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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第二十四章:国交?樹立
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1174:久々スノーオウル 2

 三十七層の並木道を歩き終えて真っ直ぐ南下。ここから階段までの間にスノーオウルは居ないので、雪まんじゅうにだけ気にしていけばいい気楽な道でもある。スノーベアも雪まんじゅう状態から全力雷撃でそのまま吹き飛ばすことができる。雪まんじゅうから出てくることもなく一方的に虐殺され、スノーベア本人からすれば知らない間に死んでいた、という悲しい状態だろう。


 そんな悲しみとこんにちはしつつ、さっさと三十七層を歩き終えるとここから本番、三十八層スノーオウルの石兵八陣といわんばかりの等間隔に並べられた木、そして木ごとに必ず一匹ずつ存在するスノーオウル。ここはひたすらスノーオウルと戦い続け、そして時々スノーベアが混じっている初見殺しの迷路エリアでもある。


 既に三十八層で散々うろつきまわっていて少なくとも東西がループしていることを確認している俺はともかくとして、地図も無しにここをうろつくにはちょっと勇気がいるだろう。


 さて、時間的にちょうどいいしお昼ごはんにするか。ここでは階段周りは若干のセーフエリアになっている。階段真横にスノーベアが湧いたりしない限りはスノーオウルが寄り付くこともないし、歩きながら食べることもできるが今日は朝早かった分時間もある。ここでしっかり午後の歩きどおし撃ちっぱなし拾いっぱなしになる戦闘行動のためのカロリー補給をしておこう。


 いつものサンドイッチなので味は変わらず、若干温かさが欲しいな、と思う程度ではあるが保管庫に入れておいたおかげでまだほのかに温かさの残る生姜焼きがサンドイッチの中で主張をしている。せっかくならホットコーヒーでもコンビニで買っておけばよかったか。


 やはりちょっと肌寒い。動いている間に暖かくなるだろうが、飯の間だけでもチョッキを着ておこう。寒くて体が動かせなくて満足に探索出来ないでは意味がないからな。


 サンドイッチをすべて胃に納めると軽く運動をして、視界内でスノーオウルと戦っている探索者をボーっと眺める。どうやら俺みたいにコンスタントに戦えない場合、近接させて誰かが持ち上げられているところを狙って羽根を斬り落として飛べなくなってる間に止めを刺す、というのが一般的な方法らしい。


 しばらくすると、その探索者達がこっちへ近づいてきた。何か用事だろうか。


「あの、このマップの地図って持ってたりしませんか? 階段がどっちの方向にあるかわからなくて」


 なるほど。このマップでは仕方がないことかもしれん。ここは素直に教えてあげて目標に向かって進めるように道を示してあげるのも三十八層での先輩探索者の仕事だな。


「西に十本、北に十四本行けばそこに階段があるよ。方角は大丈夫? 」

「方角は何とかなります。ありがとうございます」

「がんばってねー」


 見送ると、早速一本一本確かめながら進んでいる様子。俺もあんな感じだったか。いや、高橋さんに早々に答えを教えてもらってさっさとクリアしていたな。正直ここの景色は目に悪い。同じ間隔で同じ木が無限に続くこの混乱する大地で、どれだけの辛抱強さがあれば一本一本数えながら進む気になれるのか。任務か、それを数えることによる報酬でもない限りはお断りだろうな。


 さて、こっちもそろそろ出かけるとするか。服装をビシッと決めてチョッキは着たまま、真っ直ぐ西に向かって進む。一本目から十本目あたりまでは先に行った探索者が倒してしまっている様子なので、その左右の木からまずはやっていくとするか。


 バチン、サッ、バツン! 手で拾い。バチン、サッ、バツン! 手で拾い。


 威力もテンポも問題なし。後は倒すタイミングさえ間違えなければすぐ手の届くところで回収できる。やり方は忘れてないぞ。


 バチン、サッ、バツン! 手で拾い。バチン、サッ、バツン! 手で拾い。


 そうそう、ここのリズムはこんな感じだ。ドロップも良い感じに手元で拾えている。


 バチン、サッ、バツン! 手で拾い。バチン、サッ、バツン! 手で拾い。


 先を行っていた探索者が後ろを振り返り、俺の狩り方を見ている。なおさら保管庫は使えないな。しっかりと【雷魔法】だけを使ってスノーオウルを狩っていこう。


 バチン、サッ、バツン! 手で拾い。バチン、サッ、バツン! 手で拾い。


 向こうは三十九層方面へ行くらしい。西向きのから北へ曲がっていった。一本ズレてるようだが、北へ向かっていれば階段がその内見えてくるだろうし問題はないだろうな。そのまま元気に探索を続けていってほしい。


