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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第二十四章:国交?樹立
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1189:宴会

 時間が近づき竜也君に連絡を入れてみると、午後五時半にまた新橋、という話になった。流石に二日続けて同じ店というわけではないらしいが、パーティーメンバーと飲むときは大体新橋の特定の店、として決めているらしい。


 前回と同じSLの前ということで、ちょっと早めに移動をしておく。なんだかんだで時間を潰せたな、鬼ころし東京本店。もっとじっくり見れば何かインスピレーションが得られたかもしれないが、今日のところは顔見せだけ。明日帰る前に寄ることもできるので、明日の開店時間に合わせて色々見てみよう。アウトドアグッズと武器と防具以外で便利そうなアイテムがあったら購入を検討してみるのもいいだろう。


 新橋駅に着き、SLの前で待っていると、新藤コンビが揃って現れた。どうやら他のメンバーはまだらしい。


「早いね安村さん」

「待たせるのは落ち着かないからね。多少早く来て待つ方がまだ心穏やかでいられる」

「弦間さんはどうだった? しっかり情報を搾り取られてきたのか」


 竜也君がニヤニヤしながら聞いてくる。まあ、余計なことまで話してはいないとは思うが……どっちかと言うと弦間さんのほうが良くしゃべっていたかもしれないな。


「まあ、奢ってもらった分の話はしてきたつもりだ。どう話が拡散されていくかは解らないけどね」

「余計なこと、言ってない? 」


 那美さんが心配している。竜也君とは対照的に、那美さんはあまり弦間さんが得意なタイプではないようだ。


「大丈夫、だと、思う。公開された内容の補助的なことしか喋ってないし、後は小西ダンジョンで活動してることはいずれバレるだろうから自分から開示しておいた、大まかに言えばそのぐらいかな。最深層まで潜ってることは竜也君の口からバレちゃってるしね」

「まあ、お互いの活動を邪魔しないように、という意味ではちゃんと配慮してくれる人だからな。あの人の口車に乗って小西ダンジョンに出かけてみるという探索者は居るかもしれないが、安村さん個人を特定して追いかけるということまではしないと思うぞ」


 しばらく立ち話をしていると竜也君のスマホが鳴る。どうやら向こうのパーティーも到着したらしい。そう言えば俺は土竜(どりゅう)のメンバーはこの二人しか知らないんだよな。他所のクランの打ち上げに突然俺がお邪魔する形になるけどその辺は大丈夫なんだろうか?


「着いたらしい。合流しよう」


 竜也君の言葉で後ろをついていく。はぐれるほどの人通りではないが、見失わないようにピッタリ張り付いて行動すると、向こうから四人組が手を上げてこちらへ向かってきていた。


「竜也さん、お疲れ様です」

「そっちこそ、探索お疲れ様。成果はどうだった? 」

「そこそこですね。流石に二日三日でスキルオーブが出てくれる、といった状況にはなりませんでした。既に出たという報告は流れてきていないので、単純に運の問題ですね。で、そちらの方は? 」

「紹介しよう、小西ダンジョンで探索者をやってる安村さんだ。俺達より深い階層まで潜ってる日本の、いや世界のトップパーティーかもな」

「どうも、安村と言います」


 紹介されたので軽く挨拶する。トップパーティーと紹介されて軽く驚く別行動パーティーの面々。まあ、いきなり自分達より深く潜っている人だ、と言われると驚くのは仕方ないのかもしれないな。


「とりあえず、店に行こうか。ここで立ち話するより腹いっぱい食いたいだろうからな」

「そうですね、正直昼から何も食べてないのでとっとと胃に入れたい気分です。安村さん、今日はよろしくお願いします」


 礼儀正しく頭を下げられるのでこちらもどうぞよろしく、と下げ返す。


 合流してから徒歩四分、大衆居酒屋という感じの店に到着した。気取った店よりもこっちのほうが気は楽ではあるな、小西ダンジョンの中華屋みたいなものだろう。


 中に入ると、既に予約をしていたのかすんなりと奥の大テーブルに案内される。八人掛け用に七人で座るのでちょうどいい感じにスペースが取れている。若干体の大きい俺が空いている側に座ることで、バランスが取れているような形だ。


