1202:引き抜き
ダンジョンで潮干狩りを
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帰還勇者の内事六課異能録
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朝だ。今日も体調はいい。そして今日もバーガー生活が始まる。さて、今日は何処のバーガーにしようかな。朝からガッツリ、ステーキ一枚肉の贅沢バーガーというものがあったのでこれをチョイス。朝から重たいものを食べることで脳にも体にもしっかりと栄養を行き渡らせることは大事である。
朝からステーキバーガーを口にするというこの贅沢感もあと数日で終わってしまうことを考えると少し物寂しいが、またその内やる企画として考えておこう。
昨日はダンジョンから戻った時にレインで真中長官から連絡が来て、また何事か起こったのかと思ったが、外務省の窓口担当が決まったので紹介しておく、何かダンジョンと日本、もしくは海外宛てに連絡するようなことがあったら彼あてに伝えてほしい、とのことだった。とりあえず友達になっておいた。
最近エリート様との友達交換が増えた気がする。最初はレインもやってなかったのに、ちょっと探索者になりはじめたらこれだからな。意外と探索者も横のつながりが大事であることは徐々に実感しつつある。いや、この場合省庁は横のつながりと呼べるんだろうか。まあ明確に縦割りの中に入り込んでいる訳ではないのでやはり横のつながりということで良いんだろう。隣に外務官僚とダンジョン庁長官が並んでいるということを考えると俺も偉くなったもんだな、と思う所である。
今日の昼食分のバーガーを温めていたところ、スマホが鳴る。誰だろうと思って出てみると、真中長官からの直電だった。
「はい、安村です。どうしましたこんな朝早くに」
「お、起きててくれたか。これは有り難いな。お互い忙しい朝だろうし、手短に用件を済ませるからよく聞いてほしい」
大事なことらしいので保管庫からメモを取り出し早速メモの準備をする。
「実はダンジョンマスターの件なんだけど、海外で暇してるはずのダンジョンマスターがかなりの数いるよね? 」
「そうでしょうね。現在ダンジョンマスターとして活動してないならセノたちみたいに橋渡し役で色々やっているか、新しいダンジョンをあくせく作ってる途中だとは思いますけど。ただし彼らが真面目ならばという前置詞がつきますが」
「セノさんに聞いてさ、彼らを日本の地域に連れてきてダンジョンマスターやらないか聞いて回ってみてほしいんだよね、出来るなら、なんだけど」
海外のダンジョンマスターを日本にか。海外のダンジョンマスターと日本のダンジョンマスターに距離感とか内輪感があるのかどうかは解らないが、手持ちのコマを増やして、ダンジョンを作る際に新しい場所を数カ所指定してそこに作ってほしいと嘆願を出す、というつもりなんだろうか。
「何をしたいかは大体わかりましたが、そちらで舞台は用意してくれるんですよね。踊り子を集めたところで舞台が一つでは苦情が来ても仕方ないですよ」
「その辺はうまくやるつもりだ。昨日から早速動いてもらっている。とりあえずまだ聞くだけの段階だから、明日にでもそろえて持って来いって話ではないので安心してほしい」
「まあ、聞くだけならタダですし精々うまくいくことを願ってますよ」
「じゃ、任せたからねー踊り子さんのほうは連絡がつき次第また何かで知らせて頂戴」
切れた。朝からテンションが高かったな。きっと昨日何かあったに違いない。もしくは、以前から懐で温めていたネタをようやく表面に出せるようになったとか、そんな感じだろう。
昼食の準備のレンチンも終わり、そのまま保管庫へポイ。本当はレンチンしないほうが長く温かさが保ったりするんだろうが、ラップでくるんでからレンチンすることで水分が抜けていかないように配慮したのでいざ昼に食べようと取り出したらかっぴかぴのパッサパサなんてことにはならないだろう。
着替えていつもより早く家を出ることにしよう。たまには早出勤も悪くない。気分が乗っているときにその気分を阻害してはかえって探索の進捗が悪くなることもある。バイオリズムがいいって奴だろうな。
柄、ヨシ!
圧切、ヨシ!
ヘルメット、ヨシ!
スーツ、ヨシ!
安全靴、ヨシ!
手袋、ヨシ!
飯の準備、ヨシ!
