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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第二十六章:ダンジョンシティ構想

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1270:第三回ダンジョンマスター会談 2

「よんじゅうよんそう……もうちょっとがんばればリーンはなんとかなりそうなの。ほかのはどうなの? 」

「私は……ネアレス様に言われてとにかく深く掘って階層を作ればいい、外観とかは全部同じで良いという指示を受けてますので……一ヶ月ほどあれば到達は出来ると思います」

「僕のほうも同じだ。しっかり首根っこを押さえられてダンジョン作りに専念させてもらってたおかげでそれなりの深さまでは作り込んであるよ。見た目は同じで良いから時々宝箱が出現して中身を取ったら消滅する機構もつけたし、宝箱が出るタイミングも調節した。後は実際に動かしてみないと解らない所だけど、ネアレスに言われた通りの仕様は出来上がってると思う」

「ということですので、階層の心配はある程度しなくていいとは思います。流石に二日や三日で到着してきて踏破してくる、というような特殊な探索者でもいない限りは大丈夫だと思います」


 三者三様の返事をくれるが、誰もがもうちょっとでその既定のラインには到着する、ということで良さそうだ。


 芽生さんが全員の言葉を聞き取って文字にして長官に渡し、長官がそのチャットの内容を確認して……という一手間かかる会議だが、通訳を実際に通してもどうせ同じような時間がかかるものなので通信の時差みたいなもんだと思えば問題ないだろう。


「なるほど、みんな頑張って取り組んでくれていたんだね。どうもありがとう、日本を代表してお礼を言います」

「セノさんや安村さんにもお願いされていたことですし、それが真中さんからのお願いだった、というわけですか。今のところお役に立てていて何よりです」


 ネアレスが全員を代表してお礼を受け取る。ここはセノじゃなくネアレスなんだな。


「ふむ。一旦三ヶ所で話を区切ったということは、残り二ヶ所は何か問題があるとか、少々難儀な所だったりするのかの? 」


 セノが真中長官に質問をする。


「実はそうなんだ。問題は残る二ヶ所だ。ここはどっちも曲者……というわけではないが少々事情が異なる部分があるのでこっちをだれが担当してくれるか、というほうに興味があるね」

「ということは、やはり問題があるか、現状からどのぐらい状況を改善できるかというものについての難易度が少々高い、とみていいんじゃな? 」


 チャットを介す分だけしばらく遅れて真中長官が発言する。


「残りは廃墟……昔は栄えていたが今は寂れている、と言った場所のご提供だ。これはどちらもその土地を管理する国の事業の一環でね。活気を取り戻してもらいたい、という意味での場所の選定になる」


 残りの二ヶ所を見てみる。なるほど、たしかにこれはダンジョンがあっても起爆剤になるかどうかは怪しいな。だが、エレベーターがなかった時代の十津川ダンジョンですら出来たことなんだし今後に期待という意味では充分可能な範囲で物事を動かせる気はしてきた。


「まず一件目。温泉は解るか? 温かい湯が地面から湧き出ているところのことを指すんだが」

「わかるぞえ、あれはいいものじゃ」

「その温泉地にダンジョンを立ててほしいというお願いが来ている。景気がいい頃はみんなで遠距離の温泉でゆっくりして……という時代があったんだが、景気が悪くなってそういったツアーも無くなっていき、ホテル街だけが取り残されてなんとか糊口をしのいでる途中なんだが、温泉以外にも新しい何か目玉商品が欲しい、そこにダンジョンを作ることは出来ないのか、という話で持ち上がってきた話だ」

「なるほどのう、ダンジョン客についでに温泉も堪能してもらって毎日気持ちよくなりながら探索をして、稼いだ分はその辺でお土産なりなんなりで地元に金を落としてもらおうという方法か」

「おおよそそれで合ってると思う。ただ、場所がセノのダンジョンとまではいかないがそれなりに山奥なためにあまり人口をかき集められないのではないかという心配があるのがここだ。もともと観光地であったこともあってキャパシティは充分にある所なんだが、完全に異業種である探索者というカテゴリの人たちがここで素直に暮らし……いや観光ついでにだな、そこに居続けることができるかどうかまでは不明だ」

