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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第二十一章:夏休み、あー夏休み、夏休み
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1081:おやすみ 2/2

ダンジョンで潮干狩りを

Renta!等いろいろなサイトで発売中です。是非とも続刊のためにもご購入のほうよろしくお願いします。

マツさんのゲル

https://ncode.syosetu.com/n7294kn/

帰還勇者の内事六課異能録

https://ncode.syosetu.com/n5185ko/


こちらもよろしくお願いします。

 仮眠をとって午後二時。中途半端な時間に目が覚める。さて、午後からどうしようかな、と保管庫を覗く。そういえばそろそろいつもの雑誌の新刊が出ている時期ではないか。早速近所のコンビニに買い物に行き、探索・オブ・ザ・イヤーと月刊探索ライフの最新号を入手。ついでにミルコのおやつも調達して荷物を抱えて家に帰る。


 雑誌を読むのはダンジョンの中での休憩の時にしておくか。早ければ明日読むのだし、それまでは保管庫の中で寝かせておこう。


 保管庫の整理ついでに、保管庫の中にあるダーククロウの羽根とスノーオウルの羽根も納品に出してしまおうかな。今日は……うん、店はやってる日だ、休日ではない。こんな中途半端な時間だが、羽根の納品と言えば多分対応してくれるだろう。


 早速ウォッシュしたばかりのピカピカの車に羽根をそれぞれ乗せると布団の山本に連絡。今から納品しても大丈夫かどうかを確認する。大丈夫との返事をもらったので早速納品に出かける。


 車でいつも通り三十分。布団の山本に到着し、店に入る。時間を見越していたのか、ちょうどデスクで何やらパソコンに入力をしていた山本店長と目が合ったのでお互いにお辞儀。そのまま山本店長は奥に声をかけて数人呼んできた。


 車から順番に羽根を受け渡し、ダーククロウ、スノーオウルとそれぞれ指示しながら持って行ってもらう。納品が終わると納品書を取り出し、重さと品質が決まるまでしばし待つ。羽根の受け渡しの間に用意してくれてあったらしい麦茶と羊羹を頂きながら結果が帰ってくるのを待つ。いつもの羊羹は美味しい。店も教えてもらっているので、気に入ったらいつでも買って帰れる。


 今日あたり良い時間だし寄って買って帰って、ミルコへのおやつに一本供えてみるか。いや、自分用も含めて二本だな。


 計算と計量、品質チェックが終わったらしく、ちょうど羊羹を美味しく食べ終えたタイミングで山本店長が戻ってくる。


「今日は中々ごゆっくりな時間に来られましたね。今日の探索はお休みの日か何かですか」

「相棒に週一ぐらいで休まないとまた疲労で倒れそうになるからゆっくり休めと言われましてね。午前中は家の掃除したりボーっとテレビ見てたり車洗ったりしてたんですが、午後からすることが無いので、せっかくなら今のうちに納品も済ませてしまおうかと思いまして」

「道理でお車がピカピカだったわけですか。充分休みを満喫されているようで何よりです。今回の品質とお値段ですが、前回と同じでよろしいですか? 」


 山本店長が提示してきた金額は前回と同じ、ダーククロウが百グラム三千六百円、スノーオウルが百グラム四万円。問題はない、これで妥結してしまおう。


「問題ありません、そちら様の提示された金額で結構です」

「それは何よりです。そろそろ夏布団も終わり気味になってきて、今後は冬布団の発注に対応する流れになってきますので、その時はまたよろしくお願いします」


 丁寧に頭を下げられるので、こっちも下げ返す。ここでお互い金額についてもめることなくいい付き合いが出来ているのは割とうれしい話だったりする。それだけ儲かっているということなんだろうな。お互いに納得できるところで上手くやっていくことが商売ならばこの山本店長はかなりの商売上手だと言い切ることが出来る。


 書類をそろえて山本店長に渡し、サインをもらう。この書類は金銭授受の大事な証拠なので、後でクリアブックに挟んで保管庫に仕舞っておくべき書類だ、無くさないようにしないとな。


「そういえば、新しい階層に挑める探索者が増えたと聞きました。そうなると、スノーオウルの取引量も増えることになるんですかね? 」


 大事な所なのか、山本店長のほうから話を切り出された。


「そうなりますね。早ければ来週か再来週あたりから市場に流れてくることになると思います。ただ品質のほうは一概には言えないでしょうね。羽根だけを目的で採取する……となるとそれなりの装備が必要になりますし、ギルドが品質良く扱うか、それがそのまま流れて来るかはまた別の話になるでしょうからなかなか難しい所です」