 バチン、サッ、バツン! 手で拾い。バチン、サッ、バツン! 手で拾い。

 バチン、サッ、バツン! 手で拾い。しばらく歩いて次の木へ。


 ようやく進行方向にもスノーオウルが現れる段階まで来た。ここからはスピードを上げていくか。木から木へランニングスタイルで進み、移動時間を短縮する分だけスノーオウルの羽根を多めに回収する。後ろを見てもどっちを見ても誰も居ない。ここなら保管庫を使っていっても大丈夫なゾーンだと思われる。よし、盛大にスノーオウル狩りと行くか。


 バチン、サッ、バツン! シュッ。バチン、サッ、バツン! シュッ。

 バチン、サッ、バツン! シュッ。次の木へランニング。


 スノーベアが居たので一撃で吹き飛ばし、吹き飛ばした後に駆け寄って範囲収納。そしてまた本道に戻って続きの道をさらに西へ。


 バチン、サッ、バツン! シュッ。バチン、サッ、バツン! シュッ。

 バチン、サッ、バツン! シュッ。次の木へランニング。


 体も温まってきた。そろそろチョッキを脱ごう。さあここから更にスピードを上げていくぞ。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 普段の歩行スピードなら四時間ほどかかるはずの一周コースを三時間半ほどで帰ってきた。もう一時間ぐらいはぐるりと回っていけるコースだな。とりあえず三十九層の階段まで同じ行為を繰り返して、それから帰ることにしよう。


 三十九層の階段まで来て、そしてぐるりと回るように、同じように周りに誰も居ないのを確認しながら足元にドロップ品が来るようにしながら引き続き倒していく。今日のスノーオウルの羽根は……これから三十七層に上がってもう一度並木道で回収する分も含めると大体十キログラム分ぐらいか。かなり良い感じに稼げていると言えるな。毎回これだけ稼げていれば悪くないというもの。


 順調に進んで三十七層側階段まで戻ってきた。やっぱり誰も居ないって素敵だな。この空間を独り占めできるという独占欲と、好きなだけスキルを打ち放題出来るという開放感に勝るものなし。


 三十七層に上がって、また並木道まで北上してくる。そして並木道でいつものバチン、サッ、バツン! で拾って次へ進む。周囲の索敵にも視界内にも音で検知しても、他の探索者のいる様子はない。かといって迂闊に使ってみられるのも問題なのでここでは大人しく手で拾う。三十六層でも気を付けてドロップを拾っていこう。


 そのまま三十六層の階段まで上がると、今日のメインディッシュは平らげた。これで納品二回分ぐらいのスノーオウルは入手できたと思う。後は帰り道、三十六層に探索者が居るかどうかだな。もし居るなら三十六層での収入はごくわずかだということになってしまう。これも小西ダンジョンの狭さゆえの問題だが、だからと言ってお互い譲り合いの精神で行くのも両方が稼げないという事態になってしまう。これも次回ダンジョンを作り直すときの改善点としてミルコに申し渡しをするところだろう。


 上がった三十六層では目の前にワイバーン二匹。ここに二匹居るということはしばらく誰も通ってないという証明でもある。美味しく頂いてドロップ品を確保すると、周囲を見渡す。まだ誰も居ない。しばらくは安心して金稼ぎが出来るな。


 そのまま三十六層の中間あたりまで順調に進むと、ここで他の探索者と行き交うことになった。ここから先は俺も向こうも歩くだけの時間がしばらく続く辛いゾーンだ。マップの構成上仕方ないのかもしれないな。


 しばらく歩いてリポップが確認できたのでその分だけ倒して戻り三十五層に上がった。


 三十五層でノートを確認すると、三十四層でダンジョンヴィーゼルから【風魔法】をドロップしたという報告があった。ここでもノートは充分に機能しているな、よしよし。


 七層行きのエレベーターの中で荷物の仕分け。スノーオウルを回収する時はドロップ品の種類が多いのでそれぞれエコバッグに仕分けして、羽根と肉は保管庫の中。


 七層に到着するとまたリヤカーを隠して茂君ダッシュし、帰ってきて一層。退ダン手続き。いつもの時間に帰ってこれたのでヨシ。


 査定カウンターで査定を受ける。


「今日はいつもと違う階層ですか」

「えぇ、品数が多くて細かいですけどお願いします」


 流石に手慣れたのか、何処の階層に潜ってきたのかも把握できているのであろう、こんなドロップ品見たことない等という感想は聞こえてこず、種類順に仕分けたドロップ品と魔結晶、そしてポーションを渡していき、一括でお願いする。


