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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第二十一章:夏休み、あー夏休み、夏休み
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1085:実況おしゃべり新熊本第二ダンジョン

ダンジョンで潮干狩りを

Renta!等いろいろなサイトで発売中です。是非とも続刊のためにもご購入のほうよろしくお願いします。

 まず、風呂を沸かした。今日一日の疲れを癒す意味でも、この後夜は墓場で運動会するにしても身綺麗にしておくのは早い方がいい。その間に今からやる配信を見ながらダンジョンの攻略情報を仕入れていくという流れに従っていくために、ダンジョン雑誌の両方を開いて熊本第二ダンジョンの現状把握に努めることにする。


 風呂が沸き、芽生さんと一緒に入る。この後色々やることがあるので、風呂の中でヤることは最小限に、精々洗いっこぐらいにとどめておく。今はまだその時じゃないとはわかっていても、息子のほうは荒ぶっている。


「我慢できない子ですねえ」

「どうもうちの愚息が申し訳ない」

「いえいえ、それだけ私に興奮してくれているということですから、素直にうれしく受け取っておきますとも」


 エンペラを食べた影響がもう出ているのか、芽生さんの肌はすべすべだった。


「エンペラ食べてすぐ効果があるわけではないとは思うんだがすべすべだなあ」

「お肌には気を使ってますからねえ。いつまでもJKの肌を維持していたくはあります。その為の栄養、その為のビタミンC、その為のコラーゲンですよ」


 芽生さんを全身泡だらけにしてシャワーを流し終わる。次は俺が洗ってもらう番……だが、息子を丁寧に洗い始めようとする芽生さんを制止する。


「そこまでだ、それ以上は抑えが利かなくなる」

「それはそれで楽しみではあるんですが、我慢できますか? 」

「……我慢した方が気持ちいいからここは我慢する! 」


 俺は決めた。今は我慢すると。そして今夜は気持ちいいのを出すぞと。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 風呂から上がった後、パソコン周りの準備を始める。お菓子も並べてジュースも並べて、配信を見る準備は万端。後、雑誌も両方広げて情報をしっかりと頭に叩き込めるようにして、準備はできた。


「さて、俺は最初に忍び込んで捕まったやつの配信のまとめ動画みたいなやつを見たんで実は初めてではないんだが、芽生さんは? 」

「私はそれは見てないですね。なので完全にお初です。まずは熊本第二ダンジョンのライブ配信してる探索者を探すところから始めましょう」

「そうだな。もし生中継してなくても最悪アーカイブ動画が見れるだろうし……と、どうやらその心配はなさそうだぞ」


 早速検索をかけてみると、三パーティーほどの探索者がライブ配信をしながら探索をしているらしい。熊本第二ダンジョンの規模がまだよく解っていないので、この三パーティーが同時に配信しているのが多いほうなのか少ないほうなのかは判断が出来ないが、肩透かしを食らうことが無かったのは幸いだったな。


「この時間に配信するほうが珍しいのか、この時間だから配信してるのか、昼間は多いのか少ないのか、その辺も知りたいところではあるな」

「とりあえず二十四時間営業してることだけは確実ですね。さて、どれから見ていきましょう? 」

「あんまり奥から配信してるところを見ても面白くはないだろうからな。まだ一層か二層にいるあたりのパーティーが居ればいいんだが……と、彼らにしようか」


 目を付けたパーティーは絶賛ゴブリンと戦闘中。と言っても最低Cランクパーティーがここに潜っているので、戦力的には過剰戦力、あっという間に殲滅してはドロップを拾っている。早速小麦粉を落とした様子だ。動く絵で見るのは初めてだが、こっちで売っているような形のパッケージではなく、半透明の袋に謎の文字がずらずらと書かれた袋に、端っこに「1」と書かれている。


「どうやら数字だけは伝わるようにしたらしいな。隅っこにアラビア数字でがかかれてる。おそらく一キログラムの意味なんだろう。もうこのへんから文脈を察して翻訳をかけ始めている研究者も居るんだろうか」

「どうですかね。この数字って伝えたのは洋一さんの手配って考えていいんですか? 」

「俺が、というよりD部隊の山本さんかな。通信できるようにって話をしている時に、まず真っ先に数字の概念と文字を共通化させてそこだけは最低限伝わるように話し込んでいたのを覚えている。多分向こうなりのこっちへのコンタクトの方法なんだろうな」


