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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第二十三章:新たなダンジョンマスター
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1143:遅れた報連相

ダンジョンで潮干狩りを

Renta!等いろいろなサイトで発売中です。是非とも続刊のためにもご購入のほうよろしくお願いします。

 昨日は晴れだった。今日も晴れ、明日も晴れ、明後日も晴れ。そして暑さは徐々に、本当に徐々にだが楽になりつつある。確実に秋に向かって涼しくなりつつある。そんな気がするだけであり、実際は毎日まだまだ変わらない暑さだ。非常に残念である。


 お祈りを済ませた後朝食、そして今日の昼食は鍋物の予定である。炊飯器に米をセットして炊飯からいつもの昼食作りの時間は始まる。夏に鍋もの? と思われそうだが、ダンジョン内では季節は関係ないので問題なく鍋物も食べられる。流石にサバンナマップや五十六層で鍋を囲むのは厳しいだろうが、いつも通り五十七層の荘厳な大理石の宮殿っぽいところなので、鍋物でも問題はない、いいね?


 昆布でちゃんとだしを取った後、具を切りそろえて鍋にぶち込んでいく。あまりこだわるとかえって味を損ないそうだからあくまで一般的なものを入れていく。キノコ、大根、白菜、ネギ、人参等の野菜に、肉団子の冷凍食品と焼売の冷凍食品で肉の旨味を追加。そこにはんぺんを加えて何処のおでんか鍋かよく解らないものが出来上がったが、これが我が家流のお手軽なんちゃって鍋だ。焼売は煮崩れてしまうだろうが肉団子は確実に残ってくれる。醤油ベースで酒とみりんを追加してほんのり甘めの味付けで仕上げる。


 調味分の味見して自分なりのOKを出したところで後はグツグツと煮込む。昨日もギリギリまで煮込んでたな。まあでも今日の食事は野菜多めで充分な量もある。鍋一杯に作ったので煮込んでいる間に野菜が体積を減らしたとしても、このまま良い感じに残ってくれれば夕食は鍋の残り物になりそうだな。一回分料理の手間が省けて楽になるな。


 鍋物のいい所は鍋一つで食事が完成してくれるのがいい。丼ものもそうだが、それ一つで料理として形になってくれるのが手抜き料理だとしてもそれで相手を納得させられるところがベター。芽生さんも丼物や鍋物の時にはちょっともう一品欲しいとか言い出さないので実に解りやすくてうれしい。きっちり料理したんだという納得感とボリュームもいい。


 今日もギリギリまで煮込んでしっかりと味を具に染み込ませる。ご飯は炊けたので保管庫行き。コンセントを抜いて保管庫に丸ごと放り込むのとわざわざ器に移して一人分ずつ用意するのと前に考えた。


が、どれだけ食べるかわからないという点では、日によって差が多少出るのでこれだけ用意したから無理にでも詰め込みなさい、とやるよりもご飯が余ったら夕食にするなり冷凍して保存しておくなり使いまわせるので炊飯器ごと保管庫に放り込むほうを選択することになった。その日食べたい分だけを食べられるという選択肢のほうが便利である。


 いい感じに煮込んだところで保管庫へ放り込み、食器を確認すると飯の準備はこれでよし、と。後はいつも通りスーツに着替えて装備を確認。


 柄、最近使ってないな、ヨシ!

 圧切、ヨシ!

 直刀、こいつも出番は無さそうだから次から確認せずに行くか、ヨシ!

 ヘルメット、ヨシ!

 スーツ、ヨシ!

 安全靴、ヨシ!

 手袋、ヨシ!

 飯の準備、……ヨシ! ちゃんと全部入れた!

 嗜好品、ナシ! 今日は色々忙しいし俺以外からの貢物があるだろうから構わない!

 保管庫の中身……ヨシ! 最近手入れしてないな、今日帰ったらするか!

 その他いろいろ、ヨシ!


 指さし確認は大事である。季節も変わるしそろそろ保管庫の中身も衣替えの季節だろう。それと、今日こそはギルマスが出勤してくる日なので、土産話を聞きつつこっちの話を報連相だ。もしかしたらお土産もあるかもしれないな。期待はしないけどお茶請けぐらいは出してくれるかもしれないな。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 ダンジョン最寄り駅に着くと芽生さんから連絡。先に到着したからギルマスのところで待ってればいいですか? という内容。


 そのままセノに関する概要だけ説明しておいてくれと伝える。芽生さんのスマホにも情報が入っているなら問題なかったのだろうが、こっちのスマホでしか撮影してなかったからな。そのままOJTだと思って報告をしておいてもらおう。


