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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第二十一章:夏休み、あー夏休み、夏休み
1082/1207

1082:月刊探索ライフ最新号

ダンジョンで潮干狩りを

Renta!等いろいろなサイトで発売中です。是非とも続刊のためにもご購入のほうよろしくお願いします。

 いつもより冷房が静かだ。これは確実に外の朝の気温が低いことを明確に教えてくれている。今日も朝から暑かったらフル回転しているところであろう。夏の終わりを少しずつ認識しつつも、まだ手放せないなという気持ちを新たにする。


 いっそのこと仏壇みたいなものを作って羽根をそなえてそこに毎日念仏を上げようかな。そのぐらい毎日の出来事になりつつある毎朝のありがとうと共に、朝食を作る準備を始める。


 今日の朝食は昨日の残りのカレー。結局食べきれなかったので、トースト二枚にカレーというちょっと変則的な食事になった。サラダは……今日はいいや。栄養を考えていつも通り目玉焼きは焼く。その間にカレーをレンジで温めたら食事開始。昼食夕食と使いまわし続けてきたので実質四日目ぐらいのカレーだ。水分はほとんど抜けきってしまいドロドロになってしまっている。限界は二食までかな、等と考えつつ食パンにたっぷりと乗せて食べる。


 トースト二枚でたっぷりとカレーを味わった後、しっかりと洗い物をして朝食終了、今日の昼食は……ごった炒め。今日はちょっと多めに作ろう。


 鶏ガラスープと中華風調味料を下味のメインにして、もやし、キャベツ、白菜、人参、ピーマン、キノコ。肉の代わりにちくわ、はんぺんを入れてたんぱく質もしっかり取れるようにしておこう。細かいことを気にせずに硬いものから適当に炒めていく。水分が程よく飛んだら最後に溶き卵を全体に振りかけていり卵風にして炒め切って完成だ。炒り卵はこの際ふわふわでなくていい。


 野菜炒め一品で良いだろうか……ご飯は炊いてるし質量的には問題はないはずだ。米が炊けるまでしばらく暇になったのでニュースとじゃんけんと占いで時間を潰す。特に気になるニュースは無かったので割愛だな。


 そういえば、新熊本第二ダンジョンの話はあまり聞かないな。これは能動的に情報を仕入れる必要がありそうだ。出かける前にちょっと話を仕入れる……ではうっかり出ていく時間を忘れそうだからな。家に帰ってきてからゆっくり情報を引き出すとしよう。メモメモ。


 炊飯が終わったところでいつも通り食事の準備はできた。ミルコに渡す用の羊羹も入っている。一本丸っと入っているのはインパクトも充分だろう。切ってチョイ出ししていくという手段も取れるが、お供え物としての格は一本丸ごとのほうがそれっぽさは上だろう。多分端っこから丸かじりしていくんだろうな。光景を想像するとほほえましい。


 柄、ヨシ!

 直刀、ヨシ!

 ヘルメット、ヨシ!

 スーツ、ヨシ!

 安全靴、ヨシ!

 手袋、ヨシ!

 飯の準備、ヨシ!

 嗜好品、ヨシ!

 羊羹、ヨシ!

 保管庫の中身……ヨシ!

 その他いろいろ、ヨシ!


 指さし確認は大事である。今日もしっかり稼いで税金を納めるために頑張ることにしよう。指輪も溜まりつつあるし、いくらかまとめて要求されても対応できるようにはしておきたい。ただし値引きは絶対しないぞ、こっちは体張って探索者やってるんだ。相手が例えば真中長官であってもそこはちゃんと線引きをして対応しないとな。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 一足先にダンジョンにたどり着いていた芽生さんは既に着替えてスタンバっていた。俺も一本早く来れば更にもうちょっと稼げるところだったかな。


「おはよう、早いね」

「休みのおかげで羽も伸ばせましたし、ついでにテーラー橘に行って再採寸とスーツ二着、お願いしてきました。着まわして服の寿命を長くしていきます」


 ふんぞり返って胸を張る芽生さん。ちゃんと経済を回してて偉い。


「それで五年ぐらい持てばまあ充分に、文字通り擦り切れるまで使い切れるかもしれんな」


 入ダン手続きを終えて一層から七層までの短い間に休みの間の行動の確認をする。


「俺は納品に行ってちょっと料理のレシピを増やしたぐらいか。こっちもおかげでゆっくり休めたと思うよ。ダンジョンの情報も仕入れたところだし、面白いニュースのネタも仕入れた」

