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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第二十一章:夏休み、あー夏休み、夏休み
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1087:圧切石原

ダンジョンで潮干狩りを

Renta!等いろいろなサイトで発売中です。是非とも続刊のためにもご購入のほうよろしくお願いします。

 アラームで目が覚める。腕の中には昨夜短く熱く濃く、そして少しばかり待てをされた分より気持ちよくさせてくれた相手が更に気持ちよさそうに寝ている。


 軽く揺すって目覚めを促進させると、ゆっくりと起き上がってきた。エアコンが利いているとはいえお互いまだ全裸。しっかり運動した後でベッドと自分達をウォッシュしたため、そのまま汗まみれのまま眠るということもなくなった。生活魔法は俺の色んな生活を便利にしてくれたのは間違いない。


「おはようございます、昨夜はお楽しみでしたね」

「お互いにな、おはよう。色々と充電したような気分だ」


 軽くおでこにキスしてやると顔がふんにゃりとにやけ始めた。流石に今からもう一回はやらんからな。お互いのお互いをあまり刺激しない程度にのろけることにする。


 さて、朝ごはん作るか。流石に全裸のまま食事を作る気にはなれないのでちゃんとパンツを穿いて服を着て、油がうっかりはねても大丈夫なようにはしておく。


 いつもの朝食を二人分、ササっと作ってリビングへ。芽生さんも服を着直して大人しく待っていたので食事を始める。


「何時ごろ行きますか? 」

「そうだなあ。そのままダンジョンへ潜っていけるようにはしたいからいつも通りに昼食を作ってから行くとして、早くて午前九時ってところだろう。そこから受け取って最終調整して戻ってきて……早くて午前十一時か。これはそのまま五十六層へ戻ってすぐ昼食って形になりそうだ。昼食のリクエストある? 」


 パンにジャムを塗りながらもう昼食の話をしている。普段と大して変わらないとはいえ、食べながらお昼の相談というのもなんだか大食漢になったようで少しばかり違和感を覚える。


「そうですねえ。今から作って出かけるんですから軽く作れるもので構いませんよ。サンドイッチあたりはどうですか、手軽に作れて手軽に食べられます」

「肉抜きなら比較的早く作れるな。野菜と卵とツナと……そのあたりか。あまり腹に溜まらないかもしれないが今日は新武器のお披露目と試運転の面もあるからな。あまり派手には動かないかもしれない。切れ味が良すぎてそのままいい感じにトリップしてしまう可能性はあるが」

「そうなるまえに止めますからその辺は安心してください。うっかり自分を切らないように気を付けてくださいね。あの切れ味だと気が付かない間に自分の身体が吹っ飛んでる可能性もありますから」


 うむ、充分に気を付けて扱わないとな。しかし、これで石像君もサクサク斬れるようになると考えると、早く体に馴染ませてやりたいとおもうのは武器に対しての正しい礼儀だとは思う。


「まあ、最悪ポーションでくっつけるけど充分気を付けて動くことにするよ」

「そうしてください。ご馳走様でした」


 早々と食事を終えた芽生さんが食器を片付けようとする。その前にウォッシュ。皿は一旦ある程度綺麗になり、パンくずやキャベツに付着していた水分等が黒い粒子に変わっていく。


「便利ですが、まだまだ実用には……ってとこですかね。ジャムが残っていますし目玉焼きの汚れが少しついています」

「多分パンで拭き取れば綺麗になるって思う部分にはまだ働きかけてくれないらしい。もう一個生活魔法を多重化させるか、意識改革が必要なんだろうな」


 自分も食べ終わったので食器にウォッシュした後流しへもっていってさっくり片付ける。さて、昼食を作るか。


 卵を茹でて黄身と白身を分けて、黄身に牛乳とマヨとちょっとだけ砂糖を入れて混ぜた後、細かくした白身を混ぜ合わせる。こうすることでふわふわのたまごサンドが作れるらしい。普段はふわふわさよりも手数の少なさを優先してパパっとやってしまうところだが、今日は出かけるまでの時間に余裕がある。たまには一手間加えたサンドイッチも悪くないだろう。


 今日のサンドイッチの両面にはからしバターを塗り、味わいを色々と楽しめるように更に一手間。普段はやらないが、こういうのも悪くない。


 他にも数種類サンドイッチを作る。キュウリは芽生さんがピーラーで薄切りにしたものをマヨとサンドしてさらに一品。そしていつものレタスとトマトとハムのサンドイッチで一品。味付けはからしマヨ。今日はマヨの消費量がちょっと多めである。とりあえずここまでで三種類か。


