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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第二十二章:新階層来る
1135/1207

1135:こまごまと、そして徒然と

ダンジョンで潮干狩りを

Renta!等いろいろなサイトで発売中です。是非とも続刊のためにもご購入のほうよろしくお願いします。

 家に着いた。睡眠を途中で取ったとはいえ体は結構限界らしい。家に入った途端全身をけだるさが覆い始めた。このまま寝てしまうとシーツが汚れるしスーツは皺だらけになるしであまりいいことはない。もうひと踏ん張りして何とか起き続けよう。


 スーツを部屋着に着替えてウォッシュ。多分明後日までは使わないので乾かす意味でもしばらくタンスに入っていてもらおう。保管庫の中でも良かったが、何となくタンスの中に入っている方が保存に適しているような感覚を覚えるのでスーツは使わないときはタンスにしまい込むようにしている。


 続いて洗い物、片付け物を済ませて綺麗にした後、最後にカレーが入っていた鍋に向かってウォッシュ。だが、カレーはカレーという認識であるのだろう、鍋は綺麗にはならなかった。まだ食べられる部分が少しあるぞ、という心理的抵抗を見せてくれているのだろうか。仕方がないのできっちり洗剤で洗って逆さにして食器乾燥機にかけておくことにする。


 ゴミをゴミ箱に放り込み、ゴミの日を確認。明日だな。ダンジョン通いを続けていると曜日の感覚が抜け落ちていく。特に夏休み中で芽生さんにつきっきりになっていると輪をかけて休祝日と日曜日の感覚がなくなる。夏休みが終わり次第、俺もちょっとずつ体の感覚を戻していかないといけないな。


 さて、一区切りついたところでシャワーを浴びて綺麗になった後、スノーオウル混合枕でひと眠りすることにする。本来ならダーククロウオンリーでぐっすりいくのが一番体にいいんだろうが、寝すぎて夜眠気が来なくなっても困る。使い分けが大事だ。ここは混合枕でどちらも良い感じに満たしておくのが必要だろう。


 二時間ほど寝て、目覚めを迎える。時間は昼。昼飯は……作る気にならんな。コンビニで調達してこよう。ほぼ二十四時間ガッツリと体力を使ったのでカロリーとたんぱく質が取れるものを、ということでコンビニでサラダチキンとカツカレーを購入、後は野菜ジュースでお茶を濁しておく。


 これから商談に向かうのでニンニク系はなしだ。サラダチキンをレンジで温めたものをカツカレーの上に刻んで乗せる。カレーは好き、チキンは好き、カツは好き、ついでにちょっとだけついてる福神漬けも好き。これだけ好きなものが並んでいて美味しくないわけがない。野菜ジュースはちょっとだけ好き。最近癖になりつつあるトマトのほのかな酸味を福神漬けと共にご飯の友として、しっかりと噛み味わって食事を終える。


 二人前でも胃袋に入らないことはないが、カロリーの摂り過ぎでせっかく引き締まったシックスパックに近いこの体型を維持することも忘れない。ここまで体を絞り込んだのはいつ以来だろう。もしかしたら存在しない記憶かもしれない。


 さて、腹を満たして喉も満たして落ち着いたころに布団の山本に連絡。今から行くが大丈夫かと連絡をつけた所歓迎すると言われたので、何時もの量である十五キロと四キロを用意する。


 車に積み込んでさぁ出発だ。いつも通り三十分後と伝えてあるが、今日は道路が少し混んでいて時間がかかりそうである。事故でもあったのか? としばらくゆっくりと車を進めると、中央分離帯に突っ込んでいる車とそれを現場検分して誘導している警察官の姿が見えた。


 お仕事お疲れ様です、と敬礼したまま通り過ぎる。さて、遅れた分を取り戻す……と考えると二の舞になる可能性もある、ここは落ち着いて運転をしていこう。休みなんだし焦って到着する必要は無い。素直に事故で遅れたと詫びればそれで済む話だ、落ち着いて行こう、落ち着いて。俺も夜勤明けみたいなものなんだから一つ間違えればああなっていたのは俺かもしれないのだから。


