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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第二十四章:国交?樹立
1199/1204

1199:帰り道の一幕

 午前中は肩慣らしとはいえ、かなり楽な作業になった。五体が相手でも問題なくなったのと、三日サボったぐらいでは探索者としての勘はそうそう失われはしない、ということもついでに認識できたので、ワーカーホリックにならずに多少長めの休みを取ったりしても大丈夫なことを確認。


 一端五十六層に戻り、机と椅子を出して食事とする。今日の昼食「も」ハンバーガーと野菜ジュース、それにポテトだ。名古屋圏に無いけど東京圏にはあるハンバーガーショップ、もっと面倒くさいことを言えば、地元、車で三十分圏内にないチェーン店のものを一通り巡るだけ巡って買いに走ったおかげで、すぐ食べられる食料には事欠かないといううれしい事態になっている。これも会談の戦果の内、として早速食べにかかる。


 どうやら今日の昼食に選ばれた系列店はビーフパティの厚みが売りらしい。その分野菜は少なめだが、確実に腹を満たそうとしてくるビーフの味付けもシンプルながらしっかりと胃袋を脈動させ、次をよこせと全身に伝えてくる。


 とりあえず俺の中にランキングを作り、何処のチェーン店が一番自分好みだったのかを覚えておくのも悪くないだろう。この際それぞれの値段は考慮しない。味で勝負だ。


 そのランキングの中で言うと、今日の昼食は……A+といったところ。ポテトが太くても中までちゃんと火が通っているのがポイントだ。バンズと肉とソースの調和も中々。野菜が少なめなのは少し気になる所だが、そもそも野菜ではなく肉を売りにする店で野菜が少ないのを減点対象にするのは反則と言えるだろう。その肉自体もかなり美味しい部類に入り、口の中で確かな満足と食感を与えてくれている。なので中々高評価ではある。


 こういう食べ比べはなかなか楽しい。一気に食ってそれぞれをレビュー……というのは今の体型維持と年齢を理由にかなり難しくなっては来ているので、それぞれ食べる際に順番にレビューしていくことにする。やはりこの肉に付け合わせてあるのがチーズではなくチーズソースなのがポイントなんだな。


 うむ……値段を気にしないとはいえ、充分満足できる食事が出来た。ちょっと物足りないのでバニラバーと野菜ジュースを胃に入れて栄養バランスを考えつつもちゃんと食事をとったという体にしておく。


 食休みをきっちり取った上で早速午後のダッシュ大会開始だ。周りを見渡せる広い空間なので、ダッシュをして頑張っているぞというほどのスピード感を味わうことは出来ない。しかし、サクサク感は出るだろう。


 サクサクと言えば、購入した昼飯シリーズの中にサクサクのフライドチキンがあったな。夕食にはそれを食べることにしよう。夕食も決まったところで戦闘に集中。サクサク狩って早めに移動して次々に倒していくことにしよう。時間目いっぱいまで戦えば、サクサクチキンが待っている。夕食を楽しみにして戦闘に没頭することにした。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 午後の五時間の戦闘を終えて帰ってきた。いつもより一時間長めの戦闘だ。スタミナ的にも問題なく戦い続けられたので、運動量的にも問題はないということだろう。そして普段より長い分今日の収入も期待はできるな。三日間サボった分の稼ぎはきっちりできたと考えておこう。ちょっとずつ戦闘時間を増やしていって、確実な収入をもたらせるよう努力するのだ。


 どうせ税金で六割ぐらいはざくっと持っていかれる職業なのだからちょっとでも多く収入を得て……得ても得なくても今更もう生涯分の金は稼いでしまっている。なら後は精々ダンジョンを楽しむという方向性で進んでいこう。気楽に楽しんで努力できるのが一番何事にも負担がかからずに進歩することができるのだ。


 リヤカーをエレベーターに入れ七層へのボタンを押して、荷物の仕分けをして一息ついて水分を補給していると、ミルコが転移してきた。


「こんな時間に珍しいな。何か連絡事項か? おやつは午前中の間に配達したと思ったが」

「連絡事項というか、一つ確認を取っておいたほうがいいかと思う話があってね。セノがガンテツから託されてきたダンジョン改造キットを配布しているだろう? そこの中に各階層の通信に関する部分があるんだよ。そこでちょっと相談をしておいたほうがいいと思ってね」

