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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第二十五章:ダンジョンマスターさん、いらっしゃい

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1214/1222

1214:お客さん、まだ来ず

 気持ちのいい朝だ。気温も下がってきてエアコンも日々静かになりつつある。気温が落ちてくるのは良いことだ。ようやく秋らしくなりつつあるということか。今日も枕の匂いを確認する。お父さんの匂いは今日はしないようだ。ただ、自分の匂いは自分では認知しづらいらしいのでもしかしたら既に俺の匂いで汚染されている可能性はある。


 しかし、枕の効果で気持ちよく起きられているのは間違いないのでまだ汚染されてはいないと考えるのが納得できる落としどころではある。早々とシャンプーを使い切るために頑張ってみることにするか。それはそれとして次の買い出しでスカルプシャンプーを一つ試してみることにしよう。頭が心地いいと思考もスッキリするからな。


 今日もお祈りの後、トースト三枚と目玉焼き二個、そしてキャベツの毎食の食事を用意すると庭に出てリーンを呼び出し、食事の時間にする。


「きのうはおきゃくさんこなかったの。もうちょっとかかるかもしれないの。ダンジョンマスターはじかんかんかくがやすむらたちとはちがうから、わりとルーズなの」

「そうか。まあこっちもそう急いで募集している訳でもないし、気長に待つことにするよ。その間リーンを一人にしておくほうがちょっと心苦しいかな」

「リーンはこれでもちゃんとおしごとをしているの。ガンテツにおしえられたダンジョンのつくりかたもべんきょうしているし、こっそりダンジョンをつくってもみているの。だからさびしくないの」


 リーンもここ以外の階層を作っていつでもダンジョンに出来るように準備はしているらしい。いざここを壊して新しいダンジョンを作る際の参考としては良い話になるだろうし、もしかしたら試験ダンジョンとしていろんなところで試す、という手もある。リーンが暇でないのならそれはそれでヨシだな。


「きょうもごちそうさまなの」


 リーンは食べ終えるとまたどこかへ行くらしい。今日のおやつにと持たせたラムネ菓子を手にダンジョンコアルームから消えていった。俺も毎朝付き合うとはいえ、日々元気にやってくれているならそれでいいかな、と思っている。


 さて、今日の昼食はちょっと乾麺を減らすためにパスタにしようと思う。ちなみに夕食はそうめんの予定だ。一旦ここらで手持ちの乾麺シリーズを入れ替えておきたいということもある。パスタソースはボロネーゼソースだ。今日は芽生さんは本業なので自分の分だけで良い。ソースは二人分、パスタは一人分というソース多めのパスタになるがまあいいだろう。パスタもその分少し増やしておいて腹をしっかり満たす方向でいこうかな。


 パスタを茹でて、ソースと絡めておしまい。後は……生野菜サラダを添えておこうかな。ドレッシングは先日も使った謎ドレッシングでいこう。ドレッシング類は気が付くと賞味期限を過ぎているからな。保管庫に入れてあるとはいえ、封を開けたら早めに消費することに越したことはない。


 食事の準備を手早く済ませて着替え、いつでも出勤できるぞという構えになった。今なら一本二本早いバスに乗ることもできるな。さて、どうするかな。早めに行っちゃうか。このままニュース番組でも見ながらじっとしている自由もあるし、ここまでお膳立てしておいて今日も休みにする自由もある。しかし、せっかく十全に体を動かせるのだからせっかくだし早くダンジョンに潜ろう。


 柄、ヨシ!

 圧切、ヨシ!

 ヘルメット、ヨシ!

 スーツ、ヨシ!

 安全靴、ヨシ!

 手袋、ヨシ!

 飯の準備、ヨシ!

 嗜好品、ヨシ!

 車、ヨシ!

 レーキ、ヨシ!

 保管庫の中身……ヨシ!

 その他いろいろ、ヨシ!


