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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第二十六章:ダンジョンシティ構想

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1261:自己鍛錬 1

ダンジョンで潮干狩りを

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 朝だ。今日も寝起きはいい。新しい雷魔法のスキルの行使方法について頭を使って散々悩んでいたので頭の使い過ぎでちょっと寝ぼけるかも、なんてことを考えながら眠ったが、問題なく起きられたのはまだ枕と布団の効力のおかげだろう。


 いつものトースト三枚を焼く……と、菓子パンとトーストではちょっと量が多いかもしれないな。でもまあリーンがお腹いっぱいになる可能性を考えると、それほど気にしなくていいな。ダンジョンマスターに空腹の概念が無いように満腹の概念がないのかもしれない。満腹にならないならいくらでも入るんだろうからいつもの飯はいつもの分として用意してしまおう。


 普段通りより少しだけ少なめのキャベツと目玉焼きをいつもどおり準備して、最後にレンチンしてカレーパンを温める。程よく熱くなったカレーパンを保管庫に放り込み、そのまま庭のダンジョンでリーンと食事だ。


「ごはんだぞー」

「かいものはいったの? パンはあるの? 」


 第一声がそれか。よほど総菜パンが待ち遠しいらしい。そこまで気にいるほどの味だったのだろう。そう期待されるとハードルが上がるから困るんだがな。


「買い物には行ってないが、お店とは違うパンを用意してきた。気に入ったらそのまま食べてくれ、気に入らなかったらそのまま残しておいてくれ、俺が片付けるから」


 いつものトーストセットと一緒に、温めたカレーパンと、クリーム入りメロンパンを差し出す。


「なんかていねいにつつんであるの。これはおみせのとはちがうの? 」

「お店が違う……売り方も違う、と言うところだな。これなら保管庫に入れておいても一年ぐらい持つような奴だから、出来立てではないけど一応お土産だ」

「ありがたくいただくの……うーん、まえのほどのあじではないの」


 出来立ての店頭作りパンと工業製品化された量産パンの違いは分かるらしい。おこちゃま舌、というわけではないようだ。リーン、なかなかやる子だな。


「これはこれでおいしいの。でもあのできたてにはほどとおいの」


 どうやらやはり店の作り立てのほうがおいしい、というところらしい。常食するには少々飽きるがたまにはいい、ぐらいのところだろう。俺も昨日買った板チョコパンとトーストを食べながら、たしかになじむ味ではあるが、美味いというほどのものではないな、と考える。これなら普段から食べてるトーストのほうが美味さとしては調味料を振りかける部分を加味しても上であると言えるだろう。やはり店で作ったパンは高いなりの美味しさは担保してくれるようだ。


 いつもよりちょっと多めになった食事を片付け終わると、リーンにセノから伝えられた話について情報を共有しておく。食事の後の報連相のお時間だ、ちゃんとここは話しておかないと、リーンとセノの間でやり取りをしていたつもりで実はしていなかった、ということをなくすためにもきちんとリーンにも話をしておく。


「わかったの。やすむらとごはんたべるのもあとわずかになりそうなの。それはそれでさびしいの」


 なんだかしんみりさせてくれるじゃないか。そう言うセリフはリーンには似合わないな。


「まあ、今度説明会を開くそうだからその時までは一緒にご飯食べられるな」

「ごはんでつられるリーンでないの。でも、いうとおりなの。のこりすくないしょくじのじかんをたのしむとするの」


 食事を終えると昼食作り。今日は……あんまり重たいものは避けておくかな。手軽にサンドイッチにしよう。ウルフ肉ではなくボア肉で生姜焼きを作り、パンに挟んで一品、野菜だけのサラダサンドで一品、ゆで卵を潰した卵サンドで一品。このぐらいあればいいだろうな。コーヒーは階層を考えてホットを淹れていこう。


 今日は簡素に、そして探索は豪快に行こう。今日一日は収入のことは考えずに、どうすれば極大まで強化されたスキルを扱い切れるのか、という点についてのみPDCAしていくことにしよう。お金の話はついでだ。それなりに稼ぐ階層には行くにせよ、収入は気にせずにスキルアップのほうを優先した探索、ということになる。


 よし、準備も出来た所で早速出かけよう。今日はご飯が炊ける間待つ必要もないし、飯の準備は済んだ。いつも通りスーツに着替えて籠手を装備。引っ張られるような感覚はないのでちゃんと装着できているのは間違いないらしい。


 柄、ヨシ!

