1126:一日空けて、宿泊コース
ダンジョンで潮干狩りを
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今日からしばらく涼しい日が続くらしい。まだまだ猛暑が続くのかと辟易していたが、秋らしい雰囲気が徐々にはいずり寄ってくるらしい。
昨日はまた六十七層へ向かい、そこまでの地図を描いて帰ってきた。六十六層までの地図はほぼ出来上がったと言えるだろう。これでまたより短く探索出来る手はずは整った。六十七層の地図を描いて六十八層への階段を見つけるのが目標。六十八層ではまたさらに濃い密度でのモンスターが予想される。
そして、目標は六十八層の通り抜けとダンジョンコアルームへの到着。道中でこまめに小休止を取りつつ進むなら片道五時間から六時間ぐらいの行程はそう厳しくないはずだ。もしコアルームが六十八層の先に無かった場合はそのまま七十層へ突入するのが手早くて済みそうだが、ミルコからの連絡がない以上まだでき上がってはいないんだろうな。
さて、朝食を作り終えたところでまずご飯を炊飯。炊飯器が動いてる間に一通りの料理を開始する。昨日の内に仕込んでおいたカレーを温める。今日のカレーはただのカレーではない、白いカレーだ。最近なんだがスーパーで見かけた、黒いカレーと白いカレーの二種類がコンビで売っていたのだ。
黒いほうはともかくとして白いカレーというのは初体験なので今日の夕食にと買ってきた。これで芽生さんを驚かせてみよう。いつものシチューと同じように彩りもよく、ブロッコリーも放り込んであり白いルゥに様々な色彩が目を楽しませるが味はカレー。シチューだと思って一口食べたら香辛料の香りが漂ってきて一瞬パニックを起こすかもしれないな。
後は昼食にパスタを作っておく。ソースはトマトソースだが、それだけでは味気が無いので少しアレンジを加えて野菜とキノコをマシにする。野菜を追加する分だけソースが薄まってしまう部分があるが、しっかり煮詰めてからパスタと絡めることで水分で薄まることを防止した。味見をしてみたが、充分野菜トマトソースパスタだと言い張れるだけの味わいにはなっていると思う。若干胡椒があればいいかな、というところなので一振りだけ追加しておこう。
昼食と夕食の準備は出来た。後は炊飯が終わるまでしっかりとカレーを煮込んでおけばヨシだな。グツグツと煮えている鍋を眺めながら炊飯器が炊飯を終わるまで待つ。
その間にサラダを多めに作っておいて、昼食と夕食の兼用として山でだせるようにしておこう。カロリーは充分取れるはずなので、今回は粉チーズとごまだれがあればいいだろう。レタスとトマトときゅうりとを大皿に散らして粉チーズを振りかけ、サウザンドレッシングの代わりにごまだれを全体に振りかけるとこれでヨシ。もしごまだれが足りなくなっても保管庫に入っているので追加で足しても良し、味変でマヨでも良し、だ。
炊飯器から音楽が流れる。よし、米が炊けたぞ。蓋を開けて軽くかき混ぜておき、再びふたを閉めてコンセントを抜いて保管庫へダイブさせる。カレー用の深皿と昼食分のパスタが保管庫に入っていることと人数分の食器が入っていることを確認。これでヨシ。飯は……足りなければこの間買い足しておいた菓子パンでもかじってもらうことにしよう。
おっと、インスタントコーヒーを保温ポットに入れるのを忘れていた。アイスだとお腹が冷えるから少し温めにしておこう。あの環境でアツアツのコーヒーを飲むのはちょっと辛いからな。
思い出すだけのチェック項目をチェックし、荷物を確認する。いつものお時間だ。
柄、ヨシ!
圧切、ヨシ!
直刀、ヨシ!
ヘルメット、ヨシ!
スーツ、ヨシ!
安全靴、ヨシ!
手袋、ヨシ!
飯の準備、ヨシ! 芽生さんの反応楽しみ!
嗜好品、ヨシ! でも今日はどうするかまだ決めてない!
宿泊セット、ヨシ!
保管庫の中身……ヨシ!
その他いろいろ、ヨシ!