 後は……ツナマヨを作るか。たしからっきょがあったはずなので、細かく刻んでツナとマヨと一緒に練り込んでこれもまた一品。四種類あれば胃も舌も満たせるだろう。


 芽生さんの若干の手伝いも有り、昼食づくりは手早く終わった。さて、いつものスーツに着替えてまずは石原刃物へ出かけて納品してもらう。その後で小西ダンジョン。ダンジョンが何処でも共用で使えるという意味では清州ダンジョンでも良かったのだが、清州ダンジョンは何層まで到達しているか解らない。


 それに、エレベーターの作動キーであるゴブリンキングの角をまだ所持していない。更に、清州では保管庫の使用に制限がつく。多少の時間はかかっても素直に小西ダンジョンに潜ったほうが時間に対する利益は大きく出来るだろう。


「ご飯の準備も出来たしゆるりと行くか。今から出かけるとすると……よし、大体時間は解ってきた。早速連絡を入れておこう。さすがにまだ寝てるということはないだろうし」

「個人経営だとその辺融通がきいていいですねえ。じゃあお出かけする準備してきます」


 芽生さんが着替えに行っている間に石原刃物に電話し、何時ごろに到着するかを連絡。終わり次第いつものスーツ姿に着替えなおす。最初からスーツでも良かったかな? まあ、いいか。


 パパっと着替えて荷物を整理、お弁当も持った。さて、後は……


 柄、ヨシ!

 直刀、ヨシ!

 ヘルメット、ヨシ!

 スーツ、ヨシ!

 安全靴、ヨシ!

 手袋、ヨシ!

 飯の準備、ヨシ!

 嗜好品、ナシ!

 保管庫の中身……ヨシ!

 その他いろいろ、ヨシ!


 指さし確認は大事である。今日はミルコのおやつは……気が向いたら名古屋駅で何か見繕おう。忘れていたら今日は無い日ということで一つ納得してもらうしかないだろうな。何にしよう、赤福で良いかな。


 ほぼ同じタイミングで芽生さんも着替え終わったらしい。ちゃんと昨日とは違う服だ。昨日の服は何処にしまい込んでいるのかは聞かないでおくのが紳士のマナーかな。


「さて、行くか」

「忘れ物は……あったらまた取りに来るから問題ないですね。部屋に下着とか着替えとか色々干してあるので、気が向いたら取り込んでおいてくれても構いませんよ」

「そうだな、干しっぱなしもよくないからな。戻って覚えてたら取り込んでおくことにするよ。畳んでおくだけで大丈夫? 」

「どこに何が仕舞ってあるかまでは解らないでしょうから、ベッドの上にそうしておいてくれると助かります」


 普通はさすがに良い仲とはいえ下着もふくめて洗った服とはいえやりとりするのは……とは思ったが、半同棲していると考えたらお互いの服をどうこうするぐらいは問題ないと考えているのか、芽生さんがそこまで考えてないだけなのか、それとも中身はもっと魅力的なんだから問題ないと考えているのか。まあどれにせよ、部屋に立ち入るのも含めて許可は下りたとみるべきだろうな。


 いや、そもそも俺の家なんだから遠慮はする必要は無いはずなんだが、気の回し過ぎかな? 何事もほどほどにしとこう。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 伝えた時間通りに石原刃物に到着、どうやら待っていてくれたらしく、店に入るなりすぐに面会することになった。いつも通り奥の鍛冶場に通される。


「おぉ、きたか安村さん。調整は終わったはずだ。重さの感覚は言うとおりに調整されているはずだから、まずはそこを試しておいてくれ」


 言われたとおりに握りを確かめる。重さの感覚は直刀に近くなっている。それぞれの武器を使い分けるというほどに違和感はない。むしろしっくりくるぐらいだ。


 誰にも当たらないように中段の構えで圧切石原……圧切を持つ。そのまま二、三回足を動かさないように振りぬく。どうやら重さにつられて体が動いてしまうということはない。手の違和感もない。重さの重心は体に合ってくれているようだ。


「バッチリですね。握りのほうも違和感がないです」

「握りと重さの調整にちょっと時間がかかりすぎて申し訳なかったな。他の職人の手が空かなかったんだ」


 まあ、この店だけで全てを仕上げてもらっているわけではない。柄の部分は他の職人に外注しているらしいし、刀身のほうで問題が無ければもっと早く終わっていたってことだな。早く作りたかったのに細かいところが気になってしまったのは仕方ないが、それでもよそにお願いするよりは早く出来たのも事実。


