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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第二十四章:国交?樹立

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1203/1219

1203:日常

 さて、五十六層に着いたのでいつものように探索していこう。ここのところインゴットばかり産出しているので、市場にもそれなりの数が出回ってきているんじゃないかなと推測する。もしダンジョニウムインゴットの相場操縦のためにあえて高値で買い取って死蔵させているメーカーさんが居れば申し訳ない、と言ったところだろう。


 これから五十三層から五十六層にたどり着いて稼ぐパーティーだって出始めるのだから、相場は徐々に下がっていくことが見えている。現状銀と等価値のインゴットではあるが、値下がりするにも一年ぐらいはかかるだろう。その間に精々稼がせてもらうことにしよう。


 まずは午前中の三時間、ペースを確認するようにランニングスタイルで赤砂の砂漠を走り回る。出会った先から雷撃で片っ端から叩き落として黒い粒子に還していく。だんだんここでのペースも解ってきた。これは三億行けるかもしれんな、と楽しみが増えたところで三時間が過ぎ、昼ごはんついでに休憩に五十六層へ戻る。


 今日の昼食はマッシュルームを贅沢に挟み込んだハンバーガーとフレンチフライだ。マッシュルーム以外にもいくつかの種類のキノコが挟み込んであって、うま味がとても強い。これはかなりガツンと来る奴だ、ぜひ近所にもチェーン店が出来てほしい。


 フレンチフライはどちらかと言うと普通のフレンチフライ、という感想が浮かぶので悪いものではない。ただ、うま味の強いバーガーと合わせることで塩味が強調されてそれぞれが引き立つ感じになっている。


 これは中々俺的に当たりのバーガーだ。世の中にはもっと美味いバーガーもあるんだろうな。チェーン店で提供できるバーガーでこれぐらいの再現が出来るなら、バーガー専門店でも個人でやってる高級志向の、それも味に追及するタイプの店ならもっと楽しいものがあるに違いない。お値段は解らないが、千円ぐらいのものだろう。千円でこの満足感なら充分ありだな。


 お昼にも満足を覚えたところで小休止。アイスコーヒーを飲みながらボーっとする。体のほうはまだ不調を訴えてきていない。むしろこれからだと言わんばかりに取ったばかりのカロリーが胃でエネルギーに変わっていくさまを感じ取るかのように体が熱い。


 これは、胃がなじんだら、すぐさま行動を開始してきっちり金を稼いで帰れ、という体の内部から発せられるお知らせのような物だろう。良い感じに体があったまっているおかげで今すぐ動き出せそうな雰囲気だが、多分今動くと胃にかなり負担がかかる。ここはちょっと早めに切り上げて、歩きながら少し稼ぐ、という方向性で行くか。徒歩ならそれほど胃が痛くなるような事態にはならないはずだ。


 しっかり水分も取ったし、ちょっと短めの休憩にはなったが午後のバトルに行きますか。今日の目標は……インゴット二百個。これだな。素早く動くことでその分モンスターも確実に倒せるし、もしかしたらスキルオーブも狙えるかもしれない。五十五層でスキルオーブを獲得したという話はまだ聞いてないので一応ノートを確認するが、まだらしい。何か手に入れるチャンスがあるとすれば今のうちということでもある。何か出たら覚えよう。


 しかし、スキルオーブはポロッと落ちるもの。出ろっ、出ろっと願いながら戦って落ちるならばもう俺はいくつものスキルオーブを手にしていていいはずだ。それがないということはしばらくは出ないんだろうな。気にせず行こう、スキルオーブに頼らずに自分の手足で金を稼ぐんだ。今日もしっかり稼いで行くぞ。


 ◇◆◇◆◇◆◇


「【生活魔法】を習得しますか? Y/N 残り二千八百七十九」

「イエス」

「あなたは既に【生活魔法】を習得しています。それでも習得しますか? Y/N」

「イエス! 」


 俺が光る。光が収まった後、ウォッシュを自分にかけてみる。今までよりも爽快感があり、短い時間で自分が綺麗になったように感じた。


 やはり物欲センサーというものがあるらしい。うっかりポロッと落ちてきた、A型からのドロップ品。出たのはまさかの【生活魔法】。ここで生存するのは難しいから生活魔法で水でも出して熱中症に気をつけろ、ということなのだろうか。そういう意思みたいなものはちょこっとある気がするのでここで生活魔法が落ちる、という可能性はそれなりにあったのだろう。