 どうやらコースで予約をしている様子で、飲み放題のビールから始まった。


「ではまずは、橋本君達の無事帰還を祝ってカンパーイ」

「「「「「「カンパーイ」」」」」」

「そして、安村さん東京いらっしゃいでついでにカンパーイ」

「「「「「「カンパーイ」」」」」」


 ついで扱いだが、俺にも乾杯をしてくれたのでその場のノリで付き合ってしまった。


「全員分ビールで頼んだんだけど、安村さんお酒はいけるんだよね」


 そこは乾杯する前に確認するところではないのか。


「【毒耐性】手に入れたんで飲めるようになった、というところかな。以前は全然飲めなかったよ」

「と、いうわけでゲストの安村さんだ。【毒耐性】は何層で手に入れたんだ? 」

「俺の分は三千五百万円で買い上げた。以前手に入れてたんだけどその時は三千万円で手放しちゃっててね。惜しいことをしたと時々思うよ。パーティーメンバーの分は確か五十一層だな」

「ということはやはりあの霧の鍾乳洞マップでは【毒耐性】が落ちやすい傾向にあるってことか。シャドウスライムからのドロップもあるんだろうか? 」

「俺の確認した範囲ではシャドウスライムは……というかスライム全般かもしれないけど、スキルオーブを落としたという話は聞いてないな。ちなみにだが、シャドウスライムにもバニラバーの儀式は有効なんだが試してみたか? 」


 念のための情報共有にまずこちらから牽制パンチを繰り出しておく。


「あいつにも効くのか。量は他のスライムと同じ半分で良いのか? 」

「そこまでは確認してないし、半分の量だと倒す前に喰い切られてしまうと思っているから一本全部食わせて試したが、魔結晶とキュアポーションのランク2とランク3を全部落とすぞ」


 どうやら知らなかったらしく、竜也君含めて驚いている。


「それは懐に優しいスライムだな。後は喰わせてる間に無事に倒せるかだけだが……何かコツはあるかな」

「核を狙えば一発で倒せるのは解ってるから、スライムが食事モーションに入ったところですぐさま核を割るだけの一撃を加える必要があるのかな? 」

「いや、バニラバーを認識した段階で普通のスライムの形状に変化するから、見た目そのままに核を探し出す必要はない。ただ一発で出来るかどうかは技量の問題だと思う」

「だ、そうだ。次に潜る時に持って行ってもらって効果のほどを確認してもらうことにしよう。これでクランの資金面が少しだけ軽くなるな」

「ランク2とランク3が落ちるなら、階層跨いで休憩する時にランク2のほうを飲んでデトックスする方が時間効率は良さそうに感じるね」


 ワイワイと騒ぎながら、料理が来るまでに二杯目のビールを飲む。お腹空いてるから固形物が早くほしいんだけどまだ来ないかな。


「橋本くんのパーティーは五十層から五十二層にかけて攻略中でさ。人数分毒耐性を集めようと頑張っているところなんだ」

「霧と鍾乳洞マップはドロップ品が軽いから良いよね。牙と白い粉だけだし、どっちも需要があるから大きな収入とは呼べないかもしれないけど確実に稼げる品物ではある。ヒールポーションのランク5も落とすし、悪くないと思うよ。俺もソロで時々回ってる」

「あそこをソロで……シャドウバイパーとか怖くないんですか」

「近づかれると厄介だけどね。その前にスキルで足止め出来れば問題ないし、シャドウバタフライも粉まみれにされる前に遠距離から一撃すれば、アイテムを拾うとき以外粉まみれになることはないよ。それに自分で【生活魔法】覚えたから掃除も完ぺきにできる。言うことなしだね」


 俺の話を聞いてみな少し唖然としている。今日のビールはいつもよりおいしく感じるな。ちょっと飲み過ぎるかもしれないけどせっかくの、酒が飲めるようになって初めての飲み会なのでどこまでいけるかどうかちょっと試してみるか。


「安村さん、どういうスキル構成してるんだ。いくら深く潜ってるとはいえそこまで色々と持っているのは逆に怖いぞ」

「えっとねえ。【雷魔法】四重化、【物理耐性】二重化、【魔法耐性】二重化、【索敵】、【毒耐性】、【生活魔法】、【隠蔽】、それと最近買い集めた【火魔法】かな。すいませんビールお代わり」