 指さし確認は大事である。早めの出勤だが、今日はじっくり六十四層を攻めてみたい。他の階層に比べると慣れの時間が必要なため働いた時間ほどの金にはならないかもしれないが、それでも自分でエンペラを取って供給できるようになるのは大きな一歩になるだろう。体が付いてこれるなら出来るだけ効率的に回りたいというのもある。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 行きのバスの中で今度来るダンジョンマスターの見た目について考えた。どんな見た目のダンジョンマスターが来るんだろうな。猫も居るしロリも居るしお姉さんも少年もおっさんも居る。犬や狼かもしれないし、龍や半魚人だって可能性はあるわけだ。獣人形態がある以上、ヌメりの有るデロデロ物体のダンジョンマスターや、スライムである可能性ですら湧き上がってくる。初対面で潮干狩りしないように気をつけないとな。


 しかし、いろんなダンジョンマスターが集まるようになってくると、人数にもよるがダンジョン庁にも早めの連絡を入れて動きを素早くしてもらうようにするのが一番か。そうなると、俺からも長官あてにダンジョンマスターのあてが見つかったらしいです、と一報を入れておくのが良さそうだ。思い立ったが即実行。


「どうやら向こうのダンジョンマスターに渡りが付いたみたいです。近日中に会えるかもしれません」


 これでいいだろう。後はダンジョン出てからのやり取りになるかな。長官もまだ忙しいだろうし会談からまだそう日が経っていない。日本の行政がそこまで素早く手はずを整えて環境を整備できるとは思っていないので、こっちはこっちで新しくダンジョンを立てる際の案を出してもらってそれに伴ったダンジョンを設置する準備や、ダンジョン内の内装にもこだわりがあってもいいだろう。この際時間を引き延ばす手立ては色々俺のほうでも考えておいたほうがいいのかな。


 と、すぐに返信が来た。どうやらたまたま手が空いていたみたいだ。


「こっちは急ぎで候補地選定中。どこに立てるかは決まり次第連絡するとして、ダンジョンマスターの引き留めと新しいダンジョン案については色々考えてあるのでそれで時間稼ぎをしてもらう感じになるかな」


 なるほど、やはり時間の引き延ばしが必要か。一カ月二ヶ月という長いスパンで物事を見る必要がありそうだ。その間に飽きさせないように接待するのも俺の仕事、というところか。毎晩宴会みたいな話にならなければいいが。


 バスを降りて午前八時。いつもより一時間早いが一人なので問題なく探索を開始できる。さて、早速ダンジョンに入るとするか。


 受付を済ませて入ダンしようとしたところ、受付で呼び止められる。


「安村さん、ギルマスから伝言です。時間が空いたら来てほしいとの事です」


 時間が空いたらか。急ぎではないというところらしいが、何か用事だろうか。


「今ってギルマスもう居る時間ですか? 」

「今日は居ますね。ですから今からでもいいとは思いますよ」


 そうか……悩んで気にしながら探索をするよりは先に話を済ませて気分よく探索を始めるほうが心の健康には良さそうだな。今から行こう。


 入ダン手続きを中止してギルマスの部屋へ行く。ノック三回で中から「はいよ」の声。


「安村です、伝言聞いてきました」

「お、待ってたよ。昨日はお休みだったかな? 」

「ええ、まあ家事やら納品やら色々済ませてきたところです」


 昨日からの呼び出しだったのか。ならレインで連絡をくれても良かったのに。


「実はね、安村さんに取材を申し込みたいという連絡がちょくちょくあってね。個人の探索者なので本人に直接お願いしますとは断っているものの、それなりの回数の電話がかかってきてるので若干業務に支障が出始めているんだよ。どうすればお断りに応じてくれるか対応を協議したいと思ってね」


 なるほど、たしかにそれは俺に問題がある話だな。ギルドにまで迷惑をかけてしまっている現状を考えるとうまいこと言い訳を考えなければなるまい。最近使ってるあの手をそのまま利用してしまうか。


「実は、以前にも同じように直接取材を申し込まれまして。その際に断りのセリフとして使った一言があるんですがそれをギルド側に伝えますのでそれで一発で引っ込むことになるとは思います」

「ほう、どんなセリフだい? 私も一つ聞いてみたいところだ」

「今、時給換算で千二百万円ほど稼ぐことが出来ているので、それだけ用意してからまた来てください。取材に応じます って奴なんですけどね」


 ギルマスは一瞬固まり、その後笑い始めた。


「あっはっは、それはいいね。金額を聞いたら躊躇してくるのは間違いないよ。まさかそんな金額を求められてはいどうぞと素直に渡してくる人もそう居ないだろうからね。そのセリフ、ギルドで借りてもいいかい? ギルドとして探索者個人に対してそういう仕事の斡旋はしない方針ですが、本人はそう言っていた、と伝えればだんだん電話の回数も減ってくるだろうね」

