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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第二十六章:ダンジョンシティ構想

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1242:ダンジョン誘致調整会議 二回目

 side:ダンジョン庁外務省国交省ダンジョン誘致対策会議


 会談からしばらく時間を空け、真中、小林、久多良の三人が再び一堂に会した。ダンジョン誘致対策会議……ということで、現状までで国交省側から提案されたダンジョン建設場所の確認作業である。


「とりあえず候補地を現段階まででまとめた案がこれだけある。全部で九ヶ所だ。一つずつ解説を入れていく。まず真っ先に申し込みがあった事例だが、テナントが抜けてデッドモールに陥ったケースだな。自力で立ち直ったケースとしてはピエリ守山が有名だが、こっちは加熱しすぎた周辺商業圏への相次ぐ参入によって完全に空洞化してしまった方のケースだな。上手く商業人口を引きこめなかったと見える」

「新しいテナントがダンジョンってことになるのか。ギルドもテナントとして入ればさらに賑わうことにもなるか。搬入搬出を行うにしても設備としてはそろっているだろうし好条件な場所だな」

「次は高速のインターチェンジすぐそばに出来た巨大な空白地。こちらは駐車場が自由に設計できることと、周辺施設への刺激も込めて、ということらしい。高速が通ったはいいが緊急事態……つまり地震や災害の時でもない限り基本的には使われにくい場所らしい。そこの空白地を利用してダンジョンを一から設計してみないか、ということらしい。次は……」


順番に各場所の周辺人口や土地の状態、使えそうな用途なんかを順番に資料を基に説明されていく。どこもダンジョンを誘致するだけのことはあり、真剣に困っているところや新規で何か新しい施設を建設する候補としてダンジョンを誘致してみる、という話も流れてきた。


「この短時間でよくこれだけの場所が出てきたもんだな。よほど産業に困っている地方があると見える。バブルは遠くなりにけりって奴かな。探索者人口の増加も見られてるだろうし、新しい第一次産業がここに誕生したってことで良いのかな、これは」

「やっぱりショッピングモールの撤退跡と、老朽化したニュータウンって場所が多いな。後は……高速のインターチェンジが出来たはいいものの周辺に何もない地域か。交通の面で利便性が高いのは間違いないな」

「だが、一から作るという意味では多少負荷がかかることになるだろうな。駐車場は確保できるものの、その他の施設についてはまだ見込みすら立たない形になる。ダンジョンが出来てからいろいろ動き始めるのでは出足が遅くなる可能性がある。あらかじめここに作ると声明を発表してから周辺に何が出来上がるかを見て行く必要があるだろう」


 その点で言えば既存の建物がまだ残っており、一テナントとしてギルドが入る、という形になるショッピングモールの跡地にダンジョンを誘致する、という案のほうが滑り出しは順調に行われることになるだろう。


「さて、こっちの手札は海外から受け入れたダンジョンマスターが現状三人。勧誘をしてくれているセノ氏と、玄関口になっているリーン氏を含めれば五人。でも勧誘と受け入れ口は確保しておきたいから三カ所をここから選ぶのか。てっきり作れる所を探すのに難航するかと思ったが、意外と好意的に受け入れられているのがびっくりだよ」


 真中が半笑いで書類に目を通しながら久多良に素直な意見を言う。久多良も両手を挙げて全くだな、というポーズ。


「そりゃ、あんな規模で会談ほのめかして明らかに人間じゃない人達……人達? まあいいや。彼らを用意して安全ですと言わせた以上、それに従って安全な施設として迎え入れようという魂胆なんだろう。もちろん、真実を言ってるかどうか疑うところも何ヶ所かあっただろうな。似たような困窮している場所に数ヶ所心当たりがある。そこは多分企業や自治体の初動が遅くて受け入れ態勢が整っていないところがいくらかってところか。まあ、世の中には前向きにとらえてくれているとみていいんだろう。それに、高輪ゲートウェイ官民総合利用ダンジョンのダンジョンマスターは美人だったしな。世論は美人に弱い」

「それに、まだ会談から一カ月二ヶ月ですからね。その間に書類をまとめて提出しろなんてことは普段から問題として挙げていて解決策を模索していたところがほとんどじゃないですかね。よくもまあ短時間でこれだけ候補地の算定が出来たとは思いますよ」


 今のところ仕事を与えられてはいない外務省の小林は同じく書類を見ながら、今は俺の出番じゃないから純粋にダンジョン庁と国交省の息のかからない所からの第三者の意見として物申す立場となっている。