 十分ほど遅れて到着。山本店長に話を通していつも通り先に荷下ろしを済ませてもらって、涼しい店内で一服。しばらくしてこちらへやってくる店長。


「お待たせしました。今日はごゆっくりでしたね」

「道中交通事故を横目にしながら来ましてね。その分道が渋滞しておりました。私も実質夜勤明けみたいなものなのでああならないよう注意しながら運転してきましたよ」

「夜勤明け……ということはダンジョン内で一泊して朝戻ってきたってことでしょうか」

「そのようなものです。で、本日はちょっと品物のご相談も込みでやってまいりました」


 注文したいものがある、と早めに伝えておく。会話が盛り上がって忘れてて、後で電話口で注文なんてことにならないように先に、だ。


「はい、お聞きしましょう。本日はどのようなお品をお求めで」

「ダンジョン内で使えるように肌掛けみたいな夏布団が出来るかどうか、というのを確認したかったのですが。出来るならそのまま発注という形まで持って行っていただけると嬉しい所です」


 山本店長はカッと目を見開いて膝を打つ。


「ほかならぬ安村様のお願いですから早めの手配も行いましょう。割合はどんなものにいたしますか? 」

「熟睡ではなく仮眠、小休止の形で運用しようと思っていますので、ダーククロウとスノーオウル五十%という配合でお願いしようと思います。夏布団ならそれほどかさばらないでしょうし、ダンジョン内での寝起きのためにダンジョンに設置するつもりでいます。多少汚れに強いシーツなんかがあればそれも頼みたいですね」


 一言いい切ると、山本店長は無言で立ち上がり伝票を持ってくる。よく見ると、伝票ではなく注文書だったようだ。仔細をコツコツと書き記すと、山本店長が口を開く。


「そのほかには何かカスタマイズするようなところはありますか? サイズとか、ロングにしたいとか」


 おっと、サイズを伝えるのを忘れていた。いかんいかん。


「サイズはダブルでお願いします。ロングは……さすがにそこまでは要らないかな。全身すっぽりかぶって眠るというよりは、眠るついでに効能を味わうというほうがこちらの望みですので」

「なるほど……解りました。シーツも汚れに強いタイプと。お支払いは受け取りの際でもよろしいですか? 今お支払いしていただいて、後で不足分とかおつりを渡すような形になるよりは確実な金額をお伝え出来ますが」


 ふむ、前金にするか当日現金払いにするか、ということか。どっちでもいいが、面倒が無くていいのは後者だな。


「その時はレインにでも送っていただければ予定を合わせて取りにくる形になると思います。そのほうが持ち合わせの都合もありますので助かります」

「解りました……では、夏布団ダブルサイズ、スノーオウルダーククロウ五十%ずつ、シーツは汚れにくいものを。以上でよろしゅうございますか」

「ええ、ではお願いします。ちょっと昨日仮眠を取った場所が少し肌寒い場所だったのと、枕のみ持ち歩いていたので少々疲れが取れ切っていないような気がしていたのでこれを機にダンジョンにも布団を持ち込もうかと思いまして」

「なるほど、わかりました。後のことはお任せください、出来上がり次第お渡しできる段階で金額ともどもご連絡いたします。……と、これでOKです」


 注文は無事通ったらしい。今日は雑談らしい雑談はなしだ。


「では、失礼します。この後寄る所もあるので。次は布団を取りに来る時にまたお邪魔します」

「はい。商品のほうは……はい、何時もの金額を間違いなく振り込んでおきますのでよろしくお願いします」


 店員が持ってきた伝票を見て確認し、いつもの品質だと証明されたらしい。伝票をそのまま受け取ると続いて買い出しに行く。買うのは前回と同じ大きいテントと地面に敷くつなげられるタイプのエアマットだ。買うものは決まっているのでさっさとホームセンターに行き買うものを買い切ってしまうと脇目も振らずにすぐ帰る。続いて隣のスーパーで買い物。今回は大きな買い物はせず、日ごろの食パンと今日の夕食を何にするかを決めることになる。何食べよっかな。


