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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第二十三章:新たなダンジョンマスター
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1149:龍踊り

ダンジョンで潮干狩りを

Renta!等いろいろなサイトで発売中です。是非とも続刊のためにもご購入のほうよろしくお願いします。

 五十六層に到着したのでいつも通りリヤカーを放置。まだ人は多くないのでエレベーターのすぐ横に置いておいても邪魔にはならない。というかもう一台あったのでその横に並べる。最近高橋さん達に会っていないが、元気にやっているんだろうか。


 五十五層に潜ってる形跡もないので、何処かのダンジョンに呼ばれてダンジョン探索指導として深く潜るコツや他のダンジョンでの探索補助とかそういう仕事をやらされてる可能性もあるな。


 しかし、彼らがここに潜るのは基本的に俺の保管庫の存在を知られないためという建前の理由があるので彼らがここを離れるという可能性は低い。だとしたらどこで何してるんだろう? 今度会ったらしばらくぶりですが何してましたかと質問をするのもいいかもしれない。


 もしかしたら六十三層周りで探索をしているかもしれないしな。彼らの任務の中には地図の完全作成というのもあるはずだから、意外とてこずっているのかもしれない。まあ便りが無いのが元気の証拠とも言うしな。念のためノートを確認するが何も書かれていなかった。


「どうしたんですか? いつもより念入りに周辺を調べて」

「高橋さん達、最近見ないなと思って。インゴット集めで五十五層に縛り付けられてると思ったら居なくなったし、かといって他のダンジョンに潜らされている可能性もあるけどそれだと彼らがここに専従してる意味がなくなるし……といろんな可能性を考えてた」

「普通にお盆休みじゃないですかねえ。期間をずらして休みを取ったりすることもあるらしいですし、小西ダンジョンギルドでも密かにお盆休みシフトになってましたよ」


 そうだったのか、あまり考えなかったがちゃんと普段会う人の顔は覚えておくべきだな。


「そこまでは気が回ってなかったな。金稼ぐことだけを考えると俺の視野はやっぱりこうなるのかな」


 自分で目の周りを覆って視界が狭いポーズをとる。


「私はもしかしたらここが職場になるかもしれませんからね。それを考えて色々と見て回って調べてはいますよ。普段どんなシフトで誰がこの時間はどのカウンターに立っているかとか、バックヤードの仕事はどうなっているかとか、荷物の運び出しはいつやっているのかとか」

「ちゃんと先をみててえらい」

「えらいでしょう。もっと褒めてもいいんですよ」


 褒めるついでにヘルメット越しに頭をなでてあげるととても嬉しそうにしている。ほどほどに撫でまわすと、さて探索に行くか、と五十七層へ向かって歩く。


「やっぱりここの歩く時間、短縮したいですよね」

「そう言われると短縮するのも悪くないと思い始めたよ。税理士さんのところへ行くついでに中古車ショップにも寄ってみて、すぐ乗って帰れる車があったら買ってここで試し乗りしてみるか。気に入らなかったらすぐ売ればいいし」

「この際居住性はある程度無視していいですからね。長時間乗るわけでもないですし」


 だったら軽トラでもいいわけか。選択肢が増えた気がするな。でも軽トラも最近はそこそこお値段……お値段を気にする必要は無いか。仕事にしか使わないんだし経費で落とせるかな、社用車。


「軽トラはそんなにトルクがあるようには思えないので、やはり乗用車ベースで考えるとアウトドア向けで車高をリフトアップしてそうな車両がいいですねえ」

「ふむふむ……参考にしておこう。ちなみにだが俺の車はセダンだからこの手の作業には合わんぞ」

「すっごく今更なんですが、普段から車を保管庫に入れておくべきなのでは? こういうところでチョイノリする時に試しでやるには便利だとは思うのですが」

「確かにそうだな。仮にスタックしても保管庫から出し入れすればそれで解決するし……帰ったら早速保管庫に入れて持ち歩くことにするか」


 一応俺のセダンも普通車だし、軽トラに比べればトルクもパワーもあるはずだ。バンパーを擦ったりする可能性はあるが相手は砂だしそもそもあまり見た目を気にしないので多少の傷は構わないか。


