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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第二十五章:ダンジョンマスターさん、いらっしゃい

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1218:ごたついた朝

ダンジョンで潮干狩りを

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「そんなわけで、選定場所の問題は新しいダンジョンマスターのダンジョンが出来次第すぐに解決するぐらいの話にはなってきている。なのでこっちの心配はしなくていい、というのが本音の所かな。詳しくは都市再々開発事業、あたりで検索してみてくれるとありがたいかな」


 土地の選定のほうは問題ないらしい。なら、あとは好きに作ってもらってドンと建ててもらえばお膳立ては終了ということになる。一仕事終えるというにはまだまだ早いが、第一段階はクリア、という所だろう。


「とりあえずこちらの用意は出来ている、ということだけ伝えておくからね。後はダンジョンが出来次第周りの計画を推し進めていく、という形になる。ダンジョンが出来たから翌日から即入場可能、という形にはならないことだけは先に伝えておこうかな。ダンジョンが出来てギルドが出来て、駐車場なりの設備はその後順次作っていくことになるだろうことは伝えておくよ」


「だ、そうだ」

「ダンジョン街が出来上がっていくさまを見ているようですね。似たようなことがこちらでも起きるのだと思うと少し面白いですね」


 ネアレスは落ち着いた様子で長官との対話をこなしており、俺を通しての情熱の伝わり方の寒暖差が激しくて風邪を引きそうだ。


「じゃあ、伝えることは伝えたから切るね。こちらも候補地の選定と決定のプロセスを作っていく必要があるから、とりあえず一人協力者が現れてくれたことを内々に伝えて早めに広さとアクセスのいい場所なんかを基準にして探していくことにするよ。それじゃあね」


 興奮収まらぬ中、真中長官は一方的に電話を切った。電話の声が途切れて静かなダンジョンに戻る。


「えーと……普段はもっと落ち着いた人なんだけどね。ダンジョンの話になると色々止まらなくなる人なのでその辺は配慮してあげてほしい」

「こちらとしても、ここならダンジョン作ってもいいよと言われる土地が出来上がっているのは素晴らしいことですから、次の連絡を待ちながらダンジョンの作成に努めるとします。しばらくは時間がかかるでしょうが頑張りますのでよろしくお願いしますね、安村さま」


 ネアレスは立ち上がり、スカートの端をつまみ持ち上げ、カーテシーのポーズでこちらに礼をしてくる。


「何事もこれからですからね。私はこの時間にリーンと食事をするついでに色々と情報のやり取りをする予定ですので、何かこちらに連絡があればその時間なら確実に対応できると思います。もしくは、ダンジョンで休憩中誰も見てない……基本一名を除けば問題はないはずですからその間によろしくお願いします」

「ええ、こちらこそお世話になります」


 お互いお礼を言いあうと机と椅子を片付けて俺は外へ、そしてネアレスは自分の領域で早速ダンジョン改良キットをいじり始めるのか、転移していった。ともかく、これで一段階進んだな。


 さて時間は……そろそろ急いだほうがいいか。カレーを温めて沸騰させると、火を止めて保管庫へ。炊飯器も炊飯が終わっていたので炊飯器ごと。後はカレー用の深皿とスプーンがあることを確認する。飯の準備を確認したところで急いで着替えて指さし確認のお時間、さあ皆さんご一緒に。


 柄、ヨシ!

 圧切、ヨシ!

 ヘルメット、ヨシ!

 スーツ、ヨシ!

 安全靴、ヨシ!

 手袋、ヨシ!

 飯の準備、ヨシ!

 嗜好品、ナシ!

 車、ヨシ!

 レーキ、ヨシ!

 保管庫の中身……ヨシ!

 その他いろいろ、ヨシ!


 指さし確認は大事である。ちょっとバタバタしてしまったがいつもの時間には間に合いそうだ。出来るだけ人を待たせないように、という俺の信条は今日も何とかなりそうである。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 バスでは合流しなかったので芽生さんは先に到着している様子だ。いつもなら大体そう。そして遅れる際は一本遅れると連絡が入るので、おそらく先に着いていて着替えて待っていると思われる。


 バスから外の景色を眺める。確かにダンジョンの周囲は発展しており、今も解体工事中の建物を通り過ぎていった。これが店になるのか住宅になるのか、それとも周りの土地を巻き込んで大きな建物を建てるかまでは不明だが、破壊の後には再生が来るはずなのでダンジョン近くの物件としては好条件の場所ではあるだろう。ただ、自転車通いになるか歩いてダンジョンに向かうか、この短い距離をバスで乗り繋ぐことになるかどうかまでは不明である。


