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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第二十四章:国交?樹立
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1176:会談前日

 うむ、いい朝である。ちゃんとした目覚めはちゃんとした生活に通ずる。ここほぼ一年気持ちよく起き続けられている。ありがとう、そして今日もお世話になりました。


 さて、今日は会談前日。二泊三日の予定で東京だ。ホテルは取れているので現地でその周りで困ることはない。念のため旅行セットに着替えは準備しておいたので問題なし。後は時間つぶしに何をするか、だな。東京旅行としゃれこんで現地に到着してどこへ行くかどうかを考えていこう。


 今のうちに決めちゃうと楽しみは増えるが思ったより時間がかかったとかで回り切れなかった場所への後悔が募ったりするし、そもそも二日目は仕事で何時までかかるかもわからない。そのまま高輪ゲートウェイ官民総合利用ダンジョンへ潜って国内最大のダンジョンの空気を味わってみたいと思うかもしれないからな。


 そんなわけで、実質二日分の東京での予定は空けてある。何をどうするかが楽しみだな。


 朝食を食べ、昼食は前に言っていたキャベツステーキを試しに作ってみよう。気に入ったら今後のローテーションレシピに加えることも視野に入れておく。


 レシピは簡単、ガーリックバターと醤油のソースを先に作っておき、綺麗にしたフライパンに塩胡椒を振ったキャベツを入れて焦げ目がつくまで焼く。その後で水を入れて蓋をして蒸し焼き風にする。これで内側にしっかりとした蒸しキャベツ感を出す。芯まで熱が通ったであろう時間を見計らって先に作っておいたガリバタ醤油ソースを馴染ませる。しっかりとソースが絡んだら完成だ。キャベツを焼く前にベーコンを焼いてその残り油を味わいとして取り入れてもいいしチーズを足してもいいな。


 ご飯を一合半だけ炊き、そのまま炊飯。昼食は家で食べることにしよう。


 さて、お休みみたいになってしまったが昼食までは作ったのでやることが無くなった。ニュースを見ると、明日の会談がどうなるかという話題で盛り上がっている。どこまでダンジョンについての知見を広めることができるのか、そもそもダンジョンとは何か、というダンジョンの歴史やダンジョン庁が出来てからの流れや探索者の人口、そして経済効果などにも波及して今のダンジョン事情というものはどうなっているのか、という特番をやっていた。


 ダンジョンが出来た時期からダンジョンが出来た後の行政の対応や自衛隊出動、それから内部調査の結果など現状解り切っていることを年表形式にして念入りに説明している。俺も知らない部分も解説してくれていて為になる。念のため前勉強しておこう。


 そうだ、せっかく東京に行くんだから新藤君達にも連絡を入れておいたほうがいいな。


「明日のダンジョンマスター会談、私も参加するので今日の夕方から東京に行きます」


 しばらくすると返信が来た。


「良ければ一緒に食事に行きませんか。時間が合えば、ですが」


 那美さんからの返信だった。どうやら一緒に居たらしい。女性からのお誘い……浮気じゃないぞ? 探索者同士の貴重な意見交換会だからな。那美さんから返信が来たということは多分竜也君も一緒、ということだろう。


「問題ありません、東京に着き次第また連絡します。午前中はこちらで少し用事があるのでぶらぶら観光という予定もないですしゆっくり食事を楽しみましょう」


 ちゃんと竜也君のほうにも返信しておいた。これで二人同時に相手出来るな。と思ったらグループチャットで返信が来た。


「ホテルはちゃんと予約取れてる? 」

「高輪ゲートウェイ官民総合利用ダンジョンの近くに空いてる部屋があったんでそこにした。あらかじめ発表前にダンジョン庁からこの日にやりますって予告は聞いておいたから予約しておいた」

「ダンジョンが出来て以来周辺物件のホテル価格も上がりっぱなしで満室なことも多いからな。よく取れたもんだ」

「二名一部屋キングベッドで予約とって一人で泊まることになった、という感じになったかな。芽生さんは本業の都合で欠席なのででかいベッドで一人で眠る楽しさはありそう」

「食べたいもののリクエストは何かある? 大体のものはご用意できると思う」

「お任せで。連れていきたい店があればそこで。俺が下手に選ぶと、こっちにないチェーン店の安いお店とかになっちゃってそっちにも不満が残るといけないし」


 地方民あるあるである。首都圏にはありふれたチェーン店だが地方にはなく、旅行に行く機会もそれほどないから、せっかく地方から来てくれたのに美味い店を紹介する前に歩けば二、三軒見つかるような店やバーガーチェーンを指定してそれを食べてみたいと言い出す流れ。