「よし、帰ったらやる事リストに自動車の保管庫入れを書いておこう。今日はやることが多いな」

「がんばれー、私は応援してます」


 五十七層に着き、早速お仕事。どうも結衣さん達が先に入り込んでいるらしく、モンスターがそんなに湧いていないように見える。


「結衣さん達、先に来てるみたいですね。途中で追い抜くかもしれません」


 芽生さんの索敵に引っかかる範囲ギリギリ、という辺りに居るらしい。


「お互い邪魔をしない範囲で戦闘をしよう。こっちの視界ならそれができるはずだ」

「そうですね、儲からない戦闘ほど悲しいものはないですから」


 そこから一時間半、付かず離れずを繰り返しつつ戦闘を行ってきたが、普段の七割ぐらいの収入というぐらいの感覚で午前の作業を終了。午後休憩のためにいつものポイントへ行く。結衣さん達はどうやら五十六層で休憩をとるらしく、階段方面へ向かうのが芽生さんの索敵視界から見えたらしい。


「さすがにご飯は保管庫なしでの持ち歩きは難しいですからね。その点こちらはかなり楽が出来てますね」

「向こうはドロップ品の一時保管もあるだろうしな。朝から晩まで持ち歩き続けるのは体力の無駄だろうし」


 机と椅子を出してご飯の準備完了。早速回鍋肉丼を食べ始める。


「回鍋肉の丼ですか。シンプルですが美味しそうです」

「普段と味付けを変えてみたので口に合うかどうかわからんが食べてみてくれ。味が気に入らないならまた次回より仕上がったものを提供できると思う」


 そう言って回鍋肉丼に手を伸ばし、早速実食を始める。まあ、回鍋肉丼と言っても普段回鍋肉を食べながらそれをおかずにご飯を食べているので、実質回鍋肉と同じである。違うのは、ご飯に乗せる用のたれを追加したかどうかぐらいで、そのたれの味に今回の料理の成否がかかっていると言っていい。


「うん……これは良い感じに合ってますね。味噌とタレが喧嘩してないのもいいです」


 どうやら合格点をもらえたらしい。よしよし、うまうま……サラダも忘れずに、と。ちょっと物足りなさを感じたんでバニラバーを齧り始めると、芽生さんからスッと手が出てきたのでそっちにも渡す。


「バニラバー好きですねえ」

「スライムにも効果あるからな。保管庫のスペースもとらないし美味しいし儀式にも使える。こいつにもそこそこ稼がせてもらったし話題も提供できたし、何より五千万ユーロだっけか? それだけの企業利益をもたらせて、海外でも絶賛販売中だ。こいつが世界に与えた経済的利益を考えると神棚に備えてもいいぐらいだ」

「祭壇にも供えられたりするんでしょうかねえ? そっちはノータッチですから二十一層でどう運用されてるかまでは私たちはわざわざ立ち寄らないと解らない所ですが」


 ギルドが清掃の常駐依頼をかけてるはずだからな。毎日綺麗にされてちゃんとお供え物は回収されて、良い感じになっているはずだ。そこは探索者の良心を信用しよう。


 一休みした後いつも通り五十八層へ。そのまま五十九層へ下りていつもの探索開始だ。


 さて、芽生さんに今日提供されたなにか一芸を身に付けろ、というお題に対して答えを出さなけれならない。


 丁度いい感じにリビングアーマーが一匹だけ残ったので、手で芽生さんを制して思いついた一芸を披露する。


 雷魔法で生み出した龍に火を噴かせる、という着弾までの時間差を利用した魔法の混合を見せてみる。


「わー、すごいすごい」


 反応は薄かった。結構うまく出来たと思うんだけどな。ちなみにリビングアーマーにはそこまでダメージは入っていない。火でしか攻撃してないからか。今度は同じ姿勢で、リビングアーマーに雷の龍を当てて、その先から火を吹きだして少し溶けかかったリビングアーマーの鎧の内側に火が当たり焦がしていくさまが見える。リビングアーマーは黒い粒子に還った。


「これでどう? 」

「見世物としては充分だと思います。威力と効率はイマイチそうですけど」


 たしかに。もっと実用的なものを……雷と火が同時に着弾してくれれば便利なんだけどまだそこまでの速度を生み出すまでには俺の実力は上がっていない。だが、鍛え始めて四日でここまで出来たのはひとえに努力のなせる技ではないだろうか。その辺をちょっと褒めてほしかったりする。


