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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第二十三章:新たなダンジョンマスター

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1170:緊急会議 2

 side:ギルドマスター緊急会議


 会議は続く。まず十五分間ほど時間が取られ、各ギルドマスターが手元に資料を用意し、人によっては印刷し、情報を共有することになった。セノの容姿が猫形態と人間形態を行き来できることも共有され、ファンタジーさがより浮き彫りになった。ただし【保管庫】の所有に関しての情報は引き続き坂野と真中と森本総理、そして幾人かの探索者の認知に限られることになった。


 魔素や他次元からの来訪者であるとしたしっかりとした根拠、二十一層で安村が報告し、そして長官にだけ報告していたほぼ全ての内容がギルドマスターに共有されることになった。他次元の文明が滅び、その惑星の環境を維持するために魔素を搬出せねばならないこと、魔素搬出のためにダンジョン建設を選んだこと、そしてダンジョンマスター側としては侵略の意思はないということ。


 それらを共有されて真っ先に思い浮かんだのは、彼らダンジョンマスターの存在が実質的に神に近いものであることやダンジョン内では自由に物事を進められることであった。


「この内容から察するに、彼らも娯楽に飢えているという認識で良いのかな」

「娯楽レベルがどの程度なのかというのも知っておくべき内容かもしれないな。ダンジョンマスター間でチェスなんかが流行る可能性もある」

「この会見は世界中に流される予定なのだから、他の地域から流入してくるダンジョンマスターが存在する可能性だってある。これは国内にダンジョン候補地をいくつか整備してそこに案内することでよりダンジョンを増やしてダンジョンで経済を回すというところまで持っていけるかもしれん」

「他国からダンジョンマスターの引き抜きがあったと非難される可能性もあるが」

「その場合は外務省を通して正式な外交ルートでの受け答えをする必要があるな。これはダンジョン庁だけの問題ではない。外務省や総理にも話しておくべきではないか? 」


 皆やる気はある。普段お茶を飲んでのほほんとしているように見えてちゃんとギルドを切り盛りしている坂野にとっても、珍しい光景だった。


「天文学者や物理学者の意見も参考にするべき。いや、それは会談が流れた後でいくらでも伝手は出来そうだからその後でも良いな。この際必要なのは……」

「あとは高輪ゲートウェイ官民総合利用ダンジョンの探索者で信用できるパーティーに護衛と監視、スライムに対する対応をお願いする必要がある」

土竜(どりゅう)なら間違いなく交渉に応じてくれると思います。それに彼らはダンジョンマスターとの交流もある。比較的軟着陸で場所を借りれるように対応してくれると期待しましょう」

「では、会場の手配はお願いします。広報関係になりますが、どの程度の範囲にまでこの会談が行われることについて周知するかと、実際の会談現場になる予定の場所、それから人員のシャットアウトが必要かどうか、後は……内部に立ち入るのはやはり探索者に限る、としておきましょうか」

「そうですね、マスコミ関係者にも立ち入るなら探索者講習会を受けてもらって仮でもいいので身分証を携帯してもらわないといけませんし……そもそも、高輪ゲートウェイ官民総合利用ダンジョンって入場料が要りますよね。全員から徴収します? 」

「一人五百円ですからそれぐらいはやってもらわないと困りますね。仮にもダンジョンの中ですし、不測の事態が発生した場合対応は各自で行ってもらうことになります。出来るだけそうならないように努める方向性に持っていく予定ではありますが、やはり探索者証は所持してもらわないといけないでしょうね。レポーターやカメラマンも含めてです」


 会場として候補になっている高輪ゲートウェイ官民総合利用ダンジョンのギルドマスターをメインにして予定が組みあがっていく。


「そもそも、長官っていつが体空いているんですか? それを事前に知らせておかないと予定も何も決められるものじゃないと思うのですが」

「おっと、そうだったね、私の予定は……」


 真中が自分の予定が入ってない日でまとまった時間が取れる日付を順番に記していき、ネット上のカレンダーで共有する。


「だとするとこの日がいいでしょう。向こうをあまりお待たせするわけにもいきませんからね」

「通訳の方……安村氏の都合によるとも思うのですが」

「それは彼が自分でこじ開けるからいつでもいいと言ってくれたよ。探索者を専門でやってくれているから毎日が休みみたいなもんだから気にせずそちらの予定を優先してほしいとのことだ」