 ここも随分開発されたなあ、という印象を受ける。通い始めた頃は田んぼとボロい家が建ち並ぶところだったのだが、田んぼが徐々に潰されて、少しダンジョンからは遠いものの埋め立てられて月極駐車場とボロい家になりつつある。もしかしたらもう少し離れたところではもっと開発が進んでいて、道の奥のほうには広めの駐車場とダンジョンまでにつながる最短の道とボロい家ぐらいになっているかもしれんな。


 いつも通り【小西ダンジョン前】のバス停でバスを降り、ギルドの建物に入るとスーツに槍を構えてやる気満々の芽生さんが待ち望んでいた。


「おはようございます。良かったですねえ新しいダンジョンマスターが女の子で」

「そうだなあ、もうすでに次のダンジョンの位置が選定されててダンジョンが出来次第新規入植が決まってるからかわいい女の子にちやほやされながら探索をする時間が短いということを除けばな」

「もうそこまで決まっちゃってるんですか。短い命でしたね」

「まあ、毎朝ダンジョンで会うかどうかはともかくとして、ちょくちょく真中長官との取次はする予定なので顔を合わせる機会はそれなりにあるかな、というところだな。それにほら、探索するなら信頼に値する相棒が隣にいてくれるからな。それより心強いことはないよ」


 ちゃんとゴマをすっておくことにする。ここで細かくポイントを稼いで行かないと何処かでドカンと爆発する可能性だってあるんだ、それを考えたら安いものだ。


 入ダン手続きを終えてリヤカーを引いてエレベーターからの茂君。そして帰ってきて六十三層までのボタンを押す。


「しかし、可愛かったですね。今日休憩中に来たりしませんかね」

「あの尻尾を積極的にもふもふしたかったというのは本心からの言葉だな。やましい理由とか意味はない」

「それはたしかに。気持ちよさそうです。ブラッシングとかも欠かしてないような感じがしました」

「こだわりがあって犬耳とあの尻尾らしいからな。お手入れには念入れをしているんだろう」


 思い返してみる。あのフリフリとしたもさもさだがしっかりと品のある風に整えられたしっぽ。そして耳。きっとしっぽの匂いを嗅ぐだけでもトリートメントのいい匂いのしそうな。うむ、やはり誰にも見られてない内に……と、それは土台無理な話だったな。諦めるとしよう。


「あの……少しだけなら……」


 ネアレスが遠慮がちに転移してきた。どうやらしっぽもふもふの話をしっかり聞いていたらしい。


「初めまして、文月芽生です。洋一さんの彼女をしてます」

「はじめまして、ネアレスです。あの、ちょっとでよければどうぞ。これもお世話になる方々へのサービスの一環ということで」


 ネアレスがしっぽを器用に扱い、芽生さんの顔のほうへもっていく。しっぽにはしっかりと神経が通っているらしく、ピンと伸ばす。


「では、不肖ながら芽生ちゃん、嗅がせていただきます」


 芽生さんがすうっとしっぽの中に顔を突っ込み、深呼吸をしている。


「しっかり洗った犬の匂いがします。後トリートメントになんだろう、花の、何かの花の香りがします」

「女の子のしっぽに顔を突っ込む不審な女子大生の図、だな」

「ちゃんとお手入れを欠かしていませんので、匂いのほうもケアはバッチリです」


 ネアレスが決して薄くはない、どっちかと言うとあるほうに属する胸を張って満足そうにしている。芽生さんはしばらくして顔を離すと、今度はこちらの匂いを嗅ぎ始めた。


「ん? どうした急に」

「いえ、私の知らない所で匂いをつけられていないかチェックです、チェック」


 他人の匂いには敏感らしい。俺にはサッパリ違いが判らないが、芽生さん越しにほんのりだけ何かの花の香りがすることが解った。これがネアレスのしっぽの香りか。よし、覚えたぞ。


「これでご満足でしょうか。私は作業に戻りますけど」

「あ、ああ。わざわざありがとう」


 お礼を言うと、静かに転移して去っていった。ちゃんと顔見せはしたぞ、ということなんだろうか。それとも俺の気づかないところで番付の競いあいみたいなものがあったりしたんだろうか。