「それが多分一番ご迷惑にならない話になるとは思いますので、どうぞ自由に使ってやってください」

「わかったよ、その方針で行かせてもらうことにする。で、もしそれで受けるってなった場合どうすればいいかな? 」


 もし、時給請求作戦を突破された時のことについても話しあっておく。


「その時は教えてくれたら素直に従いますよ。ちゃんとこっちにもメリットのある話ですしね」

「じゃあ、その時は私が連絡先を聞いておいて、安村さんにそれを伝えるって形で良いかな」

「よろしくお願いします。金額を指定した以上、そこまで了承されてやっぱなし、というのは卑怯ですからね。ただ、話してはいけない項目についてはまた要相談という形になるとは思うんですが」


 俺の【保管庫】についてもそうだが、話したらまずい内容というのは存在するはずなのでそこについては事前にあらかじめ詰めておいたほうがいいだろう。


「そうだね、安村さんのスキルと、二十一層で既に会談内容とほぼ同じような内容を報告してくれてた件以外については基本的に制限はないと思ってくれていい。それ以外のダンジョンマスター周りの話については……特に問題はないかな。安村さんの知る限りの話をしてきていいと思うよ」

「こっちも何か思いついて話すような内容が怪しいと思った段階で質問を飛ばすことにします」


 ギルマスと話を詰めてる間に電話がかかってきた。どうやら例の一件らしい。


「はい、こちら小西ダンジョンギルドマスターの坂野です。取材、ですか。安村さんに。ほうほう……では、彼からの伝言を伝えておきますね。今彼は一時間に千二百万円稼ぐのだから、時間を取って取材に応じる以上それだけの金額を支払ってもらうのが条件、だそうです。はい、聞きましたらそう伝えてくれればいいと。びた一文負けずに、何処の取材であっても一律で同じことを言っているようです。もし、用意できて支払えたら特ダネのチャンスかもしれませんねえ。……はい、では失礼します」


 ギルマスが電話を切る。電話を終えてすっきりした表情に戻ると、再びこっちへ戻ってきた。


「中々気持ちいい啖呵の切り方だね。言ってる私がそれだけ稼いでるような気分になってきたよ」

「では、精々何回か味わって気分良く仕事に邁進してください。話は他には……っと、特にはなさそうですね。私は仕事に戻っても? 」


 ダンジョンマスター呼び込みの件は坂野ギルマスに伝える必要はないな。こっちは長官との極秘プロジェクトみたいなもんだ。知ってる人は少ないほうがいいに限る。ここはギルマスには悪いが黙っていさせてもらおう。


「うん、お疲れ様。頑張って時給千二百万円稼いできてね」

「では、失礼します」


 いいタイミングで電話がかかってきてくれたおかげで効果のほども確認できたし、本当に千二百万円払いに来るまでは放置で良いだろう。


 さて、三十分ほど時間を潰すことになったがそれでもいつもより三十分早く仕事が開始できそうだ。この三十分を大事に使っていこう。


「ギルマスとの話は終わりましたか」


 受付で再確認される。


「ええ、これで仕事に集中しやすくなると思いますよ」

「そうですか、どうぞご安全に」


 受付を終わらせてリヤカーを引き、今日も目指すはまず七層。茂君をダッシュで回収してきてそのまま六十三層まで下りる。さて、暇つぶしには探索・オブ・ザ・イヤーもあるし月刊探索ライフもある。クロスワードもまだ在庫はある。仮にセノが転移してきてもちゅ〇るはちょっとなら在庫はある。これもまた箱買いしておこう。一箱はリーンに預けて二人でいる時に食わせてやってくれと頼んでおいたから、リーンのダンジョンに報告に行く間はリーンから食べさせてもらうことになるだろう。


 ちゅ〇るをもらう猫とあげる幼女。中々に絵になる一幕だな。せっかくなら一枚撮って長官に「ダンジョンマスターの交流」と題して送り付けたくもなる光景だが、一般人からすればただの幼女と猫の一幕にしかみえないのもポイントが高い。

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

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― 新着の感想 ―
章題に第がついていません(今頃二十五章に入ったことに気づいたw
あら、本人にはあの一件以来、取材は来なかったけどもギルドの方に行ってたんですねえ これで取材料の件は関係各位に周知されてくでしょうね〜 それでも!って申し込んで来る気合いの入った会社はあるかなー?
> 汚染」 お父さんハザード > スカルプシャンプー」 お父さんの匂いのするシャンプーを買うおじさん > ちゃんとおしごと」 じたくけいびいんなの > ソースは二人分」 半分残すという発想のない…
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