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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第二十一章:夏休み、あー夏休み、夏休み
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1083:久しぶり、リーン

ダンジョンで潮干狩りを

Renta!等いろいろなサイトで発売中です。是非とも続刊のためにもご購入のほうよろしくお願いします。

 五十六層に着いてリヤカーを置き、椅子と机を並べるとミルコにお供え物。コーラとミントタブレットと、そして羊羹。他にはいくつかの小袋の菓子を含ませて置いた。そしてパンパンと二拍。すると、ミルコではなく小さくてかわいいものが出現した。


「よばれてとびでてなの」


 リーンだった。呼んでもないし飛びではしたが、突然の出現に少々驚きである。尚お菓子はリーンが飛び出てきた直後に消え去った。菓子だけは要求しといて子守をこちらに押し付けてくる格好になった。まあダンジョン作りの邪魔になると言えばその通りではあるし、そういう意味ではこちらに押し付けるのは合理的な判断だと言える。


「久しぶり、リーン。今日はどうしたんだ」

「おひまだからきたの、わたし、さびしいのなの」


 どっかで聞いたようなフレーズだが、何処のアーカイブから情報を持ち出してきたのだろう。


「この子がリーンちゃんですか。初めまして、文月芽生です」


 芽生さんがリーンに抱き着きに行く。そのまま抱きかかえると、リーンは芽生さんの匂いを嗅ぎ始めた。


「くんくん……しってるにおいなの。まえにおじゃましたテントとおなじにおいなの」


 そういえばそんなこともあったな。匂いなんてよく覚えてるもんだ。


「洋一さん、この子が」

「あぁ、白馬神城の元ダンジョンマスターだ。人工生命体みたいなものらしい。同型が何人か居るらしいぞ」

「へー、そうなんですね。何かこの子に与えるお菓子は無いんですか? 」


 芽生さんから既にお菓子をせがまれているので、ミルコ用とは違う爽やかさ抑えめのミントタブレットを渡す。リーンは受け取ると早速もぐもぐし始めた。


「スッとするの。さわやかかじつのきもちよさなの」

「私にも娘が出来たらこんな感じなんですかねえ。未来を見据えてこの子で色々とチャレンジしてみますか」

「こうみえてこどもじゃないなの。なめてもらってはこまるの」


 リーンからは不評らしい。が、気にせずに抱えたままぶらぶらさせたり何とか機嫌を取ろうと試みている。


「ほーらぶらんこだぞー」

「わーい、でもかいじゅうされるつもりはないの」


 なんだかんだで楽しんでいる。探索は良いんだろうか?


「で、本当に何の用事で来たんだ? 出来ればガンテツの手伝いなんかをしてあげると俺も喜ぶんだが」

「ガンテツのところにはずっといたの。おてつだいしっかりしてたの。こうみえておしごとにかけるじょうねつはほんものなの」

「お手伝いって具体的に何してたんでしょうねえ」


 ダンジョンマスターの仕事にどういうものがあるのかは解らないので具体的にと問われると、菓子をねだったりするぐらいしか思い浮かばない。


「ガンテツいってたの。まだできてひがあさいからだんじょんのかいそうがたりないから、いそいでつくらないといけないからモンスターのはいちとか、かべつくるかどうかなんかをてきとうにまかせるといわれたの。そのとおりにずばってかんじでよろしくちゃんしておいたの」


 つまりモンスター配置や地形の作成を手伝っていたということか。他のダンジョンマスターでも権限が付与されれば他人のダンジョンを弄ることができるという重要な情報が今解った。なるほどなあ、そういうシステムも組み込まれている訳か。とすると、複数人のダンジョンマスターが集まって一つのダンジョンを作ることも可能というわけか。


「で、なの。だんじょんがひとくぎりついたのでやすむらにでんごんなの」


 どうやらミルコよろしく他のダンジョンマスターからのメッセンジャー係に今回任命されたらしい。さて、どんな内容だろうか。


「じゃあ、教えてくれるか。ガンテツに何を言われてきたんだい」

「うまいのをたのむ、いっぽんでいい。だそうなの」


 一生懸命ガンテツの声真似をしているが似ていないしそもそも声質が違うので物まねとしては落第点だが、まあかわいいのでヨシ。しかし、酒の催促だけにリーンをお使いに出すのか……まあ無事にダンジョンもオープンしてそれなりに賑わっているようだし、こっちのお願いは聞いてもらったとして、手持ちから一本持ち出して運んでもらうというのも悪くないな。