 使った後で、これ芽生さんに覚えてもらった方が良かったんじゃ……という思いがあったが、スキルオーブの譲渡は贈与税がかかりそうだし俺が一人で出したスキルオーブなのでお断りされそうだから仕方ない、生活魔法を二重化したことは黙っておくことにしよう。バレたらバレた時に何かしらの言い訳を考えておくことにするか。


 スキルオーブのドロップというイベントが過ぎ去った後でも変わらずペースを上げながらどんどんA型B型を処理していく。目標のインゴットまではもうちょっとで達成できそうだ。今日はインゴットが集まった段階で帰ろう。時々水分補給をしながらこの暑い砂漠で動き続ける。


 このスーツは砂漠ではかなり動きやすい。汗をかいてもすぐに乾いていくし、涼しい。しかも特注のスーツであることからして、動きに制限がないというのが輪をかけて俺のスタイリッシュな戦闘を助けてくれていた。


 今日もほくほくでダンジョンから帰れるのを考えつつ、腕時計を見ながら今のペースでどのぐらいインゴットが集まったのかを計測する。どうやら六時過ぎぐらいには集め終えられそうだ。それまでは集中して高速作業に没頭しよう。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 インゴットが二百本集まった。一日で集められるものなんだな、という感想と、俺頑張ったよね! という自己満足が自分を支配する。これだけの荷物があれば今日も一日お疲れ様でしたと言えるだけの金稼ぎは終わったのだろう。


 砂漠から走ってとっととオサラバすると、エレベーターに乗って七層をポチ、そして荷物の整理。かなりの数のインゴットを乗せたおかげで若干タイヤが沈み込み始めたが、まだこのリヤカーには若干の余裕がある。


 さて、久々にクロスワードでも楽しむか。ここのところはセノが来たりセノが来たりで色々忙しかったからな。たまにはこうやって時間を忘れてボケ防止に勤しむことも大事だ。


 のんびり時間をかけてクロスワードを三問解き、そろそろ到着するかな、というタイミングを待つ。七層に到着したらいつものテント目隠しをして茂君にダッシュ。帰ってきてエレベーターに再び乗り、一層からの流れるような退ダン手続き。一層から地上に出るいつもの「つぷん」の感触の直後から手に伝わってくる重たい感覚。これがインゴット二百個の重さか。


「今日もお疲れ様です。大漁ですね」

「今日は自信ありますからね」


 受付嬢との会話もそこそこに、探索者証を返してもらうと査定カウンターへリヤカーを引いて到着。やっぱりインゴット二百個は重いな。査定カウンターに荷物を受け渡して手伝い。


 計算をしてもらっている間にリヤカーを返却しに行って、帰ってきたらちょうど査定完了。いいタイミングだ、狙ったように計算が終わる査定嬢もかなり洗練されてきたんだなとわかる。


 今日のお賃金、三億七百十九万七千円。ついに一人で三億を超える金額を稼ぎきることに成功した。支払いカウンターで振り込みをお願いして今日のお仕事終わり。


 朝が早かった分仕事が長く続けられてその分が金に変わった、という認識で良いだろうな。いつもの冷たい水を飲みながら一人反省会だ。今日は三億に加えてスキルオーブまで出たからな。これで五千万円余分に収入があったのと同じだ。明日は何処へ行こうかな。


 休憩室で休んでいると、俺のほうに近寄ってくる人が二人。休憩かな? いやその前に探索者って格好ではないな。俺の顔を見て真っ直ぐに近づいてくる。


「どうも、安村さんでお間違えないですか」

「はい、私が安村ですがどちら様でしょうか」

「ダンジョングラフィックスと言う雑誌の記者をしています。先日の会談で通訳をされていた安村さんに是非インタビューをさせていただきたいと思いまして。今お時間よろしいでしょうか? 」


 これがあれか、取材という奴か。ついに俺のところまでたどり着いてきた記者が居たか。中々の取材力だと思う。


「取材なら取材料を頂きたいところですが。私も仕事でダンジョンに潜ってますし、それだけ時間を割くという行為に対してそれなりのものを用意してもらえると考えていますが」

「どのくらいお支払いすればいいでしょうか。ダンジョンマスター会談での通訳をされていたということで、ダンジョンマスターについての知識はそれだけあるでしょうし、ぜひそのあたりを語ってもらいたいところなのですが」