 今日のお賃金は四千二百七十五万円となった。スノーオウル狩りにしてはそこそこ、というところか。やはりジョギングしながら狩っていたのが結構響いているらしい。芽生さんと一緒に刈り取っていた時はもっと高収入だったが、あれは二人でやり方も解っていて、それぞれ飛び道具も近接対応もできるからこそ出来た手段。どこかの大手のクランが横一列に並んでヨーイドンで始めたら一瞬で枯渇するんだろうなと思い、そういう光景も目にしてみたいなぁという感想が漏れる。


 いつもの冷たい水でスッキリする。さて、来週は第二回ダンジョンマスター会談だ。前泊の準備はしてあるしホテルの予約も取ってある。最近の東京近辺のホテル価格はお高いがお高いだけであって空いてなかったわけじゃないのは助かった。これで何処でも満員という話になったら朝早く起きてほぼ始発の新幹線で現地入りというあわただしい話にならなかったのは一つ助かったところである。


 服装はいつものスーツでいいし、手荷物は保管庫の中に放り込んでおけばいい。その前に一日使って布団の山本に納品しに行くのも悪くない。芽生さんとの日程は会談までに一日潜る、ということだけは決まっているのでその時にでもお土産何がいいかの話ぐらいはしておくかな。


 さて、今日の夕飯は何にするかな。スノーオウルを一日相手にしたので鶏肉が食べたいな。親子丼でも買いに行くか、もしくは駅前の最近できた店で何か探して何か目新しいものを見つけるのもいいかもしれない。


 とりあえずはバスだ、バスは……なんだ、行った後か。ならば自転車で追いかけることにしよう。駐輪場へ行ってこっそりと保管庫から自転車を取り出すと、駅方面へ向かって漕ぎ出す。まだ昼間の暑さが残る中だが、スーツに熱気がこもり始める。これは電車に乗る前に一回ウォッシュして気持ちよくなったほうがいいな。夕方は過ぎて日も落ちる時間帯とはいえ暑い。


 途中にあるとんかつ屋を通り過ぎる。ここは前に通ったが味はそこそこお値段通りという感想だった気がする。他に食べ物屋があればいいんだがな。流石にバス停前か駅近くじゃないとそういうものはまだ見当たらないらしい。


 これはあれかな、駅前まで何も思いつかない日かな。この辺は民家しかないし、このままだと駅まで到着……もう到着したわ。駅前で買い物してから帰ることにするか。


 最近できた駅前のコンビニで店舗で作っている親子丼と何処のコンビニにも置いてあるサラダチキン、そしてたまには自分も飲みたい分としてサイダーを購入すると、電車に乗り自宅へ戻る。


 さて、夕飯だ。店舗作りの炭火焼親子丼、一体どのぐらい炭火風味が出ているのかは気になる。早速蓋を開けて食すことにしよう。


 炭火焼だ……炭火焼特有の焦げではない焦げた香りが鼻を通り抜けていく。炭火焼の香りのする香料か、もしくは本当に炭火焼して各店舗に配達されているのかまではわからないが、たしかにこれは炭火焼親子丼である。薬味のないストロングスタイルで価格もかなり強気な設定だったが、炭火焼親子丼が食いたい! という欲求には応えてくれている品だと言える。


 真ん中に乗っている温泉卵も悪くない。卵が多めだが肉もそれなりに乗っていて、二、三欠片乗せてあるだけで親子丼を名乗る品ではないことも確か。量的には……昼を考えればもうちょっと量があっても良かったなとは思うが、これもまた悪くない。駅前のコンビニの弁当もまた一つ俺の食生活を豊かにしてくれるであろうことが確認できる。


 家の近くのコンビニ、ダンジョン前のコンビニ、そしてダンジョンのある駅前のコンビニ、全て会社が違うのもポイントだ。三種類好きな時に好きなものを選べる自由が通勤ついでにあるというのは中々好立地であると言える。サラダチキンを温めてご飯の上に載せて、追いチキンにして食べた。こちらは炭火焼ではないがハーブサラダチキンなので、ハーブの香りが親子丼に更に香りと味わい深める。


 うむ、今日もいい飯が食えた。明日もいい飯が食えると良いな。余は満足である。たとえそれがコンビニ飯であっても。

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

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― 新着の感想 ―
> 若干温かさが欲しいな」 砂漠で回鍋肉丼を食べ、雪山でサンドイッチを食べるおじさん > 肌寒い」 3階層急いできたけどまだ温まっていないおじさん > 誰かが持ち上げられているところを」 ギャグか…
今回、正体を隠しての通訳ですがこういうホテルの宿泊費なんかは経費で落ちるのだろうか
高レベルで身体能力上がってるし、エレベーター挟むからクールダウン、ウォームアップそこまで重要じゃないかもだけど、 夏の暑さと雪景色日帰りはつらそう。
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