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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第二十七章:閑話休題

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1276:結局また会いに来るネアレス

 午前中の鍛錬および金稼ぎを終わり、適度に腹が減り始めたところで七十層に戻る。この月面セーフエリアにもいずれは人の手が入ることになるんだろう。そうなった場合、七十層と七十一層の間か、この六十九層の階段の付近か、もしくは七十一層階段の付近にテントを立てることになるんだろうか。


 テントを立てる必要性というのは、実はエレベーターが出来てからはほとんど意味をなさなくなった。営業時間が延びた小西ダンジョンにとってはなおさら重要性は薄まった。しいて言うなら昼飯をどこで食べるのかぐらいの話である。夜間狩り……つまり、ダンジョンが閉場中の間に探索をするのかどうか、という点においてはさらに影響してくるのかな、という感じである。


 逆にこれから更に営業規模を大きくするために二十四時間営業を始める、となった場合はまた必要になってくるだろう。いつ帰っても良いしいつ来てもいい。そうなったらダンジョン内部での時間なんてそんなに気にする必要はないからだ。好きな時に探索して好きな時に寝て好きな時に帰れる。


 バスと電車のダイヤの都合上深夜に帰るというのは非常に難しくはなっているが、そういう生活を繰り返すようなパーティーの場合はやはり自分の居場所の確保としてテントを立てたままここに生活圏があるよ、という自己主張は大事になってくるんだろう。


 しかし俺の場合は少し事情が異なり、既に踏破してきていますよ。この辺に何か重要なものが有りますよ、という目印にも使っている。それがエレベーターだったり階段だったりノートだったりするわけで、その目印として置いてあるのを後発組である高橋さん達や結衣さん達が解ってくれているからこそ意味はある。


 ここも、階段のそばでエレベーターのそばでノートのそば、という目印をつけてあるからこそ、その価値を十二分に発揮してくれている訳だ。そうなると、四十二層や三十五層のテントはそろそろ撤去してもいい感じになるかもしれないな。後発組がテントを立てられるスペースがない、と苦情を申し付けて来る前にそれらをやっておくべきかどうかちょっと悩むところではあるが……まあ、その時が来たら、だな。


 さて、昼食を食べよう。机と椅子を出して……まずミルコに差し入れするか。コーラとミントタブレット、それとお菓子を供えるとパンパン。お菓子がシュッと消える。


 続いて食事の時間だ。炊飯器と鍋を取り出して一人分器に盛ると、早速頂きます。さて、どんな味に仕上がっているやら……


 うむ、フカヒレが良い感じに汁気を吸ってくれているおかげで具だけをサクサクと食べることが出来ている。汁物ではなく煮物なので、良い感じに仕上がってくれている風を装っている。


 里芋もほくほくだし大根もちゃんと味を吸っている。むしろ大根とフカヒレが汁を取り合ってお互いに器の中で喧嘩をしたかのように汁気が無くなっている。これはこれで後の洗い物が楽になっていてとてもよい。人参も硬くなく、ゴボウはゴボウしている。


 今日はとりあえず成功、とみていいだろうな。しいて言えばもうちょっとうま味があっても良かったか。でもベースにした出汁にうま味はしっかりと加えてあるはずだから、フカヒレのほうにはしっかり吸い込まれていたりするのだろうか。どれ、細かくしてプルプルになっているフカヒレを一つ摘まんで……うむ、フカヒレがコリコリと良い食感と吸い切った汁の何とも言えないハーモニーを出してくれている。やはり汁気のあるものに放り込むと、その汁気をしっかり吸って美味しくなってくれるようだ。


 しかもこのフカヒレは現実のフカヒレとおなじならば、たんぱく質の暴力で出来ている、下手なプロテインよりもたんぱく質含有量が多い。俺は今お肌もつやつやになって新鮮なオッサンになっているかもしれないな。そろそろお肌に色艶がなくなってくるお年頃だし、このタイミングで補給物資として体に取り込んでやるのは良いかもしれないな。