「さて、モノが無事に出来上がった事だし、俺の仕事はここまでだ。後はかあさんと書類のやり取りを済ませてしまってくれ」


 裕一さんが視線誘導させる先には昭江さんがこっちへおいでをして待っている。


「今回は色々と材料を提供していただいたのと前金の段階で既に支払っていただいているのもありますので、既にお会計は済ませている、ということでいいですか? 」

「はい、それでお願いします」


 ちゃんと領収書を受け取る。これで経費として計上できるな。店としては百万円で実質一本販売したことになってしまっているが、その分は材料費と裕一さんの腰の治療費を差し引いてもなんだかんだでプラスにはできたはずだ、良い取引が出来た……とは思う。


 これからも仕事を続けていくうえで問題なさそうだし、既に次の注文も入っているようだ。


「私も槍の穂先を一本注文しましょうかねえ。ダンジョニウム合金を使うと相場はどのぐらいになるんでしょうか」

「そうだな、刃先の形状や大きさや取り付けにもよるが……」


 早速自前の槍が欲しくなったらしい芽生さんがオーダーをしようとしている。商売繁盛何よりである。芽生さんが色々と話し込んでいる間に身体に馴染ませておこう。軽く素振りと動きの型……茂三さんに教えてもらった体になじませるための動きを意識して圧切を振る。


「あ、安村さん。今回は本当にお世話になりました」


 気が付くと庄司さんが店のほうからこっちへ来ていた。動きを止めて一旦挨拶する。


「今回は良い取引をありがとうございました」

「こちらこそ、親父も元気になって私も人一倍頑張らねばと気を引き締めているところです。今後も出来ればよい取引を……ということになりそうですね」


 槍の形について図面で説明をしだした芽生さんと、それを見て意見を言い始めている裕一さんの姿が見える。剣が出来るなら槍先も、ということなのだろう。俺がただ剣を、と求めることだけではなく、実戦的な部分で話を通せる芽生さんのほうが商売相手としてはやりやすいのか、かなり盛り上がっている横で、いくらぐらいかかるか計算を始める昭江さんの姿もある。


「少なくとももう一回はお世話になることになりそうかな、と」

「そうなりそうですね」


 二人肩をすくめて笑う。庄司さんも自分の勉強のためと今後店をどう展開していくかという点について思っていることがあり、それを裕一さんに話したところ、まずは自分がもう一回腰をヤるか一人前だと思える出来栄えのものを作って見せつつ、それに合わせてその考えを変化させていったらどうだと半ば採用に近い形に受け入れてもらえたらしい。


「どうですか、武器の調子は」

「そうですね、早く試し斬りを本番でしたくなってきましたよ。別に剣が血を求めてるとかそういう意味ではなく、実戦でどのぐらいまで無理をきかせられるかとかそういう意味で、です」


 早く切ってみたいな、石像。もし時間や理由があれば、亀のほうにもリベンジしたい。あの硬めの甲羅まで切断することができるようになるならかなりの短時間、高効率で倒して回ることができる。


「たしか、モンスター殴って折れたのが原因でしたね。リベンジはいつ頃になりそうですか」

「今日この後、という予定ですよ。あっちの話し合いが終わり次第早速ダンジョンに向かう予定です」

「じゃあ、その間に出来るだけ身体に慣らしてあげてください。本番でいきなり振り回して怪我するよりはいいと思います。向こうの話し合いが終わるまで自由に振り回していただいていて結構ですので」


 そう言い残すと、庄司さんは店に戻っていった。さて、もう少し体に慣らしていくか。芽生さんの話し合いが終われば声がかかるだろうし、その間はこの重さの感覚を身体に馴染ませるように色んな姿勢から、普段使う動き、良くやる姿勢からの攻撃。


 モンスターの動きを頭の中で作り上げて、その動きの通りに受け、弾き、そして切る。どのようなモンスターを相手にするかでまた違ってくるその動きを、いままで戦ってきたモンスターをイメージして攻撃する。イメトレの一種だな。いわゆる型稽古に近いようなものになるのかな。


 そのままブンブンと振り回しながら、体に馴染ませていった。向こうの商談はしばらくかかりそうだなということを考えながら。

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

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― 新着の感想 ―
ここで、部分だけの鎧(合金)を鋳潰して加工依頼はできないのか 圧切にも合金を素材に使っていたよね
> 昨夜はお楽しみでしたね」 自分で言ったーぁ > 肉抜きなら」 ピクっと反応する芽生さん > ジャム」 > 目玉焼きの汚れ」 > 意識改革が必要」 まだ食べられるタイプの汚れ > 芽生さんの若…
武器をダンジョニウムにしたら魔法との相性はどうなんだろ?雷切の切れ味も上がるのかな?
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