1153:社用車初出勤
皆様のおかげで無事、1億PVを達成することが出来ました。
これも皆々様の日ごろのお通いによるおかげであります。
本当にありがとうございます。
気持ちいい朝だ。今日はいつもと違う朝である。車が一台増えた。社用車だ。今日から個人事業主! という感覚が体を支配する。やることは大して変わらないが、書類周りがちょっと、いや大分増える感じになるのか。きっちりやりつつ、佐藤税理士と相談してうまくやっていこうと思う。
今日は気分的にトースターを使いたかったので普通に食パンを焼く。一方目玉焼きは火魔法で火力を良い感じに調節しながら焼く。直火のほうが早く出来上がるらしく、トースターが出来上がりを教えてくれる前にターンオーバーの目玉焼きが出来上がった。後はキャベツを刻んでいつもの朝食の完成だ。早速頂こう。
たまにはジャムとかも使いたくなったので、昨日の買い出しでイチゴジャムを買ってきた。朝から糖分を脳に流し込む幸せな時間を楽しめるのはポイントが高い。これも保管庫に入れておいて、宿泊時の朝食でジャムを選択できるようにしておこう。味が選べるというのはそれだけで窮屈さが一つ減るというもの。どうしてもダンジョンに潜っていると心の中に湧き上がる潜在的な何かに包まれていて窮屈な感じというものが軽減されてくれるなら悪くない。
トーストをバターとジャムでそれぞれ味わったので満足して片付け。さて昼食は何を作ろうかな。ローテーションは……回鍋肉と出たが、先日回鍋肉丼を作ったばかりなのでパスしておこう。次のレシピだ。
サンドイッチか。具は何にしようかな。いつもの野菜サンドイッチは二人分入れるとして、カツでも揚げてやるとするか。いつもの馬肉カツで良いよな、うん、いいよ。ササっと揚げ物の準備をすると馬肉を出して調理開始。半分に割った馬肉を軽くたたいて伸ばし、下味の塩胡椒をつけて小麦粉・溶き卵・パン粉を順番につけていって、揚げ油の温度が上がったところで投入。今日はシンプルに行きたいからな。そしてたれはソースではなく生姜醤油で行こう。
揚げ終わったら一回取り出し、油の温度を上げて二度揚げ。カラッと揚がったカツをキャベツと生姜醤油と一緒に挟み込んで上からグッと押して形を整える。これで二品目。三品目は……ハムは無かったはず。ツナはあったかな……缶のがあったな。全部を使い切るのは難しいが、残りは夕食に平らげるつもりで冷蔵庫に残しておこう。マヨと軽く混ぜるとタマネギを生のまま軽く刻んでツナと混ぜ込み、それをバターを塗った上からのせて挟んで完成。これで三品。
さて、準備は出来たので今日の主役である社用車君に保管庫の中に入っていてもらおう。社用車とはいえ車、神社でお祓いをするのが本来先なんだろうが、中古車である故か、それとも中古屋のオーナーがこれぐらい付けっぱなしでも効力あるやろ、と思っていたのか、よその神社のお祓いのステッカーがつけてもらってある。その効力が失われてないことを祈ってそのまま引き継がせてもらおう。
車をそのまま保管庫に入れて保管庫で車が入ったことを確認。車は今回は自動車ではなく、車の型番が明記されていた。やはり俺がメーカー名や車種を認識していることでそのまま表示されてくれているんだろう。車を入れるのはこれで三度目か。試しで壊れた車を入れた時と、同じく試しで自分の車を入れた時、そして今回だな。今後は保存のいいところで眠ってくれているようになるから安心して長持ちさせることができるかな。
ただ心配なのは、保管庫で保管している間にエンジンの熱やエンジンオイルの冷却効果は期待できないので、乗りっぱなし入れっぱなしにしておくといずれ熱を持ちすぎることになりはしないか? という点だが、これもおいおい問題が出てきた時に改善していくことにしよう。流石に出しっぱなしにはできないが、家に置いておく間はガレージに保管しておくなどの処置で上手くできるような気がする。
というわけで、今日からはこの社用車に活躍してもらうことになる。一日数分の短い距離だが金を稼ぐためには十二分に威力を発揮してくれることは時間的に見て間違いはない。ガソリンも昨日満タンにしておいたのでしばらく心配はない。燃費もそこそこ良い。そして結衣さん達に見られたらきっと呆れてもらえること請け合いだ。楽しみに待っててくれよ、五十六層。
柄、ヨシ!