「あっちとしては今すぐにでも……というところなんだろうけど、ダンジョン自体を作る作業もあるからな。あっちはあっちで新熊本第二ダンジョンみたいな形で通信が出来てエレベーターが最初からついてて、という条件をお願いしている立場だ。実際に作り始めて形になって、モンスターを配置して、宝箱の仕組みをお願いしてもらって……とあっちはあっちでやってもらうことが多い。そんなに急ぎでやる必要はないから期限を切ることもなく、引き続き情報収集にあたってもらうことにしよう」

「より細かい条件に付いて詰めていくってのも必要だからな。現状あがってきている情報だけでは面積と交通事情ぐらいしか分からん。実際の土地の様子や周辺の様子、実際に出来たらどう思うか周辺住民の心情を聞いたり、やることはそれなりにある。とりあえず必ずここには建てよう! って部分があれば今のうちに詳細情報を詰めていく段階にするが、どうするね? 」


 久多良としては当初は土地が提供できた時点で半分は仕事は終わり、後は周辺住民の事情調査だけで良い……と考えていたが、予想外に陳情が多いことと候補地もどんどん出て来るしというわけで、しばらく仕事が減りそうにないのが実情である。


「ふむ……人口は向こうからやってくるとして、やはり周辺事情は最初から考慮しておくほうがいいのかな。後から道が作られるほどの需要見込みは薄いと考えるべきだろう。だとするとやはり最初から道が出来ているインターチェンジ沿いのここのほうが優先度は高いな」

「そうかもしれませんね。まず第一はダンジョンを持ってくるための土地の確保、二番目が周辺にホテルや民宿、ウィークリーマンションなんかが作られる用意があるかどうか。三番目が流通路の確保ですからね。その時点で一番目と三番目を満たしているこの場所は現状最適ってところでしょうか」


この三人はまずダンジョンがあり、そしてダンジョンの周りが発展していく新しい形でのニュータウンシステムの形成、という構図を描いていた。その構図を一番描きやすいのは、既に出来上がっている交通網を利用することであり、周辺住民の不安はこの間の世界的に注目を浴びた会談で払しょくされていると考えている。


「そんなところかな。第一候補はここで良いとして……後はどうしようね。もうちょっと情報を煮詰めてもらってから選定することにするかい? それともそれ以外になにか問題があるってことだろうか」

「ダンジョンマスター側の事情についても考えておかないとな。もしかしたら向こうにも言い分はあるかもしれん。いざ紹介してみてここはいやとか言われる可能性だってあるからな」

「なるほど、それは考えてなかったな。向こうにも選択する権利はあるだろうからね。その点も考慮しないといけないか。一方的に押し付けてここ! となって実際に探索者が潜りに来るかどうかもまだ未知数だし、新熊本第二ダンジョンみたいに前からいた探索者がまた通いだすという可能性は低いからね。新しいダンジョンの売りについてはあらかじめダンジョン庁のほうでお披露目するってことにすればなんとかなるかな? 」

「まあそんな所だろう。安村さんだったか? 彼の伝手でこっちからの希望場所の情報を送って向こうの反応をみて、それから誰が来るかを選別してもらうってのも手だ。ダンジョンってのは造りながら拡張もできるんだろう? だったらまず、そこに居住してくれるダンジョンマスターを確実に絞ってから、その後に拡張をしていってもらうってのも手だと思うぜ」


久多良としては誰がどう担当してくれてもいいとは思っているので、その辺はダンジョンマスターの好みや真中の独断で決めてくれていいとは思っていたが、真中としてもできるだけ多くの人が納得できる形で収まるのが一番だとは思っているので、ダンジョンマスターの好みにあわせて設置してもらう、という意見は有り難い助言だった。


「じゃあ、そういうことにしておこうかな。安村さんには充分な重荷を背負ってもらっているからいい加減楽にしてあげたいんだけどね。このプロジェクトが一段落ついたらそれで終わりにしてあげたいところだねえ……と、そうだ。今のうちに渡しておこう。この件に関して横槍を入れられたり、最悪非合法的な手段で妨害する輩が現れないとも限らないわけだが……それの対策を持ってきた」