「なら我はパスじゃな。他の人の多そうなところがよい。出来るだけもう寂しい思いはしたくないのじゃ」


 やはりセノからはマイナスな返答が出力されてきた。セノには難しい案件だなあとは思っていたが想像のとおりである。


「後はもう一件、ニュータウン構想のあった一角にダンジョンを設置してほしいという案件だ」

「そのニュータウンというのはなんですか? 」


 ネアレスにはニュータウンという言葉の意味がそのまま翻訳されなかったらしい。


「ざっくり言うと、人が暮らすためだけに作られた人家の集まりだ。職場は他のところにあって、朝仕事に出かけて夜遅くに帰ってきて眠るためだけの家、昔は一戸建て至上主義というか、自宅を持ってこそ一人前、みたいな風潮があったんだよ。それを満たすために山を切り開いて整地して、住宅街を立てて周辺には雑貨屋が色々建ち並ぶ……という光景で憧れの的みたいなところがあったんだ」

「なぜそんな所がダンジョンの選定場所になったんですか? 人が住んでるならその人たちも仕事があるはずですよね? 」


 ネアレスの疑問はその通りである。なぜその夢のような居住環境であるニュータウンが寂れたのか。


「出来上がってから時間が経って、高齢化で退職した人やその家族が暮らすだけの場所になってしまっているのが一つ。もう一つは商業的価値のある場所……人が多く訪れる所だな、そこから離れた場所に設計されているおかげでそのままそこで暮らしていくには厳しいとして家を手放す人が多くなってきたのが原因かな。雑貨屋も赤字で潰れたりすることが多くなって、生活に困るからと家を引き払って他の場所へ移住していった人が多い場所なんだ。全体の半分ぐらいは空き家になっているのがこの場所になる」

「つまり、ダンジョンが出来ることでその空き家の利用価値が増える可能性に賭けているわけですか」

「そういうことになる……のかな? 」


 真中長官のほうを見ると、その通り、という感じで首を縦にゆっくり振っている。


「でも、どうしてそんなに一斉に高齢化が進んだんでしょう? 色んな年齢層が居てもいいはずでは? 」

「……その辺は財布の事情と工事の進め方によるところが大きい。広い面積を同時に開発して同時に売りに出されるから、買う年齢層も同じぐらいになるんだ。三十年とか長い年月の支払い契約をして、終わるころには自分は退職、でその頃にはその子供たちも独立して家を出て行ったから、年寄りしか住んでない、といった流れになったわけさ」

「なるほど、大体理解しました。それでここはほとんど人が住んでない、という状況になったわけですか」

「……ここは早々とスーパー、つまり雑貨屋が撤収してしまった結果、住人もここでは生活できないと率先して逃げ出した後でね。ほとんどの家が空き家になってしまっている。道もまだまだきれいだし、店は呼べば来ると思う。後は探索者がどのぐらい家に住み着くなり、再開発でマンションになるなり、どうやりくりされていくかを見守る形のテストケースになる。もしうまくいくなら、今後も同じようなケースに遭遇した場合にダンジョンマスターを説得してそこにダンジョンを作ってもらう、という説得力を持たせることができるからね」

「なるほど、大体理解できました。ですが、温泉地にしろこのニュータウンにしろ、何らかの要因があってこういう結果になったものと推測できますが、その原因に心当たりみたいなものはありますか? 」


 ネアレスの疑問に答えるには、バブル崩壊による景気の減速から始まるこちらの事情を一から説明する必要があるのだがそこまで細かいことをざっくり話すのは俺にはちょっと難しい。


「ざっくり言ってしまえば、みんなが貧乏になってしまった、ということなんですよ。おそらくバブル景気から始まってそれの衰退から始まる不動産や株式の価値の低下やそれに付随する企業の倒産やあれこれを語っていればそれだけで夜が明けてしまうと思うので本当にざっくりした答えで言うとそうなります。そして、今みんなが再びお金持ちになるかもしれないという環境がダンジョンによって出来上がりつつあります。その流れを作り上げようとしているのが今のこの作業であり会談であり、皆さんにお願いしている内容なのです」