 俺自身そういうことがあるということを知っているし、食道楽ではあるもののせっかくの会食をそんな安っぽい店で済ませたくはない。せっかくなら地元に詳しい人のお薦めの店というのを楽しむのも旅の醍醐味ではなかろうか。


「とりあえず十六時に東京駅に到着予定だからその後ホテルにチェックインして……その後合流ということで良いだろうか」

「ん、わかった。連絡待ってる」

「俺と那美は行くからな。どうせ会談がらみで三日間はクラン員全員休みだ。こっちの財布の都合は気にしなくていいぞ」

「それじゃ、また後で」


 グループチャットを一旦閉じて会話を終わりにする。夕食どうしようか考えていたが連れて行ってもらえるなら一つ気楽になった。


 さて、布団の山本に連絡を入れていつも通りの量を保管庫から取り出した社用車に準備。早速出かける。三十分ほどで布団の山本に到着。店に入り店長に挨拶すると荷下ろしを手伝ってもらう。


 応接席に座ると、羊羹と良い感じに温い茶が出てきた。この季節、キンキンに冷えた麦茶や熱い緑茶よりもこのぐらいのほうが飲みやすく有り難い。


「なんでも明日、ダンジョンマスターが会見を開くという話を聞きました。何が起こるんでしょうね」


 山本店長もダンジョン関連商品に携わる以上、気になることではあるらしい。


「実は私も現地まで行くことになってまして。この後出発して向こうで二泊してくる予定です」

「もしかして、安村様は結構重要なポジションにいらっしゃったりするんですか? 」


 山本店長の腰が軽く浮く。今更というわけではないが、そこそこやれる探索者ぐらいには思っていたが予想よりもこの人はやれる人だったんじゃないか? という考えを浮かべてしまったんだろう。


「どうでしょうね。もしかしたら明日を機にただの探索者になるのかもしれませんし、話題に上る探索者になるかもしれません。会談がどのように進んでいくのか、それ次第ですね」

「そうですか。中継は見る予定ですが、どうぞ頑張ってきてください」

「ありがとうございます。どう配信されるのかの詳細までは知らないんですが、とりあえず一仕事行ってきますってところですかね」


 羊羹をしっかり味わう。いつ食っても美味いな、この羊羹。新藤コンビへのお土産に二本ほど包んでもらいに行くか。手ぶらでってのもあれだしな。


 羊羹と温い茶で胃袋を軽く満たしている間に検品が終わったらしく、店長が確認し、こちらを向いて軽く頷く。どうやら、今回も基準を満たすだけの品物をご用意できたらしいな。


「もしかしたらカメラに映り込むかもしれませんね。そうなったらこっそりこうやって羽根集めしてるのもできなくなるかもしれません。在庫はありますのでまだしばらくは大丈夫ですが」

「あはは、それは当店も重要な仕入先を一つなくしてしまうかもしれませんね。是非穏便に物事を進めてきてください」

「そう願うとしますよ。では、今日は失礼します。向こうで知人と会う予定がありますので、それまでにちょっと手土産を用意していかないといけませんので」

「またお越しください、お待ち申し上げております」


 今までで一番短いやり取りじゃなかっただろうか。手短に用件を済ませたところで、羊羹屋に向けて車を走らせる。取引先への手土産は経費になるはずなので、その為の交通費も経費に出来るはずだ。羊羹を二本……いや四本購入して一本は自分用としておこう。ちょくちょく買いに来るのも面倒だし羊羹はそもそも賞味期限が長い。保管庫に入れておけば死ぬまでに消費すればいいぐらいまでの長さになる。ついうっかりダンジョンの中で羊羹が食べたくなってもいつでも羊羹が食べれる幸せも感じ取ることができる。


 家に戻ったところで車を保管庫に収納しておく。あって困るものではないし、家に置いておく必要もなければ出先で迂闊にドライブを楽しみたくなった時に物陰からこっそり出すことさえできれば持ち運び自由の自動車があるということは心の余裕を持たせるいいチャンスだ。流石に東京旅行で使うつもりはないが、何となく保管庫に入れておいたほうが良さそうな気がするのでそのまま入れておこう。


