1254:源氏の籠手をエルムドアから盗もうとした人は嬉しい変更になりましたね
あの時助けていただいた地蔵です ~お礼は俺専用ダンジョンでした~
https://ncode.syosetu.com/n1273lk/
こちらもよろしくお願いします。
そして、このサブタイを決めたのが去年の今頃。まさかFFTリメイクが決まって盗めるようになるとは。
ウォータークーラーの冷たい水と熱湯を良い感じに混ぜたぬるま湯を堪能したところで帰る。芽生さんも一緒にぬるま湯にひたっていたが、バスの時間が近づいたことを確認してバス待ちに並ぶ。もう、ギルドの中で涼しくなりながらバスをギリギリまで待つという季節でもなくなった。素直にバス停で先に乗って出来れば席に座れるように待ち行列をきっちり確保しておく。
「この後どうするんですか、普段よりだいぶ早いですよ」
「そうだな、鬼ころし行ってくるかな。グリフォン対策ではないが、籠手をつけてあの爪相手に効果があるかどうかを試したくなってきた。もし効果があるならしばらくはスーツに籠手で出勤だな」
「なるほど。私は今日はパスですかね。明日朝から講義なので」
「本業は大事だからな。ゆっくりするとよいぞよ」
バスが来て乗り込む。バスの中は軽めの冷房がかかっていた。多分、かけておかないと中が暑くなるのだろう。程よい感じの涼しさにヘルメットを脱ぎ、少し頭の中を涼しくしてからかぶり直す。このまま鬼ころしというのもアレだから、駅かどこかでヘルメットはこっそり保管庫に仕舞うことにしよう。もしくは電車の中でだな。
「涼しくなってきて良い感じですね。しばらく続いてくれるといいんですが」
「このぐらいの気候が俺の小さい頃は夏だったような気がする。最近の夏は容赦がない」
バス内にしても、薄着の人はだいぶ減ってきた。彼らはきっとレンタルロッカーに装備を預けっぱなしで家に帰るんだろう。ちゃんと時々ファブったりウォッシュしたりして清潔にしてるんだろうか。そういう用途のために一回五千円でウォッシュしますって看板掲げたらそれなりに儲かりそうではあるな。
「夕食何食べましょうかねえ」
「俺は鬼ころし行くついでに向こうで何か探すかな。名古屋近辺は食事には困らないから便利だ」
「私も今日は外食にしましょうかね。お昼はほぼ中華だったので何か洋食を食べに行きますか」
とりとめもない話をしつつ、駅で解散。そのまま名古屋行きの電車に飛び乗り、一路清州方面へ。途中でヘルメットを外す。やっぱり今は被ってないほうがまだ涼しい時期だな。ヘルメットはバッグにしまい込み、そのまま頭の涼しさを堪能している。
そういえば髪もだいぶ伸びてきたな、そろそろ床屋に行く頃合いか。ヘルメットの中が蒸れないように普段から短めにカットはしてもらっているが、たまにはちゃんとした美容院で丁寧に頭を綺麗にしてもらうのもちゃんとした金の使い方だろうか。
今までは車でそう離れていない千円カットで適当に刈り上げてもらっていたが、ちゃんと高い美容院で刈り上げてもらった方が世の中のためになると考えると、それもまた候補に入れておく必要があるだろう。予約で取れば時間をある程度気にせずカットしてもらえるのも良い点だ。考えておこう。
さすがに時間的に暗い中、清州駅に到着。そのまま歩いて鬼ころし清州店に到着。会談の際に本店の広さを体験しているので清州店が狭く感じるのだが、ここも決して狭いスペースではない。ただ、店の中を目一杯使って陳列しているので手狭に見えるだけなのだろう。
いつもの食料品やお土産、その他を無視して防具のコーナーへ向かう。今日は確実に必要な物だけを買って帰る。時間も時間だし、家でゆっくりする予定ではあるし明日は布団の山本へ納品しに行く予定である。こう見えて結構忙しい一日……明日は半日かな、予定は詰まっている。ここでは確実な選択と集中をして必要な物だけをピンポイントで見に行くことにしよう。
やってきました防具売り場。防具売り場に来てまず目を引いたのは和風の甲冑、いわゆる南蛮胴具足である。どうやら胴丸はロックタートルの甲羅で出来ているらしく、肩に付いている大袖も付いている。ここはワイバーンの鱗を叩きのばして出来ているらしい。あれ、叩いて伸びる性質があったのか。熱を加えて変性して、その上で叩きのばして……というイメージが頭に浮かんだ。
