻いて匂いを嗅ぐ。


 よし、ニンニク臭出てない! 昨日のケアは完璧だった。ここに匂いが発生してないということは、枕や布団への移り香もなかったと考えられる。念のため枕カバーとシーツを取り換えて新しいものにして、パジャマと一緒に洗濯。出かける前に室内干ししてから出かけることにしよう。


 いつもの朝食を作って食べ、ジャムがようやく一瓶空になった。まだジャムは三瓶残っている。出来るだけ計画的に消費していこう。


 今日の昼食は……軽いものが良いな。生姜焼きのサンドイッチ、これでいこう。今日の肉は……ボアだな。昨日とれたてかどうかはわからないが保管庫から適当につかみだしたボア肉を薄切りにして味付けタレに漬けて、保管庫で数秒。二百倍速にされたボア肉にはしっかりと味が染みており、そのまま焼くだけで手軽に生姜焼きが出来る。やはり市販の生姜焼きのたれの実力はかなりのものだ。これからもお世話になります。


 焼きながらいつものツナ缶とマヨネーズで一品手早く作ると、ツナ缶の油は俺が直接飲んでしまう。魚の油は体にいいからな。コレステロールも改善するらしいし、昨日あれだけ脂脂しているものを食べたんだから翌日には改善するようなものを摂ってしまうのは大事だろう。


 後はサラダを適当にちぎってもう一品。そして焼きあがったボア肉の生姜焼きを挟んで合計三品。もう一品何か欲しいところだが……卵か。茹で卵を作ると完熟にしてほぐし、マヨネーズと合わせて合計四品。余ったら夕食にでも食べることにしよう。


 昨日洗濯したワイシャツの匂いをそっと嗅ぐ。どうやら匂いは残っていない……はずだが、俺の匂いが染みついていた場合判断はできない。やはり他人チェックが必要だろうともう一回ウォッシュ。そして洗濯物を入れ替えてさっき洗ったシーツとパジャマをウォッシュして、黒い粒子が立ち上ることを確認。やはり、匂いが染みついてはいたのか。でもこれで綺麗になったはずだ。後は部屋干しして自然乾燥に任せよう。匂いの件はこれで解決したはずだ。後腐れなく探索に出かけられるぞ。


 柄、ヨシ!

 圧切、ヨシ!

 ヘルメット、ヨシ!

 スーツ、ヨシ!

 安全靴、ヨシ!

 手袋、ヨシ!

 籠手、ヨシ!

 飯の準備、ヨシ!

 嗜好品、ヨシ!

 車、ヨシ!

 レーキ、ヨシ!

 保管庫の中身……ヨシ!

 その他いろいろ、ヨシ!


 指さし確認は大事である。さあ今日も三億目指して探索をしよう。今日も何事もなく探索が出来ればそれで充分。後はフカヒレを順番に出荷しつつ、毎日を過ごしていければ今のところは良いかな。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 いつもより一本早いバスでダンジョンに到着。サンドイッチの日は色々と手間が省けるから料理する時間も短くなるのでその分早く出れるのだ。この三十分でどれだけ稼げるか。ポーション一本でれば充分美味しさはある。


 いつも通り入ダン手続きをしてからのリヤカーを引いて七層。茂君は今日も良い茂りっぷりで俺を出迎えてくれた。毎日ありがとうな。お前の活躍はちゃんと現金として俺の懐に帰ってきてくれているぞ。


 七層に戻り、リヤカーを忘れずエレベーターに入れて七十層への倍速ボタンをポチ。流石に七十層近辺の魔結晶なら倍速でも問題なく七十層までたどり着くことができる。むしろ余ってしまうぐらいだ。この余ったエネルギーというのは何処かに排出されるのか、それともエレベーターの生成電力として再利用されているのか、ちょっと気になる所だ。


 エレベーターの中でさて、今日もクロスワードでもするか……と思って保管庫に手を突っ込もうとしたところでミルコが転移してきた。


「やあ安村。今日も日課ご苦労様」

「珍しいな、そっちから出てくるのは。何か用事が出来たのか? 」


 ミルコはおやつをねだるほど食料に困っているはずはないので、本当に何か用事があるのだろう。そうでなければ他の元ダンジョンマスター達に乞われて出てくる場面はあるが、それ以外では基本的に放置プレイか、こっちの盗み見をしているか、あたりだろう。