 念のため撮影した画像だけ芽生さんのスマホに転送しておき、ギルマスへの説明をしておくようにお願いしておく。


 一通りの情報を送ったところでバスに乗り、ダンジョンへ向かう。ちゃんとできるかな、と心配半分安心半分。余計なことは言わないだろうし肝心なところは俺の頭の中にしかないだろうからそこを報告するのは俺が到着してからになるだろう。


 ダンジョンに到着して、そのままの足でギルマスルームへノックをしてから入り込む。芽生さんとギルマスはのほほんとコーヒーを飲んでいた。


「お待たせ。どの辺まで話は進んだところかな? 」

「やあ安村さん。昨日と一昨日はすまなかったね。今年からちゃんと休みを取れって色々と五月蠅いもんだからね。休みで家族旅行に行ってきてたんだよ。これ、お土産の温泉饅頭」


 お茶請けにはちょうどいいがまあコーヒーと合わないこともない。俺は甘いものは好きなので問題なく胃袋に納めさせてもらった。


「説明としましては、別荘ダンジョンのダンジョンマスターであるセノさんが来たことと猫形態と人間形態の二形態に変化できることと、猫缶もちゅ〇るもカレーもいけなくもないということ、後はタマネギなんかも大丈夫っぽいことは説明しておきました」

「なるほど、あんまり話をしてないことは伝わった。肝心なところはまだってところだな」


 大事なのはそこじゃないんだよなあ。まあ、どんな相手なのかを知っておくことは報告しておくことは必要なんだけれど。


「本題に入りますか。今のところ国内範囲でフリーのダンジョンマスターは二名、セノと、それからリーンです」

「リーンというのは子供のダンジョンマスターだったね。他のダンジョンでも目撃報告が上がっているよ」

「ええ、少なくとも大梅田ダンジョンで目撃されたという話は私も聞いています。で、この二人が今後どうしていくのか、ダンジョン庁としてどうアプローチしていくのかが大事になります。彼らにどんなダンジョンを作ってもらっていくのか、そして新しく作るなら何処の場所に作ってもらうか、そういう話になってくる。特に場所については問題だろう。ダンジョンマスターとの対話が出来る以上、新しくダンジョンを作る場所を確保してからダンジョンを設置してもらうのか、それとも適当な場所にダンジョンを勝手に設置させてもいいものか。特に土地に関しては大きな問題になるでしょうね」


 ダンジョンマスターに事前に確認させられなかったのか、と地主からの反発や地元住人の不安をあおったりしないようにするには必要な措置のはずだ。


「ダンジョンの場所については事前の協議が足りなかった、ということである程度納得してもらうことは可能だとは思う。と言ってもこれもダンジョン庁内での協議と国交省とのやり取りが必要になってくるか。確かに場所については問題だね。そして別荘ダンジョンのマスターはあまりに辺鄙な所にダンジョンを作ったばっかりに三年も放置させる結果になってしまった。そこについてはこちらから良い感じの場所を提供できるようにしたいところだね」


 またいつものコップカリカリを始めたギルマス。おっと、そういえば真中長官にセノの情報を挙げるのを忘れていた。スマホ越しに画像送信っと。ついでに今この件について坂野ギルマスと協議中だとも話を追加しておこう。


「今回は熊本第二ダンジョンみたいに同じ場所に設置してもらう、というわけにはいきませんからね。しばらく時間があるとはいえ同じ形のダンジョンを作ってもらうかどうかの相談も込みで来るでしょうし、そのあたりについては私の一存で決めてまた越権行為ではないかと言われるのは困りますし」

「確かに。安村さんにはあくまで一探索者として潜ってもらっているのが実情だからね。そこまでの負担を強いることはこっちとしても望まないことだ。早急に、というわけではないだろうけどもこちらからこんなダンジョンはどうだろう? という話をしたいところではある。タイミングが悪いな。これがギルマス会議の直前に話があったのなら相談のしようがあっただろうけど……さすがに一ヶ月も待たせるのは相手にも悪いかもしれないな。早急に長官と話し合う必要があるね」


 やはり長官マターの案件になるか。真中長官の頭の中なら色んなダンジョンの形の想像図を持っているだろうし、俺一人が考えて悩み抜くより、三人寄れば文殊の知恵ともいうし色んなダンジョンの形を、危険が無い範囲で提供してくれることだろう。


 と、ギルマスの部屋に設置してある電話が鳴る。ちょっとごめんよ、とギルマスが電話に出る。


「はい坂野です。……おや長官、お疲れ様です。はい、はい、居ます。ビデオチャットに? 解りました。すぐセッティングします」


 どうやら真中長官からの電話らしかった。ちょうどそろって会議中という話を聞きつけたようで、まとめて話が出来るなら便利だな、ということらしい。ギルマスがちょいちょいっと俺達をパソコンの前に連れ出すと、パソコンのセッティングを始めた。手慣れたものだな。