圧切、ヨシ!
ヘルメット、ヨシ!
スーツ、ヨシ!
安全靴、ヨシ!
手袋、ヨシ!
飯の準備、ヨシ!
嗜好品、ヨシ!
車、ヨシ!
保管庫の中身……ヨシ!
その他いろいろ、ヨシ!
指さし確認は大事である。直刀の確認が減った分車の確認が増えた、という所か。ガソリンの残量については常に確認しておかないといけないし、車検が来たらセダンの車検をお願いしているディーラーでお世話になることにするか。表向きでも運転できるようにナンバー付きの車を選んだのだからその辺はしっかりしておかないといけないな。
◇◆◇◆◇◆◇
ギルドに着くと芽生さんは既に準備万端だった。
「おはようございます。良い車は見つかりましたか? 」
「おはよう。レインで連絡しておけばよかったか? それとも見てびっくりしたいほうだった? 」
「うーん、楽しみにはしていられたんで今回は連絡なくてもそれなりに楽しみはありましたね。まあ私が購入したものではないですから洋一さんが選んだ車ですし私がそれに口を挟むのはちょっと違うなと思ってますし、現地で出てくるのを楽しみにしてます。それからこれ、要らないと言われてましたけどお土産です。お昼か、帰ってから適当に食べてください」
生八つ橋が出てきた。どうやら京都に行っていたらしい。
「京都か。いきなり観光するにせよ見る場所が多くて大変だったろうな」
「そうですねえ。とりあえず伏見稲荷には寄ってきましたよ。商売繁盛を願ってきました」
「やっぱり混んでたか? 」
「日本語以外が結構聞こえてきましたね。騒がしさは中々のものでした」
そのまま入ダン手続きをしてリヤカーを装着。そしていつも通り七層で茂君を刈ってから五十六層に向かう。
「で、どんな車を選んだんですか? 」
「今聞くのと見てから驚くのどっちがいい? 」
「どっちでもいいですね。乗って歩く時間を仕事に当てられるならそれ以上の性能は求めませんし、最悪軽トラと考えていますのでそれよりも変な車を買ってきたりしてないなら問題なしです」
なるほど、実用面以外では何も考えていない、と。なら問題なしだな。
「一応SUVを選んで買ってきた。佐藤税理士に話聞いたら四年落ちぐらいの車が一番経費を支払いやすいって話だったから、年式に近いもので家の車庫に入り切る大きさで……と絞っていったら丁度乗って帰れるそこそこ型落ちの車って感じで選んでいったらそれになった。お値段込々三百六十万円」
「それは乗り心地も良さそうですね。試し運転もしてみましたか? 車検は? 」
細かい芽生さんチェックが入る。一つ一つ考えながら答えていく。
「とりあえず公道を走るのは問題なかった。オイル漏れとかもしてることもなさそうだしガソリンは満タンにしてきた。ついでに買い物も済ませてきたが、荷物だってきっちり載せられる。後は……実地試験だけだな。砂漠をちゃんと運転できるのかどうか、そこだけは一発試験だからうまいこと行ってくれることを願うよ」
ここまでお膳立てして砂漠を走れなかったりすぐにスタックするようなことになったらまた買いなおしするか、車に改造を施してインチアップするなり車高を上げるなり手立てを考えなければならないからな。スタックしてもすぐ保管庫で脱出できるとは言え、毎回スタックしていたのではそれもそれで手間がかかるだけだからな。
「楽しみだなあ。ダンジョンで車に乗って走り回るなんてもっと早く考え付けばよかったのに。自分の視野の狭さが恨めしい。もしもっと早く考え付いてたらより多くの金を稼げていただろうに」
「過ぎたことは仕方ありません、今後稼ぐことを考えましょう。今日だけで四十分お金が余分に稼げます。四十分あればいくら余分に稼げますか? 」
芽生さんに言われて古いメモ帳を両方開いて過去ログからざっくり時給換算式のところを開いて確かめる。
「そうだな……五十九層で四十分余分に仕事したとして、税抜き千三百万ってところかな」
「ポーション一本出ればそれで満足ってところですね。それだけでもう社用車買った分のお金は戻ってきますね」
「そうなるな。一日で元が取れると考えるとなんだかうれしくなってきたな。この際だから社用車もいくつか用意して好きなのを選んでみても楽しいとすら思えるようになってきた」