「実はね、ネアレスやセノからお願いをされたんだけれど、例のトレジャーダンジョンという奴のことなんだ」

「ほう、ということはめどがついたので実地試験の会場を貸してくれないか、とでも言われたのか」

「察しが良くて助かるね。それで、安村としてはいきなりそんなものが登場して混乱しないか? と思ってね。念のため相談しておいたほうがいい話だと思ったんだ」


 ふむ……確かに突然宝箱が現れて宝箱を開けたらミミックだった、なんてことで探索者が怪我をするのは見過ごせないし、最悪のパターンはせっかく宝箱を用意したのに狩りのほうに夢中で宝箱を探すというイベントに参加しない可能性だってある。ある程度周知してから行う必要があるだろうな。


「そういうことならギルドに連絡して、何日から何日までダンジョンマスター主催のイベントがあります、内容はダンジョントレジャーを探せということで、宝箱が出現することがあります。中身は何が入っているかは解らないけど注意しながら頑張って探してね、という感じで注意喚起をしておけばいいってことかな」

「そうしてくれると助かる、というのが本音だね。せっかく用意したのに受け取り手が居ないのでは面白くないからね」

「なら、七十層に下りたらすぐに連絡を入れるべきだな。少なくともギルマスには通達しておけば、そこからギルド全体と少なくとも今日明日出入りする探索者には話を伝えることができる」


 ふむ、早く着いた分だけの時間は事務作業で消費することになりそうだな。いや、その分早めに来てよかったと考えておくほうが前向きだな。何事も前向きに行こう、前向きに。


 七十層に到着すると、早速ギルマスのレインに連絡。「今仕事中ですか? 」と。返事が来るまで少し暇になったのでコーヒーを飲んでゆっくりするとしようかな。


 しばらくして返事が来る。「今朝の仕事が一片付けし終わったところだけど何か用? 」よし、つまり暇ってことだな。今のうちに通話をつなげて事の仔細を話してしまうことにしよう。


 電話に切り替えてギルマスと直接話し、これこれこういう理由でトレジャーイベントが発生しますよと通告しておく。


「ふむ……それはいつから始まっていつ頃終わるのか決まっているのかな? 」

「出来れば早く実験したいでしょうから、明日から突然始まるとかどうですかね。それについてダンジョンマスターから通達があったのでギルドに直接報告した、という形にしたいです」

「わざわざ安村さんの名前を出す必要はないけど、ダンジョンマスターからそういう話があった、という形で通達を出すことはできる。後はどういう形で宝箱が設置されて、その宝箱がどうやって消えていくのか、中身は何が出てくるか。そのあたりは管理者としては知っておきたいところかな」


 ふむ。そのあたりはミルコに確認を取っておく必要があるな。


「じゃあ、僕が喋るからその通りに伝えてくれるかな」

「解った。とりあえず宝箱の仕様から頼む。持ち運べるのかとか開けたらどうなるのかとか」


 宝箱を持ち運べるのなら宝箱のまま持ち歩いて地上でみんなでオープンするイベントなんかも開催されるかもしれないからな。そういう配信で楽しみが増える可能性もある。それに配信じゃなくても録画で撮影して宝箱探しの録画をアップロードすればいい。やり口と話題性はそれなりにもてるな。


「まず、明日から十日間試しに宝箱を出現させる。階層はそうだねえ……混んでる二十一層から三十二層の間ぐらいにしようかな。そのほうが探す方も楽しいだろうしセーフエリアもいくつか挟むことになるけど、今回はセーフエリアでも出ることにしよう。あくまで試験だしね。ちゃんと宝箱が出現して、中身を取ったら消えるかどうかのバグチェックも込みだ。それから、宝箱は基本的に持ち上げられないようにしておく。そのまま宝箱ごとダンジョンから出て中身がわからないまま商売を始めるようなことが出来ないようにする。いわゆる固定オブジェクト化してあるってことだね。そして、宝箱は中身を取ったら自然に黒い粒子になって消えることになる。宝箱の中身は、一応出現した階層で言うところのちょっといいものを選択できるようにした。過剰に高い品物を用意すると、探索より宝探しが優先になってしまってこっちの本来の目的であるモンスター退治による魔素の搬出がおろそかになってしまう。どっちも適切に楽しんでくれるとありがたいってところかな」


 珍しく長文でまくしたてるミルコの説明をそのままギルマスに翻訳して伝える。やはり、翻訳魔法みたいなものが欲しくなるな。通信が繋がるおかげでロスタイムなく意思疎通ができるものの、やはり便利になるとそれより先の贅沢が欲しくなるのは人の欲には際限がない、と言ったところだろうか。