たしかに立派な甲冑だが、俺が欲しいのはこういう仰々しいものではない。甲冑をつけて動きに障害があるかと言えば、そもそも実用品である以上動かないわけがないのでないよりは有ったほうがいいという商品ではあるだろう。だが、今回欲しいのは袖をカバーしてくれる籠手だけだ。籠手だけという商品はないものか……
しばらく商品を見つめると、それぞれの部位に値札が張られていることに気が付く。どうやら、一そろえでいくらではなく、各部位ごとに値段が設定されているようだ。籠手はこいつの場合は……四十万ほどするらしい。流石に中々のお値段だ。
ここは店員に聞くのが一番手っ取り早いだろうな……と、目線で店員を探し始める。店員、店員……居た。店員のほうに近づくと、店員もこちらに気づき何か用っすか? という表情をしはじめる。
「ちょっといいですか、良い感じの籠手を探しているんですけど」
「籠手、ですか。具体的にどういうシチュエーションで使われるんですか? 」
どうやら防具方面に詳しい店員のようだ。そのまま話を継続していくことにしよう。
「このスーツの上から着ける形で運用していきたいんですよ。で、武器も持つので出来れば指先まで装甲のあるガントレットタイプではなく、肘から手首までを覆う形のものであればうれしいのですが」
「スーツの上からですか……そのスーツはえっと、もしかして探索用の奴だったりしますよね? 」
「ええ、ですので結構お高くて。先日袖をちょっとやられてしまって結構な出費になったので、頻繁に破れるようなケースが考えられますのでそれを補う形で装甲を補強したいと思いまして」
命に関わるとまではいかないが、金に関わる話なので包み隠さず用途と本来の目的についてちゃんと伝える。それでお互いに勘違いが発生しないためにも念入りに話をしておくのは必要だろう。
「そうですね……肘から下だけ、となるとこの辺のものになりますかね。多少腕の太さで扱いは変わりますが、硬く丈夫に出来ています。ロックタートルの甲羅を曲げて生成した一品になりましておそらくダンジョン素材という観点からしてもこれが一番防御としては働いてくれるんではないかと思いますね」
出してきたのは腕の外側を甲羅が覆い、内側で紐みたいなもので縛るタイプのものらしい。試しにつけさせてもらったが、腕にはぴったりはまる。そう言う点で言えばベストアイテムなのだろう。紐も結束バンドの付け外しの容易な奴みたいな感じでしっかり腕に装着することもできた。後は性能か。実際にどのぐらいの硬さまでなら保持してくれるのか。サンプルが欲しいな。
「動画か何かで、こいつの性能を見られるものってありますかね? 」
「ちょっと調べてきますんで待っててもらってもいいですか? 動画が有れば性能チェックもできると思いますんで」
店員はQRコードを探しに行ったのか、カウンターのほうへ行った。その間に他の籠手も見させてもらおう。
安いほうの品では普通の金属で作られただけのものから、ダンジョンスパイダーの糸を何重にも織って作ってある完全はめ込み型の籠手などもあった。今までは気にはしなかったが、わざと腕に攻撃させてその間にこっちが殴り返す、ということで籠手を武器の一種として扱うこともあるらしく、選択肢はそれなりにあるっぽいな。
後はワイバーンの鱗を外面部に使い、溶接みたいな形で無理やり取り付けたような品もある。ダンジョンの深さと防御力の高さが比例する場合、このロックタートルの甲羅で作った籠手が一番硬いだろうし、腕にもなじむし取り付けてみて不具合もない。試しに腕をぶんぶん振り回してみるものの、邪魔にはなりにくいかな、というところ。
若干腕を内側に向ける時に邪魔かなあ程度の違和感でいてくれるなら、値段にもよるが悪くな……六十万か。スーツ一着に比べればかなりマシな金額ではあるが、そこそこの出費にはなる。これも経費で落ちるとはいえ、うーん……やはり性能チェックをしてからだな。
しばらくすると店員が商品リストのようなものをもってやってきた。冊子化されているそれは、全部のページにQRコードと製品の価格、売り、そして生産者の声などが載せられている。ページをめくって防具の欄から籠手をピンポイントで選び出すと、どうやら同じ製品のものらしいページにたどり着いた。
