1231:二人で一緒に
帰り道、結衣さんから着信があった。たまにはイチャイチャしに行っていいですか? とのこと。今日は遅かったから家にいると思ったのだろうが、素直にいいよと返事。ただし、まだ帰り道だからしばらく家に着くまでかかるかもと伝えたら、家で待ってると言われたのでまっすぐ家に帰ることにする。
結衣さんとは最近あまり時間が取れていない。結衣さん達が攻略を進めて俺に追いついてこれるように頑張っているのが理由でもあるんだが、どっちも愛すると決めた以上、向こうから会いたいと言われて断る理由なんて何が有ろうか。今日は一晩ゆっくりしよう。
流石に明日は休みだな。今日一日に色々詰め込み過ぎて明日まで疲れが響きそうでもある。明日はゆっくり……今夜はゆっくり出来そうにないが、結衣さんには精々精神的疲れを取るための栄養補給をさせてもらうことにしよう。
コンビニでちょっとつまみ食いしていくか。家に帰っても作りたいものは思い浮かばないし、急いで帰ってきたのでなんだかお腹が空いている。今日一日フルに動いた分のカロリーが補給できてないのかもしれない。
スナックチキンとおでんを色々と買うと、荷物片手に帰宅する。家の中の電気は点いてたので結衣さんがもう中に居るんだろう。玄関を開けようとしたがカギは閉まっているのでちゃんとしてくれているらしい。
「ただいまーっと」
「おかえりー」
声をかけると返事。ちゃんと結衣さんが居てくれたらしい。奥から出てきたということは庭に居たのかな?
「大分待たせた感じ? 」
「ううん、リーンちゃんと遊んでたから大丈夫。話し相手が居ると暇つぶしが出来て助かるわね」
そうか、半同居人がいたか。ありがとうリーン、明日の朝ご飯のジャムは大盛にしてやるからな。
「リーンちゃんを通して何してたかまでは聞いてるから。遅くまでお疲れ様」
「そうか。じゃあリーンから聞いてるかもしれないけど一応報告。七十層まで到着してきたよ」
「また離れられちゃったわね。私たちも今年中に七十層に到着できるのかしら」
「うーん……しばらくは七十層から動きそうもないし、そっちの年内に追いつくという目標は達成できないとしてもその後で追いつくのは確実だと思うよ」
ミルコもしばらくは休む時間が必要だ。七十二層まで作り切って一息ついて、みんなに献上されたコーラとミントタブレットをしっかり補充して、気力を回復したらまた続きの階層を作ってもらうという作業が待っている。その間ぐらいゆっくりしていてもらおう。
「で、今日はどうしたの。急に来たいなんて言い出して」
「最近構ってもらってないなーと思って。大事な日々を好きな人と過ごすことも必要でしょ? 」
「まあ、そうだな。最近芽生さんの夏休みやら会談やら七十層行きやらで忙しくてゆっくりする時間がなかったのは確かだな。それに布団屋のほうも好評らしくて納品に行ったりもしたし……俺あんまり休んでないかもしれないな。明日は休みのつもりだけど」
「本来は一泊の予定だったんでしょ? それをギリギリで帰ってきたんだから随分疲れていそうな気はするんですけど」
結衣さんがソファで膝をポンポンしてくるので、そのままお世話になる。芽生さんの時と違って天井が良く見えるが、直接顔が見えるのでお互いの表情を確認しやすい。
こっちを眺めてる結衣さんのほっぺたを軽くつねる。笑顔で手をつねり返された。
「イチャイチャしてるからって何して良いってわけでもないんだけど」
「なんとなく、かな。ふれあいは大事だから」
起き上がってハグ。ギューッとハグ。結衣さんは相変わらずシトラス系のいい香りを漂わせている。
「結衣さんの香水、いつも同じものをつけてくれてるからわかりやすい」
「これ気に入ってるのよ。あまり香水くさいって言われないし、汗かいても多少誤魔化しきくし。ダンジョンに潜ってる都合上、毎日お風呂に入れるわけでもなかったりするしね」
そういえば、結衣さんには先に報告しておくべきだな。耳傍でそのままささやく。
「結衣さん、今度エレベーターに乗る時、同じボタンを三回連続で押してから階層を選択すると、文字盤が青く光って二倍の速さでエレベーターが動くようになったよ」
「それは重要情報ね。で、二倍速のデメリットはあるの? 」
