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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第二十三章:新たなダンジョンマスター
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1139:いつもの

ダンジョンで潮干狩りを

Renta!等いろいろなサイトで発売中です。是非とも続刊のためにもご購入のほうよろしくお願いします。

 今日も良い目覚めだ。エアコンはあまりうるさくないので外はそれなりに涼しいらしい。ここにきてようやく秋らしさを見せ始めた、ということか。


 そう思って部屋から出た瞬間、暑かったので部屋に戻ってもう一度深呼吸。そしていつものありがとう。まだ外は暑い。気を抜いてはいけない、昨今の季節感という奴は秋の顔をして実はまだ夏だということを忘れさせてはくれないようだ。


 気合を入れてよし、出るか! と決めると暑い部屋の外へ一歩を踏み出す。すぐにリビングのエアコンをオンにして涼しい風を部屋中に纏わせる準備をする。後数時間はこの部屋に居座るわけだから部屋を涼しくしておいても損はない。どうせなら起きる時間を逆算してタイマーで自動運転にしておけばよかったな。


 いつも通りの朝食を作り、昨日の夕食として食べた何か肉の香味わさびだれを再度選択する。これは芽生さんにもぜひ味わってほしい美味しさだ、炊飯器の電源を入れると早速調理。と言っても焼いてシーズニングと混ぜるだけの簡単調理。サラダの上に盛り付けてボリュームはそれなりにある一品が出来上がった。しかしこれだけではちょっと味気ないな。もう一品何か入れるか。サラダはもうあるからもう一品……シーズニングを適当に選び抜く。


 塩だれキャベツは前に作ってそこそこ好評だったからな。ただ、サラダと内容が若干被る。トマトと玉子で作る炒めものサラダというのがあったのでこれにした。味のほうは作ってみて味見しないと解らないが、少なくとも不味く作る才能は俺は持ち合わせていないので大丈夫だろう。


 調理時間は三分……三分で良いらしい。トマトに火を通してシーズニングを振りかけた後、溶き卵を入れて卵をトマトに絡めるように掬い上げながら焼いて、とろっとしたところで火を止めた。


 どれどれさっそく味見……中華風だな。だが、悪くない。多分これはメインの香味わさびだれのボア肉とも合うだろう。後はいつも通り箸休めの漬物を用意してと。こんなもんでいいだろう。


 後は炊飯が終われば炊飯器ごと保管庫に突っ込んで終わりだ。炊けるまでニュースでも見て待とう。ニュースでは昨日のダンジョン消滅のニュースをチラッとだけやっていた。今回は解説の弦間さんは居ないらしいのでさっくりとダンジョンがまた一つ減ったという話だけをしている。


 弦間さんが居たらここのダンジョンについての解説や踏破した理由、それからダンジョン庁についてやいろんな説明が付随することになったんだろうが今日のところはそういう解説はナシか。居ないときにこそ解説が欲しくなる弦間さん、やはり貴重なダンジョン研究家なんだろうな。


 そのまましばらくニュースを見ていると、炊飯器が俺を呼んでいる。炊飯器を早速保管庫へ放り込むと準備は出来た。さぁ出かけるか。


 柄、ヨシ!

 圧切、ヨシ!

 直刀、ヨシ!

 ヘルメット、ヨシ!

 スーツ、ヨシ!

 安全靴、ヨシ!

 手袋、ヨシ!

 飯の準備、ヨシ!

 嗜好品、ヨシ! そういえばミルコの手持ちの在庫はどうなってるんだろうな。

 保管庫の中身……ヨシ!

 その他いろいろ、ヨシ!


 指さし確認は大事である。今日の昼食は多めに作ってきたので物足りないということはないとは思うが、念のため肉を焼くための一通りのものも保管庫に入れてある。シーズニングもまな板も入っている。最悪の状態に備えて常に準備は怠らないようにしているのでエネルギー切れの心配は無いし、最悪の最悪でカロリーバーという手段もある。安心してダンジョンに潜っていこう。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 今日も暑い中ダンジョンへ電車とバスで向かう。六十八層まで潜るという目標は達成されたことで、一応ミルコとの約束というか盟約のようなものは果たしたので、無理せず六十八層に潜るよりも五十九層で指輪を発掘する作業に従事している。