「さて、今日も六十四層ですか? 」

「その予定。今日のお昼はカレーだからな。ちなみに肉はウルフとボアの両方の肉を使っている」

「いつもよりちょっと手間がかかってますね。一晩寝かせてあったりしますか」

「一晩冷蔵庫でしっかり冷えてもらった一品だから楽しみにしておくとよいぞ」


 その一言で芽生さんの顔がぱあっと花開く。これは昼食の感想が楽しみだな。それまでは精々お茶を濁すではないが、午前中に精一杯働いて金を稼ぐとしよう。


 六十三層に到着して、リヤカーを設置するとそのまま六十四層へ。まずは午前中の軽い肩慣らし兼スピード上げのためのエンジンオイルを全身に流し込むための軽い運転だ。軽い運転だからといってモンスターが手を抜いてくれるわけでもこちらが手を抜くわけでもなく、しっかりと戦って体を温めていく。


 昨日も来た六十四層だが、今日も変わらずモンスターは元気に湧いてくれている。ありがとうという心の感想を捧げながら倒してはドロップ品を回収していく。その内この魔結晶やポーションも値下がりはしていくことになるんだろうな。それまでに精々稼いでおかないとな。


 一時間半ほどかけて試運転は終了。ほぼ十二時に六十三層に戻ってきて食事の開始だ。今日はミルコの分は用意していないのでお菓子もコーラも無い。今日は見てるだけの日になる。


 いつものダンジョンマスター事情ならここでネアレスが乱入してきてカレーをついでに摘まんでいく、というイベントが発生するところだがはてさてまだこちらに来て日が浅い彼女のこと、こっちのダンジョンマスター事情にはまだ詳しくないらしいと見える。


 セノも乱入してこないので、引き続き仕事をしてくれているんだろう。後、辛いものは苦手だと言っていたのでカレーには寄り付かないのかもしれないな。


「今日は静かですねえ。後、予想通り美味しいです。具材が無くなるぐらい煮込んであるのでルーでたっぷり栄養が取れそうなのがまたいいですね」

「二種類の肉のうまみがきちんと出てるのがいいな。今日も美味しくカレーを作れた」

「そういえば、これから朝ごはんも三人で食べることにするんですか? 」


 今日は普通に三人で食事をしたが、明日からはどうしようかな、というかどうするべきなんだろうな。別にトーストと卵とキャベツの消費が早くなること以外に大きな問題はない。しいて言うなら……なるほど、若干妬いているのか。


「その辺は本人と話し合って進めることにするよ。進捗確認として毎朝顔を合わせて内容によっては真中長官に報告しないといけないしな」

「むぅ、そうですか」


 少しむくれてるところを見ると、自分の知らない所で他の女に餌付けをしているという図が気に入らないのだろう。芽生さんも嫉妬するという感情は持ち合わせていたんだな。


「まあ、明日か、もしくは暇なら今にでも聞くさ。リーンとは新しいダンジョンマスターが来るたびに顔を合わせることになるだろうからその顔つなぎと……後、一人にさせておくのはダンジョンマスターとはいえちょっと心配でな。一人で心細くないかどうか、知らない人についていったりしないだろうかと不安が募りだす。せっかく事故とはいえ同じ敷地に住むことになってしまったわけだし、そのあたりのアフターケアもしておくべきかなと。後、自分一人だけ食事してて子供に食事も与えない親みたいな自分を俯瞰した光景が嫌」

「それはそれでまあ気持ちはわからなくはないですね。相手がダンジョンマスターで食べなくても生きていけるし一人で放っておいても問題ないと解っていても放っておけないのは洋一さんの優しさの表れだと思いますよ」


 カレーをほおばりつつ嬉しいことを言ってくれるじゃないの。ちょっとうるっと来たな。今日のカレーも美味しいのは間違いないし、ちゃんと海外のダンジョンマスターも現れてくれたし、今のところ上手いこと世の中は回ってくれている。この調子で午後も頼むぞ。

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

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この犬耳美少女ちゃんは自慢の体を誰かに味わってほしかったんやなー披露する相手もいなかっただろうしなぁ 安村さんは絶好のチャンスを逃したなwww
ちょっぴりヤキモチ芽生さんがかわいいねえ お泊まりして一緒に朝ごはん食べていっていいのよ
これは是非犬用ブラシを用意して、
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