「燃料を三倍消費する、かな。たとえば一層から五十六層までだと八階層分経由だから、十二万円分相当の魔結晶が必要になるかな」
結衣さんが頭の中で軽く計算して、すぐに答えを出してくれた。
「でもその時間を探索に充てられるなら充分に儲けは出るわね。その話、ギルドにはもうしたの? 」
「まだしてない。明日休んで明後日にでも正式に報告に行く予定ではある……と、そういえば解除条件聞いてなかったな。エレベーターを倍速から等速に戻すにはどうすればいいんだろう」
「その辺はちゃんと聞きだしておいてね。安村さんのことだから、七層まで等速で行ってダーククロウ狩って、その後倍速で深くまで行く……って形で運用しそうだけど」
読まれているな、全くその通りだ。
「さて……冷めないうちに夜食をちょっと入れたい。おでん買ってきたから適当に食べよう」
「私の分もあるの? 」
「いろいろ買ってきたけどさすがに二人分としては物足りないかもね。でもまあ、お腹空いたし、お風呂も入りたいし、もう遅いから色々と……くぁ……眠気も来てる」
実際もう午後十時に差し掛かろうとしている。普段なら睡眠の時間に入っているころだ。調べものがないと日付が変わる前に眠るのが日常だが、明日は休みだし几帳面に毎日同じ時間に眠る必要もないか。もうちょっと頑張って、せっかく来てくれた結衣さんのためにも一頑張りすることにしよう。
おでんを二人で食べる。少し冷めてしまっていたので器を入れ替えてレンチンして、それぞれ気になった具から食べ始める。
「やっぱりおでんもコンビニによって違うのかしら? こう色々と」
「大昔にコンビニでバイトしてた頃の経験から言えば、夜ギリギリ日付が変わるぐらいまでおでん鍋で煮こまれている大根は最高に美味しかったな。後はだしの具合がメーカーでそれぞれ違うらしい」
「どこが美味しいのかしら……今度食べ比べでもしてみようかしら」
「食べ比べするのは良いけど、具を入れる時間が統一されてるわけじゃないからな……うん、この大根はよく味染みてて美味しい。柚子胡椒が良く合う」
「卵も中々味染みで美味しいわね。いいタイミングで買ってこれたってところかしら」
うむ、牛すじも中々美味い。半分食べて結衣さんに残りをあーん。結衣さんが残りの牛すじを食べる。
「あ、これも美味しい。やはり今日のおでんは当たりみたいね」
「そうみたいだな。もしかしたら店舗によって具を投入する時間帯が決まっていて、一番おいしい時間帯もそれによってズレてくるのかもしれない。今後研究しようかな、一番近くのコンビニではどの時間帯に一番美味しいおでんを喰えるのか」
「地味だけど悪くない楽しみ方ではあると思うわ。ただ、朝一は多分出来たてだからいまいち味も染みてなくて美味しくなさそうなイメージはあるわね」
おでんについて語り合ったところで風呂が沸いたので入る。何故か結衣さんも入る。
「結衣さんお風呂まだだったの? 」
「一応入って来たわよ。でもせっかくだし、七十層お疲れ様の背中ぐらいお流してもご都合は悪くないでしょう? 」
「助かる。最近背中の真ん中あたりが手が届かなくなってきたんだ」
背中に手を伸ばして、ギリギリ繋げなくなってきたことをアピール。手をシャカシャカしてちょうど真ん中あたりが届かないぞ、というポーズをしておく。
「じゃあそのあたりを念入りに……前に比べて背中も立派になったきたわね。肉がそぎ落とされて理想的な体になってるって感じがするわ」
「もうちょい肉が有ったほうが形になるだろうし、ダンジョン探索は長丁場になることが多いからそれなりにカロリーとして蓄えておいたほうがいいんだろうけどね」
結衣さんがスポンジで背中を洗ってくれている。背中のアワアワ感が気持ちよさを教えてくれている。手が届かない所を中心に洗ってくれている。全体を一通り洗ってくれたところでスポンジからナイロンタオルに持ち替えて背中をごしごし擦られ始める。
「おかゆいところはございませんかー? 」
「ちょうどいい感じ。なんか全身気持ちよくなってきた」
背中を洗い終わって背中の泡を洗い流され、ピカピカになった俺が今度は前を向く。
「息子のほうもお元気みたいね」
「疲れマラって奴かも。やっぱり階層を渡り切るのは色々疲れるらしいな」