「じゃあリーン、これをガンテツに届けてもらっていいか? 」


 家で芽生さんと飲む機会があった時用と残しておいたちょっとお高いウィスキーを保管庫から取り出してリーンに託す。リーンは受け取ると、おそらくダンジョンマスターはみんな持っているのであろう保管庫らしきところに収納したのか、リーンの手元からウィスキーは消えた。


「はいたつうけたまわりたろうなの。ガンテツにとどけるの」

「割らないように気をつけてな。あとリーンは飲んじゃだめだぞ」

「おさけはおとなになってからなの。うるわしいれでぃのリーンはのまないの」


 この娘の言語機能は何処から賦与されたものなんだろうな。開発者の頭を覗いてみたくなってきた。


「そういえば、リーンちゃんはダンジョン新しく作らないの? 」


 芽生さんが真っ当な質問をする。たしかに、ガンテツもダンジョンを再稼働させたのだからリーンも同様にダンジョンを作ってもおかしくはない。


「ガンテツにじょうほうをあつめてもらって、そうごうてきにはんだんするの。リーンのでばんはもうすこしさきなの。こうごきたいなの」


 ガンテツのダンジョンを参考にしてそこから更に刷新を重ねて新ダンジョン、という流れになりそうだな。


「もし作る時になったらぜひ相談してくれ。何処に作るかも含めてこっちでも話し合いの場が必要になる」

「かしこまり、なの。じゃあやすむらとおねえちゃんまたねなの」


 そういうとリーンは転移していった。一方的に現れて酒とミントタブレットを要求して帰って行っただけか。いや、それなりに大事な情報は落として行ってくれたからまあいいか。忘れないうちにメモっておいてダンジョンの仕組みについて一つ解った事として残しておこう。


「どうでもいいことだが、俺は呼び捨てて芽生さんはおねえちゃんなのは納得できないな。この場合ちゃんと文月と呼ぶのが正しいんじゃないだろうか」

「細かいことは良いじゃないですか。ちゃんと個人名で認識されてるってことですよ。私はまだまだ信頼度が足りないからただのおねえちゃんなんですよきっと。何回か会う間にその内おねえちゃんよびから文月呼びに変わるんですよ。それまで頑張りましょう」


 何を頑張るかまでは解らないが、とりあえず時間を消費した。これは五十七層にたどり着いたらすぐに昼食だな。


「一つイベントをこなしたことで少し時間がかかったが、気を取り直していつも通り探索に行くか。今日も指輪一つ拾って帰ろう」


 気を取り直して五十七層に向かう。しばらくはリーンはいろんなダンジョンのメッセンジャー役としてお仕事を続ける立場になるのか。他のダンジョンで目撃されてたりしないだろうか。後で目撃談なんかを探してみるのも面白いだろう。


 いつもの五十七層の回廊へ着くと、早速昼食。昼食前に五十七層に入ってすぐポーションが出たため、今日のノルマは何とかこなせそうである。もしかしたらリーンに出会ったおかげで少し運気が上昇したのかもしれない。


 今日の昼食は中華風野菜炒め。ご飯が進むようにできているとは思うし、栄養バランスはそれなりに考えてある。足りないのは多分ビタミンCぐらいだろう。


「今日のも美味しいですね。中華風なのもいいです。むしろ中華風を不味く作るのが難しいのかもしれませんが」

「今回は中華風調味料と鶏だしでざっくり味をつけてみた。ちょっと水気が多いのは飛ばしたりなかったかな。もうちょっと炒めればよかったか」

「これはこれで。ご飯にワンクッションする楽しみがありますから悪くないと思います」


 汁が落ちないように茶碗を皿によせながら野菜炒めを摘まみ上げ、ご飯にワンクッションすると口の中へ。もにゅもにゅと幸せそうに食べているので味のほうはお世辞なく問題ないらしい。ふむ、俺の中でも割といい出来栄えだとは思っているが、まだまだ手元でいくらか解決するべき工程があるように見られる。


 まずは汁気の多さだ、これは野菜から出る水分の計算量を間違えた結果少しベチャッとなってしまっている。これは次回鶏だしの粉末スープを溶く水分を少なめにするか、炒めるときに一緒に入れてしまうことで解決できる気がする。


 後ははんぺん。もう少し炒めて焦げ目っぽいものを付けたほうが舌に感じる触感を演出できたのではないか。後は白菜、こいつが原因で水分量を見誤った可能性がある。次回使うときはもうちょっと慎重にやろう。