嗜好品、ナシ! コンビニで買ってから行こう。
酒、ヨシ! 渡してない分があるが、ついでにコンビニで買い足して袖の下として使おう。
車、ヨシ!
レーキ、ヨシ!
保管庫の中身……ヨシ!
その他いろいろ、ヨシ!
指さし確認は大事である。今日もいつも通りとはいかないが、少なくともセノに相談を持ち掛けておかないといけない。その為に口には滑らかになってもらわないとな。まずはコンビニでお菓子の追加とツナ缶、パックの日本酒とウィスキーを買い足すと会計。それほどの量ではないが悪くないチョイスを選んだと思う。
最近はコンビニで扱う酒の種類も増えたからな。すべて味わってみた訳ではないが、棚の取り合いの激しいコンビニのその棚をきっちり保持しているだけの実力があるという事実に関して、信頼を置くことができるのは間違いない。すっげえうめえ酒が飲みたいなら醸造所へ直接買い付けに行くことが必要だろうが、そこそこ飲めて悪くない酒で大量生産品、という点に関してはコンビニの酒に大きなハズレはない、というイメージだ。その内ちょこちょこ買い足してちびちび飲んで、自分なりの美味しい酒との付き合い方を考えていこう。
◇◆◇◆◇◆◇
二本早い時間のバスに乗り、小西ダンジョンへ着く。現在時刻、午前八時ごろ。そのまま入ダン手続きをしてリヤカーを引いて、まずは七層茂君。もはや日課というべきこのダーククロウの羽根の確保作業だが、現状で二回納品できるだけの商品が溜まっている。しばらく通わなくてもいいぐらいだが、毎日のルーティンとして走って回収して走って戻ってくる、というこの流れをきっちり作り上げることで自分のエンジンも温まってくるので中々に悪い作業ではないと感じている。
時給換算すれば茂君は安いものだが、すべてにおいて時給換算して仕事をしてしまうとエレベーターの移動時間が無駄だからポーターを別で雇って自分は延々とダンジョンの底のほうで活動してるほうが金になる、という話になってしまうからな。それも悪くないんだろうがさすがに嫌になってくるとは思う。
何事もほどほどが良いのだ、と自分に言い聞かせると、エレベーターで再び五十六層へのボタンをポチ。そして保管庫からチュールと酒と、さっきコンビニで買ったツナ缶を取り出すと、セノの到着を待つ。
「なんか呼んでる気がしたから来たぞよ。何ぞ用事か? 」
ちゅ〇るにつられておネコ様の登場だ。君を待っていたんだよ。
「うむ、ちょっとした用事というか頼みごとがある。これはまあ、袖の下ではないが頼み事を円滑に回すための燃料みたいなものかな」
「そういうことなら仕方ないのう。もらえるものは貰っておこうか」
人型になり、ツナ缶を器用に開封してスプーンを渡すと、早速食べ始めた。
「これは……なかなかうまいのう。いつもの猫缶とは違ってちゃんと味が付いてるし、この油が何とも言えん味わいをしておる。これは人間用のものかのう? 」
「そうだ、この油を使ってそのまま炒めて料理することもある。中々にコストパフォーマンスのいい食事だ。ちなみにここにこういうソースをかけて食べると更に美味しくなるぞ」
保管庫からマヨネーズを取り出してちょっと出してやる。マヨネーズを絡めたツナ缶を早速食べ始めるセノ。
「ほう、ほう、これだけでも立派な一品料理になるのう。このソースは中々、いいのう」
「これが酒のあてにもなるからな。たのしみはまだまだあるぞ」
「酒は、酒はないのか安村よ」
酒を催促されたのでさっき買った酒を一つずつ出す。早速パックの酒を飲もうとしたが、飲み方が解らなかったらしくストローの使い方とパックの開け方を教えてやる。
「かー、中々きついが悪くない酒じゃ。これも簡単な容器に入っているということは、それなりに数が出回っておる商品ということになるのかのう」
「そういうことになるな。モンスター一匹でこれが……五十五層なら五百は買えるかな」
「そんなにか! それは楽しみがまた増えるのう。これはガンテツも好きそうな味じゃ」
ガンテツに飲ませたっけな……記憶が定かではないが確かに、ガンテツに似合いそうな酒の種類ではある。
「ガンテツつながりで、そろそろ本題に入らせてもらってもいいかな」
「うむ、続きは後でも楽しめるからな。話を聞こう」