「通信……つまり、最下層部分、今でいう六十九層以降は通信ができるようになると考えていいのか? 」

「そこの相談だよ。安村としては通信ができるようになっている方がうれしいのかな、と思ってね」


 ふむ。六十九層以降だけでも早めに通信が通るようになる、という点では非常にありがたいのは間違いない。


「ちなみに、通信を使えるようになるほうがいいとなると何か違いが出たりするのか? 」

「そうだね、既に作ってある階層に手を加える必要があるから少し時間をもらうことになるかな。すでにほとんど作ってしまってあるからね、階層全体に対して手を加える必要があるからそれなりに手間はかかるというところかな」


 速く新しい階層に潜りたいと思う部分はあるものの、セーフエリアで人に見られずに通信ができるという利点は非常に大きい。真中長官にもギルマスにも、最深部の風景を見せて回れることはできるし、セノを横に置いてダンジョン内外で通信ができるようになるのはかなり大きいインフラの拡充になる。


「そうだな……通信ができるようになってくれていると非常に助かるかな。先日の会談みたく大規模じゃなくても、ちょこちょこと話し合いの場を設けることは出来るようになるし、人に見られずに済むという利点もある。是非お願いしたいところかな」

「それはいいんだけど、聞いた話では人類側もごり押しで通信ができるように頑張ってるらしいじゃないか。それに水を差すような話にならないかい? そのへんは大丈夫なのかな。誰かのメンツをつぶしたり経済活動に支障をきたすようなら、できるだけお互いに干渉しあわないというダンジョンマスターの基本方針から外れることになるんだけど」

「まあ、こっちはこっち、そっちはそっちでお互い友好関係を結ぶという点では問題ないだろうし、こっちは上から順番に作っていくしかないからさ。もしかしたら既存の部分に対しても変更がかけられるかどうかまでは知らないが、新しく作った階層に関しては通信ができるようになる、ということが解るだけでも何処の階層がいつ頃作られているとかの判別が出来るようになるのは有り難いかな」


 最近できた階層では通信が通じるらしい。そういう話が世間に浸透していくならば、何処のダンジョンが古くから深く作られていたかの証明にもなるし、今後新しいダンジョンが出来る時は一層から通信ができるようになっている、という形になるだろう。


「そんなわけでとりあえず六十九層以降、つまり今後は電波が繋がってくれていると助かるかな。時間がかかるのは了解の上で待つことにする。焦る必要はないんだし、こうやってちゃんと探索もしてるからさ。出来れば他のエリアでも使えるようになればより良いんだろうけど」

「そう言ってくれるとありがたいね。通信の件は了解したよ。他の階層に関してはこれもまた要相談、ということになるかな。ダンジョンのデータの書き換えの間は階層を一旦閉じることになるからね。探索者が居たらうまく作動しない可能性もあるから慎重に行きたいんだ。そのあたりを打ち合わせするにしても、七十層で対話が出来るようになってからの方がありがたい所だと思うね」


 小西ダンジョンでは六十九層以降は電波が通じることになる。もうちょっとだけ、新しい冒険はお預けかな。


「ところで、今日のおやつはいろんな商品を細かくくれたみたいだけど、あれは旅行の土産みたいなものだと考えていいのかな? 」

「そうなる。高輪ゲートウェイ官民総合利用ダンジョンの外側、つまりこの国の首都がある地域で人気の食べ物をいっぱい買ってきたのでそのおすそ分けだな。気に入ったものはあったか? 」

「どれも美味しかったよ。ただ、通信が通るようになればそうやってお出かけする機会も減っていくという点ではもうちょっと大事に食べておくべきだったかな、と思うかな」


 もう全部食べたらしい。俺も保管庫にまだ残ってるとはいえ、流石に全部を食べきるのは無理だぞ。こいつの胃袋どうなってるんだ。……まあダンジョンマスターだし無限の胃袋ぐらいは持っていても不思議はないか。食べても太らないと前に言ってた気がするし。


「じゃあ、その予定で今から改造を組み込むから出来上がったらまた声をかけに来るよ。僕としても新しい階層が出来て深く探索者が潜ってくれて、ドロップ品を多く回収してくれる安村には感謝の念に堪えないからね」


 ミルコはそう言うと戻っていった。良い暇つぶしになったが、これで七十層から実況中継でお送りします、なんてこともできるようになったわけだ。スマホでテザリングできるように契約を変更する手続きを取っておいたほうがいいな。帰ったら早速調べよう。


