1128:ダンジョンコアルームを目指して 2 六十七層
ダンジョンで潮干狩りを
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六十七層の階段前を綺麗にしたところで、予定通り少し休憩。ここからは長丁場になる可能性もある。確実に広さがあって視界が開けていて、モンスターを倒したばかりでリポップに猶予がある。休むには見た目以外の部分ではちょうどいい場所である。
「にしても、白血球の弱点って何でしょうね」
「なんだろうな。斬撃に比較的弱い、ぐらいしか現状解ってないからな」
スポドリを飲みつつ、軽く打ち合わせ込みの雑談。休憩中も見張ってはいるのでお互いの顔を見ずにしゃべってはいるが、やはり話題の俎上は白血球対処ということになる。こいつにどれだけ時間を割かれるかでこの階層での美味しさが変わってくる。
「【水魔法】も【魔法矢】も効果はいまいちでした。やはりスキルには強いんですかね? 」
「全部のスキルを試したわけじゃないからな。手持ちにないスキルだけ有効、という可能性はまだ捨ててはいけないと思うんだよ」
スキルか……【火魔法】には弱そうな印象があるのでもしかしたら【火魔法】には弱いのかもしれない。しかし、【火魔法】にはここ最近出会っていないので入手の手段が限られるし、今更一段階目の【火魔法】を訓練して効果があるのか? と言われると少し疑問点が残るのも確か。ないよりマシと言えばそれまでだが。
それ以外にスキル……射出で攻撃して穴をあけても無駄打ちが多くなりそうだが、せっかくだし次に出会った時に射出で何か出来ないか確かめてみるのも有りだな。パチンコ玉やバードショットなら在庫に余裕があるし、数発捨ててやったところでもらえる魔結晶が高額だから充分利益は出るな。
「射出で何かできないか考えながら戦ってみるか。保管庫の中で投げるに丁度良さそうなのは……」
保管庫の中身をずんずんスクロールしていく。ポーションかけて治ったり、逆に病気になったりはしないだろうし単価が高いので無しだ。やはりバードショットやパチンコ玉、ホウセンカの種なんかを投げつけて……あ。
「ちょっと光明が見えてきたような気がする。試してみるのも面白いかもしれない。もし効果があるなら白血球は全スキル耐性じゃないことも証明できるかもしれない」
「それは楽しみにしていましょうかねえ。実際に見せるまでの楽しみにします? それとも今のうちに種明かししてくれますか? 」
「実際やってみてやっぱり駄目だったか、のほうがダメージは小さくて済むからやってみた感想戦で対応していこうと思う」
まずはもう一度出会って戦闘になってからだ。ちょっとこの階層の探索に楽しみを見出すことが出来た。白血球め、次に出会うのを楽しみにしていると良い。きっとこの俺が引導を渡すかもしれない手段で戦ってやろう。
十分ほど休み、体のあちこちをチェックして探索再開。再開は良いが、何処にどう回るかまではまだ決めていない。前回は本当に適当に目標も何も決めずに潜ったのでいつもの目印である傾斜やなんかを考えずにうろついた。記憶が確かなら、傾斜はしてなかったと思うのでまた上下構造の部分が出てくるか、もしくは大きくループするか、それともどっちでもなくひたすら歩かされるか。
「さて、どっちに行こうねえ? 」
「そうですね……上下構造がありそうな奇妙なモンスターの湧き方をしているところはこっちになります。それが正しいかは解りません。もしかしたら構造的にあまり意味のない可能性がある上部構造が存在する可能性もあります」
「でもまあ目印としては解りやすいか。そっちへ行ってみよう」
芽生さんの指示する方向へ向かう。三鎖緑球菌君と数戦戦った後、サナダムシと出会いこれも楽々倒し、ついでにポーションも一本貰った。良い感じに探索できているぞ、と一つ満足を得たところで少し広い場所に出て、そこではまた白血球と三鎖緑球菌君が喧嘩をしていた。
「白血球とサナダムシは喧嘩しないんだろうか? それとも配置的に同時に配置されないんだろうか? 」
「六十八層なら出てくるかもしれませんが、今のところは解らないですね。そもそも寄生虫と白血球って体内で戦い合うもんなんですか? 」