『相変わらず何が書いてあるか解りませんが、数字で1と書かれているのでおそらく一キログラムの意味なんでしょう。小麦粉ゲットです』


<小麦粉って安いのか高いのか判断に困るよな>

<ドロップ品の中では安い方らしい。同じ階層で拾うなら米のほうが高い>


 パーティーの解説担当が注釈を入れてくれているし、視聴者からのコメントも入っている。この様子だと、米にも同じ数字が書かれているんだろうな。


『探索者の方なら通じると思いますが、この洞窟めいたマップは二層で終わりで、三層からはサバンナマップがいきなり始まります。なので三層からはいきなり違和感がバリバリ出てくると思います。ここに見に来てくれている人は大体ここのダンジョンが今までとは違うダンジョンであるということを解ってるとは思いますけど、階段も傾斜が緩くなった分岩がでかくなってます。相変わらず岩であることに違いがないあたり、ダンジョンマスターのこだわりはここにはないんだなあということが感じられますね』


<ダンジョンマスターのこだわりを感じさせるところとは一体>

<こだわるなら各階層がランダムにいろんなところが出て来るとかでも面白そうだな>


 階段は相変わらず岩らしい。まあそこでいきなり違いを見せつけられても、というところではあるので、探索者としてもでかい岩があるということは階段の可能性が高い、と判別できていいのではないだろうか。


「話題のブルーベリーはまだですかねえ」

「三層からかもしれない。まだ二層だし、一層は相変わらずスライムとスライムゼリーと魔結晶って言う話だしな」


『っと、話してる間に階段にたどり着きました。ここからが三層、サバンナマップになります。この緩やかな階段を下りていくと三層にたどり着きます』

『リヤカー移動注意してね、滑ってぶつけるとドロップ品に傷がつくかも』


 メンバーに指示が飛ぶ。どうやら撮影者がリヤカーを引いているらしく、ポーター兼撮影係ということらしい。


<やはり上り下りはそれなりに注意が必要なのか>

<リヤカー手放しちゃってドロップ品破損したパーティーの配信あったな>


 階段をゆっくり滑り降りていく様子が見える。確かにスロープ状になっており、多少重い荷物を押し引きするのでも問題ない構造にはなっている。そして途中に踊り場があり、踊り場を抜けるとマップの切り替わりが始まったようだ。


「熊本第二ダンジョンの三層、どんなんですかね」

「小西や清州みたいに起伏が無いダンジョンは見てて飽きるからなんかこう、ダイナミックな崖とかあると良いかもしれん、みたいな話はしたな。その辺を……リーンも手伝っていたはずだからうまいことずばってかんじでやってくれているといいんだが」


 階段を完全に下り切り、カメラの明るさ自動調節が利き始め、真っ白だった画面が徐々に明るさに従って暗く画面を映し始める。そこに映るのは渓谷のような切り立った崖。それがいくつも見られたり連なったりして、小さなグランドキャニオンと言った風景を見せてくれていた。


 そして他のダンジョンよりもはるかに幅広く大きく設計された岩。この岩の中を通りぬけると上層に上がることができると言われても不思議に思えることは間違いない。しかし、四方を四倍から六倍ぐらいに拡大した状態で存在する階段の大岩は、誰が見ても大岩だと証明してくれるだけの大きさはある。


『前の熊本第二ダンジョンはもっと殺風景だったんですけどね。大分改善……改善で良いのかな。サバンナではなくなりましたがそれなりに見れる景色にはなっています。崖の上のほうには上ろうとしたパーティーが居たらしいですが、そもそもドローンも一定距離以上の高さには上れなくなっていることから、崖上に行くのは無理なんだそうです』


<ゲームなら崖上にアイテムってところだろうな>

<難易度のわりに手に入る品はしょぼそう>


 解説を入れてくれながら画面には、早速ソードゴブリンとゴブリンシャーマンがぽつりぽつりと湧いている様が見て取れる。


『Dランク以下、またはゴブリンキングと戦ったことが無い人は初めて見ると思いますが、あれがゴブリンシャーマンです。一定距離まで近づくと【火魔法】での攻撃を仕掛けてきます。可能なら【索敵】スキルで距離ギリギリまで近づいて一気に走り込むと被害はほとんどなしで潜り抜けられますね。後はスキルによる攻撃も効果的です。ただし【火魔法】には耐性が有るようなのでそこだけ注意ですね』


<ボスに挑む前にここの三層に立ち寄って強さ確認とかもできそうだな>

<戦闘行動のパターンは同じらしいぞ>


 解説を挟みながら、他のパーティーメンバーは戦闘を始めている。ソードゴブリンはともかく、ゴブリンシャーマンは同時に二人以上でかかり、どっちに火魔法を打てばいいか多少迷わせる効果があるようだ。ゴブリンシャーマンとソードゴブリンの出現率は一対五ぐらいだろうか。