 七層について茂君、そして帰ってきて一層。いつもの仕事を終わり、査定カウンターへ行く。今日はいつもよりちょっと長めに仕事をした分だけ収入も多いはずだ。査定金額が楽しみだな。


 カウンターで十五分ほど待った後で査定開始。いつも通り手渡ししながら手早く査定が終わるように手伝っていく。最近は俺を見習ってドカッと置いて後は任せたではなく、出来るだけ査定が短く終わるようにあらかじめ品物別に順番に出したりして負担を減らそうという動きがあるらしい。お互いにスムーズに仕事ができることは良い事だな。


 五分ほど査定に時間がかかったが無事に査定完了。今日のお賃金、二億六千九百五十六万八千二百四十三円。税抜きでこれなので、もし朝ギルマスとおしゃべりしてなかったら税込み三億ってところか。五十五層をソロで回れるようになったのはかなり大きいということだな。持ち帰るドロップ品がないことが懸念点だが、五十五層までのドロップ品で確実に持ち帰るだろう品物は食品以外だと羽根ぐらいのものなのであまり考えなくてもいいのも良い所か。


 冷たい水を飲んでリフレッシュ。今日も良く働いたな。一日で二億六千万。時給八百万円ではなく今日は一千万円だった。これで中川の父親に一歩近づいた感じがしてちょっとうれしいな。


 さて、バスの時間もちょうどだし帰ることにしよう。夕食はもう保管庫に入っている。まだ冷め切らないはずのハンバーガーを新たに温めて、味くらべをしていこう。野菜ジュースはもちろんセットだ。


 帰り道のバスの中、保管庫の中をそっと覗いて今夜はどれを食べようか思案している。夕飯でこれ以上活動しないのだから質素で堅実な感じのバーガーに行くか、それとも今日の売り上げの多さを考えて贅沢に分厚い牛パティの挟まれてる系を攻めるか、それとも中間で行くか。うむ……選択肢が多いというのも考え物だな。


 電車を降りてコンビニへ立ち寄り、ちょっとうろつきながら考え事。雑誌の最新号はまだ出てないのを確認すると、コンビニで売っているタイプのハンバーガーを見て回る。メーカー品だが、値段も安ければ具もそんなに多くなく、総菜パンとはいえそこそこの物量とそこそこのお値段、という保管庫の中にある一応専門店である所のハンバーガーと比べてみる。残念ながらコンビニでインスピレーションを受けることはなかった。


 お菓子の補充を済ませて会計。これで明日ミルコが訪れても問題なく貢物は提供できるだろう。ミントタブレットの在庫はまだまだあるし、バニラバーもある。今日は買い出しは行かなくて済みそうだ。


 さて、家に着いて身支度とゴミの片づけを終えると、保管庫にあるだけのバーガーとポテトを順番に出していく。まだ机一杯に並べられるそれらは、しばらく自堕落な生活を過ごすには充分な物量を俺に見せつけてくれていた。流石に買いすぎたか。まだ八店舗分ぐらいのバーガーがある。三食バーガーにしてもほぼ三日分。


 うむ……よし、やはり今日の夕食は質素に薄い目のバーガーで行こう。肉厚の有る奴はやはり昼に喰いたいからな。そうなると、明日の夕食はこの辺になるから……という逆順に沿って保管庫に入れなおしていく。ちなみにまだバーガーは温かさをほんのり残していた。明日からはレンジアップが確実に必要になるが、カビが生えたりとか悪くなったりというほどまで時間をおかないで済むのは間違いないらしい。


 早速、フィッシュバーガーを口に入れる。バンズからはみ出るサイズの魚をスライスして成型したフライがざくっと歯ごたえを残してくれて食感がいい。後、挟まれているタルタルソースも量が多くてよし。ここのチェーンのフィッシュバーガーは当たり、と覚えておこう。次回も同じものを頼むかどうかは解らないが、少なくとも当たりがあることは確認できた、今はそれで十分だろう。


 ゆっくりと味わいながら野菜ジュースでビタミンとミネラルを付け足して、ついでにマルチビタミンの錠剤を呑んでおけば栄養バランス的には問題はあるだろうが、直ちに問題はない程度には改善されるはず。もうしばらくのジャンクフード生活は続きそうである。


作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

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― 新着の感想 ―
唐突に出てきた中川龍一郎
肉食のおじさんが魚を食べてる。料理のレパートリーに魚料理は出てくるのだろうか?
3食バーガーセットはさすがにキツくない? トップ層の探索者になったことで安村さんの胃も若返ってるなぁw
感想一覧
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