「なるほど、解ったよ。ではその予定が明日から十日間ある、ということで通達を出しておく事にしよう。帰りの時間までには要綱をまとめて探索者に伝えて行けるよう、受付嬢には言い含ませておく。ポップも作ったほうがいいかな? 要綱を紙にまとめて印刷して、いくらでも渡せるようにはすることにするかな。そのほうが余計な手間は省けるしローコストだろう」


 ギルマスも頭をフル回転させてどうすれば一番わかりやすく伝えられるだろうか、ということに考えを持たせているらしい。


「宝箱の出現頻度はどのくらいになるのかな。流石に一時間に一個二個、というわけではないんだろうから、目安みたいなものが有ると嬉しいな」


 出現頻度か。流石にモンスターと同じだけ発生させる、ということもないだろうし、なんだかんだマップは広いのでどのぐらいの密度で出現させるのか、という辺りは気になるらしい。


「そこは探してみてのお楽しみかな。せっかく廃墟マップを探索するんだから細かい作り込みなんかをこの際是非堪能してほしいところだね。ちなみに宝箱の形は統一させてもらうから、後で安村から画像を送らせてもらうようにするよ」

「そちらの言い分はよくわかりました。では、こちらもそのように手配しようと思います」


 ギルマスは色々と諦め、算段を立てはじめたらしい。さて、俺の仕事は宝箱の画像を撮ってギルマスに送信して、こんな感じのものができ始めます、というのを撮影するだけで良いわけか。


「じゃ、色々と手配があるから一旦切るね。画像のほうはレインで送ってくれると助かるよ」

「わかりました。もし何かあったら残業するなりで居残り仕事を楽しんでいてください。俺はいつもの時間に帰る予定なので」

「宝箱の画像のほうは早めに欲しい所だからさっそくよろしくね」


 じゃあ、とレイン通話が切れた。さて、俺は俺の仕事を終わらせるか。


「で、宝箱ってのはすぐにぽいっと出せるもんなのか? 」

「ちょっとまってね……ほい、でたよ」


 ミルコがコンソールをカタカタッといじるらしい動作をすると、その後に目の前に宝箱、うん、これは誰が見ても宝箱だな、という宝箱が現れた。木製で、ちょっとボロボロっぽくて、豪華ではないけど何やらお得感が存在する宝箱。


「良い雰囲気だしてるな」

「下手に豪華な宝箱を用意するとコストがかかるからね。それに大事なのは中身だからね」

「どれ、まず表面を一枚……できるだけ背景が映らないようにしないといけないな。この画像を使うんだから下手に月面が映り込んだりしているとまずい」

「結構気を使うね。まあ、こちらとしてもその方がありがたくはあるかな」


 写真を一枚撮る。そして、宝箱を開けると……謎のポーションが入っていた。ここからは動画のほうがいいかな。


「この謎のポーションがここの階層で言うちょっといい素材ってことになるのかな」

「そうなるね。階層に対してちょっといいもの、となるとここの階層で出るポーション、キュアポーションのランク5だと君らは呼んでいたかな? それか、グリフォンから出るこのポーションということになる。さあ録画しながら手に取ってみると良い」


 ミルコの言うとおりに録画モードのまま宝箱からポーションを取ると、宝箱は黒い粒子になって消えていった。手には謎のポーションが一つ残った。これはそのまま頂いていい奴かな。そっと保管庫に忍ばせて録画を止める。


「まあ、イベント開催手伝いの手間賃ってところかな。そういう意味では悪くない収入だとは思うけど」

「そういうことにしておくよ」


 手間賃にしてはかなり高額の報酬をもらってしまったが、これで謎のポーションが三本揃った。これで鑑定、解析に回す分の確保が出来たということになるだろう。後でギルマスに用事が出来たな。

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

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― 新着の感想 ―
おー、トレジャー周りのテストを小西でやってくれるとは 安村さんのメインの探索階層ではないですがこういう催しは日常へのちょっとした刺激にいいですねー
> 頭の後ろを掻いて匂いを嗅ぐ」 頭の後ろの匂いを嗅ぐ(空目) 妖怪か > ニンニク臭出てない!」 臭い消しの薬を飲みそうな勢いのおじさん > まだジャムは三瓶残っている」 せんべつにくれればよか…
宝箱始動w ボーナスウイークですなw だいぶ前にやったダンジョン風邪(モンスター出現率アップ)はもうやらないのかな? ちゃっかり懐にw
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