1123:奥を目指して
ダンジョンで潮干狩りを
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昼食休みはしっかりとった。ここの所少なめの食事だった分少々胃袋の消化に時間がかかるかもしれないので、ゆっくりと休憩をとる。時間はある。茂君ダッシュしないだけ三十分時間が余分に取れるし六十五層は一通り見回って特に複雑なマップではないことも判明している。
今日は六十五層は時間短縮して進めそうだな。その分六十六層でのマップ作りと、出来れば六十七層への階段を見つけること、そこまでを目標にしておこう。
地図を開いて六十六層の地図を確認する。まだ二本の長めの道と一か所の分かれ道、それに道に接続されている通りがかりの小部屋しか描かれていない。これをどこまで更新できるかどうかが今日のメインディッシュという所かな。
椅子にもたれかかるようにして胃袋の消化に気合を入れている芽生さんを横目に、どっちへ行けば階段にたどり着けるだろう? という疑問に頭をもっていかせている。
このマップは六十五層では緩やかな坂道があり、坂を下るように一番下に階段があった。そういう法則がまかり通るなら、おそらく下段側のマップに階段がある可能性が高い。
今のところ下段側の道は、六十五層への階段がある道と並行して存在する道と、下段側へ下りるスロープのあったところに更に分かれ道が一つあった。あっちに行くのが正解か、それとも階段の下側の道へもぐりこんで真っ直ぐ進むのが正しい道なのか。どちらにいくこともできるが……
ここは芽生さんの勘を信じて進むほうが良いだろうな。こういう時俺の直感が当てにならないことはここまでの探索で証明されてしまっている。いざ現地に到着してどっちにいこうかと相談するのが良いだろう。
充分休憩して体を動かすのに問題ない程度に身体も休め胃を動かした後、ゆっくりとスピードを上げながら六十四層を抜けていく。午前中も同じ道を通ったおかげもあり、午前中の動きでモンスターに慣れたおかげでちょっとずつだが通り抜ける時間が短くなってきた。
昨日は五十分で通り抜けた六十四層を四十五分で通り抜けることが出来た。この往復十分を六十六層に使えるのは中々大きい。
「今日のタイムはどうですか? 短縮できましたか? 」
「良い傾向だ。おかげで六十六層をうろうろする時間が増えた」
「やったっ、六十五層もこの調子で行きましょう」
芽生さんのやる気も充填出来たところで階段を下りて六十五層。ここもほぼ通り抜けるだけの場所になった。モンスター密度が六十六層のほうが多いのが確定している上に新マップの最上層であるので、それほど密度は高くない。ここも頑張って通り抜けるだけで進めるようにはなった。
早速現れる三鎖緑球菌君を全力雷撃で吹き飛ばし、近づいてきて分裂する前に倒す。分裂されてからの近接攻撃でも問題なく倒せはするが、一発で倒せるほうが時間もかからずコストもかからずお手軽で手間がない。サナダムシは道を歩いている以上最小の出会い数で済むのでサナダムシにとられる時間も少ない。
そして、ここにきて新情報が舞い降りた。サナダムシは雷撃しても分裂してしまうことがあることがたった今判明した。ギリギリのところを攻めるために弱めの雷撃を当ててしまったのが原因だろう。サナダムシは二分割されてこっちに向かってきた。両方に向かって同時に全力雷撃することで消滅させることには成功したが、余計な手間と魔力を消費してしまった。
「雷撃でも分裂するんですねえ」
「中途半端な攻撃をするとだめ、ということかな。まあこれも一つ勉強になったということで、手を抜かないように、なおかつスキルを使いすぎないように……まあ最悪ドライフルーツ噛みながら進むことになるか」
「六十六層の湧き具合だとそこまで厳しい戦いにはならないとは思いますが、それも頭に入れていきましょう。六十六層では今のところですが他のモンスターは出ない様子ですからその点は安心できます。それ以降はちょっと解りませんが」