「急ぎ土竜(どりゅう)に連絡をつけましょう。地上で誰かが待機してるはずなのでその人経由で真っ先に情報が伝わるはずです」

「早速連絡員に伝えに行ってくる。彼らはこういう時のために必ず一人は地上に残っているからその人に連絡よろしくとこちらにあらかじめスケジュールを伝えてくれているんだ」


 高輪ゲートウェイ官民総合利用ダンジョンのギルドマスターが連絡を伝えにいったん離れる。その間に質問する部分を詰める作業に入り始めた。


「我々以外にもこの宇宙に生命は存在するのだろうか? そういう質問をしていい答えが返ってくるかな? 」

「どうでしょう、ただ予想外にいい答えが返ってくる可能性もあります。項目に加えておきましょう。後は何かあるでしょうか」

「こちらの文明を見てどう思うか純粋に気になる所だね。ただし下手に彼らを刺激するような質問は控えるべきだろうから、これは一般からの質問という形の会談ではない、ということになるよね」

「だとしたら今この場で質問集を仕上げてしまわないといけませんね。何か……何かないか……? 」

「ダンジョンの中から外を見ることができるのかどうかは気になりますね」

「見ることができるのだとしたら我々のこういった会話も聞ける、ということになるだろう。それならわざわざ会談という形で話し合いをする必要はなくなりますから、ある程度は認識できるということではないでしょうか。全く見ることが出来ないならば新熊本第二ダンジョンみたいに同じ場所にしか作れない、という制限がかかることになります。それなら最初はどうやってダンジョンを作ったのかという疑問にも突き当たるので、現在ダンジョンを作っていないダンジョンマスターはある程度この地球上を俯瞰することができるのでは、と考えられます」


 なるほど、そういう視点もあるのか、と坂野は考えた。となると、ダンジョンの付近をさまよっているダンジョンマスターはちょくちょく自分のことも見ていたのだろうか。小西ダンジョンで主に安村と会話をしていたはずなので、そこから行き来するついでに眺めたりはしていたのだろうか。それとも、座標を特定してその座標に対してだけ移動できる、と言った形の、我々の認知できる外の移動方法であるのか。


 転移という能力がある以上その座標は大事に違いないし、GPSにも似た機能を有していると考えられる。だとすると、どのようにして違う場所にダンジョンを作ろうとするのだろうか。そういうところは説明を受けたところで理解できないことなんだろうな、と頭を振って考えないようにした。


「ダンジョンの最終層がダンジョンによってまちまちであることを質問しておくことで、ダンジョンマスターが複数人居てそれぞれの頑張りようでダンジョンの最深層が変わってきている、そこから複数人のダンジョンマスターが居る、という証明になる。このことについて広く周知してもらうというのはどうでしょう? 」

「あえて解っている事項を質問しておくことで、本人の口からそれを担保してもらうってことですな。確かに必要でしょう。探索者以外にもその話題を提供することでもっと広く知ってもらうことにもつながりますからな」

「後はですね、ダンジョンが完全に消滅する可能性についても一応聞いておいたほうがいいでしょう。数千年かかる……とダンジョンマスター側に目算されていますが、我々は将来に対して今ここでダンジョンマスターに質問しておくことでこのファンタジーなイベントはまだまだ続くんだという確認が取れたをこの時点での成果として残しておかなくてはいけないと思います」

「ダンジョンからモンスターが絶対に出てこない、という言質もとる必要がありますね。我々は普段気にしていませんが一般の人たちには大事なことです」

「後は真中長官の個人的な質問があればそれも聞いておく内容として混ぜ込んでおいてもいいかもしれません。なんだかんだでまともな質問だけではお互い肩がこるでしょうしね」

「手土産は何がいいでしょうか。やはりマタタビ? 酒? マタタビ酒は……もう渡されてそうだからこっちの文明の品物でお土産に良さそうなものを見繕う必要がありそうですな。それから……」


 時々脱線しつつも本筋である質問事項はそれなりの量が積みあがっていき、それなりの時間を持たせるだけの疑問点を見繕うことが出来た。本来ならば探索者の意見も聞き、その上で質問集をまとめるのが妥当なのだろうが、そうなると地主やダンジョンがあった位置に住んでいた人々についても同様にしなければならない。そういう流れになったところでハイハイ、この話やめやめ! となったのである。