「そうそう一朝一夕ではいかんものだのう」

「四日でここまで出来れば充分という気もしますが」


 ◇◆◇◆◇◆◇


 その後は一芸の訓練をせず、ひたすら三時間五十九層を早回しで動き回った。指輪は一個出た。つまりいつも通りである。二個欲しかったな……まあ毎回二個出るほどモンスターを倒せてはいないからな。二個三個と贅沢を言わず、毎日の目標である一個が確実に確保できるだけマシだと思っておこう。次の出荷がいつになるのか、それだけが気になるが。


 次に渡すなら誰になるんだろう? やんごとなき方々……というのが思い浮かんだが、どこまでがやんごとなき方々かという疑問があるし、そこを狙ってテロ行為などを行ったらそれはもう日本が大変なことになって探索どころではなくなってしまうだろう。精々金持ちが買い上げるあたりを想像しておくかな。


 ペースを落とさず五十九層の移動速度のまま五十六層まで戻ってきたので今日も撃ちっぱなしの時間は取れた。さっきの火を噴く雷の龍を何度も出しながらドライフルーツを噛み砕いて必死に打ち出し続ける。複合スキルは消費も激しいのでいつもより短時間で打ちっぱなしは終わった。後は茂君に寄って上に帰るだけだ。


 そういえばここ四日ほどセノはこっちに来てないな。他のダンジョンマスターのところにでも通っているのだろうか。平和なのはいいことだが、よからぬことを企んでいないかだけは気にかけておこう。


 茂君をバッサリと刈って一層に戻り、退ダン手続きと査定を終わらせる。今日のお賃金は一億二千八百一万七千八百円。龍を作って遊んでいた割には中々の数字だ。


 支払いカウンターで振り込みを済ませた後、冷たい水を飲んで落ち着いた後で早速今日のタスクの確認。中古車巡り……は後だ。まずは佐藤税理士に電話しよう。一日潰して個人事業主登録と中古車巡りをやる、という形になるだろう。やはり平日のほうがいいだろうからこっちの一日を潰して早めに相談という流れのほうが良さそうだ。


 電話をかけると、ちゃんと出てくれた。どうやらまだ仕事中であってくれたらしい。


「もしもし、こちら安村洋一と申しますが」

「こちら佐藤会計事務所です。ご無沙汰しております安村さん」


 電話口に出たのは佐藤さんらしい。話も早くて助かる。


「あの、個人事業主登録について色々とお聞きしたいことと、出来れば早めに登録のほうを済ませてしまおうと思いまして、その予約の相談をしたいのですが」

「でしたら明日の午前中などいかがですか。ちょうど空いておりますが」


 丁度芽生さんが着替えて戻ってきたので、芽生さんに微妙に聞こえるぐらいの音量で話をする。


「明日の午前中ですか。解りました、早速出かけさせてもらおうと思います。必要な持ち物はありますか? 」

「そうですね、本人確認書類、具体的にはマイナンバーカードがあれば間違いはないですね。後の必要なものはこちらで用意しておきますので、気楽な感じで来てください。堅苦しいやり取りは出来るだけ抜きでやりたいですからね」


 それだけでいいのか、結構簡単だな。こっちで書き記して確認するようなことはほとんどないらしい。流石、その為に年間契約をお願いしているだけの働きはしてくれるってことか。


「解りました。では……何時ごろがよろしいですか? 」

「そうですね、九時には確実に居るとは思います。一応八時から開ける予定ではいますが交通機関の遅れなんかがあると確実ではないと思いますので」

「はい、はい……では九時でよろしくお願いします」

「お待ちしております。ではよろしくお願いしますね」


 通話は切れた。


「明日はお休みですか。私は何してましょうかねえ」

「そういうことだから、まとめて面倒ごとを片付けて来るよ。ついでに収入関連のあれこれも相談してくるし、その足で車も探しに行く予定」

「じゃあ、最速明後日からは通勤が楽になりますね」

「さすがに車庫証明とかナンバープレートの取りなおしとか時間がかかる可能性はあるけど、出来るだけ早く納車してもらえる一品を探す予定ではある」


 さて、夕食は何食べようかな。あまり重たくないものを選ぶか。でも昼はあれでちょっと物足りなかったからな、いつも通りコンビニで思いついたものを食べることにしよう。

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

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