つまづきになるほどのことではないが、地味に時間を取られることではある、時間か持久力かの二択なので、ここは持久力を多少削って時間のほうを取ろう。
六十五層をまっすぐ、寄り道をせずに六十六層への階段へ向かう。小部屋に寄らないおかげでサナダムシが出てくる回数は少ない。同時に二匹出てくる場面もこの六十五層では今のところ存在しない。三鎖緑球菌君をひたすら相手にするので、雷撃頼りになってしまっているのが現状だ。これ、六十六層まで持つかな。階段下りてその場にいるはずの三鎖緑球菌君を倒したらちょっとドライフルーツを一つ早めに口の中に仕込んでしまうのも一つの手だな。
できるだけ足は止めずに探索を進めたい。その為には早めの魔力回復に努めるのも悪くないだろう。それにモンスター密度が濃い目とは言え、六十六層にも休みやすい場所はそれなりにある。その場所まで頑張ってそこで少し時間休憩を取ってきっちり回復していくという手段もある。
そうだな、今のうちに一枚含んでおくのがより効率的か。今何枚食べれば満タンになるかはもう解らないけれど、一枚噛めば数発分の全力雷撃の保証はされる。その魔力量で何分間かは自然回復に任せて補充できるのでより地図を作る時間を獲得することができる。
そうと決まれば早速一枚……うん、なんか久しぶりのこの感覚だ。汗を軽く掻くような感覚の後の清涼感。この場の蒸し暑さが洗い流されていくような気がして気持ちいい。ふぅ……と深呼吸してわずかな時間で心地よくなっておく。
「あ、ずるいですね自分だけ清涼感を味わおうなんて。私にもください」
芽生さんにも一枚渡し、芽生さんも涼しさを味わう。わずかに休憩した後再び六十六層へ向かう間に運よく三鎖緑球菌君からポーションを手に入れる。行きに一本、後は六十六層で一本、帰りにもう一本手に入れられれば充分美味しい一日であると感じて帰ることができるだろう。しかし、時間に追われるという意味ではここよりも五十九層のほうが若干気楽に探索ができるな。
五十九層と言えば、新藤君達土竜のメンバーは五十七層に到着しているんだから、高輪ゲートウェイ官民総合利用ダンジョンからの指輪ドロップも入手出来ていることになるな。そうなるとあっちの指輪は査定に出されて市場に流れていく可能性があるわけか。その辺はどうするんだろう、ダンジョン庁で引き取っておいて流す方向性を決めていくのか、それとも普通に市場に流れてしまうのか。噂程度に耳にすることがあったら気にかけておくことにするか。
六十五層を通り抜けて六十六層への階段に着いた。さあ、ここからが探索の本番だ。結構時間がかかったがそれでも一時間ギリギリかからないぐらいのペースで進むことは出来た。一時間半ぐらいは探索する時間がある。最悪明日、最良で今日中に階段を発見して六十七層の様子見、というところまではいけるだろう。
その先を見るにはさすがに宿泊コースになるだろう。片道一時間で三時間かけて六十八層まで到着してそこから更に探索……となると、一日で回れる距離ではない。朝早く来たとしてもどこかで休憩する時間と場所を取る必要はあるし、それをこのマップで取るのは少々厳しいだろう。
六十六層の階段を下りてすぐの三鎖緑球菌をサクッと退治すると、さて左右どちらの道へ向かうかと考える。右へ行けば前回と同じでスロープのある広間にでて、そこから分かれ道がいくつか。左へ行くのはまだ解っていない。
「芽生さん的にはどっちだと思う? 今回は左へ行ってみる? 」
「うーん、そうですね……今回も右で良いと思いますよ。左へ行っても同じようにスロープのある場所に出ると思います。そして……多分この下に通じてる道と繋がってますね」
芽生さんが索敵に映るモンスターの存在情報を頼りに頭の中に地図を描いている様子。紙を渡すと、さらさらと地図の形とモンスターの存在する場所をプロットしていく。
「多分こんな感じになってますね」
記された地図には、階段を中心に左右対称のようにつながる道とこの真下を通る道、そしてスロープのある部屋までの地図が出来上がっていた。これもう地図も芽生さんが作ったほうが早いんじゃないか?