 圧切、ヨシ!

 ヘルメット、ヨシ!

 スーツ、ヨシ!

 安全靴、ヨシ!

 手袋、ヨシ!

 籠手、ヨシ!

 飯の準備、ヨシ!

 嗜好品、ヨシ!

 車、ヨシ!

 レーキ、ヨシ!

 保管庫の中身……ヨシ!

 その他いろいろ、ヨシ!


 指さし確認は大事である。さあ、今日は六十九層でサメとエイにスキルだけでどこまで戦えるか、そして可能ならばスキルイメージを固めていくことを考えていこう。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 家を出る時間が早かった分、いつもより一本早いバスでダンジョンに着いた。せっかくそのまま素早くダンジョンに入っていつもより長く戦えるように手はずを整えてきた。ゆっくりするわけではないが、しっかりと自己鍛錬に努めよう。


 入ダン手続きをしようとすると、受付嬢に呼び止められる。


「安村さん、ギルマスが呼んでます。入ダンの前にそっちへお願いします」

「ギルマスがですか、解りました。先にそっちへ行ってきます」


 ギルマスが呼んでる、か。思いつくことは何点かあるが怒られるようなことは何もないはずだ。だとすればドロップ品絡みかな。最近のドロップ品と言うと醤油差し、フカヒレ、グリフォンの肉と爪。この中のどれか、提出した順番で言えば醤油差しのほうがどうにか筋道が付いた、という所だろう。


 ギルマスが呼んでいると言うことなら、今日は早出なんだろう。ギルドの建物に入りギルマスルームにノック三回。


「安村です、入りますよ」

「いらっしゃい、朝早くからすまないが、金が絡む話なら早めに伝えておこうと思ってね。今日は文月君は? 」

「今日は本業ですね。私一人ですよ。彼女が居たほうが良かったですかね? 」


 芽生さん込みで……ということはやはり金の絡む話らしい。何かのドロップ品……醤油差しあたりが価格が決まったとかいう話だろうか。


「実は例の醤油差し、一段落研究が終わったということで引き取り先がまとめて金額を支払ってきてね。預かっていた分の代金を渡そうとしたんだが……そうか、文月君いないのか。どうする? 査定のほうには言づけておくから、君らの都合のいいタイミングで査定カウンターへ申し出て受け取っておいてもらう形にすればいいかな? 」

「そのほうが助かりますね。ちなみにいくらだったんです? あれ」

「とりあえず現状では一本三十万円かな。百本預かってたので三千万円ってことだね。多分査定本番、実際に査定される金額はもう少し安くなる可能性は高い。新しい研究への投資ということでこの金額をポンと渡してくれた、ということになるかな。どうやら社会的に役に立つドロップ品であることは確定している訳だからこれは受け取るに値する良い金額だと思うよ」


 ギルマスが珍しく饒舌である。その社会的に役に立つドロップ品の最初のドロップと研究投資への提供先が小西ダンジョンということになった、という辺りを評価されたりしたのだろうか。かなり上機嫌なのでこれはそのまま鼻高く居てもらうことにしよう。


「では、次に芽生さんと潜る時に受け取りに来ますよ。査定カウンターには後で取りに行くと伝えておいてくれますか」

「解った。では、いつも通り頑張って探索してきてね。多分その階層には潜らないとは思うけど、数が必要になったらもしかしたらギルドからのお願い、という形で依頼するかもしれないからそこはよろしく」

「覚えておきます」


 七十層から六十八層に戻るならそんなに手間はかからないからな。短時間でマップ最深層までたどり着けると同時に密度の濃い戦闘が出来るのは間違いない。下手に六十四層から潜っていくよりも効率は良いはずだ。もしかしたら、七十一層や七十二層を巡るよりも効率が上、という可能性もある。


「それで、進捗のほうはどうだい、七十二層は通り抜けられそうかい? 」

「そうですね……地図を見てもらった方が早いとは思いますが、こんな構造なんですよ」


 保管庫から七十二層の地図を出して現状解っている範囲の説明をする。同じ形状が並ぶマップなので視認性が悪いのと、それっぽいオブジェクトは見いだせたので次回はこっちへ向かってみることにする、等を報告しておいた。


「確か三十八層も似たような、同じオブジェクトがひたすら並ぶマップだったね。頑張ってもらいたいものだ」

「努力はしますが、七十二層から先はまだ出来上がってないはずですからね。またダンジョンコアルームの観察に行くことになりますが、それにしてもまずは階段を見つけないとだめですね」