「お金持ちが車を買いそろえるってのはそういうところからきているのかもしれませんねえ。さすがに公道を走るでしょうからナンバープレートも置き場所も必要ですし、洋一さんの家の広さでは問題が出てくる気がしますが」
新しい車はさすがに家の敷地内に停める場所がないので社用車を売り買いして順番に試すという手間が必要になるんだろうが、その時はその時。まずは今回の車でうまくいくかどうかを試すのが最初だ。一発で上手くいってくれることを願って、いまはただエレベーターが到着するのを待つだけである。
いつも通りクロスワードで時間を潰しながら、車を早く出して乗り回したいというワクワク感に襲われている。楽しみだな、と思うとクロスワードに入る熱はいつもほどではなく、ずっとよそ事を考え続けていたので結局一面しか完成することが出来なかった。
五十六層に到着し、うんと伸びをすると、リヤカーを設置して早速車を取り出す。
「おー、これが個人事業主安村の社用車ですか。よくいい感じの型落ちが買えましたね」
「いくつか巡ってビビッと来たので買ってみた。中はウォッシュをかけておいたので綺麗にはなってるはず。事故歴は……ないと思う」
「そこは調べてなかったんですね」
まあ、事故歴があっても修理はされているだろうし動けばいいのだ、動けば。最悪ディーラーの手前まで無理矢理持って行って残りはディーラーでお願いするという手もある。修復する方法はいくらでもあるだろうし、昨日動かしている間に違和感みたいなものはなかったので問題なく動いてくれるのは証明済みだ。
「さあ、乗ってくれ。社用車に乗せるお客様第一号だ」
「はーい、お邪魔しまーす」
助手席のドアを開けて芽生さんを招き入れる。槍は後ろのシートに転がされている。バッグは背中から膝の上へちょこんと乗せて、ちんまりと座り始めた。
「あー、居住性はバッチリですねえ。ダンジョンでこんな楽をしてもいいのかと不安すら覚えますねえ」
バッグを後ろのシートに乗せると俺も運転席へ。エンジンをかけて軽く吹かすと、早速ヌルヌルと動き始めた。
「うむ……どうやら発車直後にスタック、ということは避けられたな。このままスピードを上げていこう」
「階段までにぶつかるようなものはなかったはずですから安心して飛ばせますね」
「制限速度を守る必要もないが、出し過ぎて止まれないのは困るからな。砂地の運転は初めてだし、早めのブレーキを心がけよう」
そのままスピードを上げて車が赤砂の砂漠を走る。CMするにはぴったりかもな、この環境。ここまでこなくても海外で似たようなフォルムを出せる場所はあるだろうが、ダンジョンの奥まで車を持ってくることは難しいだろうからな。ドローンからのこの場所の眺めを確認したくなってきた。今度機会があったら芽生さんにでもやってもらおう。
すぐに階段へは到着し、乗っている時間はかなり短い。慣らし運転にすらならない距離だったが、五分ほどで到着できるようになったのは効率化の第一歩だ。他の階層では使うことはないだろうがこの階層では充分にこれから役立ってくれることは解った。これからよろしくな、相棒。
車から荷物を下ろして保管庫に車を収納すると、来た道には二本から四本のタイヤの跡が残っている。
「あ……」
「タイヤの跡が付くこと、すっかり忘れてましたねえ。どうしますかこれ」
「どうするっつったって……どうしようね? 」
ここにきて大問題が発生してしまった。五十六層に他の探索者が来た場合どうやって誤魔化すか。ここまで来るようになったからには俺の保管庫もばらす時期が来たということになるのか。そこまでは解らないが、とりあえず何故かタイヤの跡がある、ということにしておくか。
「よし、見なかったことにしよう」
「そうですねえ、問題は起きてから対処するでも問題はなさそうです。とりあえず最初に突っ込まれるのは結衣さん達か高橋さん達のどちらかでしょうからその後でも良いですねえ」
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