「お待たせしました。こちらの動画で色々検証しているみたいなので見てもらってもいいですか? 」
店員がQRコードを提示してきたのでスマホで読み込んで動画の内容を確認する。スマホの中ではまず火炎放射器による耐熱実験、そして実弾射撃で……よく実弾使えたな。ライフル弾のようなもので籠手に射撃し、籠手のほうには傷ついていないことを確認、そして次はプレス機で耐久力調査。どうやら二トン程度の重さなら歪みもしないらしい。さて、あのグリフォンの爪の硬さと重さはいかなるものだったろうか、と想像を働かせる。
「ざっくりですがこんなものです。参考になりましたか? 」
「これにしてみます。ないよりは確実にマシでしょうしあくまで保険ですし。これでだめだったら服を毎回作り直すことにします。どちらにせよ必死に避ける方向性なのは変わりないでしょうし」
購入することにした。せっかくなのでと、今の形で腕につける際の位置を調節して、実際に軽く動いてみて邪魔にならないことを確かめた。今日から君は俺の両腕サポート役だ、必死に頑張ってもらいたい。ダメだったら……その時考えるわ。
保管庫からバッグ経由で札束を出し、その場でニコニコ現金払い。レシートをきちんと受け取り財布にしっかり仕舞い込む。これは後で経費のクリアブックの中に入れることにしよう。多分こいつも二年払いの減価償却が必要になる品物だ。
さて、今日は素直に帰ることにしよう。帰る前に名古屋駅前で何か飯を見繕っていかないとな。持ち帰りにするか食べていくかはともかく、まずは名古屋駅まで行く。
名古屋駅前には無数にメシを喰う店があるのでジャンルや種類にも事欠かない。持ち帰りにしても色々選択肢があるが……せっかく名古屋に居るんだ、本場の味噌煮込みうどんでも食べて帰るか。
何故か複数ある本家本元や総本家のどれにしようかしばらく悩んだ後、総本家を名乗る所で名古屋コーチン親子煮込みを注文。名古屋コーチンのかしわと卵の親子なので今日は鶏肉三昧だな。ゆったりとした店内BGMと雰囲気の中、鍋が運ばれてくるのを待つ。
しばらくして、俺の目の前に煮えたての味噌煮込みうどんが現れる。早速頂きます……うむ、しっかりと鶏肉の食感と風味が卵と相まってまろやかでいてそれでいて強い旨味もある。中々今日は楽しめそうだ。ゆっくり食べて火傷しないように注意しながら食べよう……というところで電話が鳴る。
「はい、安村です」
「こちら清州ダンジョンですが、安村様のご連絡先で間違いございませんか? 」
「間違いないです。スキルオーブの話でしょうか? 」
予想外に早く連絡が来たな。さっきの今だぞ。よほどの理由があるんだろうか?
「実は【雷魔法】のスキルオーブがドロップされまして、出来るだけ近場で高く買ってくれる人をということなので連絡させていただいているのですが」
「なるほど、解りました。今名古屋駅に居るので、今日今から取引ということは可能ですか? 」
「少々お待ちください……」
どうやら取引相手に確認を取っているらしい。せっかく名古屋に居るんだし、そのまま【雷魔法】を受け取って帰れるならそれが一番手っ取り早い。上手いこと回ってくれるとありがたいのだが。
「お待たせしました。出来るだけ早い時間で、とのことですので今日中に取引が出来るならばそれでお願いしたいとのことです」
「解りました。では……三十分後位を目安にそちらへ向かいたいと思います。それでよろしいですか」
「了解いたしました。三十七番会議室でお待ちいたしております」
電話は切れた。今日はゆっくり夕飯も食えない日か。本当にスケジュールがパンパンだな。でも、今日お願いして今日中に取引が成立するという奇跡にむしろ感謝するべきだろう。この際味わっている暇はない、急いで食べ熱ッッッッ
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続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。
後毎度の誤字修正、感謝しております。





