1224:おできになられました
ダンジョンで潮干狩りを
Renta!等いろいろなサイトで発売中です。是非とも続刊のためにもご購入のほうよろしくお願いします。
今日も朝を迎えて、真っ先に枕を見る。枕元のプレゼントが突然増えるようなことはなかった。軽くひっぱってみても問題はないことから、少し安心する。一応生え際もチェック。根元を持って軽く引っ張ってみて、ちゃんと抵抗があることを確認。うむ、ヨシ。
朝のお祈りを済ませて今日もトーストを……三枚焼いたところで、今日からは三枚で良いんだったな、ということを思い出す。今日からはまた二人で朝食だな。目玉焼きも二つ焼くとピーラーで千切り風にしたキャベツの上に乗せ、毎朝の活力の完成だ。一枚にイチゴジャムを塗り、残り二枚にバターを塗って……バターとジャム、という組み合わせもやってみるか。イチゴジャムとバターのトーストを一つ用意すると、庭に出てダンジョンに入る。
「朝ご飯だぞー」
「わーいなの。おはようなの」
リーンがいつも通り応対に出てくるので、リーンと一緒に朝食を食べる。
「昨日小西ダンジョンにセノが会いに来たんだが、何か連絡はあったか? 」
「きのうはなにもなかったの。なのでリーンはなにもしらないの」
そうか、俺のほうへは緊急連絡みたいなものだったわけか。まあ、ここに呼び寄せることになるんだろうし、実際にダンジョンマスターが来るような話になればリーンに連絡を入れるはずだ。その時までは連絡はないのかもしれないな。
「そっか、じゃあ問題はないな」
「セノはなにかいってたの? 」
「後二人ほど候補者を見つけたと言っていた。もしリーンにも連絡が来てるなら近々来日するのかなと思っただけだ」
「それはだいじなごほうこくなの。セノはすこしほうれんそうがたりないの」
全くだな、リーンが基点になって話が動いているのだから、リーンを間に挟まずにネアレスとセノだけで終わらせていい話ではない。リーンも大事な仕事をしているという認識は持っている様子。ちゃんと仕事しててえらい。
朝食を片付け、昼食の準備に入る。今日は何を作るかな……シチューか。今日は具材の食感が残るようにほどほどの煮込みで終わる感じで作ってみるか。ちょうどブロッコリーもあるし彩りもある。白いスープに浮き上がる鶏肉とジャガイモ、そして赤い人参と緑のブロッコリー。うん、スタンダードなレシピだ。炊飯器を稼働させると早速昼食づくりに取り掛かり、鶏肉の解凍から始める。
そういえば、鶏肉に当たるような肉は今のところ無いんだよな。ワイバーンは鶏肉って感じはあまりしないのでアレもどっちかと言うと高級な獣肉って部類な気がする。高級鶏肉……あまりイメージが湧かないな。鶏肉自体が安い肉という認識があるからかもしれないが、この先鶏肉に類するような肉が手に入る機会があれば、是非中華屋の爺さんに唐揚げにしてもらおう。きっと美味い、いや絶対美味いはずだ。
ジャガイモを細かく刻み込んで早く煮えるようにすると、人参も小さめに切っていく。きょうは形の残るシチューだが、煮込む時間が短い分、具材も小さくして柔らかくなるまでの時間を短くしていこう。
鶏肉の解凍が終わったらこっちも小さめに切り、肉を焼いてしっかりと火を通す。火が通ったところで一旦下ろしてそこに玉ねぎを入れてさっと炒めると、人参とブロッコリーを焦がさない程度に炒めて、その後加水してクリームシチューのルゥを入れてとろみがつくまで煮込む。その後で少し牛乳を足して更に煮こめば完成だ。
せっかくなので少しチーズも足しておこう。チーズソースを適量入れて全体をかき混ぜて……うん、いい香りだ。シチューの香りとチーズの香りが両方立ち込めて、今食べたいという欲求が湧き上がっている。
グッと我慢だ、今はまだその時じゃない。炊飯も終わって出来上がったご飯を保管庫へ、深皿とスプーンの確認をして、シチューも焦げない内に温かいのをイン。残りの時間でサラダを作る。レタスとトマトときゅうり、キャベツの千切りを用意してチーズソースと謎ドレッシングの両方をかけてソースの彩りも含めて見た目が鮮やかなサラダが出来上がった。
今日も美味しく出来上がったはずだ。後は実食を信じて……やっぱりちょっと取り出して味見……よし。
柄、ヨシ!