「白血球も(仮称)だからな。実際は免疫機構ではなくてマップの掃除屋……スライムの一種なのかもしれない。そうなるとこいつは白血球ではなく白スライムと呼ぶべきものになるんだろうけど、核がみあたらないからやっぱりスライムではないんだろうな」
やはりスライムには核があって、それを潮干狩り出来ないと俺はスライムとして認めん。だから奴は白血球でいいのだ。
「さて、そろそろ喧嘩も終盤戦みたいだし、乱入しますか。せっかくのドロップが無くなってしまうかもしれない」
「白血球の新しい倒し方についても期待してます」
三鎖緑球菌君の生き残りを全力雷撃でまとめて消し飛ばし魔結晶に変えると、白血球がダメージを受けない攻撃を受けてこちらに向かって前進を始める。まずはバードショットを射出してみる。
バードショットは白血球の身体に穴をあけて貫通し、向こう側の壁へ当たった。が、バードショット程度の大きさではダメージにもならないらしく、穴はすぐに塞がった。
念のためもう一度、今度はパチンコ玉を射出する。パチンコ玉ぐらいの大きさになるとかすめる際に多少の衝撃波が起きるらしく、パチンコ玉そのものよりも大きな穴が開いて白血球は少しダメージを受けるような反応をした。しかし、こちらもあまり威力そのものは無いらしく、少しだけ黒い粒子が漏れ出た後、穴は塞がる。
本命で行こう。ホウセンカの種を三つ同時に射出、白血球に向けてぶつける。ホウセンカの種は白血球に当たり次第音を立てて爆発。パァンといういい音が三つ響いた。ホウセンカの爆発は白血球の組織を破壊して、そこの部分だけちぎれとんだように白血球を傷つけて飛び散り、種自身も黒い粒子になって消えていった。
白血球は同時に三発違う個所をそれぞれ攻撃されたことによって大きく体を損傷し、盛大に黒い粒子になって還っていった。どうやら、これは当たりだったらしい。
「保管庫のお荷物だと思っていたが、予想外のところで役に立ったな。これならもっと集めておけばよかった」
「物持ちのいい洋一さんでしたからこそできた発想かもしれません。白血球は爆発に弱いということが……あれ、爆発ってことはスキルに確か【爆破】ってありましたよね? 」
芽生さんが気づく。そう、特攻スキルは花園マップに既に用意されていたのだ。
「村田さんが覚えてる奴だな。これで結衣さん達も比較的楽に通り抜けられる可能性が高くなった。爆破が効くということは火属性のスキルならダメージが通るのかもしれない」
「それなら雷属性でも熱は持つでしょうから多少効果があっても良さそうですのに、そこは通じないんですよね。不思議です」
「ダンジョンのモンスターだ、不思議の二十四個ぐらいは許容していこうじゃないの」
「あ、久しぶりに聞きましたねダンジョンの二十四不思議。今いくつまで埋まってるんですか」
いくつまで埋まっているんだろう。多分解決したものを含めると二十四個を軽く超えているような気もするが、まあ二十四個あると主張しておこう。
「解らんが、とにかく二十四個あるということにしてある。いくつかは解決しただろうけどまた新しく増えた物もあるから常時二十四個ってことにしとこう」
「いい加減ですね、まあ実際にそれで問題が起きることが無いならいいんですが」
ドロップを拾って次へ行く。白血球にも弱点があるということに味を占めた我々探索班は更なる白血球を求めるべくダンジョンの奥底へ向かいつつある。
そして、芽生さんが先に言っていた異常にモンスター密度が濃い場所という所にたどり着いた。そこは広い部屋だが、上中下三段に階層が別れた分かれ道エリアだった。中央部にサナダムシ二匹が居て、どうやらスロープを上がるか下がるかすると更にモンスターとの出会いがある様子である。
「まずはサナダムシを遠距離から確実に倒して、それから……やっぱりここは下かな」
「下でしょうね。ここのマップのルールでは下に行くことになっています」
下に行くことになった。サナダムシは探知距離からの全力雷撃で一撃で仕留め、ドロップを拾い次第スロープを下りて下の階へ。下の階層では白血球と三鎖緑球菌君が戦闘をしていて、ちょうど三鎖緑球菌君が全て食いつくされたところだった。