指さし確認は大事である。とりあえず米とパスタとカレーさえあれば食料は何とかなるし、それが無くても菓子パンがあるし、最悪でもバニラバーだけで乗り切るという手もある。食料はあるのでお腹が空いて動けない、ということはまず無いだろう。
後、圧切に慣れてきたのでそろそろ直刀は確認リストから外してやってもいいと思われる。次回からは忘れなかったら指さしリストからの外しを考えていこう。指さし確認は大事だが、多すぎても……いや、確認項目は確認項目だ。必要なものだけを確認し、微妙に要るかどうかわからないラインのものは外す、そうやって活性化を促していくのも大事だろう。
◇◆◇◆◇◆◇
バスで芽生さんと合流。そのまま今日の予定を軽く話す。
「まず、お昼はパスタ、夕食はカレーの予定だ。それを先に伝えておく」
「はい、パスタのソースは何ですか? 」
「トマトベースに野菜とキノコを追加して旨味をさらに追加しておいた。野菜を入れてから煮詰めたので、水っぽさは大分消えたと思う。後、サラダも作ってきたけどこれは夜と兼用にしたいので大皿に盛って用意してきた。適時必要な分だけ取って食べよう」
サラダは三人前ぐらいの量をまとめて盛ったので意外と食べ応えがある。サラダだけ食べてパスタを食べない、という選択肢すら取れるぐらいにはある。
「解りました。昼で食べ過ぎると夜の分が無くなるってことですね」
「逆に言えば、昼で食べなくても夜、夜に余っても朝食に回せるってことでもある。それなりの量は用意したのでまあ好きに食べよう。それでも余ったら俺が明日の昼に食べるし」
サラダは新鮮なのが一番いいとしても、丸一日保管庫で放置しておいても実際の経過時間は十五分。まだまだ食べられる時間ではある。有り難く保管庫の恩恵に与っておこう。
「とりあえず午前中はいつも通り、で午後からそのまま六十七層、六十八層を巡ってダンジョンコアルームまで頑張るって方針で行こう。下手に往復しない分だけ体力的には問題はないはずだし、新規層を開拓するというプレッシャーはあるかもしれないけど」
「そこはまあ、頑張って潜りに行く甲斐もあるというものです。六十八層が途方もなく広かったらその限りではないですが、今のところ一層当たり一時間ぐらいの広さって事は解ってますし、そんなに広げる余裕はミルコ君にはないはずですからね」
そんなに広げるなら早く階層開放しろよ、というこっちのプレッシャーを受けてるミルコにはそんな余裕はなかっただろうというメタ読みをし始めた。確かにそういう傾向はあるとおもうし、俺も同じ考えだ。
「ま、行けば解る。何とかやってみてダメなら途中で長めの休みを取って戻ってくるでも良い。時間制限がある訳じゃないから気楽に行こう。多分それが一番何とかなる」
ダンジョンに着きバスを降りる。今日はいつもより涼しいな……涼しいと言っていたのは確かにその通りらしい。頭もタクティカルヘルメットをかぶっているわりにいつものムワッとくる湿気が無い。
芽生さんが着替えてる間にいつもの水。涼しい分酷暑の中のとはまた違った味わいを見せてくれる。この水とも二十四時間ほどのお別れと考えると少し寂しいが、またここへ戻ってくるぞという気にはさせてくれる。
うーん、久しぶりの宿泊コースで体調崩さないか心配だ。今のうちにトイレとか無理矢理済ませて中での回数を減らしていくように努めていこう。
トイレから帰ってくると芽生さんは着替え終わって俺を探していた。よっ、と手を上げると安心したようでこちらに駆け寄ってくる。そのまま入ダン手続きと茂君を終えて六十三層へのボタンを押して、長い移動時間の間に今日の目的確認と打ち合わせをやっておく。
「目的は……まずは場所ですよね。第一次目標は無事に帰ってくることとして、第二次目標は無事に到着すること、あたりでしょうか。お金が稼げるかどうかはその次ですね」
手元のメモ帳をパラパラとめくって、モンスターの出現割合とポーションのドロップ率、それから各モンスターを倒した回数とそこからはじき出されたおおよその魔結晶の金額を参考にする。
「願うなら、各階層通り抜ける間に一本、ってところか。でも六十四層と六十五層はそんなに時間当たりのドロップ率に差が無いから、六十四層と六十五層でまとめて一本出るかどうか、あたりだろう。つまりは六十八層のモンスターの混雑率がそのまま稼げるかどうかの参考値になるわけか。まだ六十七層もまともに回れてないのにちょっと難儀ではあるが……まあ時間はたっぷりあるし、モンスターがひっきりなしに襲ってきて休む暇もない、というわけではないから安心して休憩も取れる。そこまで悪く考える必要もない、か」
自分の頭にペンをペシペシとしながら考える。六十七層でこの密度なら六十八層はよほど密度が高いか白血球が多いか。もしくは予想外に広い場所が多くて迷路化しているか。どれにせよ、探索の足を止めてくれることに間違いはないだろうな。
「いつも通り、お昼は六十三層ってことでいいんですよね。それから一気に潜って奥まで行ったら休んで帰ってきて……って感じですか? 」
「それでもいいし、六十八層にしばらく駐留して地図を作って、それからもう一回休んで六十三層へ戻ってそこで仮眠と朝食ってパターンでも良い。稼ぐならこっちのほうがより確実なんじゃないかな」
「進捗と疲れ具合次第ってとこですね。とりあえず午前中はいつも通り体の寝ぼけを取る感じでいきましょう」
打ち合わせを終えてそれでも暇なのでまたクロスワードをやり、ほどほどに楽しんだところで六十三層へ到着した。この通勤時間が最近非常にもったいなく感じているのは贅沢の範疇に入るのだろうか。ダンジョンマスター的にはどう考える所なんだろう?