「じゃあ、あえて左へ行ってみてその先を見る、というのはナシなの? 」
「これはスキルではなく私の勘ですが、スロープを下りてから真下の道へ行くではなく他の道を探していくほうが時間短縮にもなるし階段も早く見つけられるような予感がします。あくまで予感ですが」
ふむ……芽生さんがそう言っているのだし信用したほうがいい意見だろうな。
「よし、右へ行って前回のスロープまで行ってまた考えようか。その時に見える景色もあるだろうし、それから考えても遅くはない、よね? 」
「そうですね、それがいいと思います」
芽生さんが槍をくるくると回しながら索敵もしっかり回している。俺の索敵にはまだスロープまで見渡すことはできないが、その先でまた索敵をすれば自然と見えるようになっていくのか、それとも索敵二重化できっちり二人とも索敵できるようになったほうがいいのか、悩みはそれなりにある。七十層の到達ボーナスは索敵にしようかな、一つの案として頭には入れておこう。
今のところ火力不足で悩んでいる部分は無いので【雷魔法】をもう一段階上げるという考えはない。むしろギルド経由で買い付けてしまったほうが早い可能性だって充分にある。ちゃんと金を使っていくことも必要だろうし、必要になった時に軽く休みを取って何処へでも移動できるように準備が出来ているとよりいいかな。
さて、考えはそこそこにして足を進めるか。前回と同じ道を通り抜けながらスロープのある広い部屋まで行く。一直線で行くので、この細い道では三鎖緑球菌君しか出ない。ズバズバと焼きながら進み、十分ほどでスロープのある所に到着。早速サナダムシ二匹とご対面、全力雷撃で片方を潰している間に芽生さんもウォーターカッターでわざと分裂させた後、それぞれを魔法矢で迎撃。
手数が多い分コスパがいいのかどうかはわからないが、本人が何事も無いような顔でやっているのを見ると、出力自体はそれほど大きいものではないのだろう。芽生さんが若干手数の分遅れたもののあまり時間をかけずに処理できたのは大きい。
「さて、どっちへ行こうかね。芽生さんはどっちだと思う? 」
「少なくとも昨日通った道は真下を通って反対側のこのスロープの有るような広場に出ると考えられるので無しです。だとすると、スロープを下りない右が一つとスロープを下りた先の別の道、ということになります。多分このマップ全体に言えることだと思いますけど、次への階段は下側にある、という法則があるような気がしますのでスロープ降りて別の道のほうが正解に近いんじゃないでしょうか」
「お、マップの仕掛けに気づいたか。六十五層もちょっとずつ斜めに下がってきてるんだよな。ここでもこの先でも同じなら、六十八層はただひたすら下りていくだけで正解が見つかるかもしれないな」
芽生さんも気づいていたらしい。早速別の道、という方向へ進みだす。モンスターの密度はそこそこ濃く、次のモンスターが見えている場所すらある。細い所では三鎖緑球菌君を、広がっている道や小部屋ではサナダムシをそれぞれ倒していく。そしてここでポーションがもう一つ落ちた。今日はポーションの落ちがいいな。ここまででもう三本も出てくれている。六十五層と六十四層で合わせてもう一本落ちてくれれば今日の収入は一億に届きそうだ。
スロープのある部屋から十五分歩いて分かれ道にたどり着いた。指をさしてこっち? と確認するも、首を振る芽生さん。どうやらどっちかはまだ判断が付けられないらしい。
「圧切倒して、どうぞ」
芽生さんからいつもの提案がなされるので、提案通りに圧切を垂直に立てて、それから手を放す。圧切は分かれ道の向かって正面のほうへ倒れた。
「じゃあ左ですね、行きましょう」
いつもの流れだ、気にしないでおく。芽生さんにはこの先のマップが少し見えているのできっと階段にも近づけるはずだと信じてそのまま後ろをついていく。
グネグネとうねるマップを進んでいく。うねる先に三鎖緑球菌君がいることもあるし、曲がったすぐに小部屋がありそこにサナダムシが住み着いているパターンも確認できたので戦闘データの蓄積が出来ていく。戦うほうもマップのパターンも変わらずに進んできている。さっきの運試しではないが、若干の下向きの道にもなっていることだし、こっちに階段がありそうな気がしてきた。
いい感じに進んでいる、そんな気がしてきた。
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後毎度の誤字修正、感謝しております。