「じゃあ行きはその話で盛り上がれそうですねえ。ちなみに増やした料理のレシピは何ですか」

「鍋だな。後はこの間食べた丼ものと爆弾おにぎりあたりをダンジョンレシピに追加していこうと思う。中身が何に当たるかは運だな」


 七層に着いたのでいつも通り茂君ダッシュを行い、ササっと帰ってきていつも通り五十六層へ向かう。


「そういえば、小西ダンジョンでも三十五層まで潜って帰ってくることが出来た探索者が出始めたらしいですよ」

「他のダンジョンらしきところでそういう報告は上がってきていたな。やっぱり最初はダンジョンヴィーゼルにせよワイバーンにせよ中々にてこずっていたらしいことは解ったよ」

「私たちが去年通った道ですね。後進が今それを味わっていると思うと感慨深いものがあります」


 話しつつ、そういえば最新号を買っていたな、と探索・オブ・ザ・イヤーと月刊探索ライフを取り出す。二冊ともトップ記事は熊本第二ダンジョン再起動の見出しが出ている。


「どっちから読む? 」

「そうですねえ、じゃあ探索ライフのほうで」


 芽生さんが月刊探索ライフを取り上げ、早速特集ページを開く。二人横に顔をそろえて読み出す。


 どうやら記事の期日に間に合わせるために急いで書き上げたらしく、八月一日の解禁日には雑誌だけでなく色んな業界の色んな人物が顔をそろえていたらしい。同業者のライターはもちろん、個人でダンジョン関連の情報を発信しているブロガーやまとめサイト管理人などお互い顔見知りが数多く居たことが記事から読み取れる。


 ただ、その場に熊本第二ダンジョンの踏破パーティーである緒方パーティーの姿は無かったらしい。再び挑戦するのか、他のダンジョンに潜っていてたまたま居合わせられなかったのか、講演など色んな方面に仕事が回っているのでそのせいではっきり決められた解禁日には予定が合わなかったのではないか、と記者は分析している。


 新しい熊本第二ダンジョンは八月一日の午前九時にダンジョン解禁時間を設け、諸注意とダンジョン内のルールが徹底されていたらしく、物見遊山で来ている探索者に対しても色々と注意事項を通達していた。


 ・今までと違う構造のダンジョンであることを理由に、Cランク以上でないとダンジョン入場を認めないこと。

 ・ダンジョンの中では通信機器が自由に扱えること、配信行為をする場合には周りのプライバシーに十分留意すること。

 ・ダンジョン内のドロップ品は食品ばかりであり、持ち帰る際に破損するとギルドでは査定にかけられない可能性があるため注意すること。

 ・人型モンスターばかりであり、浅い階層でも今までには登場しなかったモンスターが居るため十分注意すること。

 ・階段は今までよりなだらかでスロープ状になっているので、リヤカーやネコ車、クローラーの類の持ち込みが階層を跨いで可能であること。

 ・一層にある最初から見えているエレベーターは、セーフエリアである七層に到着した時点で扱えるようになる。また、以前や他のダンジョンと同じ燃料費が必要であること。


 ざっと確認するだけでこれだけの変更点がある。他にも変更した部分はいくつかあるだろうし、新規モンスターも配置したと言っていた。そのあたりが今回の記事には載っている。


 モンスターに関しては、記事に載っている範囲では、だがいくつか解ったこともある。


 どうやら盾を持ったゴブリンや、ゴブリンシャーマンが普通のモンスターとして登場するようになっているらしい。階層の浅い所でゴブリンシャーマンは中々厳しいだろうが、ボス戦みたいにまとめて襲ってこないだけ、魔法を連射されない分まだまともに戦えるのだろうな。


 それから、他のダンジョンに出てこないモンスターとしてコボルド、犬系の人型モンスターが出て来るらしい。コボルトはあくまで現状仮名称であり、国際ダンジョン機構に働きかけて正式名称を登録する必要があるそうだが、そもそも現状この熊本第二ダンジョンにしか生息していないモンスターであり、日本の名付けが優先される可能性は非常に高い。


 多分あっちの世界には居たんだろうな。いくら職人気質のガンテツが作ったダンジョンとはいえ、完全に一からこちらの創作を読み直して作ることは難しいだろうし、サンプルとしての生物は向こうに居たんだろうなあと考える。


 他にもモンスターはいるが、初日にいきなり七層を目指すのは難しいとの事で、筆者は三層までの探索で切り上げたらしい。ドロップ品としては米、小麦粉が謎の文字で書かれた袋にパッケージされている状態でドロップされる。ここは前にも話で聞いたことがあるな。


 それ以外には大きさ様々なブルーベリーやキノコなんかを収集することに成功したようだ。どうやらこのブルーベリーは大きな粒だけなら実際にも存在する種類らしく、五百円玉ほどの大きさの種類は海外で生産されているものがあるので、それを参考にしたのか? と読者に問いかけをしている。