「その点で言えば安村様の納品してくださる品物は常に品質が良い状態で持ってこられますので、安心してお任せできると言えます。この状態で品物が回ってくる場合どのぐらいの金額で手に入れることが出来るのか……については後日相談という形でもよろしいでしょうか? 」


 ギルドと商社を経由して回ってくる品物の品質によっては、今の金額より安く入ってくる可能性もあるというわけか。確かに、元値三万円とはいえ四万円を超す金額で手に入るようになるのか、それとももっと安く手に入るようになるのかはまだ判断がつけられない状態だ。場合によっては値引き交渉に入るかもしれない、ということだろう。


「その時はまた相談しましょう。こちらとしてもギルドの査定価格よりも高く買い取っていただいてますし、市場価格との乖離がないようにしていきたいとは思いますので是非素直な金額を聞かせていただけると助かります」


 お互いに頷いて、納得できるところを探しましょうと同意を得たところで失礼することにする。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 帰り道に羊羹を買いに和菓子屋に寄り、棒で二本買う。そこそこのお値段はするが今の俺には出せない金額じゃない。むしろ店ごと買えそうな気分だ。しかし下手な資本投入によって品質への影響が出るようなことは避けないといけないからな。ここはお客さんに徹しよう。


 家に着いてさっそくようかんを六分の一ほど切り、残りは冷蔵庫で冷えていてもらう。ミルコに渡す分も一緒に明日の朝まで冷えていてもらおう。


 お茶を入れて羊羹を味わいながらのほほんタイムを過ごす。こういう休日の在り方も悪くない。しばし甘味の味わいとお茶の渋さの対比を楽しみながら時間をゆっくり過ごす。頭に糖分が回って色々と頭が回転し始めた。夕食は決まっているが、何か一品料理を作って試供品ということで芽生さんの反応を見るものを作ってみようかな。


 さて、まずはジャンルからだ。手持ちの料理は肉料理が多い。野菜炒め的な簡単な料理はさておき、野菜たっぷりの回鍋肉よりもお野菜をメインで押していくレシピが欲しい。


 ごった煮の中身を野菜メインで押していくというのも有りだ。肉は今まで通り入れていくとして、野菜を増やして旨味をたっぷり吸い込ませた形でモリモリ食べる形にしてもいいな。


 後は……色々レシピを探して野菜の多そうな料理を探す。キャベツと人参と鶏ガラで簡単に作れるたっぷり野菜炒め、これを一度作ってみるか。リストに追加してみよう。


 他にも何品か前に目を付けていたレシピについて、色々手順の確認と料理に使える時間を考え、家で作っていけるかどうかを確認しながら昼食として持っていけるかどうか、夕食としてはどうか。時間と事前準備に使える時間なんかを確認して、数品目ピックアップしていく。


 何でも手早く作れればいいってものではないからな。美味しいのはもちろんだが、未完成で持っていくのもためらわれるし、現地で温めて完了、という形に出来るのも良いな。


 たとえばさっきのたっぷり野菜炒め、乾燥ラーメンを最後に潜り込ませてちゃんぽん麺風にすることもできる。それも中々悪くなさそうだ。試しに一人分、作ってみるか。


 人参とキャベツをざく切り風味で薄く切り、短時間煮込めば食べられるようにすると、早速メインとなる豚肉を入れてさっと炒めるとそこに鶏ガラスープと酒で味付けして塩コショウで味を調える。出来上がったところでつまみ食い。……悪くないな。


 これはもやしやら白菜やらを加えることで立派な鍋に出来るな。鍋の素で煮こめば立派な鍋だ。こうなると豆腐も入れたいな。鍋物。よし、鍋物としてローテーションリストに加えておこう。


 夕食はこの作りかけの鍋とカレーの残りか。残すなら鍋よりカレーだから鍋を食して余裕があったらカレーを食べる、そういう流れにしておこう。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 ニュースを見ていると、食品偽装のニュースが流れてきた。ダンジョン産の果物だと表示していた食品が、実はダンジョン成分が含まれていないことが判明した、とのこと。同時に複数の会社複数の食品で判明しており、リストには例のトレントの実ジャムも含まれていた。


 やはり熱してジャムにすると風味と味気どころかすべてが吹き飛んでただの砂糖煮になってしまっていたので、メロンとリンゴの芳香とメロンの実を加えて誤魔化していたらしい。