「今の段階で充分深くまで潜り込んでいるともいえるし、次が出来上がるのを待つ時間も必要だ。しばらくはゆっくりできるということだね」

「そうなりますね。他にもやりたいことが出来ましたし、そっちのほうへ力を入れていくことにしますよ」


 さて、長々と話してせっかく早く来た時間を消耗するのももったいない。さっさと話を切り上げてダンジョンへ潜るとするか。


「じゃ、そういうことで今日も潜ってきますね」

「うん、頑張ってねー」


 早々とギルマスルームを退出すると、再び入ダン手続き。今日二度目の受付なのでちゃんと用事は済ませたか確認された。


「ちゃんとお話し合いは出来ましたか」

「えぇ、報告を受けただけですので。行ってきます」

「今日もご安全に」


 リヤカーを引いて今日も元気に茂君から始める。七層で一旦降り茂君まで温めのためのダッシュをすると、サンダーウェブで一纏めに刈りあげて、周囲を確認するとそのまま保管庫へ範囲収納。ダッシュで戻ってきて、リヤカーを引いて七十層まで倍速で移動。倍速とはいえ二十分少々かかる……と、コンビニで雑誌の発売を確認してくるの忘れてたな。せっかく早出したんだし寄ってから来ればよかった。チャンスは最寄り、駅前、ダンジョン前と三カ所もあったのに気づかなかったな。


 さて、着くまでの時間が出来たので、雷魔法のイメージを作り上げる作業に移る。やはり、トールハンマー式の雷切はこれから単体のモンスターに対して、圧切で斬り切れないような相手なんかに有効かもしれない。


 早速六十九層でサメかエイを相手にして戦ってみるのを試すことにするか。どちらも今の全力雷撃一発で倒せる相手にはなってくれているし、過剰火力でモンスターを倒すことは出来ている。どこまでそれを他の手段で達成するか、過剰火力をどこまで表現できるか、辺りに今後の【雷魔法】の成長を感じ取らせることができるか、意識的に強化していけるかがかかってくるのだろう。


 問題は、索敵の範囲に入った瞬間モンスターがこちらに向かって飛んでくることだが、そこは慣れていくしかないだろう。芽生さんが居ないとこんな所でも不便が出るのはソロ探索者としては諦めなければいけない所だろうが、その為に他の探索者にも貴重な【索敵】をもう一つ覚えるというのは、金に物を言わせて何とでもしようとするような感じがするのであまり好きではない。


 それに、【雷魔法】をつい最近無駄打ちしてしまったばかりなのだ。【火魔法】もオファーを出していることでもあるし、頻繁にスキルを買い集めるのもほどほどにしておいたほうがいいと思っている。俺が頻繁にスキルを集めているという話が広まってしまえば何か要らぬ誤解を生む原因にもなるからな。


 雷魔法か……俺が雷の一体何をどこまで知っているというのだろう。一般的な雷、電気に関する勉強も必要かもしれん。ちょっと参考書をあたってみるのも必要かもしれないな。今度本屋にでも寄って専門書を買いそろえてみよう。読むかどうかまでは解らんが、このエレベーター待ちの時間を利用して勉強するという手もある。


 今はいわばラノベや小説で出て来るような表面上の【雷魔法】でしかない。もっと雷の特徴に詳しい研究者なんかが居ればもっと捗るのだろうけど知り合いにそういう人物はいない。今のところは自己努力でなんとかしていくしかないだろう。知識面でも雷のスペシャリストになるべく頑張らないといけないな。


 そういえば、かなり前に試したがうまくいかなかった雷による電磁場を利用した瞬間ダッシュについてもまだまだ研究は必要だ。アレをモノにすることも目標にしておくべきだな。そう考えると、今の段階でもまだまだやれることはある。まずは手持ちでやれることから一つずつクリアしていこう。

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

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― 新着の感想 ―
餌付けの時間はもうすぐおわりなの
>雷による電磁場を利用した瞬間ダッシュ まずは自身の肉体が磁力を帯びるための練習をしなければいけませんね。 次に急激な加速に耐えるための強化をする必要がありますね。 それと合わせて急激な加速によるブラ…
> うーん」 ちがいがわかるおんななの > ほどとおいの」 うんでいのさなの。どろなの > さびしいの」 べつにやすむらのことなんかなんともおもっていないの > PDCA」 D D D Dのおじ…
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