 課題は今のところこんなものか。これなら野菜炒めと言わずどんぶりにしてあんかけを作って中華丼とするのも悪くなかったな。それなら多めの水分も誤魔化せた。うむ、次回に活かそう。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 午後からは乱入者が再び現れるでもなく、問題なく探索を進めることが出来た。むしろ物理耐性の指輪を二つ拾えたことで逆に美味しい思いをしすぎてると感じるぐらいだ。


 これが一個一億だと仮定すると今日の収入は最低二億。皮算用ではあるが中々に美味しいドロップ品だと言える。やはり指輪一つ拾えるかどうかを基準にするのは指標としてわかりやすいようだ。


 これで手持ちの耐性の指輪は魔法耐性が七、物理耐性が六。後はダンジョン庁に預けてある分が一つずつだ。計算上はこれを全部身に着ければ三重耐性、芽生さんと二人で分けるにしても物理耐性魔法耐性の二重化に値することになる。


 ポーションも無事に九個拾えたのでほくほく顔で帰還することができる。査定は……リーンの乱入があった分だけちょっとだけ少ないかもしれないが、ポーション九本で七千万ほどは確定しているので細かいことは言いっこなしにしよう。今日もしっかり稼げたということで。


 帰りのエレベーターで月刊探索ライフの熊本第二ダンジョンの特集の続きを読む。探索者でもある筆者からすると、今までのドロップと変化があった分だけドロップの中身がまだ頭に入らなくて本当に稼げているのかどうか悩ましい面があるというのと、これから深い階層に潜っていく間に本当に高価買取されるような食品が出てくるのかどうかが解らない点を挙げている。


 我々を驚かせるような内容のものが出て来るかどうかは怪しい。そして、ダンジョンマスターはその辺をどう考えてこのようなダンジョンを作ったのか、そしてダンジョンマスターとのコンタクトの方法はあるのか、などの疑問点を残して記事は終了していた。


 たしかに高級品もそれなりに混ぜ込むような形でプレゼンはしたが、それがただ大きい、ただ珍しい、ただ薫り高いだけで本当にダンジョン産食品として世間に広まってくれるかどうかなどは他の探索者からもでているそうだ。その代わり、季節外れものでも問題なくドロップするであろうから季節の果物や木の実などを入手するにはちょうどいいのかもしれないとも書かれている。


 ダンジョン食品の過去の例を挙げるなら、パッケージングされている食品は湿気やカビなどの心配がない点から、備蓄米や備蓄食料としての価値が見いだせるのかどうかが意見の分かれ目であろうな。


 七層に着いて茂君を回収、戻ってきて査定カウンターまで今日は一直線だ。今日のお賃金、一億七百三十万円。今日もキリが良くて助かる。


 振り込みを済ませて着替え終わった芽生さんにレシートを渡し、そのまま帰ることにする。さて夕食は何にしようかな。後は夕食もそうだが、熊本第二ダンジョンの情報が少しなりとも集まったところではあるし、ちょっと帰ったら調べものしようかしら。


「家に帰ったらちょっと熊本第二ダンジョンについて調べてみるか。何か面白い出来事や内容が聞けるかもしれないし、スレッドも多分盛り上がっているだろうし、何なら生中継を見れるかもしれない」

「あ、それいいですね、ついていきます。ついでにお泊りしていきます。今日は肉の枕と肉の布団で寝ます」


 芽生さんは色々と乗り気のようだ。まあ夏休みだしお泊りイベントぐらいはあってもおかしくはないし、そもそも付き合っているのだからお泊りぐらいはまあ、なあ?


「だとすると夕食考えないとな。何処か食べに行く? 」

「そうですねえ……匂うものは避けたいですからガッツリその後の体力がつくものがいいですね」

「ステーキを喰ったからその夜頑張れるとかは迷信らしいぞ。普段通りの食事をする方が……よし、帰るのは中止して中華屋で飯食っていくか。ついでに爺さんにエンペラ預けて一品何か作ってもらおうか」

「それも良いですね、是非そうしましょう。お肌の調子も整いますしいい夢も見られそうです」

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

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― 新着の感想 ―
エンペラがその夜に効くことが判明したら 買取価格爆上がりの可能性もある
野菜炒めは野菜から出る水分に野菜の旨味が出てるので、少な目の水溶き片栗粉でとろみを付けて、野菜にまとわせる感じにすると良いですよ。
なんかリーンの可愛さがアップしている。
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