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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第二十四章:国交?樹立
1193/1210

1193:再・鬼ころし本店 1

 気持ちいい目覚めだ。やはり家のものとはマットレスが違う。俺もここのマットレスの子になろうかな。それに、完全に大の字になって眠れるのもキングサイズベッドのいい点だ。流石に家のスペースの都合でキングサイズの寝床を仕入れることは出来ないが、お金を払ったなりの十分なサービスは受けられていると思う。


 やはり、そろそろ家のマットレスも……いや、いっその事ダブルベッドにしようか。二人以上で眠ることもままあることだし、適度に広いほうが快適に眠れるだろう。そうなると布団も作り直しだな。出費がかさむが冬用ダブル布団と夏用ダブル布団……夏用のダブルは保管庫に入れっぱなしのダンジョン用布団をそのまま使ってしまえばいいか。ベッドの買い替えする時にまた相談しよう。


 今日も朝食はビュッフェ。毎朝の儀式であるトーストとバターとキャベツと目玉焼きを確実に確保した後、コーンスープと少量の朝カレーを今日は試していこう。


 カレーうまっ! しっかりとコクが出ててとろみもあって、つい追加を取りに行ってしまうほどにうまい。これだけのカレーを作り上げるには眠らない夜でかき混ぜ続けて煮込む作業が必要だっただろう。ご飯も艶があって味が立っている。合わせて食べるとまたうまい。どうせなら昨日も食べておけばよかったな。


 カレーライスといつものゴキゲン朝食セットを胃に詰めた後、これはまだ何かあるに違いない、と他の食事にも手を出す。色々食べた結果、ここは朝飯をきちんと提供してくれる系列のホテルなんだと認識した。お高い宿泊料に含まれているとはいえ、朝からこれだけガッツリ食べられるなら文句の言い様もない。


 得した気分で部屋に帰り、帰り支度をする。スーツケースの中身はほとんど保管庫に入れておき、お土産を中に放り込んでも不思議がないようにしておく。どこかで誰かが見ているだろうし、監視カメラだってそれなりの数あるはずだ。うっかり監視カメラに保管庫を使ってる様を目撃されて、それがうっかり広まって……という可能性は捨てきれない。出来るだけ目立たないように行動しなくてはいけない上に、お土産はきっちり選んでできるだけ多く持ち帰りたい。昼食をいろいろ頼むという目的もあるしな。


 鬼ころし本店への移動時間とここの滞在時間を計算して、ちょっと暇つぶしに昨日のニュースをスマホでチェックする。すると、俺についての情報が少しだけ流れていた。どこの探索者かは不明だが協力者がダンジョンマスター側にいたらしい、という話。


 後、ダンジョン配信のアーカイブが今日の夜から見れるらしいのでそれを見直して、どのぐらい俺が見切れていたかを確認しないとな。


 芽生さんからも結衣さんからも今のところ反応はないので、バッチリ映ってましたとかそういうわけではないらしいことは察せられる。もしくは、帰ってからいろいろ言われる感じになるのだろうか。小西ダンジョンの住人の中でもダンジョンマスター会談を見ている人はいるだろうから、俺の声に聞き覚えのある人からやんややんや言われる可能性は高いな。


 むしろ小西ダンジョンの住人なら俺が相当深く潜って帰ってきているのは承知の上だから、あえて問わないでおく、という話になるかもしれないな。


 帰ってからの反応も楽しみになってきたな。それはそれとして今日、だな。今日は鬼ころし本店をもっと念入りに確かめてみることにする。鬼ころし以外にも探索者専門店はいくつかあるが、最大手と言えば鬼ころしということになっているらしい。


 それぞれの店舗に販売物に個性があって特色があるかもしれないが、何か用事があるたびに毎回新幹線でこっちまで来て……というのは少々効率が悪い。なので今回は鬼ころし本店を再度ぐるりと回ってインスピレーションを得ていくという日にしようと思う。


 時間が来たのでチェックアウトを済ませてホテルを出る。手荷物は来た時と同じ、スーツケース一つとスーツにボディバッグだけ。シンプルにチェックアウトしてシンプルに出てきた。昨日会談に出席していたという話がなければただのサラリーマンが出張宿泊していたとして、この世間に紛れ込むこともできるだろう。