「ダンジョン間転移が出来るという話ですが、我々にも使えるようになるんでしょうかね。そうすれば出張費も時間も浮くんですが」

「そのためには我々も探索者になってそれなりの深さにまで達する必要がありますから、その時間を考えると素直に我々の世界の技術を使うほうが確実でしょうし、恐怖心がなくて済むでしょう。うっかり事故で異次元のかなたへ吹き飛ばされたりする可能性もゼロとは言い切れないんですから下手な考えはしないほうがいいかと」

「現場からの一般質問で無理やりねじ込んでくる可能性も考えられます。答えられる質問には答えてもらって……という形である程度あちらに任せるのはどうでしょう」

「そうだな、私たちにも解らないことはいっぱいある。それを集合知というわけではないが、違った視点で見つめる人たちからの疑問というのは確かにあるでしょうね」

「ネット上からの質問や疑問というものもチェックしながら答えてもらう形にするのもいいかもしれません。使うかどうかはともかく候補に入れておきましょう」


 ◇◆◇◆◇◆◇


 質疑応答集は一応の形で組み上げられ、リストとしてこの中から質問をしていく、という形でまとまった。主な内容としては、ギルドマスターの視点だけでなく一般人、ダンジョンとは無縁な者も含めて最大の懸念事項となっているであろうダンジョンからモンスターがあふれてくるのでないか、という質問、そして、どのぐらいの間このダンジョンという現象が存在し続けるかについての質問、そして、ダンジョンマスターは今後もダンジョンを作り続けるのか、作る場合場所を指定してそこにお願いするという形で出現させることができるのか。この三項目については確実に質問するということが決定された。


 それ以外の、こちらの文明と比べて彼らの文明レベルや科学技術はどのぐらいまで発展しているものなのだろうか等、あちら側との違いについての質問も盛り込まれることになった。


 なお、ダンジョンマスターに持たせる手土産は前回と同じものを用意することでダンジョンマスターの待遇についてみな平等であるということを暗に教える形で決着した。


 一般質問の時間もいくらか取られることになり、その場に存在するすべての会談見学者の意見を聞いて回ることは出来ないだろうが、いくつかは盛り込まれることとなっている。


 後は無事に通信の問題が解決すれば世界初のダンジョンマスターのネット会談放送、という珍事件を世界に先駆けて起こすことができる。中々の楽しみにみんな心の中は沸き立っていた。


 日付は決めた。通信環境の配備の予定には間に合う。遅延がある可能性はあるが、それでも余裕を持った日取りをセッティングしてある。後は無事に通信環境が一層に整えばそれで準備はすべてできることになる。資材の手配は高輪ゲートウェイ官民総合利用ダンジョンのギルドマスターに任せ、ダンジョン庁として日付の発表とダンジョンマスターとの会談を生中継でやります。ガヤも来てくれていいです、ただし椅子とか機材は自分で持ってきてねと伝える準備も出来た。


 後やり残したことはないか、当日になって必要になるようなものはないか。それらの心配だけだ。


 会議は終わり、会議チャットソフトを閉じ、真中は一息つく。


「これで上手くいくかな。一応通信環境が整備された時点で一般人の生放送やらを拝見させてもらって、ちゃんとつながるかどうかなんかを試しておきたいところだけど、そう思うと結構ギリギリのスケジュールになっちゃったね」

「まあ、突発連絡みたいなものですからね。後はうまくいくことを祈りましょう。お昼はいつもの出前のラーメンで良いですか? 」


 多田野が電話で注文しようとしている。


「そうだな……今日はチャーシューが食いたい気分だな。これからに向けて胃袋にもしっかり頑張ってもらおう」

今章はここで一区切りとさせていただきます。ここまでありがとうございました。


作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

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― 新着の感想 ―
他作品だと悪意を持った探索者が殴り込んでくるとか、狂信者が銃もって襲ってくるとかのイベント起きるが、この作品は善人ばかりだなあ。(胃に優しい)
お祭りだもんなーそりゃいつもよりやる気も出るってもんよね
次の章は日本だけではなく世界の反応も楽しめそうですねえ どんな会談になるんでしょうねー楽しみですわ
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