 味しみゆで卵を口の中で半分に割り、しっかりと咀嚼する。これもちゃんと味が染み込んでいてよし。でも、卵は一個で良かったかもしれないな。


 しっかり味わって食べていると突然ネアレスが転移してきた。この間感動的な別れをしたのに結局会いに来るんだからあの時の雰囲気はもうぶち壊しである。


「ご無沙汰しています。今日のご飯も美味しそうですね」

「ちょっとなら食べてもいいよ。一人分で作ってきたからそんなに余裕はないんだ」

「じゃあ、その卵をおひとつ……美味しいですね。料理上手の男性は中々そそるものがあります」


 何やら妙なロックオンをされているような気がするが、それよりもダンジョンの進捗のほうがどうなのか、というほうを気にしてほしい。用事は食事ではなくてもっとちゃんとあるはずだ。ミルコでもそこまで遠慮なしについてくることはしないぞ。


「で、今日はどんな用事なんだ? さすがに料理がおいしそうだから来た、というわけじゃないんだろ? 」

「そうですね、トレジャーダンジョンについて考えているんですが、どこまでのものをトレジャーとして出していいものか、つまり報酬としていくらぐらいまでを想像してお渡しするのが良いのかな、というバランス調整の話になると思います」


 なるほど、一層にヒールポーションのランク5とか出ても困るからな。その辺のバランス感覚をどうするか、の問題か。これは一口に甘やかせすぎても困るし、渋すぎてもダンジョンに魅力がないということになるのでなかなか難しい所だろうな。


「うーん、基本的にはその階層で拾えるアイテムか、もう一つ上の階層で手に入るもの、辺りで良いんじゃないかな。魔結晶がそのままドロップするでも良いけど、やはりポーションが落ちるのが一番わかりやすいかな。モンスタードロップがそのまま入っているってなると、現実感がなくてトレジャーっぽさはちょっと薄れてしまうんじゃないかと思うよ。モンスタードロップ以外のものだとすると魔結晶とポーションぐらいが探索者の頭に浮かぶところだと思うし」

「そこは新しいドロップ品を追加して対応しちゃったりしても良い感じなんですかね? 前に言ってた一品物を出すとか」


 ネアレスなりに考えてはいるらしい。ただ、一品物はその性能を見通すために鑑定する必要があるからな。いざドロップして使い方が解らずに使ってみて暴発、なんて可能性もはらんでいる以上、迂闊に鑑定せずに装備品を使わせることは難しいだろうな。


「そこは前も言ったけど、鑑定スキル持ちが職業として成り立つぐらいにばらまけるかどうか、という部分にかかってくると思うんだ。その辺は真中長官とも話し合う必要が出て来るとは思うんだけど」


 正直、国に一人の鑑定所持者でも負荷はかなり大きいものになる。しかもその肝心の一人は最深部へ向かって探索をしていく探索者であり、鑑定作業だけに時間を費やすことはできない。俺ですら頼みごとをするのもためらっているような状況だから南城さんだけに任せられる話ではないだろう。時間交代があるにしても、専門の解析部署みたいなものを立ち上げる必要があるだろうし、オンラインで品物を見せて鑑定していく、という流れを作るのが大事だろう。


「なるほど……そういう理由なら納得です。ダンジョンマスター同士で話し合って、鑑定スキル持ちを増やしてみても良いものか検討してみます」


 ネアレス一人で決めていいものかどうかは困る話らしい。確かにレアスキルでもあるし、階層踏破報酬でおいそれと配っている訳でもない、というのは世の中の話の流れからわかる。もし配っているなら、海外の情報としてダンジョンマスターにお願いしてレアスキル貰ったぜ! と言い放ったものが拡散され翻訳され、日本のブログなんかにも情報として投下されてそれが原因で……となる可能性もある。


 いやまてよ、そうなったら俺の【保管庫】についてもダンジョンマスターにお願いしてもらったぜ! とできるんじゃないだろうか。その最初の例として、エレベーターが付いた小西ダンジョンで、最奥層までたどり着いた探索者だからこそお願いしてできたんだ、と箔付けを行うことでレアスキルのレアさを証明することにもできたんではないか。


 うむ……そうなると深い所ではスキルオーブを出す、という選択肢も入ってくることになるのか。ただ、いつからスキルオーブが出現していたのかによっては残り時間が気になる所ではあるな。宝箱を開けたところからカウントダウンスタート、みたいなことができるのならそれも一つか。