「もう安村さん一人でいいんじゃないかな」


 那美さんが突っ込む。


「うーん、でも最深層の戦力からすると手数が足りないんだよね。五十五層ぐらいまでなら何とか一人でも歩いて回れるけど、それ以降はちょっと無理かな」

「五十五層を一人かー……儲けてんなあ」

「それなりだよ、それなり。何よりも他に探索者がほぼ居ないことが稼げる条件の一つでもあるからね。他のパーティーと鉢合わせしたらそこまでの収入は取れなくなっちゃう」

「インゴットもちゃんと持ち帰ってるってことですよね? 」


 橋本さんから問われる。もし【毒耐性】のおかげで酒に強くなっていなければ、うっかり保管庫があるから重さは問題なし、なんてことを言ってしまっていたかもしれないな。


「うん、だから階段まで見える距離をぐるっと回って、重さを感じてきたら階段まで戻って、エレベーターに積み込んで移動する用のリヤカーに積んで、また稼ぎに行く。人が居ないから盗まれる心配もないしね」

「人が居ないとはいえ野積みかあ……同じ階層で探索してる探索者は居ないんですか? 」


 どうやら盗難案件とかそういう心配をしているらしい。あんな深くで泥棒してたら逆に怪しまれると思うがな。


「いるけど、みんな顔なじみだしね。お互い頑張って稼いでいこうぜぐらいの気持ちでやってるよ。そういう気持ちは持たないようにして行動してるから大丈夫」

「お互い顔見知りで仲が良いならそういう信頼関係もできるってことか。それも人柄なのかなあ」


 料理が来た。人数分のタルタルソースかけの鳥の揚げたやつだ。俺結構好きなんだよなこれ。ようやく腹が満たされる一品が来たぞ。


「さあ食べよう。【身体強化】はしっかりカロリーを使うからな。食べて使った分のカロリーを取り戻さないとな」

「安村さんは今日は使ってなかった気がするが。まあそれはいいや。ちゃんと飯が来たことだし、食べながらいろいろ話し合おう。どうせ周りも飲み会で他のブースの顧客の話なんて聞いてられないだろうしな」


 料理が来ると一斉に食べだす。コース料理とはいえ、他に注文もできるんだよな。何があるのかなとメニューを覗くと、居酒屋! というメニューは大体網羅されていて、ここのお薦めは今来たチキン南蛮らしい。もう一皿あってもいい人数ではあるな。何を頼もうかな……〆のメニューは置いといて、まずは山盛りポテトをオーダーしておこう。


「すいません、コースとは別で山盛りポテトお願いします」

「かしこまりました」


 通りがかった店員さんに注文を通しておく。ポテトならサッと揚げて盛り付けるだけだし、よほど混雑してなければ早めに届くだろう。


「で、安村さんは最近困ったこととかあるの? 」

「しいて言うなら、一番儲けられるゾーンに行くためには一泊しないとたどり着けない所かなあ。小西ダンジョンは二十四時間営業じゃないから探索時間に制限がある。だとすると、中で飯食ってそれから奥まで進んで……ダンジョンコアルームで休憩してそれからまた数時間戦って、疲れたらまたコアルームに戻ってってのを繰り返す必要があるのがね。贅沢な悩みだが、帰り道が面倒くさい。あと、属性が合わないのか完全に魔法耐性があるのかまだはっきりしてないけど、スキルが効かなくて攻撃しても中々倒れないモンスターが出てきてるのが厄介かな。そいつらの対応さえ間違えなければドロップ品も軽くて小さいし美味しい階層なのは間違いないんだけどね」

「そんなモンスターが出てくるのか。どんなモンスターなんだろう? 」

「えっとね……スマホに録画があるよ」


 スマホをボディバッグから取り出して見せてみる。みんなでスマホを回し見して六十七階層の様子を探る。


「これは……何層なんだ? 」

「六十七層かな。その白血球みたいなやつが完全魔法耐性なのかどうかはまだ手持ちの属性魔法が完備されてないのではっきりしたことは言えないんだけど、少なくとも【雷魔法】は完全に遮断されてる感じだった。四重化した【雷魔法】で通じないんだから雷属性に関しては完全な耐性を持ってると考えていいと思う」

「他の属性はまだ試してないってところか。確かもう一人のパーティーメンバーは【水魔法】を覚えていたと思うが」

「そうだな。でもそっちも効果薄って感じだったな。もしかしたら特定の属性にだけ特に弱くてその属性を手持ちに持ってないって可能性もある。まあその辺は今後に期待かな」


作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

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― 新着の感想 ―
シャドウスライムの方のバグは、やりすぎると修正くらいそうな気がする
> 大丈夫、だと、思う」 動揺するおじさん > 大丈夫なんだろうか?」 判断が遅いおじさん > そちらの方は?」 通訳のおじさんです > 昼から何も食べてない」 昼は食べているメンバー > 体…
コアルームの件は話すと不味いのではないでしょうか? あとで怒られないといいのですが。
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