 やはり、高熱下、というより熱することでトレントの実は黒い粒子に昇華してしまうんだな。と、すると現在他の企業で製品化に成功しているものはきちんと効能があり、食べて確認してファイヤーするところまで確認できていることになる。消費者庁は偽ダンジョン食品に注意するよう警戒を求めているらしい。


 ますます手元にあるドライフルーツが貴重になったな、保管庫には正直使い終わるまで何年かかるんだろうと思われる量が蓄えられているが、これも何時をめどに消費するか、なんかも決まっていない。ここから焼いたら無くなってしまうだろうから、アイスクリームに添えるぐらいしかパッとは思い浮かばない。アイスクリームを食べて熱くなれるのは唐辛子入りのものとこれぐらいだろう。


「トレントの実はね、食べるとこう、カーッと全身が熱くなるんですよ。その後しばらくすると、スーッと涼しく、まるで全身にハッカ油入りのアルコールをかけたみたいに清涼感が通り抜けるんです。ですから、その体感が無いトレントの実製品というのは、完全に効力が失われているかそもそも含まれていないかのどちらかだと判断することが出来るんですね。今回の場合、例えばジャムにする過程で砂糖と一緒に熱しますから、するとトレントの実ってのは不思議で、熱を通すと消えてなくなってしまうんですよ。私がトレントの実を手に入れた時も焼きリンゴみたいにして食べようとして、焼いた先から消えてしまっていったのをよく覚えてます。なのでね、フリーズドライであるとか、低温低湿度の環境下で長時間かけて加工するようなそういった一手間がかかることになりコストも高くなります。最近少し安くなったとはいえ、ダンジョン産食品でもそこそこのお値段がしますのでね、安いトレントの実の加工品を見かけたら含有率を調べてみるとか、そういった工夫が必要になってくると思います」


 弦間さんが世間の役に立っているところを見るのは初めてじゃないだろうか。俺が言いそうなことを代わりに全部言ってくれた。これは貴重な瞬間だ、今日が休みでちょっとお得な気分になった。同時に、弦間さんはBランク探索者でもあるんだな、ということが解った瞬間でもある。


「不思議な反応ですね。相当効くんですか? そのトレントの実は」

「相当に効きますね。仕事上がりのビールと比べても遜色無いぐらいです。しかもこっちは未成年でも食べられますからね。受験勉強の疲れをとるというのでも良いですし、部活の試合のハーフタイムに一つまみするだけでも効果は抜群に得られると思います。まだまだ需要を切り開ける部類のドロップ品だと思いますよ」

「なるほど……まだまだダンジョンも知らないことだらけですね。次です。衆議院臨時国会は個人事業主の適用範囲についての法案を賛成多数で可決、参議院に送られることになりました。今臨時国会中に可決、来年より施行される模様です。本法案は会期中に可決される見込みではありましたが……」


 次のニュースは探索者も個人事業主として完全に認めるので個人事業税払ってね、という法案の話だろう。今期中に絶対通すという話だったようだし、臨時国会で可決されるなら今年分から個人事業税を払わなくてはいけないんだろう。副業収入計算機によると、今の収入から更に五%ほど税金として納めなくてはいけないらしい。つまり年間十日ぐらいはタダ働き、ということになるのかな。


 今の収入でざっくり言うと、六億が税金。中々世知辛い話になってきたな。まあ、これも俺がうっかりほかのギルドマスターや真中長官の居る前で無職です、と発言してしまったのが元と言えばそうだ。あそこでああ言わなかったらもう二、三年はお目こぼしに与れたのかもしれない。まあ過ぎたことだ、今更悩んでも法案は廃案にならないだろうし、ここまで稼いだ金額を誤魔化せるわけでもない。


 さて、そろそろいい時間。明日も晴れて暑いらしいし、しっかり食って寝て明日の調子を取り戻そう。明日からはまた、五十九層だ。

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

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― 新着の感想 ―
会計士のところにはさっぱり向かっていないよね。 領収書だけでも送っているのかな あと 羊羹は 竿が単位 棒じゃない
スノーオウルはパック詰めだから品質変わらないんじゃないですか? その前提が崩れるといろいろややこしすぎることになりそうですが。肉とか。 なぜか折れたりしない真空パックのようなものだと想像してました
> いつもの羊羹は美味しい」 タダの羊羹うめぇ > 頭が回転し始めた」 もう一日も終わりである > 乾燥ラーメンを最後に潜り込ませてちゃんぽん麺風」 見栄えよ > 豚肉」 すっと出てくる一般肉 …
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