「深い階層なら、宝箱にスキルオーブが入っていた、なんてのがあると盛り上がるかもしれないね。箱を開けたところからカウントダウンが始まるような形なら探索者としても安心して使用することができると思うけど、そういうのはどうだろう? 」

「それも面白いですね、案として追加してみるよう検討してみましょう」


 採用されたらしい。言ってみるもんだな。おかげでちょっとご飯が美味しくなった気がするぞ。


「最初ですし、後から宝箱の中身は変更できるようにもしますし、宝箱の出現頻度や出現場所も何とかなりますから……一人必ず一つは持って帰れるという保証はできませんがやっていけると思います」

「それは何よりだな。こっちの無茶ぶりに付き合わせるような話になっていてすまない」


 真中長官の代わりに、いや多田野さんの代わりに謝っておく。本来は真中長官の発案だからな。そこに色々と問題が発生するのなら責任は真中長官が取るべきだな。


 食事を終わり、腹ごなしのレインを真中長官に送っておく。「トレジャーダンジョン、一品物が出る場合鑑定作業をする人物が必要になるのでレアスキルを新たに生み出せるかどうか検討してもらっている。それ以上細かいことは不明」


 送信っと。ちゃんと仕事はしているという体はこれで保たれた。ネアレスは俺がまだ箸をつけていないあたりのごった煮をよそって結局俺のご相伴に与っている形だ。ご飯も食べている。まあ、多めに作ったからいいんだけどな。


 おっと、返事だ。「もし【鑑定】スキルを一つ融通してくれるって形になった場合は必ず連絡してほしい。こちらで指定した人物に渡して国家鑑定士としてポジションをあげたい」


 なるほど国家鑑定士か、良いポジションを作ったな。ダンジョンだけに関わらず他の物事にも仕事をさせることができるし、ダンジョン庁お抱えの係になったとしても横から仕事を挟み込むことで他の省庁の仕事にちょっと借りださせてその分横のつながりを意識させることができるな。


「ごちそうさまでした」


 ネアレスが食事を終えたらしい。綺麗に全部なくなっていた。見た目に反していくらでも食べそうだ。ダンジョンマスターにも胃袋に限界というものもないらしい。太らないってミルコも言ってたし、食事についてそれほど疑問に感じる必要はないらしいな。


「美味しかったです、また御馳走になりたいぐらいに」

「それは嬉しいことを言ってくれる。もうちょっと腕を上げようという気になったよ」

「あのコリコリしたのが特に美味しかったですね。あれ、何ですか? 」


 どうやら味しみフカヒレがお気に入りだったらしい。実際美味かったしな。まだ色んな料理に応用する可能性を残しているので楽しみではある。今度は豚の角煮のタレを吸いこませてみようか。きっと豚と相まって更にお肌プルプルのコリコリ食感を味わえると思うと、早速次の芽生さんと潜る時の算段をしておこうと頭の隅でこっそりと考えている。


「ここのマップで出て来るサメのフカヒレだ。味付けは俺流だが、まだまだ努力が足りないと痛感しているところだ。次はもっと美味く作る」

「頑張ってください。では、私は作業に戻りますのでこの辺で失礼します。【鑑定】の件でまたお話に来るかとは思いますが、その時はよろしくお願いしますね」

「ああ、わかった。是非前向きに検討しておいてくれ」


 そう答えると、にこりと笑いネアレスは帰っていった。全く気楽なものである。食いっぷりが良かったおかげで俺も少しお腹に余裕が出来てしまった。ここはバニラバーで我慢しておく……そうだ、スープがあったんだった。


 バニラバー片手にスープをコクコクと飲む。まだ冷めてない丁度飲み頃という感じのポタージュを飲み干すと、体の内側から温まってきた。これで、午後もいけるな。

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

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― 新着の感想 ―
あれ?トレジャーダンジョンのバランスの話はちょっと前にやらなかったっけ?
思ってた以上に早めな再会でしたねーw まあ、業務連絡に近いものですし今後もこういった事はありそうですね
回数制限付いてる魔道具か、魔結晶いっぱい使うタイプの魔道具で鑑定できるようにしたら良いんじゃ無いかな?
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