「千二百万円」


 指を一本と指二本をそれぞれ提示し、記者と自称する人に見せる。


「私は今日時給換算で千二百万円稼いできました。取材というからにはそれに見合っただけの報酬の提示を願います」

「千二ひゃ……さすがにそこまでの金額を出すことは当方といたしましてはいかんともしがたいのですが」

「では、この話はなかったということで。どこの出版社やメディアでも同じ、平等な金額として提示します。時給千二百万円、それだけのものを用意してまた来てください。わかるだけのことはきっちりお話ししましょう。では」


 金額の高さで凍り付いたように動かない記者たちを置き去りにして去っていく。ちょっとかっこいい場面だったかもしれん。ギャラリーも俺の発言に固まっている。そのままかっこよく去り、バス停のバス待ちに並ぶ。本当に金があるならここでリムジンをキュッと玄関に停めさせて悠々と立ち去りたいところだが、そんな金は確かにあるが予約をしてなかったからな。マスコミが来ると解ってるならそうするべきだったな。


 バスが来たので乗り込み、さっきのセリフを言えたことをちょっと神に感謝しつつ、窓の外を見ると自分のニヤついた顔が半透明の窓に映る。ちょっと格好をつけすぎたかな。でも、関わりも何にもない人に対して自分の飯のタネや重要情報を語るのだからそれだけの金額を要求しても罰は当たらないはずだ。


 むしろその場で何としても金を捻出するからお願いしたいと申し出て、後からやっぱり駄目でしたが取材はしたので記事は載せます。なんて可能性もあったわけだしあの場で置き去りにしたのは成功だろう。


 駅に着き、そのまま自宅へ帰ると車を出して買い出し。そういえばミルコにお菓子を供えるのを忘れていたな。明日には供えに行こう。いつものキャベツと卵と食パンを買い込むと、追加でお菓子を買い求め、ついでに新しいパスタの具とシーズニングのコーナーに出かける。何か面白い具や味はあるかな。そろそろ味覚の秋に向けて何か新作商品みたいなものが出ていてもおかしくはない。ざっと保管庫の中身と見比べるが……新しいものは特にはなかった。


 これはあれだな、お高いスーパーにでも通ってみてそこで探してみるほうが出会える可能性は高そうだ。とりあえず今のところレシピに加えるようなものはナシ、ということになった。最近はショッピングモールに入っている雑貨コーヒーショップなんかでも似たような商品はあるらしいのでそこへ出かける機会があったら是非色々探してみよう。


 家に戻ると、夕飯用のバーガーを温め始める。野菜のフレッシュさが売りだというバーガーのBLTバーガーがあったのでそれを温めて食べてみる。付け合わせのポテトはフライではなく、どちらかと言うと太めで、揚げてある感じがほとんどない、ほくほくポテトだった。脂分が少ない分ヘルシーさを前面に出している、ということなんだろう。


 食感としては、流石にレンジアップしてしまった分だけレタスのシャキシャキ感があまり表れていない。これは出来たてを食べないと美味しさが伝わらない奴だな。いや、実際どんなバーガーでも出来たてを食べてほしい、というのが本音だろう。しかし、今回は温めた上で美味しさが何処まで損なわれてしまったのかをまた今度確認する作業が必要だな。味に関しては美味しい。ベーコンも結構分厚いものも使われているし、トマトのうまみがいい感じに出ている。


 うむ、出来立てだったらバランスの良いバーガーとして存在したのだろう。レンジアップしたのは逆効果で、実はそこそこ冷めていた方が美味しかったのかもしれない。次のバーガーはきっとうまくやってくれるでしょうと言うことに期待をしておこう。


 明日も朝食はバーガーであるが、芽生さんも一緒なので昼食はちゃんと作る。さすがに温めたバーガーをお出しして今日はこれです! とやるのは手抜き感がしてよろしくない。明日のローテーションはボア肉のカツサンドと行こう。せっかく新しい食パンを手に入れたことだし、これで一つ胃袋を満足させる方向で頑張ることにしよう。

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

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― 新着の感想 ―
地主の小西さんに、ええ加減売却してくれんと攻略して別のとこ移すで?と言えない物なのだろうか?
時給のことあんまり考えてなかったけど、税抜きの時給なのかな? 三億の60%が税金として、10時間労働だと確かに時給1200万だし。 ただ1日10時間の肉体労働をほぼ毎日は、よくよく考えるとしんどすぎや…
現実だったら妬みで買取価格が高すぎるみたいな社会問題化して製品価格は大きく変わらずに探索者の手取りだけ大きく減らされそう。溢れが発生しないのも周知されたから安全のためみたいな言い訳も出来なくなったし
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