 スーツケースは……どうするかな。手ぶらになりたいところだが何処かで映り込んでいる可能性は高い。レンタルロッカーに預けるのが最も安全ではあるが、保管庫に仕舞うのが最適解であることに違いはない。この人の多さの中でうまくごまかせるような方法は何かないものか……一駅歩いてその間にこっそりどこかで隠すとか、ビルに入ったり抜けたりしてしまい込む方法があるな。


 とりあえず、第一候補として監視カメラのない場所のトイレ……あたりを参考にしていこう。コンビニのトイレなんかはダメだ、完全に監視カメラは付いている。とりあえず最寄り駅まで行って、その後どうするか考えよう。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 色々考えながら、結局最寄り駅のトイレの周辺にカメラがなかったので大をするふりをしてトイレでスーツケースを収納。これで身軽に動けるようになった。さて、昨日も通った鬼ころし本店にやってきたぞ。一昨日来た時は全体像をうっすらと観察するだけで終わったが、今日は時間もあるし午前中ゆっくり使っていろんな商品を見回るだけの時間と余裕がある。


 まず、上から順番に見ていこう。消耗品はどうせ買い物をしてしまうのが目に見えているが、武器や防具は現状で充分に必要なものが揃っていると言える。つまり、上の階層ほど用事がない。用事がない分だけ色々考える余地が生まれるというもの。


 まずエレベーターで七層……いや、七階に上がって武器のコーナーを見て回る。まずは自分と同じ武器の種類のコーナーを見て回る。刀も剣も、安い順から奥に行くほど高級品がずらっと並ぶ。高級品のほうに行くほどメーカーや製法、紹介用のQRコードが添付されており、読み込むことで簡単な紹介と作ったメーカーの推しの点やこだわりなどを教えてくれるシステムになっている。そこまで読みこんで、気に入ったら店員を呼んで実際に持って確かめてみる、という形のようだ。


 短剣の部類もそれなりに数はあり、俺が愛用して居たグラディウスに近いような物もいくつか展示してあった。かなり手前のほうにあるので商品としては比較的お安いほうに入るのだろう。それでも五桁円はするので一概にお安いとは言い難い。それならその辺で文化包丁を買ってきて短い柄をつけるだけでも充分に代用が出来る……いや、流石に刃の厚みがなさすぎるか。ゴブリンぐらいまでなら文化包丁でもなんとかなるが、やはりソードゴブリンあたりを相手にするならこのぐらいの厚みは必要になるだろう。


 刀剣類にはショーテルなんてものまである。そこまで盾を意識して戦うモンスターはスケルトン以外には居なかったとは思うが、この値段で……と言うなら実際には有りかもしれないな。その気になれば下から狙って核を直接殴ることもできる。非常にピンポイントな装備ではあるが、そこで実力を高めてお小遣いを溜めて、次の階層に向けての準備と効率化……という点では買っても面白い装備ではあるな。それに、先端が刺さる以上刃が滑って中々切りにくいということに定評のあるバトルゴート相手にもそれなりの効果は発揮できるかもしれない。意外と合理的な所があるかもしれないな、ショーテル。


 次は拳。どうやら意外と人気があるのか、ガントレットも一般的なプレートアーマー風のものから、拳の握りの先、いわゆる正拳の辺りに装飾や刃の代わりに留め具が施され、効果的にダメージを与えられるように設計されているらしい。流石に何種類かはあるものの、刀剣のそれほどではない。爪が付いているものもある。モノによっては握り込むことによって刃が露出することで普段使いもある程度できるようなちょっとしたギミックのついたものまである。清州店ではここまでの品ぞろえは期待できないだろう。流石本店であるだけのことはあるな。


 変わり者武器というか、あまり一般的ではないという武器としては、よくカタールと誤解されるジャマダハルも並べられている。拳武器部門に並べられているのは、握り込む武器は全て拳だ、という解釈からだろうか。


 あと、当然のように蹴り物の武装も存在した。先端が研がれているだけでなく、特定のステップを踏むことでつま先から刃物が飛び出して相手に蹴り技で切れ込みを入れる……そういうタイプらしい。やはり肉体派の探索者はそれなりに数が居るものなのだろうか。ただ、両手がフリーのままで蹴り技まで入れられるというのはちょっとロマンがあるし、仕込み刃の素材を変えるだけである程度のモンスターまで対応できるのは面白い点だな。


 槍もそれなりに数はあった。こっちは穂先と持ち手が別々にされており、持ち手はいくらでも試せるが穂先はショーケースの中。やはり手に馴染みやすい持ち手を選び、その中でどの素材で作られたどのくらいの重さの槍先を仕込むか、という二段構えの様子。先から持ち手まで総金属製のものもあったがこちらは全部ショーケースの中。