ダンジョンの奥なんだから時間かかって当たり前とみるのか、ショービジネスとしてはそのエレベーターの移動時間中に仕事を終わらせてテレビの前に集まって、さあはじまるざますよ、といった風にみんなでワイワイ集まるまでの待機時間として必要だと考えるのか。
一度確認を取ったほうが良さそうだな。なにせ今でさえ四十五分、往復九十分は俺がひたすらクロスワードを解いているか軽く休憩を取っているシーンを流すことになっているのだ。それを退屈と感じるのかどうかは受け取り方次第という事だろうか。
リヤカーをいつもの場所にセットすると、いつも通りの流れで六十四層でウォーミングアップ。六十四層をいい感じにぐるっと回って戻ってくる道沿いにロックタートルとスーアアリゲイターを倒してはドロップ品を回収。ポーションは……まぁ出たらその時ってところだな。
体感だとここに二時間ほど滞在しないとポーションは出ない。確率的に言えば一%ぐらいのものだ。六十五層からはそれが二%ほどに上昇している。六十五層と六十四層のモンスター密度を比べると、六十四層のほうが圧倒的に多いためドロップ体感率は変わらないが、ドロップ品も含めて考えると若干六十四層に金額的効率の軍配は上がるかな? というところだな。
いつも通りの道でいつも通りの流れなので、もう次に何が出て来るかも大体予想がついているので予備動作や予備思考が必要ないのが流れ作業感に拍車をかける。もうこの道は「飽きた」な。
「うーん、そろそろここをグルグル回るだけなら一人でも回れそうだな」
「その装備なら確かにそうかもしれませんね。でも、物足りなくありません? 金額はともかくとしてポーションがもうちょっとぽろぽろっと落ちてくれる階層のほうが気分的に探索してるなあって感じると思いますが」
「それはあるかもしれん。その意味では五十七層とか五十八層のほうが落ちやすくはあるし気軽ではある……ふむ、金額的にも同じぐらいか。五十八層でも悪くないと言えるな」
手元のメモ帳に書き込んである自作のざっくり時給ガイドを判断しながら各階層の金額を見比べる。今のところ六十六層より手前の階層はしばらくあまり上昇傾向が見えないな。やはりポーションの落ち具合と価格、それからドロップ品と密度が複雑に絡みついてくるため単純に深ければ金になる、という形にもなっていないのがここのところの現状だ。
もっと未来の話で言えば、これだけ幅広い間隔の階層で同じだけの稼ぎができるならばパーティーがモンスターの取り合いで諍いを起こす可能性が減る、ということにもつながる。それほど悪くはない話でもあるが、行きづらさを考えると少々考え物でもある。
「ふむ……五十五層から六十五層ぐらいまでは何処でもおんなじぐらいか。保管庫を使わずに、という場合に限定されればここの階層は魔結晶しか出ないので扱いがしやすいのは確かだな。その頃にはこっちももっと深く潜っているだろうからより儲かるエリアで動き回っているだろうけど」
「まあ、どちらにせよ夏休みが終わるまではもう少し付き合ってもらいますからね。稼げるうちに稼ぐ、我が家の家訓です」
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