「海外の元ダンジョンマスター……つまり、こっちの国ではない、この星の上で他の地域のダンジョンを担当していたダンジョンマスターと連絡を取ることは出来るかな? 」
無理なら無理で断られても問題はない。無理でしたーとダンジョン庁に伝えてそれで終わりだ。ただこっちからそういうアプローチをとっている、という事実が必要なだけだ。
「ふむ……不可能ではない、という所かの。どこの誰の領域に集まっているかは……そうじゃな、ガンテツなら知っておるかもしれんからガンテツつながりで情報を確かめてみることにするかのう。あやつなら、ダンジョン改造のついでに改造したダンジョンで新しく作ってみないかと他のダンジョンマスターに声をかけ回っていた可能性は高いと言える。その伝手で何人かは捕まえることができるやもしれん」
ここでガンテツの名前が出てくるのか。かなり精力的に頑張ってくれてたんだなと思う。もしかしたら自分の作ったダンジョンの理論を他の暇なダンジョンマスターに見せてみてこういうのどう? 一枚乗って見ない? みたいな感じで同志を増やそうと努力していた形跡がある訳か。
「その伝手を使って一人でも二人でも十人でもいいから、ダンジョンマスターの注目がこっちに向いてくれて、ついでにこの国の土地を何とか確保するからダンジョンを作ってほしい、みたいな話を持ち掛けられたんだ。そのあたりうまくいく方法は何かないかなと。セノなら今あちこちのダンジョンへ行くこともあるだろうし、踏破されそうなダンジョンのダンジョンマスターに働きかけるのでもいいからその役目を請け負ってくれないかなという相談なんだが」
ふうむ? という感じを出しながら酒を呑み続けるセノ。ふらふらしていない所を見るとこっちも酔わない身体で出来ているのだろうか。毛深いので表情や態度に出にくいからガンテツと違ってどのくらい話に集中して聞いてくれているのか、それとも興味がないのか。こちらからのダンジョンへのアプローチとしては成功するか失敗するかは解らないが、少なくともダンジョンとして存在するだけの価値はあると認めているし、こっちの受け入れ姿勢は整えつつありますよ、という格好をお出しする点でも交渉の余地はあるんじゃないかなと思う。
「うむ、よかろう。やらないよりやるほうがマシじゃろうし、先日の会談からして協調路線で進めてくれるという気持ちは伝わった。ここは一つその話に乗ってみてやろう。ただし、成果に期待はあまりしないでおいてもらえると助かるのう。こいつなら確実についてくるじゃろう、といった目星をつけられるダンジョンマスターが居るわけでもなし、かといって暇してるダンジョンマスターをそのまま放っておくのも良しとは出来んからの」
「そういう話があると広めてくれるだけでも大助かりかな。今日呼んで明日にはダンジョンが作れる、というわけではないが近々そういう話がある、程度で収めてくれると助かるんだけど」
「まあ、我らとしても人のいない所にダンジョン建てても人が来ないし、じゃからと言って人の多く住むところに建てて混乱を招かせるのは本意ではない。そのあたりを説明しながら自由にダンジョンを建ててもいい土地がある……と喧伝して回るのは悪くない策じゃと思う。その辺は任せてもらおうかのう」
どうやら乗り気になってくれたらしい。これは一歩前進と考えていいのかな。新しいダンジョンなら通信もできるし、階段もスロープになっているだろうから荷物を運びながら探索という行為にも支障が出にくい。それ以外にも既存のダンジョンにはなかった機能が付け加えられる……これは真中長官の発想によるところが大きいが、色々と違うものをドロップしたりしなかったり、楽しみが増える所ではある。
「では、早速とは言わんが、これを味わったらしばらく元ダンジョンマスターを探す旅に出ることにするかの。まずはガンテツめに話を聞きに行くところから始めようと思う。しばしの間待っておれ。何とか形にできるよう取り計らってみる故な」
そういうと酒とつまみを全部よこせと仕草で迫るので、ガンテツ用のも含めて酒を渡しておく。もらうものをもらうとセノは転移していった。後は任せた、俺はいつも通りダンジョンに潜る。
作者からのお願い
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後毎度の誤字修正、感謝しております。