結衣さんがそっと息子を握り洗い始める。
「これから使うので丁寧に綺麗にしないとねー」
風俗に行ったことはないんだが、そっちもこんな感じなんだろうか。息子以外も洗ってくれるのは嬉しいが、流石に息子を直接洗われるのは恥ずかしさのほうが先に来る。お互い見せるものは全部見た間柄ではあるが、一線は引いておかないといけない気がする。
「そっちはいいから。自分でやるから。細かい部分が解る分自分で洗った方が効率いいから」
「私が洗ってあげたいのよ。元気なおかげで洗いやすくていいわね」
なんかこう、背徳的な気持ちが更に加算されてより元気になっていく。もう十年若ければ腹にペチンと当たりそうなぐらい元気だ。流石にそこまでの力はもうこいつにはないが、同年代の連中に比べれば元気である可能性は高い。俺ももうちょっとこっちも元気であるように色々なサプリメントを摂取するのもいいかもしれないな、マカとか、すっぽんエキスとか。
「もっと元気になることって出来るのかしら? 」
「手を尽くせばいくらかは。やってみるのもいいかもしれないな。とりあえず今日は今日で頑張ることにしよう」
全身を丁寧に洗われて、今度は結衣さんを洗う番。あれだけ全身をくまなく綺麗にされたのだからこっちも精々綺麗にしてやるとしよう。
「そこは……まだ早くない? お風呂から出てからでも」
「そう言われてもなあ? 俺も恥ずかしい所を丁寧にそれはもう綺麗にされたわけだからこっちもお礼に綺麗にしてあげないと」
「ちょ……あ……うん……そのまま続けて」
結衣さんを気持ちよく全身くまなく洗った。どこをかは言わないが、全身は綺麗にしてあげることが出来たが、綺麗にした先から汚れて……汚れではないがどんどん気分が高まってくるのを感じる。
湯船で充分温まっている間もお互いを離さず、いろんなところにキスをしていく。湯船の縁に結衣さんを座らせ、体を冷やさないように適度に湯をかけつつ、全身にくまなくキスをしていく。が、キスマークは付けないでおく。そんな目印やマーキングをしなくても今のこの結衣さんは俺のものだ、と言わんばかりに全身に丁寧に口づけを済ませていく。
「そこまで口づけされるとちょっと照れるわね」
「それだけ大事にしたいってことだ。それに最近構ってあげられなかったからな。ちゃんと大事にしたいって気持ちを行動に移してるだけだ。そのまま素直に受け取ってもらえると嬉しいな」
「こんな貧相な体でも? 」
自分で貧相という身体だが、無駄な肉はなく、胸も控えめでスレンダーを見た目で表現しているかのような全身。あばらが浮くほど痩せてはいないし、丸みを帯びた女性らしい腰、そして太腿もしなやかな筋肉に包まれている。
そしてその筋肉の間に顔を近づけ、そこにも口づけをする。
「そこは……まだちょっと早くない? 」
「よし、じゃあここは後にしよう。残りはゆっくりベッドで……な」
風呂から上がると非常に丁寧にウォッシュ。全身の水分を綺麗にふき取るようにして、一滴の水分も残らないようにかけてみた。
「ウォッシュのほうも随分上手になったわね」
「二重化させたからな。奥の奥まで綺麗にできるかもしれないぞ? 」
「それは……ちょっとたのしみかも」
早速裸のまま結衣さんをお姫様抱っこしそのままベッドに寝かせる。ぽふっとベッドのスプリングで跳ねた結衣さんを横目に、枕と布団を保管庫へ。これからしっかり汚すからな。汚したくないものは出来るだけ逃しておくに限るし、布団にウォッシュをしたことで効果が薄れる可能性もある。できるだけ布団と枕にウォッシュはかけないという強い意思はそのまま残しておくことにする。
そんなよそ事を考える余裕があるということは、完全に興奮しきっていないということだ。まだ理性で抑えられる部分はある。ただこの先は……ちょっとどこまで理性を保てるか解らないかも。
「来て……ゆっくりさせてあげる」
作者からのお願い
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続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。
後毎度の誤字修正、感謝しております。