 もしかしたら一番長官とビデオチャットしてるのはここのダンジョンかもしれない。一部のダンジョンとだけ話し合いが長いというのは一種の癒着だともいえるし、これだけいろんなイベントがあるダンジョンなんだからギルマスも偉くなってもいいのかもしれないが、このまま居続けてもらって情報を封鎖し続けるほうが大事なのかもしれないな、とも同時に思う。


 チャットが繋がり、見慣れた真中長官と後ろに控える……確か多田野さんだったな。二人の姿が見える。


「やあお疲れ様。ちょうどタイミングが良さそうなのでこっちでの会話に切り替えさせてもらったよ。ダンジョンマスターの件はお疲れ様。で、今後どうしていくかで話し合いをしていたってところかな? 」


 おおよそのところは把握してくれているようだ。なら話の続きから始めてもいいだろうな。


「そうです。今後彼女……メス猫だったんで彼女と呼びますが、元の場所にダンジョンを作るという案は今回はないと思われるので新しい場所を選定して場所を確保してからダンジョンを建てるなり、国交省と相談してダンジョンを建てるに相応の場所を探すなりしないと難しいと考えています」

「そうだねえ、ダンジョン庁だけで決めてしまっていざ出来たら周辺住民が大混乱、というダンジョン誕生初期のような状態は可能な限り避けたいからね。案としてはダンジョンの隣にダンジョンをもう一つ作ってもらって、二種類のダンジョンに潜れるようになるというのもあるだろうけど、これはダンジョンの内部の特色が違うような内容にしないといけないからね。ダンジョンマスターともその辺の協議が必要になってくるね」


 やはり談合めいたものになってきた。日本のダンジョン庁はダンジョンを活かす方向で動いているのは間違いないし、その為の俺であり保管庫であり、それらを覆い隠すための小西ダンジョンでもある。しかし、東京との距離の問題は何ともしがたいな。


 本来なら長官とダンジョンマスターを顔合わせさせて色々とやらなければならないのだろうが、ビデオチャットをするにも熊本第二ダンジョンならともかく、小西ダンジョンでは通信機能が使えない。前みたいにまた長官が入り込んで会議をするので小西ダンジョン封鎖……という形になるのも目に見えているし、その為にまた一日みんなの仕事を止めさせるのも悪い気がする。何かいい方法はないものか。


「そういえば会話ついでになんだが思い出したことがあった。モンスターの忌避塗料の実験が無事に終わったらしいよ。実証実験が終わったことで、この塗料を表面に塗った通信機器をダンジョン内に設置することでダンジョン内でも通信ができるように配備することが既に高輪ゲートウェイ官民総合利用ダンジョンをベースにして計画されている。うまくいけばとりあえず七層までに関しては予算をもぎ取ることが出来そうなので試験段階として設置していくことになるね」

「それ、小西ダンジョンの一層にも優先配備することは出来ますかね。うまくいけばダンジョンマスターを小西ダンジョンに呼びつつ、密談することも可能になるとは思いますが」


 ビデオチャットのシステムを小西の一層で使えるなら、一層の端っこ、前にエレベーターがあったあたりにはもう人が寄り付かないだろうからそこにダンジョンマスター達を呼び出してみんなで楽しく外部ともおしゃべり、という形で秘密を守りつつ相談することもできる。


「なるほど。それはかなり美味しい条件でこちらにかなり利がある話だね。早速検討に入らせてもらおう」

「そうしてみてください。既存のダンジョンではおそらくそのシステムを使っていかないと外部との連絡という意味では取り辛いでしょうから。ダンジョン庁的にはまず高輪ゲートウェイ官民総合利用ダンジョン、その後で小さめのダンジョンでより深くまで通信環境を整えるという理由なら都合もつけやすいと思います」


 小西ダンジョンでも通信ができるようになる。優先的に使わせてもらう、という点については色んな憶測を呼びそうだ。だが利便性に代えられるものはそうそうないので横槍を入れるタイミングは今だろうな。

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

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― 新着の感想 ―
モンスターの忌避塗料の実験が終わったのであればいっその事一階層に会議室を設置してしまえば良いのに、削岩できるレアスキル持ちに四角く部屋を加工して貰ってあとは防音素材と鍵付きの扉付けてしまえばそれっぽく…
一探索者ではあるけども半分くらいアドバイザーみたいな立ち位置になりつつありますよね
あれ?通話でも話せるのかな?なんか謎技術で自動翻訳してるだけだった気がするけど通信機越しでも使える?
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