ただ、今までと違う点は白血球の表面に緑色のかびが付着していた事である。もしかすると、こっちが戦っている間にも三鎖緑球菌君との継続戦闘が行われていて、俺が吸い込んだと主張するかび臭さ、あれが毒攻撃のような効果で白血球にダメージを与えていた可能性がある。しばらくすると白血球の表面から緑色のかびが消える。どうやらモンスターとしての三鎖緑球菌君は完全に倒されたらしい。
しかし、白血球の動きは鈍く、三鎖緑球菌君の毒攻撃はそれなりのダメージを与えていたのではないかと推察できる。白血球は毒攻撃にも弱いのではないだろうか、という仮説が新たに立った。今までは見かけ次第すぐに倒していたため、三鎖緑球菌君と白血球のバトルの結果を最後まで見守ることはしなかったため、情報が不足していたのだろう。
「三鎖緑球菌君の毒攻撃は白血球にも効果がありそう、これはトリビアになりそうですか」
「トリビアというか、横からかっさらうなら効果的な話になりそうです。弱ってる間に倒してしまいましょう」
ホウセンカの種を一発白血球に飛ばす。随分消耗していたらしい白血球は一発のホウセンカの種ですべて飛び散り、ドロップ品を残して黒い粒子に還っていった。ダメージはどうやら本物だったらしい。
「そういえば、ホウセンカはボムバルサミナという正式名称になってずいぶん経つが、名前が付いてから保管庫の出し入れをしてないからホウセンカの種のまんまなんだよな。これを出し入れして正式名称にしておいたほうがいいのか、そのまま気にせずホウセンカの種のままにしておくのか。安村、ちょっと悩みます」
「新しく仕入れる御予定がないのでしたらそのままでも良いとは思いますが」
「なるほど」
ボムバルサミナ君すまない、君の種は使いつくすまでホウセンカの種のままで行かせてもらうよ。
さて、古くから手持ちにある新しい武器である所のホウセンカの種を有り難く使い続けていくとして、残弾がそれなりにしかないことを考えると、主戦力ではなく補助武器として使っていくのが間違いない戦い方となるだろうな。
下の階に下りて道を確認。道は一本。どうやら迷えという感じでは無さそうだ。法則通りにこのマップが出来ているなら、この下側の道の何処かに六十八層への階段があるはずだ。もし上層にあったら……本当にそれは下りの階段なのだろうかと疑問に思う所である。
ただ、ダンジョンの階段という異次元同士をつなぐ階段としての意味ならば上層にあっても何ら不思議ではない。でも、下への階段は下にある、という人間の無意識下の選択をあえて逆につけるようなひねくれた性格のダンジョンマスターならともかく、時間に追われてとにかく早く作ろうとしていたミルコにとってはそんな所に頭を使うぐらいなら早く作ろうとしているはずだ。そこに変な感情や計算を入れる必要は無いだろう。
道なりに進むと細い道が続く。小部屋も数がそれなりにあり、小部屋の中に階段が無いかを確認するために一つ一つ確認しながら入る。各部屋には二匹ずつサナダムシが配置されているという解りやすいもの。これは次の階層に入ったら更に三鎖緑球菌君も追加されてそうな雰囲気だ。小部屋で白血球と三鎖緑球菌君が喧嘩している形の配置は今のところ確認されていない。これも次の階層だろう。
小部屋をしばらくしらみつぶしに通り抜けて、やがてまたスロープの部屋に出た。今回は自分が下で上があるらしい。ここで第二の選択肢。スロープを上がって上層の様子を見るか、このまま下層を回り続けて続きの道を探すか。どうしよう。考える前に、中央に居座っている白血球二匹を倒さないとな。
ちょっと省エネで行こう。一発ずつ白血球にホウセンカの種をぶち込み、爆破。飛び散った白血球の残りに対して白兵戦を仕掛け、さらに小さく切り取る。切り取る回数が少なくなっただけ戦闘時間は短く済んだ。俺が切り取っている間もう一匹は芽生さんに任せていたが、やはり槍とはちょっと相性が悪そうだ。片方を小さくして片付けたあと、芽生さんとは反対側から二匹目に襲い掛かり、背中を切るような感じで一気に小さくして白血球を黒い粒子に還す。
「やっぱり一発でもダメージは大きいですね。戦闘時間が半分ぐらいで済みましたよ」
「この手は使える。この階層で戦うときは率先して使っていこう」
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