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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第二十五章:ダンジョンマスターさん、いらっしゃい

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1235:エンペラ収集家

 ギルマスとの話し合いも終わり、一階に戻ってきた。休憩室で冷たい水を飲んで一区切り。さて、これから六十四層に潜っていつものエンペラ集めと行くか。


 再び入ダン手続きをする。二回目になる入ダン手続きにちょっと気になったのか、なじみの受付嬢から質問される。


「今日は二回に分けて入ダンですか? 」

「一回目はギルマスが来るまで待ってる間に一仕事済ませてきたんですよ。今からが本番です」

「そうですか、ご安全に」


 リヤカーを引いて一層から六十三層まで倍速で一気に駆け抜けるよう倍速モードを押してから燃料を少しずつ入れていく。どうやら、亀の魔結晶とワイバーンの魔結晶でちょうどいいぐらいの燃料使用量になるらしい。これからは燃料のやりくりも色々考えて行かないといけないか。組み合わせが出来るだけの色々な大きさの魔結晶は燃料費として色々突っ込んであるので、組み合わせと値段、魔結晶の持ってる燃料を色々やりくりしながら動かさないといけないだろう。


 七十層直通の場合はざっくり計算して十五万円分の燃料が必要になる。それを考えると、六十八層辺りのモンスターも時々は倒して燃料費として回収しておくのがみみっちいが確実に収入を増やす手段になりそうだな。


 さて、短くなったとはいえ二十分ほどある。クロスワードを一つか二つは解けそうだな。と、取り掛かっているところでネアレスが転移してきた。


「ご無沙汰です。ちょっと失礼しますね」

「やあ、何か報告するようなことでもあるのかな? 」


 ネアレスが一人で来るのは珍しいというわけではないが、意図的に芽生さんと会わないように出て来るようなイメージがある。


「一応ご報告をしておこうと思いまして。新しいダンジョンマスターがこちらに来られたので、私と一緒に新しいダンジョン作りを始めていますから頑張って今度は追いつかれないようにしていこうと思っています」

「宝箱についてのあては付いたのか? 真中長官の思い付きで設置されるような形になるとは思うし、出たり消えたりする機構なんかを組み込む必要があるから大変だとは思うが」

「そうですね、大枠は決まった感じです。後は探索者の反応や進捗を見ながら何を入れていくかを決めていく相談がありますが……安村さんはどんなものが出そうだと思いますか? 」


 宝箱から出るアイテムか……貴金属はともかくとして、武器なんかが出た場合は使い手によってはそのまま使うだろうし、使わない武器が出た場合その武器をどうすればいいかなんかを考える必要があるだろうな。


「武器防具、貴金属、ポーション、魔結晶、あたりかな。ただ武器防具は出たからそのまま使うって可能性は低いから出る頻度は高くなくても良いかもね。メインは魔結晶とポーション、それと少量の金なんかが思いつくな」

「やっぱりそのあたりになりますか。そんなもんでいいんでしょうかねえ」

「ダンジョンをくまなく探索させるという意味でも、ダンジョン全体を使ってもらえるようにはなるな。特定の場所に設置するとなっても宝箱があるとなるとワクワクするから、隅から隅までダンジョンを広く使おうとするだろうしな。作った側も全体を利用してもらえるようになる方がうれしいんじゃないか? 」

「まあ、そうですね。特定の階層では通り道にしか人が通らない、なんてことは浅い階層だとよくあることでしたので。その階層にも宝箱が出るとなったら隅々まで宝箱を探しながらさまよってくれるようになるかもしれません」


 そういうネアレスはちょっと嬉しそうである。やはりやることがあってそれに邁進している間というのは地道な作業でもなんだか楽しくなってくるものなのだろう。


「まあ、こっちも受け入れ態勢がすでに万全というわけでは無さそうだから、ゆっくり構想を練ってくれればいいよ。先に階層を並べておいて後で宝箱機能をつけたりすることができるかまではわからないからあんまり深いことまでは言えないんだけどね」

「そうですね。その辺はこっちに任せてもらうとして、中身の相談はまた来ます。いわゆる一品物の装備なんかを出してしまっても問題ないかどうか、辺りを聞きに来たのですが」