「確かに。俺が動けなくなった代わりに繰り上がって成果を挙げる、ってことになれば出世もするだろうからな。何らかの手で妨害してって可能性はないではないだろうな」


真中が懐から二対三個、合計六個の指輪を取り出す。安村達から買い上げた物理耐性の指輪と魔法耐性の指輪だった。


「そこで、だ。少々値段は張ったが身を守るためのお守りだとでも思って身につけていてくれ。いわゆるスキルの三分の一ぐらいの威力らしいが、何も身につけてないよりマシだろうし、身内の安全は担保したいからね」

「これか、三権の長が二つずつ身につけてるって噂の防御リングってのは」

「そんな立派なもの僕らが着けててもいいんですかね」

「むしろ、つけていてくれるからこそ安心できるという面もある。フリーサイズで指の形に収まるから好きな指……手が嫌なら足の指でも構わないらしいよ」

「なるほど……ちょっと試してみるか」


久多良は指にはめる前に壁を軽く殴って見せ、指輪をつけた後にもう一度壁を殴ってみる。


「これは、身に着けるのとつけないのとじゃ大違いだな。良いもんをもらったな。これはプロジェクトが終わったら返却しなきゃいけないものなのか? 」

「体面上はそういうことになっている。プロジェクトが二次三次と続いていくならそのままつけておいてもらって構わない、というものだ。ちなみにお値段生産者価格で一つ一億だから、間違っても売るなよ? 」

「二億で身の安全が買えるなら安いものだ。精々嫁に没収されないように気を付けるさ」

「僕までもらっていいんですかね? この三人の中ではまだ一番何もしてない立場なんですけど」


久多良の反応と対照的に小林が不安がる。


「小林君は忙しくなるのはこの後だろうからね。今のうちに保険はかけておこうって話だからね」

「そうだぞ? 実際にダンジョンマスターが引き抜かれてきていると気づかれて表舞台に立つのはお前さんなんだからな。その間のやりくりで命を狙われるならお前さんが一番危ない立場になる可能性は高い」

「うーん、今からでも辞めたくなってきましたよ」

「そう言いつつ指輪に早速指を通してるじゃないか」

「説明してくれたおかげで怖くなってきましたからね。今にもこの部屋ごと爆破されかねないような勢いで脅されたら誰だってすぐにはめたくなりますよ、もう」


三人がそれぞれ指輪をはめてお互いの無事を願う儀式は終わった。


「さて、誘致の話はここまでにして、次の話に移ろうか。作ってもらうダンジョンの構想の話だ。これは私が主に担当することになっているが、既にダンジョンマスター側には大まかなダンジョンの構想を練るべく大雑把な内容を伝えてはいる。俗にいう宝箱、宝箱があるようなダンジョンだ。既存のダンジョンにはなかった設備であり、これは新熊本第二ダンジョンにも実装されてない機能でもある。実際のところはどのような宝箱の中身を置くかはダンジョンマスターに一任する形になっているが、問題は武器や防具の類が出土する場合についてだな」

「ゲーム的に言うと、どんな武器防具か解らないから鑑定するやつが必要ってことか? 」

「たしかに、何か特殊な効果が付与されていたりしても、使ってみるかその機能を使用するにあたるキーワード的なものを判別可能になるまでは使うことは出来なくなりますね」


ゲームとしてとらえればそう難しい話ではない、という形でこの話題には小林も入り込む余地は出来た。


「なので、現状はその階層ではドロップしないドロップ品や魔結晶、ポーションなんかを今のところ主品目として生産してもらうことになると思う。もしも【鑑定】について絶対に必要なものである場合、大梅田ダンジョンに所属している猛寅会というクランの南城さんしか現状日本では鑑定できないということになっている。その辺をどうするか、ダンジョンマスター側に問合せ中だ。もしもどこかで【鑑定】をする人材を手に入れられる機会があるならば、ダンジョン庁職員として新たに雇用を考えるつもりでいる。それから……」

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

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鑑定用の設備とか? 入口すぐとか各セーフティエリアに設置してある台座に置いて、魔結晶を一定数入れると判定される。 レアリティが高いとか強力な能力が付いている、もしくは複数の機能が付いている場合は消費さ…
 鑑定に苦労するなら、鑑定用アイテムですねぇ。  回数制限をつけた消耗品か、回数制限無しの虫眼鏡とか他の方が出した眼鏡とかの装備品にするかですかねぇ。
> デッドモール」 アンデッドのモグラ > 新しいテナントがダンジョン」 居抜き物件を紹介されるダンマス > 出来た巨大な空白地」 何があったの > 老朽化したニュータウン」 それはオールドタウ…
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