圧切、ヨシ!
ヘルメット、ヨシ!
スーツ、ヨシ!
安全靴、ヨシ!
手袋、ヨシ!
飯の準備、ヨシ!
嗜好品、ヨシ!
車、ヨシ!
レーキ、ヨシ!
保管庫の中身……ヨシ!
その他いろいろ、ヨシ!
指さし確認は大事である。今日もいつも通りポーションを世の中に広めて難病に苦しむ人を一人でも治療するための行為に邁進していこう。そういう社会貢献で俺は世の中を幸せにしていくことに決めた。
◇◆◇◆◇◆◇
ダンジョンについていつも通り芽生さんと合流して茂君からの六十三層。昨日のニュースでポーション寄付で元気になった男の子の話があったという話題に出す。
「色々自分で考えたんだが、俺がそうやってポーションを配り歩くよりも、掘り出す方に集中しようと思う。現状六十四層まで潜り込める探索者は世界的にも限られているだろうし、そっちのほうで貢献しておくほうが大事だと考える」
「確かにそうですねえ。ヒールポーションのランク5にしてもそうですし、キュアポーションのランク5にしてもごくわずかの産出量に対して、必要な人はいっぱいいるでしょうから。そしてこれからもそんな病気や症状を抱えている人も居ますし、これから抱えることになるかもしれません。ストックは何千本何万本あっても困らないでしょう。ダンジョンタンブルなんとかの種から出来るポーションの代替品のものはともかくとして、今後その製品を変化させていくという面でも高級な試薬としてのポーションは必要になりますからねえ」
「難しい顔をして相談しているところ失礼するよ」
芽生さんとポーションの未来的な供給について話し合っているところにミルコが乱入してきた。
「用事か? いつものコーラならお昼にでも出そうとは思ってたが」
「いや、大事な情報を先に伝えておこうと思ってね。七十二層まで出来上がったよ。だから七十層まで到着したらまた連絡を入れておくれ。その時にまた顔合わせに来るからね」
「俺らが先に到着するとは限らないぞ? もしかしたら高橋さん達かもしれない」
とりあえず待ち望んだ次の階層が出来上がったのは素直にうれしい。お預けを喰わされていたところに
よしの号令をされた気分だ。
「高橋たちならしばらく留守にするそうだよ。ダンジョン庁と防衛省にそれぞれ報告をしなければいけないからその報告と長期休暇を取る……なんだっけ、有給? を消化しないといけないそうだ。そんな話をしていたから、今なら君らの通い放題の時間だと思うよ」
そうか、高橋さん達はしばらく留守か。その間に七十層に無理矢理俺達でたどり着け、ということらしい。
「まあ、ミルコとしての意思は伝わった。ついでに、一つ貸しを使いたいんだけどいいかな? 」
「ようやく使ってくれるようになったんだね。これで一つ肩の荷が下りるよ。どんな内容だい? 」
「エレベーターを高速化させてほしい。正直な話、ここまで下りて来る時間が短くできることでそれ以上に稼げて見せ場を多く作ることができる。燃料の費用が余分にかかってもいい。たとえば、三倍の燃料費を払うことでその間倍速になるとかそういう感じの改造をお願いできないだろうか」
ミルコは少し悩んでいる。予想外というわけではないんだろう。そういう匂わせは前にもしたことはあるので引っかかるようなことはあっただろう。
「そうだね……七十層に来るまでに何とか形にしてみるよ。それは、安村達だけ使えるコマンド、としておいたほうがいいのかい? それとも万人が使えるコマンドのほうがいいのかい? 」
「出来れば誰でも使えるほうがいいかな。俺だけずるい、というのはあまり良い話ではないからな。それに、ここを基点にエレベーターが出来たなら、ここが最初にその改造場所であっても不思議はない、ということにしておけばいいしな」
「なるほどね。じゃあ早速……というわけにはいかないけど、色々案を練っておくことにするよ。それじゃあ、貸しの件は確実にそれを履行することに全力を尽くしてみるよ。しばらくはその改造に時間を使わせてもらうことにするから、その次の階層を作るのはその後ってことで良いよね」
「ああ、ご苦労様。というわけでいつもより多めにどうぞ」
リヤカーの上にコーラとミントタブレットとお菓子をどっさりと。一つ咳払いをしてミルコが自分の保管庫に仕舞う。