 昼食時になり、キャベツステーキの破壊力を体験してから……そういえば人前にも出るんだ、ニンニクは少しまずかったかな。口臭消しをコンビニで買ってから新幹線に乗ることにしよう。それはそれとして、ご飯もよそっていただきます。


 うむ、美味い。ガーリックバターの風味もしっかりと全体に回っていることもあるが、キャベツ全体にちゃんと熱が回っていてしんなりしたところと、焼き目を付けたキャベツの少しだけカリッとした部分がいい感じに口内でアクセントの違いを演出してくれている。


 しっかり火が通っていることでキャベツ全体から甘みが感じ取れるのもグッドだ。ステーキではなく焼き目を付けた甘味を味わっているかのようだ。普通のキャベツでこうなのだから、春キャベツで作ったキャベツステーキは極上に美味いに違いない。とてもご飯が進む。


 後はチーズかカレー粉をまぶしてやってもいいな。甘みとチーズのうまみとスパイスが効いてより美味しくいただけるに違いない。これはローテーションレシピ入りの番付に登録しておこう。芽生さんにも感想を聞いて是非とも一緒に食べたい。


 そういえば芽生さんにも連絡を入れておかないとな。東京へわざわざ行ってきて手ぶらで帰ってきて後で文句を言われるぐらいなら先に聞いておいて手に入れられるかどうかはわからないがリクエストがあれば聞いておいたほうがいい。結衣さんにも同じ土産物を渡しておけばバランスもとれるしな。


「前泊するので今から出かける。帰りは三日後。お土産何がいい? 」


 食事をしながらで行儀が悪いが芽生さんに連絡をしておく。うむ、キャベツだけとはいえこれは中々。しかし、移動中にお腹が空くかもしれないなという心配が少し残る。野菜類は体積のわりに胃に溜まりにくいからな。しかし、夕飯は新藤コンビに連れて行ってもらう店なのでそれに期待して精々腹を空かせておくのも悪くないな。


 どんなジャンル、どんな店、どんな料理が俺のためにご用意されてくるんだろう。こんなおっさんのために若い二人が苦慮して考えてくれる夕食会だ、お互い値段を気にすることなくいい感じのところへ連れて行ってくれると思うが、ここはお互い探索者という肉体労働者だ、安いかどうかはさておき量のほうは満足するものが出てくる可能性は高いな。


 こっちにないチェーン店の焼肉とかでも全然いい。今から楽しみだな。


 食べ終わって食器を片付けている間に芽生さんから返信が来ていた。


「お任せします。何か消え物で並ばずに買えそうなものを選んできてください」


 時間的コスパまで考慮してくれたらしい。有り難い子だ、いい彼女を持ったな。結衣さんのほうにも念のため連絡を入れておこう。流石に今の時間はダンジョンの中だろうから返事は夜あたりになりそうだが帰るまでに買えばいい話のこと、何を注文されるかまでは解らんがちゃんと聞いておいて……後は新浜パーティー用の消え物で人数分で割り切れる奴を探そう。メモメモっと。


 さて、そろそろお出かけの時間だ。家の残り物なんかは全部処分してあるので賞味期限を気にするようなものはない。戸締りを済ませて、家の鍵をしっかりかけておけば後はどうとでもなるようにしておけばいいだろう。


 スーツ、ヨシ!

 着替え二日分、ヨシ!

 スマホ、ヨシ!

 財布、ヨシ!

 札束、ヨシ!

 メモ帳、ヨシ!

 念のため装備品類を保管庫に入れてヨシ!

 その他色々……ヨシ!


 指さし確認は大事である。さあ、二泊三日の東京旅行兼ダンジョンマスター会談、お出かけするとしますか。


作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

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― 新着の感想 ―
会食の件は、先にゲロしとかないと後で修羅場になるパターンですねコレは…… ……あれ? 高輪でやるって、安村氏から伝えてるっけ? 時間が決まったとは言ってたけど……?
> 一緒に食事に行きませんか」 誘われるおじさん > 多分竜也君も一緒」 フラグを立てるおじさん > 俺と那美は行くからな」 ちょっとガッカリするおじさん > 腰が軽く浮く」 ふわふわしちゃう店…
口臭は魔法でどうにか出来ないか
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