 こっちのほうが行軍距離が短くて済むうえに五十九層を出来るだけ素早く回ることを目標にしたため、以前よりも時間に対する作業効率がアップした。具体的にはおよそ二割ぐらいの収入増加が見込めている。二割ということは五時間働けば一時間分お得になるということ。


 五十九層の効率化により、六十四層より下へ潜っていくことと同レベルの稼ぎを得られるようになった。あえて深く潜る理由も今のところないので、次に六十五層方面に向かうのはおそらく七十二層まで開通した時に通り道として使う、そして七十層から逆に向かう事で通り道の時間効率がよく、短時間で密度が濃い階層までたどりつける。


 それまでは五十九層で指輪集めに従事しつつ夏休みの稼ぎを確実にしていこうというのがここのところの流れである。


 バスで芽生さんと合流。挨拶を交わしてお互いの健康状態のチェックをする。


「おはよう、今日は新しいシーズニングご飯だよ」

「おはようございます。それは楽しみですねえ」


 言葉少なに到着までじっと待つ。ほんの十五分ほどだが、話し合う内容もないので窓の外を眺めて流れる景色を見つめていく。


「そういえばダンジョン横のコンビニ、二十四時間営業を始めるらしいですよ」


 芽生さんのふとした発言が気にかかった。


「そうなのか。深夜にも利用する客が増えたってことかな。それとも要望が多かったんだろうか」

「普通に住みつき始めた探索者が普段潜ってない時にお腹空いたときに開いてると便利だから、という話らしいですよ。流浪の探索者が完全に固定されてきたというところなんでしょうかねえ」


 ふむ。確かにダンジョンに通うためだけに住むならダンジョンが空いている時間の前後さえ開店してれば不都合はないんだろうが、それ以外にも贅沢……いや、贅沢ではないな。住環境に気を置き始めたということか。なら、部屋の広さも今後は気になり始めるんだろうな。そういえば昨日読んだスレでもそんな話をしていたような覚えが。


「俺も一部屋借りてみるのも有りかもしれんが果たして使うかどうかはまた別の話になってしまうな。もう自宅から通いなれてしまったからな」

「そうですねえ。私も洋一さんの部屋に色々荷物を置いてしまっている訳ですし、新しく洋一さんがこっちに家を建てるとかならまだしも、新しく部屋を借りた際に荷物をどうするか考える必要があるでしょうね」


 芽生さんが何やら色々考えているがそれはともかく、試しに借りてみて実家から無事に独立できるかを試すのにも部屋を借りて住んでみる、という体験は四十歳を過ぎて今更ながらだがやっておいてもいいかもしれないな。また気になることが出来たなら考えておこう。


 バスが到着したので降りて芽生さんはそのまま着替えに、俺はその間にいつもの仕事前の冷たい水をもらいに建物内に入る。今日もよく冷えてるな。今から仕事を始めるというしゃっきりとした気分が体を奮い立たせる。やはり仕事始めと仕事終わりのこれは欠かせないな。


 ちゃんとトイレに行った後、芽生さんが着替え終わるのを待って入ダン手続き。


「いつも通りです」

「はい、いつも通りですね、どうぞご安全に」


 受付で今日もちゃんと稼いで戻ってきますよ、と宣言してのリヤカーを引いて茂君、そして五十六層へのボタンをポチ。ここからはいつものクロスワードの時間……というところだが、今日は探索雑誌の最新号がある。そっちを読もう。


 探索・オブ・ザ・イヤーの最新号の見出しは「B+探索者による三十三層以降解説ガイド」というものだった。どうやらB+探索者に情報を集めてもらった高山マップの情報が掲載されている。


 我々にとっては去年通った道だが、その真新しさはおそらく他の探索者の心をつかみに行くには充分な話だろう。高山マップのシンプルさだけでなく、生えている植物や気候、温度湿度、それから出てくるモンスターやドロップ品についての情報がこれでもかと載せられている。


「今更感はありますが、そういえば風景をのんびり楽しみながら探索、ということはしなかったような気がしますね」

「探索を奥に進めるのが第一だったからな。そういう風景を楽しんで探索をする、という心の余裕よりも新しい金づるが増えた、ぐらいの気持ちだったのもある。今後はそういうのも楽しみながら進むのも悪くはないかもしれんな」


 思えば探索する時はモンスターしか見てなかった気もする。ダンジョンを楽しむ、という意味では彼らのほうがより楽しみを得られているのかもしれんな。ちょっと悔しさがあるかもしれない。


