11:三日目、流れ作業
(改)10話と中身同じだったのを修正しました。許してくださいなんでもはしませんが。
ダンジョンで潮干狩りを
Renta!等いろいろなサイトで発売中です。是非とも続刊のためにもご購入のほうよろしくお願いします。
いつも通り、入口から少し入るとつぷんという感覚とともにダンジョンに入ったんだなという実感が湧く。
今日のノルマは無い。とにかく時間と数を測って、楽をすることが先だ。
とりあえず、下層へ向かうメインルートから離れ、スライムがそこそこ居そうなところに目星をつけておく。
やはりスライムを専門に狩りを行う探索者などほとんど居ないのか、道中で出会う人は特にいなかった。
これは安定してスライムを狩るには適した道を通ることに成功したようだ。
ダンジョンの壁は破壊することが不可能という事が立証されている。以前米軍が自国のダンジョンを攻略する際、爆発物を用いて部屋ごと爆破しモンスターを一掃しようと画策したが、モンスターは倒せたものの壁には一切のダメージがなく、ドロップ品も一緒に燃え尽きてしまったという情報があったことを思い出した。
何れにしろ、俺の武器は今はこの万能熊手一つ、いや二つか、これしかない。
もしここで下層のモンスターがうっかり乱入しようものなら餌食になってしまう可能性のほうが高い。
なにより、万能熊手は武器としてのリーチがないのだ。
例えば一つ下層に居るグレイウルフなんかに飛びつかれた際には射程の問題で傷を負わされることは目に見えている。
今はまだ下層に行くべきではない、スライムによる検証を行うしか今の俺にできることはなかった。
しばらく進むと、小さな部屋に出た。部屋にはスライムが数十匹ほど居て、いつも通りぽよんぽよんと跳ねては何も考えてなさそうな風景を醸し出している。
ここなら十分に実験が行えるだろう。俺は時間を確認すると、さっそく計測・調査に乗り出すことにした。
とりあえず一時間、無心でスライムを捕まえては万能熊手で核を取り出し、靴の裏で踏む。
スライムは消滅する。この繰り返しを三十分ほど繰り返したあたりで俺は自分の思考を邪魔することはなく、無心で体を動かす事だけに没頭していた。
無心の中にだんだん雑念が入り混じっていく。果たしてモンスターとは何なのだろうか。
スライムに意思があるらしいことは確認できた。果たしてスライムに痛覚はあるのか。ほかのモンスターはどうだ。もしもモンスターに感情というものがあるならば、俺は彼らにどう見えているのだろう。これは殺傷ではあるが、生活に必要な殺傷である。
人間の視点であれば、モンスターとは人類の営みを破壊する敵であるという事だろう。しかし、彼らとコミュニケーションが取れることがわかるという未来が訪れないとも限らない。
そうなった場合、彼らとのコミュニケーションはどの程度のモンスターに対して行われるものなのか。目の前で高速で処理されて行くスライムには確かに意思らしきものがある。
しかし、痛覚はどうだろう。熊手で掻き出された核に痛みはあるのか。踏みつぶされる瞬間に俺に対して憎悪の念をまき散らすのか。
スライムとのコミュニケーションが取れたという話はまだ調べてないが、存在するとしたらモンスターをテイムして己の部下?ペット?として運用することも可能だろう。
その際、ダンジョンから連れ出すという行為に問題が発生することは間違いない。
そういったことに対しての対応は現状できているのだろうか。研究するテーマとしては十分な意義があるように思えるが今俺がそれを知らないという事は作業について何ら邪魔することはない。
しかし、それが立証された場合俺は同じようにスライムを狩り続けることができるのだろうか。
そんなことを考えていると、目の前に居たスライムの動きに変化が現れた。プルプルとその場で震え始めると、スライムは二つに分裂した。
どうやらスライムはリポップするだけではなく、自ら分裂することができるようだ。これは兄弟を生み出したという事なのだろうか。それとも親子の間柄になるのだろうか。
スライムに親子の情とか兄弟の契りとか、そういうものが存在するのだろうか。俺は一旦無心に狩るのをやめ、二匹のスライムの内の片方を慣れた手際で処理する。
「誕生日おめでとう。今、別れた兄弟?のところへ連れてってやるからな」
そう教えるともう一つのスライムも同じように処理した。もしスライムに集合的無意識というものがあるならば、俺は今すごくスライムに恨まれている事だろう。だがこちらも仕事だ。妥協もしないし感情も無い。そういった感情を覚えるのはスライムに仲間意識があるという事が判明してからでいい。
◇◆◇◆◇◆◇
そんなことを考えていたら、時計から一時間を示すアラームが鳴り始めた。メモ帳に書いたスライムを倒した回数とドロップ品の数が記載されている。
この一時間で処理したスライムの数は約九十匹。ドロップはスライムゼリーが二十七個、魔結晶が十三個得られたようだ。昨日の結果からみると、少しドロップ率が多い。
それほど疲れも覚えていないので次の一時間の計測を始めるとするか。
俺はまたスライム狩りに没頭する。もう完全に流れ作業化したスライム狩りは、俺の思考に余裕を与えてくれている。
俺は考え事をしながら視界に入るスライムを片っ端から万能熊手で引っ掻く作業に入る。
これは俺の体感なのだが、昨日に比べて明らかに自分の動きが素早く、楽になっている。これはステータスの上昇という奴じゃないだろうかと仮定しておく。
どのくらいのスライムを倒せばステータスが上がっていくのかまでは計測できないが、ただのスライムでも数を倒せば俺も成長していくという事だろうか。
スライムに近づく速度、核を取り出すときの速さ、踏みつけるまでの一セットの作業も心なしか早くなっている気がする。
これはステータスが上がっているという事か? スライムを狩れば狩れるだけ俺も強くなっているという事か?
飽きるまでスライムを狩って、飽きたところで下層へチャレンジしていく、というのも今後考えていかなければならないな。
そういえばステータスってどういう条件で上昇するんだ?モンスターを狩った回数?モンスターの強さ? モンスターの強さによって上限が設定されているとか?
そういう情報は公開されていなかった気がする。迂闊に公開することで無茶なダンジョンアタックをしそうな探索者を減らすためなのかもしれない。
ダンジョンが出来て三年も経つのだし、そういう統計取ってる人は居るはず。現に俺が今スライムで行っているのは統計調査に他ならない。
統計の積み重ねがダンジョン探索者の死亡率・負傷率に直結するのだから、この手の情報は広く広めるべきなんじゃないかと考えるが、先行者優位を確実にするためにあえて伏せてある可能性もある。
そう考えると俺のこの行動も無駄というわけではなくなりそうだ。
作者からのお願い
皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。
続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。