 反対側には斧もあったが、重さがある分ダンジョン内ではあまり見られない武器ではある。ドロップ品を持ち帰るために毎回斧を持ち帰らずに廃棄していくこともできないだろうし。ただ、威力のほうは間違いなくあるのは確かだろう。


 メイスもある。重さと大きさを色々勘案して好きなのを選んでください、という感じだ。重さを極限まで削ってその上で威力を出すために、凹凸を細かくして放熱フィンのような形をしているメイスもある。これは中々痛そうだ。刃物ではないが突起物が連続して当たる姿を想像すると、割とありな装備であると言えるだろう。


 イロモノ系と言っては失礼だが、一般的に武器と呼ばれそうなものから外れた、雑多に並べられたエリアに来た。買う予定はもちろんない。ただ、本店で仕入れている以上需要はある装備ではある、というのは間違いないと考えていいだろう。


 飛び道具である投げ苦無や持ち苦無もある。お値段はそこそこ。ダンジョニウム製の投げ苦無もあったが、値段と回収できない可能性を考えると使い所はそう多くないだろう。モンスター一匹倒すたびに一つ無くす可能性もある。それに人力では中々モンスターに有効打を与えるというのも難しいだろうからな。


 スリングショットのコーナーもあった。こっちは玉の大きさをかなり選べて、しかも値段は重さ準拠なので浅い階層向けだろう。おそらくはダーククロウ対策、といったところ。そう言えば俺も持ってるんだったな、スリングショット。保管庫でゆっくりした眠りについているとはいえ、使わない内にゴムがだめになっている可能性もある。今度陰干しだと思って取り出して様子を見てみる必要も有るかもしれないな。


 それ以外にも前に見たモーニングスターやここで揃わない武器、という売り文句で装備を並べている店もあるだろうという考え方も一つではある。業界の隙間産業を狙っていく店というのは必ず存在する。他の店も回ってみるのも面白そうだな。また東京に来る際にはきちんと調べて店を回ってみるのもアリだな。


 武器コーナーを色々と見て回ったが、そもそもここは通り道。メインになるのはここから下だ。武器のコーナーを見終わって六階の防具のコーナーへ行く。ここは一昨日来た時も一通り見て回ったし、スーツから変更する予定はないのでざっくりとだが見て回る。


 まず、ツナギ。そして、防刃ツナギ。ツナギは全国共通衣装らしい。まあ、作業に向いてるって点ではこれ以上のものはないだろう。お値段も安いほうから高いほうへ、高いほど防刃性が上がるらしい。上限は二十万円というところ。俺も通った道だ、ここはスルー。そして着こみとして、全身タイツ風の防刃肌着が出てきた。上下セットで十八万円。大分お値段的に頑張ってるように見える。他の客もこれを見てはどうしようかと悩む程度には防刃性には興味があるらしい。


 もしかしたら防刃ツナギと防刃タイツのセットならゴキの噛みつきも貫通せずに済むかもしれない。そんなレベルなんだろうな。


 そしてやはり、ワイバーンの鱗をふんだんに使ったブレストアーマーというのが売りらしい。炎にも耐えて寒さにもある程度耐性がある。軽く手で触ってみるが、たしかな硬さの感触と、加工済みである柔らかさを併せ持つ合成皮革みたいな感じの出来上がりである。結衣さんも次に装備するならスーツかこのブレストアーマーあたりを選択するんだろう。


 お値段は……スーツほどではないがかなりする。ただファンタジー感あふれる商品なのでどう見ても探索者です、という所をファッショナブルに取り入れたいならこれは買っておくべき一品だろうな。他にも脛当て、肘当て、小手なんかもそれぞれワイバーンの鱗を加工して薄く延ばして、全身の急所を囲うようにマネキンがワイバーン一色に染め上げられていた。

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

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― 新着の感想 ―
俺もワイバーン装備で通勤したいなぁ かっこいいじゃん
スーツケースを保管庫に入れるのは最適解ではない。 トイレに行く時には持っていたのに出てきたら持ってないってなって怪しまれる。 基本的にはコインロッカーに預けるか家に配達してもらうのが無難。 保管庫使用…
普通のマットレスだと肉体のピークを保てる時間はどんなに長くてもあと3〜4年程度しか残されていないのが辛い、耐えられない お高いマットレスの子になろう安村さん そうすれば百年でも二百年でも冒険者し続けら…
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