 それ以外には個人事業主になることについてのガイド情報が税理士の監修の上で簡単にまとめられている。どうやら個人事業主の中でもいくつかのパターンに分かれるらしく、ギルドとの取引だけで済ませている探索者と、ギルド以外にも会社に納めている場合、個人で伝手があって企業に直接卸している場合など複数パターンにおいてどうするべきかという解説を入れてくれている。


 俺の場合は……企業に直接卸している部分があるので別のパターンか。ええと……一千万円を超える取引がある場合は適格請求書等保存方式の導入が必要になるのか。一時期話題になってたインボイスって奴だな。つまり俺も布団の山本に卸した材料の代金については消費税を納める必要があるってことになるんだな。これもまた税理士さんのところへ相談しにいかなければならないか。


 えーと、今日までにいくら卸したんだったかな……と、計算してみると三千万を超えている。これについて消費税を納付する必要があるという事だな。やはり相談しに行かなければ脱税か、布団の山本に不利益を出させてしまうということになるのか。次の休みにでも相談しに行こう。


「やはり今年からギルドとの取引だけに絞っておいて正解でしたね。私はややこしい税金周りの悩みに苛まれずに済みます」

「ギルドとの取引はその辺何も変わりがないってことか。直接取引だけに絞る利点はそこにあるってわけか。なるほどなあ……そこまで先を見通してなかったわ」


 五十六層に到着したのでいつも通りリヤカーをエレベーター周辺に放置して階段まで歩く。


「さあお仕事を開始するか。いつも通り五十七層を適当にめぐってそこで昼食。食べ終わったらちょっと休んで五十九層で指輪探し。スキルオーブがドロップしてから時間は経ってないので気にする心配はないのでただひたすら戦うだけで済むな」

「その分ちょっともったいない気はしますが……そういえば、スキルオーブのオファー出したんですよね。今のところ連絡は来てないんですか? 」


 しばらく前、【火魔法】と【生活魔法】のオファーを出した。芽生さんも【土魔法】のオファーを出したらしい。今のところ連絡は来ていないので、よほど値段が高くなっているのかそれともダンジョンに籠っている間に連絡が来ていてうまく取り合えなかったのか。その辺既存ダンジョンは損をするな。熊本第二ダンジョンの通信環境が羨ましく思える。


「ありふれたスキルだからなあ。多分こうやって潜っている間に電話が来てる可能性は大きいな。不在着信が何件かあったし、その間にチャンスを逃してるのは間違いないと思う。だからと言ってスキル待ちのために潜らないという選択肢をとるのはちょっともったいないな、とも思う。また深夜に連絡が来たり地上に居る間に連絡が来ることを願っておくことにするよ」

「こっちも不在着信はありましたねえ。ただ、いつかかってくるかわからないというのが問題ですねえ」


 どうやらお互いに不在着信自体はあったらしい。どうするべきかな。芽生さんも夏休みらしい夏休みを取ってもらってその間にスキルを引き取りにいく、というのもありだとは思う。まあ今日のところはここまで潜ってきてしまっているのだ、気持ちを切り替えて指輪を拾いにいくことにしよう。


 午前中のいつもの五十七層をグルグル回るのを素早く終わらせる。普通のスピードで回るのはもったいないと、ここのところは大理石のマップで一定時間の間にどれだけ稼げるかのタイムアタックをずっと続けている。おかげで短時間でメインの階層で戦う時間を長く保ちつつ、指輪を確実に入手できるだけの戦闘回数を得られている。


 とりあえず午前中はこんなものかな、という時間戦い続け、いつも通り五十七層回廊部分の五十八層に近い辺りで昼食の時間になった。さあ、腹いっぱい食べようではないか。

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

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― 新着の感想 ―
そうか通信環境の問題があったか(;´∀`) スキル待ちで休み入れるよりいつも通りにダンジョン回った方がお得だもんなぁ 上手くマッチングするのを気楽に待つかドロップするのを祈るしかないか
> 何か肉」 得体知れて > 卵をトマトに」 オムレツか炒り卵か。チーズも入れた上でサラダと言い張るおじさん > 盟約」 なぜか言い直すおじさん > 二割ということは」 なぜか言い直すおじさん …
不在着信かー 泊まり込みこそ最近はほとんどしてませんがほぼ毎日ダンジョン入ってるから連絡がつかない時間多いですもんねえ
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