 パッと見た感じだが、ゴブリンシャーマンの火魔法の飛ばしてくる大きさが少し小さい気がする。こっちのゴブリンシャーマンは弱く作られてるのかな。探索者のほうも、魔法耐性を持っているかどうかはわからないが腕で弾き飛ばしたりして火魔法を巧みに回避している。


<今の回避気持ちいいな>


 戦闘が終わりゴブリンシャーマンも倒れたが、ゴブリンシャーマンは何も落とさなかった。こっちのゴブリンシャーマンは確定ドロップで魔結晶をくれるわけではないらしい。となると、くれる魔結晶の大きさも変わってそうだな。


<まだ投げ銭できないのか、もうちょっと頑張って配信して>


『投げ銭にはまだ配信時間が足りないんですよねー。私たち熊本第二ダンジョンができてから生配信始めた口なので。なのでもうちょっと頑張っていきたいと思います』


<頑張れ>

<遠方だから直接見に行けないけど家から見れるのは助かる>

<稚内でも配信可能にならねえかな>


 配信で投げ銭されたり配信収入を得るにはまだまだ潜る時間が足りないらしい。潜らなくても、ドロップ品を使った料理とかそういうもので再生数と配信時間を稼ぐという方法もあるだろうから、そっちのほうで頑張るということもできるだろう。せっかく配信見に来たんだしコメントしておこう。


<ドロップ食品でなんか料理動画とか上げたら時間稼げるんじゃね>


『料理動画っすか。確かに食べ比べとかはありかもしれないですね。気が向いたら考えてみます』


 前向きに検討させていただきます、という奴かな。まぁ期待せずにおこう。また見るとは決まってないんだ。


『気づいた人は居るかもしれませんが、ゴブリンシャーマンのドロップは他のダンジョンと違って確定ドロップもありませんし魔結晶も少し小さいものが出てきます。後はこの階層のドロップとして、ブルーベリーとエリンギが出ますね』


<ブルーベリーとエリンギか、統一感ないな>

<ブルーベリーってあんなちんまいのが出るのか>

<話によるとでかいらしいぞ>

<エリンギも立派な奴なんだろうか>


『ドロップの説明についてはまた出た時に説明しようと思います。今は次の階段への道を進みまーす』


 どうやら進捗優先らしい。まあ一回戦うたびに喋ってたらいつまでたっても進まないからな。サクサク行けるところはそれでいこうということなんだろう。


「ゴブリンシャーマンも弱体化されてるってことですよね」

「そうだな。火魔法の威力もそれほどじゃないらしいし、新しく組み替えられているってのは間違いないらしい。見どころとしてはドロップ品がどんなものかを実際に配信で見たくはある。写真では見たがいまいち大きさの感覚がつかみにくいからな」


 しばらく戦闘と移動を繰り返しているうちに、ブルーベリーが落ちてきた。潰れないようにか、少し硬めのプラスチックパックのようなものに入れられてドロップしてきた。大きさは……硬球の野球ボールぐらいあるな。インパクトは抜群だ。


『というわけでブルーベリードロップです。取り出して大きさを確認したいところですが、査定の条件がパッケージ未開封なので、パッケージのままですが、緩衝材代わりだと思われるパッケージの大きさを含めるとソフトボールぐらいの大きさになります。結構な大きさですね』


<マジででかいな、こんなでかいの見たことねえ>

<ブルーベリーにも巨大品種はあるけどここまでのものは無かったはず>

<ダンジョン産が一番でかいって事になるのかな。味はどうなんだろう? >


 ふと、配信から目をそらしてスマホを目にすると、着信記録があった。しまった、気づかなかったな。パソコンから目線を外してスマホのほうに注目する。どうやら石原刃物からの連絡だったようだ。


 着信はついさっきか。マナーモードにしておいて解除するのを忘れてた俺が悪いな。今のうちに連絡を返しておこう。

この辺書いてる時期はまだ米が値上がってなかったけど、今だと米集めに探索者が殺到しそうな雰囲気すらありますよね。


作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

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― 新着の感想 ―
> 問題ない構造にはなっている」 帰りは地獄である > 起伏が無いダンジョンは見てて飽きる」 ひどい言われようである > ダイナミックな崖」 リアカーよ > 潜る時間が足りない」 配信した時間が…
エリンギも立派…に芽生さんは反応しなかったのかな?
お米は確かに……いやそもそも流通量がこれで増えてるからそもそも起こらないのだろうね 未開封はずっとそのまま持つのでしたっけ?それならばもう備蓄米はこれでええよになりそうだなぁ
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