「そういえば今更だけど、会談お疲れ様。これで君の情報もある程度は公開情報として持ち出されることになったね」
「おかげでこっちも肩の荷が少し下りたよ。後はまあ、なるようになるかな。最深層探索者であることもバレちゃったが、ここまで潜り込んできて密着取材できるようなメディアが居るわけでもないし、ここにいる間が一番気楽に居られる場所なのかもしれないな」
ここならどんなメディアもマスコミも来られないし、金も稼げるしその気になれば数日潜りっぱなしになることもできる。暇つぶしの本はそれなりにあるし……そういう意味では外部情報を断つためにダンジョンに住むってのも悪くないのかもしれないな。
「じゃあ、早速改造案を形にしてみるよ。じゃあね」
ミルコが転移していった。エレベーターの件はとりあえず伝えたのでこれで今のところの貸し借りはなしだ。七十層で何を頼むか考えておかないとな。
「エレベーター高速化ですか。確かに暇つぶしを色々考えなくて済むのは良いかもしれませんねえ。今後私たち以外にもエレベーターを深くまで使う探索者も増えるでしょうから悪くはないのかもしれません」
「クロスワード解いたりするのもここまでくる四十分強を何とか誤魔化すための手段だからな。贅沢だとは思ってはいるものの、短くできるなら短くしたいというのは本音だ。出来るかどうかは解らないがミルコには試しでやってもらうのは充分にアリかなと。今まで伝えなかったのは、ミルコにダンジョン作りに集中してもらうという意味もあったからなかなか言い出せなかった」
「なるほど、一応気を使ってはいたんですね」
「さて、次いつ宿泊コースで潜れるかの相談と、今日のこの後の予定の変更をしよう」
芽生さんと情報の共有。次の日の午前まで空いてる日のすり合わせを行った。その日に六十九層、七十層と一気に潜れるようにしたい。すり合わせを行った結果、この日なら空いてるぞという近々の日を選ぶことが出来た。
「後は、まだ火力調整をしてない、【土魔法】と【火魔法】の試運転だな。今日は午前中は六十四層、午後は六十五層辺りで自分の今の火力の試験だ。新しく覚えた魔法が新しい階層でどのぐらい効果があるかを試したい。体内マップのモンスター相手にどのぐらい効果があるか、【雷魔法】や【水魔法】【魔法矢】に比べて威力のそこあげができるかどうか、そのあたりを試したい」
「たしかに、ぶっつけ本番で戦っていくよりはそのほうが安全ですねえ。解りました、そうしましょう。今日は収入にはあまりこだわらない感じで良いんですよね? 」
「そうなる。せっかくの探索時間を借りる様で申し訳ないが、何もしないよりはして対策を練り込むことも必要だからな」
お互いの合意が取れたところで六十三層に到着。リヤカーを下ろしていつも通り六十四層で午前の探索に出る。いつもの階段、いつもの下りた先の亀を処しながら相談しつつ肩慣らしを始める。
「そういえば、ソロで巡ってエネルギー切れを起こした件は解決しましたか」
「あれからまた一段階身体強化が上がったのを確認したし、全力を出してこの階層を巡って戦い続けることをしない限りは問題はないらしいということは解ったので一段落かな。二人いれば二馬力だし、一人で巡り続けることへの負荷も減らせるから今日のところは問題なく戦えるよ」
「なら、せめてペースを上げていきましょう。午後からは思ったほどの成果を上げられないことも含めてきっちり稼いで行きましょう」
午前はハイペースで回ることになり、何時もの二時間一周コースを一時間半で回り切り、少し早めに切り上げて戻ってくることになった。お昼を食べたら六十五層、行ければ六十六層かな。そのあたりで本当に久しぶりの体内マップでの戦闘となる。そこでしっかり稼いで行くにも、やはり体を事前に慣らしておく事は必要だろう。ソロで巡る可能性は非常に低い所なので問題なく二人で回れることだろう。
作者からのお願い
皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。
続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。
後毎度の誤字修正、感謝しております。