 一品物の武器防具か。ダンジョン産とは言え合わない武器を手に入れた場合はどのようにして武器防具のやり取りをしていくか、なんかの課題は残っていくだろうが、ドロップ品として査定にかけるのは難しそうだな。だがそれでも、ダンジョンから出た装備なんだからその階層よりも少し先までは充分効果のある装備品として保障されているんじゃないかという面も考えられる。賛否はあるが、ないよりはあったほうがおもしろいだろう。


「それもありなんじゃないかな。ダンジョン産武器のすばらしさがもっと広まれば、その宝箱目指して人も増えるだろうし、そもそも探索者が行きやすい所にダンジョンを設置してもらうように計らう予定なんだから、ある意味ではある程度の繁栄は約束されているとも言えるな」

「そういわれると気が楽になります。ちょくちょくと連絡を取り合いながら……というのは難しいでしょうが、少しずつ詰めていければいいと思っています。では、今日はこの辺りで失礼します。また何かありましたら相談に乗ってくださいね」


 ネアレスはそれだけ言うと転移していった。あんまり頻繁に来られると困るが、相談に乗るぐらいなら俺でもできる。もっと本格的な話し合いが必要なら七十層で真中長官を呼び出したうえで通訳をしつつやり取りを詰めていく必要があるだろうな。


 さて、こっちもちょうどいいタイミングで六十三層に着いた。早速リヤカーを下ろして……まずは軽く一時間ほど動いて、その後昼飯だな。


 いつものテンションで六十四層へ向かい、次々と手早くモンスターの相手をしていく。午前中の分は後で休憩も入れるので早めに動いてしまっても体力は回復できるだろう。相手はいつもの亀とワニ。雷魔法と圧切で問題なくズバズバとクリアしていく。そういえば鬼ころし本店にも亀の甲羅を使った防具はまだなかったな。


 使い所があるかどうかわからないが、ないなら次回の価格改定で値段が下がることになる。今のところは暫定価格という辺りだろう。ただ、圧切できっちり切れるだけの防御力しか有していないというのを考えると、モンスター相手の耐久試験をしておかないと実戦用の装備としては少し不安な面が出てくるだろう。


 そういえば、装備を実際に試すために探索者に持ってもらって使い勝手の感想を聞いて次の装備の参考にする……なんていう仕事もありそうではあるな。俺にもその内マスコミが勝手に広めた俺への情報を元に装備品メーカーから回ってくるかもしれない。そうなったら……いや、でも既にスーツに自前の特注武器という装備で俺も芽生さんも活躍してるわけだから、これ以上の装備を求めるとなると見た目が不格好になるか、よほどの装備品で固めない限りは難しいだろうな。


 あんまり素材が高級で最深層のアイテムだからといって使えるかどうかはまた別の話。ワイバーン素材はきちんと装備化されていた。俺が深く来すぎているおかげで装備の更新のほうが追いついてないって可能性もあるわけだな。まだそれを見極めるのは早いか。エンペラだってこれでもまだ高いと判断されたら更に安くなるドロップ品でもある。


 フカヒレは……さすがに高級素材でもあるし食料品なだけあって人気は高そうだ。フカヒレの安定供給もいずれ必要になってくると考えれば、やはり【雷魔法】の強化は課題だろう。雷魔法五重化でどこまで火力が上がるかまでは解らないが、少なくともエイ相手に一撃で倒せるだけの火力は欲しい。芽生さんは何を頼むんだろう。水魔法の四重化か、魔法矢の三重化か、それとも土魔法を二重化するか。


 六十五層から六十八層にかけての考えだけで行けば土魔法二重化がポイントだが、どうも土魔法はそれほど人気がある魔法ではないらしいし、順当に【水魔法】だろうか。もしくは、ドロップする場所が限定されやすい魔法矢を三重化したほうがいいか。


 急ぎ気味できっちり一時間、体と収入を仕上げると六十三層に戻ってきて昼飯。アツアツのあんかけを涼しい六十三層で食べる。体も温まってちょうどいい。これから仕事をしていくうえでも体は温まっている方がより活動に適した形になる。


 今日も一日エンペラを集めると、納品したエンペラはここ一ヶ月ぐらいの間で六十キログラムから七十キログラムほどになるだろう。それだけあればしばらくは製造元に原料を納品することは出来るだろう。


 頑張っているぞ、と自分にエールを送りながらあんかけ焼きそばを食べる。これまた作ろう。今度は中華飯の具でも良いな。あんかけ焼きそばを今度からローテーションに入れることを固く決意。早速ローテーションレシピの入った袋にメモ帳を破って「あんかけ焼きそば」と記入すると袋に入れておく。