 昨日の昼はパスタ、夜はカレー、今朝はいつものにプラスしてカレー、昼はカレー。カレー続きだな。じゃあ今日はカレー曜日ということで夕飯もカレーにしてしまうということも可能だな。チキンカレーはナシにしておこう、昼と被る。だとするとビーフカレーだが、ポークカレーでもいい。どっちにしようか……お、グリーンカレーが並んでいる、こいつは珍しい。


 スーパーのお弁当でグリーンカレーが並ぶことなど滅多にない。これは是非買っておくべきだな。後は……明日の朝の食材を買って、昼は何を作ろうかな。ローテーション的にはステーキか。お手軽にポークステーキでも作って食べることにするか。最悪暇つぶしで何処かに出かけても、保管庫の中でじっとしててくれればいいしな。


 お肉屋で久々に肉を買う。オーク肉でも良かったんだが普通の豚肉を食べたいと思ったのでステーキ用のロース肉を二枚買う。後で美味しく調理してやるからな。それまで冷蔵庫で静かに眠っていてくれ。


 後は足りない野菜を追加して、明日のステーキの付け合わせになるようなものを何品かと、キノコ類で補充する物を補充。さて、後は何しようかな。思いつかなければもう帰って夕飯食べて、いつも通りネットを見て、と日常に帰る時間だ。……いや、むしろ今が日常であって、ダンジョンの中が非日常なのではないだろうか。


 そう考えると既に日常のほとんどは非日常に支配されてしまっているな。ここ一年の中で日常に身を置く時間が一体どれだけあるのだろうか。この先何年戦い続けるかは解らないし、ダンジョンを作るほうであるミルコも、同じダンジョンを作り続けることに飽きが来るかもしれない。そうなった時は多分、俺に踏破してくださいというお願いが届くことになるだろう。


 小西ダンジョンが踏破されたらその後はどうするか。清州ダンジョンに移動するか、もっと他のダンジョンに行くことになるのか。芽生さんも公務員として正式に転勤になったなら俺もついていくことになるだろう。そうなった場合そっちでの生活はどのように変化していくのか。色々とこの先考えることはあるな。


 家に帰ってテレビを点けると、今朝の小西ダンジョン入口でのインタビューの様子がもう編集されて放送されていた。俺のシーンもある。芽生さんは完全に俺のバッグに隠れていて見えないようになっている。


「ここへきてまた新しいダンジョンへ行く、という選択肢も出てきてしまいました。果たして、ステータスブーストの源流は何処へつながっているのでしょうか。続報がわかり次第またこの話題を提供したいと思います。では、ダンジョンの話題はここまでです。続いては夏休みも終わりに差し掛かり、各地の行楽地もこの夏最後の楽しみと……」


 丁度終わってしまったようだ。そういえばあのアナウンサー、スーツ姿でダンジョンに潜る俺の姿について何も言わなかったな。普通は探索者でスーツってそう居ないと思うんだが、あまりに見なれた姿だったために見逃されたんだろうか。


 さて、夕食まで少し時間がある。さっきのテレビについても何かネットで反響があったかもしれない。スレッドに張り付いて時間を潰して、夕食の時間になったらグリーンカレーが待っている。


 今日ぐらいはビールを開けてゆっくり飲むのも悪くないかもしれないな。明日も休みだし、仮にまかり間違って二日酔いになっても一日反省する時間が取れる。明日は明日の風が吹くし、明日も明後日もダンジョンはまだあるはずだ。


 もしもやることが無かったら……またダンジョンでウルフ肉を集めたりスライムを潮干狩りしたりしよう。最近やってないのでご無沙汰しております、と挨拶に行くのもいいかもしれないな。

ここで一旦区切りです。ここまで読んでくれてどうもありがとうございました。また明日から日々は続きます。


作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

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― 新着の感想 ―
スレがちょっと賑わいそう笑
「ここまでで一区切り」ですか。お疲れ様でした。「明日からの日々」に期待しています。
> 何とか起き続けよう」 スノーオウルの羽を鼻に詰めるおじさん > カレーはカレー」 (白) > カツカレーを購入」 さっき食べたでしょ > カッと目を見開いて」 変なスイッチが入る店長 > …
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