 実際には俺が見せたブルーベリーのでかい粒なのでDNA鑑定なんかをするとこのDNA系統の品種ではでかくすることはできないのでダンジョンが適当なブルーベリーを用意してそれを巨大化させて持たせているのではないか、等の憶測が飛び交うことになるだろう。


 ブルーベリーという破損しやすいドロップ品が出る以上、運搬には注意をしながら行うことが必須だがその点で見るとリヤカーやネコ車を比較的楽にダンジョン内を行き来できるように設計され直したスロープ状の階段は非常に好評であり、他の探索者のインタビューによると他のダンジョンでもこのような階段の設計であればドロップ品が重すぎて泣く泣く諦めるという事態も少なく出来るのではないか、という話を聞くことが出来たようだ。


 どうやらここのドロップ品は重さで査定をかけることになったようだが、米と小麦粉に関しては一つ二キログラムと少々普通の探索には困る重さをしている。浅い階層のメインである米や小麦粉に関しては既に食用としての基準を十分に満たしているし、味のほうも飛びぬけて美味いというほどではないが、かなりの性能をしているらしく、既にそれらをダンジョン庁から購入して早速商品づくりに勤しんでいる地元の食品メーカーがあるらしい。


 ダンジョン米……美味さのほどはいかほどかというのは非常に気になる。普段の米と比べてどのぐらい違うのか気になるので自分で取りに行くか、通販しているサイトが有ったら取り寄せてみるのも悪くないな。


「ダンジョン米の味が気になりますね」


 芽生さんもお米が気になるらしい。


「何に合うんだろう。キノコも出ることだし、鍋物を食べるときに合いそうな米かもしれん。シメの雑炊にはいい感じかもしれないな」

「手に入れるなら取りに行くんですか? それとも通販サイトみたいなものを探してみます? 」


 さすがにまだ通販を開始しているところに関しての情報は集まっていないらしい。地元なら安く手に入ると、しばらくダンジョン産食品の買い付けや応募に関しては時間を置くことになりそうだ。


「探索者だからドロップ品は自分の手でと言いたいところだが、効率が悪すぎる。現地の探索者にその辺は任せてこっちは遠距離から通販で購入して、いろんなところに金が落ちるようにしたほうが良いとは思ってる。小麦粉はどうだろうな。その内この手の雑誌や個人ブロガーが色んな研究や検証をして、この米は何に合う、この小麦粉はパンにするよりももっといい食べ方がある、みたいなことを広めていってくれるほうが良いな。それを後追いで楽しむことにするよ。自分で楽しみたいのなら、そもそもダンジョンを元の場所に作ってもらわずに、多分小西ダンジョンのすぐ隣に入口を新たに作ってもらってたと思うね」

「ダンジョンのすぐ横にダンジョンですか。新しいダンジョンがすぐ近くに出来上がるのは何らかの意図があっての行動ということになりますし、ダンジョン庁も詳細は知っているでしょうから洋一さんの仕業だと断定されますね。そしてついでに両ダンジョンともに踏破してくるように言われるでしょうね」


 狭い小西ダンジョン周辺にこれ以上ダンジョンが増えても通うだけの足が無い。だんだん周囲が発展してきてるとはいえ、駐車場が少ないのは相変わらずなのでここにダンジョンが出来ても不都合が多くなるだけだろう。やはりバスが生命線になるか。


 しかし、熊本第二ダンジョンが復活して地元の探索者はまた足をあちらに戻すのだろうか。一からのダンジョン探索を楽しいと思えるか、新しいモンスターとの出会いを楽しみに出来るのか、そしてちゃんと儲けて帰ることが出来るのか。特に儲かるかどうかのラインは重要だな。


 いくら新しくて珍しいものがドロップするかと言っても、それを金にするなり出来なければ意味がない。そのあたりの上手い調整はガンテツのさじ加減で変わってしまうことになる。あっちはあっちでちゃんとダンジョンマスターとしての交渉が出来ているのかも含めて、もうしばらくは様子見の形になるだろう。

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

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― 新着の感想 ―
何年か後にここを通った人が「そんな事もあったね」と思うネタ仕込んでおこう。 今はやりの備蓄米、全てダンジョン米に置き換えれたら、冷蔵倉庫の借り上げが不要になり財務省が喜びそうだ(笑)20万トン/年とし…
おいおい、そんなこと言ったらおじさんを観測している暇なダンジョンマスターが隣に作っちゃうかもしれないぞぉ
逆にダンジョンが集まる乗らばマンションとかずらりとならぶようになって混雑はするが人口急上昇していい場所になるかもしれんな それこそ現在の鉱山として……
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