 久々にローテーションに変更が加わった。今後は袋の中華麺も保管庫に忘れずに詰め込んでいくことにしよう。食生活の充実はダンジョン探索活動の活力にもなる。今日は中々良い昼食を作れた自分を褒めようと思う。


 午後からはいつものペースで六十四層を回る。急ぎ過ぎず、ゆっくり過ぎず、良い感じのところでぐるりと回っていく。今日も三時間と二時間の二ルートを回っていく予定だ。体の調子も良いし、胃袋もしっかり落ち着き始めている。三時間をゆっくり回り、二時間をひたすら全力で回るルートを選択。これなら後半スタミナ切れになったとしても、早めに切り上げて今日のお仕事おしまいということにもできる。


 さて、今日もしっかり稼がせてもらいますか……と。そういえば、結衣さんにエレベーターの仕様が更に変わった事、伝えてなかったな。ギルドから報告してくれるようになったらそっちが正しい使用法として使えるようにはなるだろうが早めに連絡は出来るようにしたほうがいいな。


 今のうちにスマホに文面作っておいて地上に戻り次第伝わるようにしたほうがいいな。ちょっとモンスターが近寄らない内に送信予約だけしておこう。あぁ、こういう時に連絡できるように、やはり既存のマップにも通信が欲しくなるな。その内対応可能になってくれるか、いっそのこと踏破して一から作り直してもらうか、という選択もありうるか。しかし、踏破してしまったらその間俺はどうやって稼いで行けばいいのだろう? 清州ダンジョンに通うことになるのか?


 うーん……やはり小西ダンジョンにはそのままでいてもらうほうが一番都合がいいな。マップの狭さといい既に潜り込んでいる階層といい、置いてある荷物の都合といい、いろんな理由で小西ダンジョンに最適化されてしまっている自分が居る。もうこれはこのままずっと小西ダンジョンの子であることに疑いを持つ必要はないんじゃないのか。もし小西ダンジョンが踏破しなければいけないような話になったら……きっと大ごとになるんだろうな。荷物を回収するためのエレベーターの往復で上から下への大騒ぎだ。


 考え事をしながら亀を輪切りにし、ポーションを頂く。ここでは中々でない貴重な収入源であり、貴重なポーションでもある。もし突然難病にかかったとしても、こいつさえあれば一本で完治とまではいかないまでも寛解する可能性は高い。その為に査定にかけずにストックしてある本数があるんだ、充分にそれを活かす機会がないのが一番だが、そこはそこ、予備は予備、ということで気にせず保管庫の肥やしにしておこう。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 三時間のゆっくりした通常の探索を終えた。ここからは運動強度を上げて二時間のガチ探索タイムだ。歩行スピードを上げて魔力量の許す限り高速でモンスターを倒してドロップを拾っていく。二時間きっちり走り切るため、少し休憩してからのダッシュ大会だ。ここでのダッシュ大会は正直に言えば儲かる。フルタイムダッシュすることは魔力保持量上難しいが、二時間ぐらいならなんとかなる。


 身体強化も以前ネアレスに注意されてから上がったし、自分の上限ギリギリが何処まであるかを量るにはちょうどいいタイミングでもある。芽生さんが隣にいるとフルタイム全力ダッシュで出来るんだが、そこまでしてここで稼ぐなら七十一層を探しに行きたいし、指輪の折半分の査定も行わないといけない。


 まあ、今は金稼ぎに集中しよう。集中すればするだけ査定金額は上がるしきっちり戦い切って次の身体強化アップにもつながる。ソロの時ぐらい自由に走り回れる環境が揃っている、というのは重要なのだ。

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

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アイデア思いついたので、先の話に既出ならスルーで。 適当な銃や杖っぽいアイテムを作ってもらって保管庫の射出をアイテムの効果ですと誤魔化す手段に。 同じく適当な袋を魔道具っぽいアイテムとして作って保管庫…
 宝箱の中身……1つ先の階の敵のドロップ品とか、今のエリアであると役立つ補助具とか、次への階段の方向を示すコンパスとか、最寄りの敵の方角を示すコンパスとか、普通に敵を倒すより低い確率だけどその階層やダ…
宝箱システム、ゲーム的思考で行くなら、ユニーク装備でなくても、Diabloみたいにランダムに振れ幅のあるprefix,suffixで能力を決めてアイテムに付与して、「同じアイテムだけど効果が違う」って…
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