 チャット役に徹していた芽生さんが本当にざっくりと説明を終えてしまった。これには真中長官も少し驚き顔だ。俺はもっと驚いている。


「なんですか? 私一応そっち系が専門なんですよ? もしかして、ただのその辺で遊びまわっている大学生だと誤解されてませんかねえ? 」

「いや、えっと、ごめん」

「洋一さんまでそんなふうに思っていたなんてちょっとショックですねえ。これでも国家公務員試験きっちり通ったエリートの端くれですよ。本当に端くれですけど」


 芽生さんがプンスカ怒っている。後で宥めるのが大変そうだなこれは。


「なるほど、何かがあって経済的に打撃を受けた、ということは伝わりました。ダンジョンから持ち出された物資がやり取りされて、そこに貨幣価値が生まれてその貨幣価値を使って探索者がお金をばらまくことで再度同じような景気の上昇を考えている、ということは理解できます」


 ネアレスなりにかみ砕いて納得したようだ。


「ようするに、みんながだんじょんにこもってもどってきておかねもちになればいいの。そのためにけいざいてきこうかのありそうなばしょと、けいざいのたてなおしができるかどうかがたしかめられるばしょがそれぞれえらばれたってことなの」


 リーンも納得している。しかもネアレスよりもより詳しく理解している。


「えっと……大体は解りました。後は誰が何処を担当するか、ですね」


 サムエ君は考えを放棄してどこに誰が行くかを選ぶところまで思考を飛ばしたらしい。考えるのをあきらめたって顔をしている。


「我は温泉地はパスじゃな。それだけは譲れん。後は……残ったところでよい。お主らで先に選べ」


 セノはそれだけ言うと、猫に戻って丸くなり、休み始めた。最悪手は引きたくないがそれ以外ならかまわない、という姿勢を全身で以て表現している。


「だとすると、どうしますかね。私も後で良いですから、まずは三人で決めてください」

「リーンはどこでもいいの。おしごとだからどこにはいぞくされてもがんばるの」

「僕は……出来れば人が多い所がいいかな。あまり向こうのダンジョンではいい顔が出来なかったからね。ユミルはどうだい」

「私は人があまり来ない所のほうが静かでいいかもしれません。私が……そうですね、私が温泉地の担当をします。とりあえずダンジョンを深く作っておいていつ探索者さんと出会うことがあってもいいようにすることのほうが大事だと思いますので」


 一番不人気であろう場所が最初に埋まった。こっちとしては願ったりだが、本当にそこで良いのだろうか? という不安は確かにある。同時に、もしこれで温泉地が復活してホテルも建て替えが進み、新しい産業として勃興してきた場合ユミルの考えとは真逆の結果になるかもしれないが、それは実際に立ててみてからじゃないとわからないだろう。


「じゃあ僕はインターチェンジ? のところにしようかな。これから何かがどんどん増えていく楽しみというのもあるしね。ダンジョンのほうは頑張って間に合わせることにするよ」

「じゃあリーンはひとがすくないほうのショッピングモールにするの。こんどはゆっくりできそうなの。まえのところはそこそこひとがいてたいへんだったの」


 残り二つ。寂れたニュータウンか、一番人の多いであろうショッピングモールか。


「では、セノさんには精々働いてもらうことにしましょう。私はニュータウンのほうを担当します。寂れたニュータウンに人が入り込み始めるには時間がかかるでしょうし、その間またセノさんに寂しい思いをさせるのは忍びないですからね」


 ネアレス、出来た子。セノは結果が出たのを確認すると全身で伸びをして、香箱座りをする。


「では、そういうことでええのかの? 我が一番おいしいであろう所をもらう形になったが」

「そもそもセノさんが私たちをスカウトしに来なければ今この場はないのですから、努力に見合った報酬、という形で受け取っておいてください」

「そ、そうです。私たちからのお礼です」

「……ふむ。ならばありがたく受け取ることにしよう。この場所は任された。後はいつ頃にダンジョンができ始めるか、じゃの」

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

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限界ニュータウン+さびれた温泉街=〇奥日光の〇怒川あたりかな…w 一応、東〇線は通っているし…
こんにちは。 ニュータウン…YouTub○の限界ニュータウン紹介動画を見たら分かりますが、なんでそんなとこに作ったん?ってのも有りますからなぁ。そういうとこに限って業者が勝手にインフラ作ってる→公共…
ダンジョン庁が、ダンジョンを管理し始めて専門部署もできて専属エリート探索者が表舞台にでる準備ができましたね。 で、ひとり残ったこのおじさんは誰なんでしょうという状態じゃないですか。 もう業務ですよこれ…
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