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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第二章:出来ればおじさんは目立ちたくない

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108:ただいま。

 



 朝だ。昨日の夕食の残りをトーストしたパンにはさむ。肉野菜炒めパンだ。焼きそばパンに比べたらバランスは良いと思う。後は野菜ジュースと牛乳を混ぜたものを飲んでおく。意外といける。


 今日からまた小西に通おう。保管庫に入れっぱなしだったゴミをようやく処分すると、必要なものを詰めていく。キャンプ用品は一晩陰干ししておいたおかげで乾ききっている。これはバッグの中ないし外にちゃんと格納しておく。


 今日はどうしようかな。人が多そうなら四層五層を回るか、七層で一泊するか選択する自由が俺にはある。別に期限があるわけではないのでその日の気分次第で決めていいんだ。そうなると、逆に不便に感じてしまうのが俺の性分であり、どうしよっかなーっと決めかねてもう三十分ぐらい経っていた。


 とりあえずダンジョンへ行くか。そして混み具合を見て判断しよう。そうしよう。まず、そうすることに俺は決めた。


 ダンジョンへ行くことに違いはない、という事に決したところで、冷蔵庫から五百ミリリットルの冷えたミネラルウォーターとコーラを三本ずつ取り出し、アイスバッグに詰めておく。保管庫というバッグの中に入れたバッグはどうなるのか。


 アイスバッグ(水五百ミリリットルx三、コーラ五百ミリリットルx三) x一


 アイスバッグはアイスバッグとして認識してくれた。良い判断だぞ保管庫。ぜひそのまま素直に育っていってくれ。後は念のため、食材も保管庫に入れキャンプ用品をバッグに積んでいく。これで向こうで悩む余地が出来る。やっぱり一泊コースにすればよかったと悔やむよりは、使わなくて済んだで済ませたほうがいい。


 念のため、宿泊用に枕を持っていこう。仮眠時よく眠れるのは大事だ。小西なら枕持って来たって誰も不思議がることは無いだろう。


 何時ものツナギと熊手、そしてグラディウスと小盾を抱え、何時ものダンジョンスタイルにチェンジすると家を出る。さぁ、小西が俺を待っているぞ。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 小西ダンジョンへ向かう電車を降り、バスを使う。とりあえず自動車通勤が出来ることは解ったが、何時も人目につかずに収納・取り出しが出来るわけではない。それに、定期代がまだ何十日分も残っている。定期が切れたら考えよう。


 しかし、同じ方向へ向かう人が多い。明らかに探索者ですという格好の人が俺を含めて四、五人はいる。これは現地についたら十五人ぐらいはいそうだな。大賑わいで結構なことだ。


 そのまま一緒にバスを降り、同じ方向へ向かう。そして小西ダンジョンの狭さに驚く。ご新規さんかな? やぁ、ようこそ小西ダンジョンへ。この駐車場の狭さはサービスだから落ち着いて欲しい。


 まず、ギルドの建物のほうへ行って、六層と七層と八層の地図を購入する。一層あたり五百円だそうだ。その後いつも通り入ダン手続きに入る。すると呼び止められた。


「あ、安村さん伝言です。四層側階段で待つ、だそうです」


 スマホを確認すると「行くわ」とだけ伝言があった。俺が気づかなかっただけか。


「了解、ありがとね。それと、戻らなかったら宿泊してくるつもりでよろしく」

「念のための宿泊申請ですか。解りました」


 こちらを一目見、宿泊するだけの装備をそろえてると判断してくれたのだろう。仮の宿泊申請を許可してもらった。これで、どっちにでも転ぶことが出来る。本日の出来高如何によるってところかな。


 一層に入ると、明らかに人の気配がする。どうやらスライムの数が足りなくてこっちへ来る人数はそう少なくなかったらしい。行く道も掃除が行き届いている。まずは合流目指すか。


 一層から二層にかけて歩いたが、俺より先に入ダン手続きをした人がすべて狩りつくしていっているらしく、全く出会わなかった。やはり一層は小西ダンジョン比で満員御礼らしい。


 二層へ降りる。降りたところにスライムがちょこんと座っていた。なんだお前、俺を待っててくれたのか? ありがとうな。と、お礼のカロリーバーを半分くれてやると、もしゃもしゃしてる間に命を刈り取る。ドロップがきっちり二個出たことを確認すると、三層への階段へ行く。


 二層はまばらに人がいるイメージだ。普段ならわき道からグレイウルフがこんにちはしてくるが、その様子はない。おそらく、徐々に人が入り脇道へ逸れていったのだろう。清州より確実に稼げる数が居るのは小西ダンジョンのあまり褒められない褒めるべき点だ。要するに普段人が居ないという事だ。


 いつもよりこざっぱりとした歩きなれた道を行く。あ、グレイウルフだ。こんにちは、死ね。一刀のもとに粒子に変わって消えてしまった。肉が出たのは一泊していけという意味だろうか。


 わき道に注意を払いつつ三層への階段へ行く。人が出てきた。こんにちは。お互い礼をしつつすれ違う。小西で人とすれ違う時はたまたま方向が被ってしまった時ぐらいだ。よっぽど他所のダンジョンが流行っているんだろう。


 三層の階段に着くまでに二回ほどの戦闘を行い、魔結晶を確保する。階段で休んでいる人がいる。ちょっと聞いてみよう。


「どうですか調子は」

「清州に比べれば天国みたいなもんですね。あっちはダメだ人が多すぎる」

「一昨日清州に居ましたが大変な混みようでした」

「昨日もそうだったんで、今日は河岸を変えてみようかと思いましてね。清州に比べれば狭いところですが、湧きはいいですね。今日はちゃんと稼いで帰れそうです」

「お気をつけて。営業時間は十九時までですよ」

「そちらもお気をつけて。その前には撤収することにします」


 どうやら昨日も激混みだったようだ。これは三層も人が居るかな。人の多さによっては四層に行こう。そう思いながら三層の階段を降りる。


 伝言通りなら、四層側の階段付近を探せば相棒は見つかるはずだ。とりあえず階段まで直行することにする。念のためトランシーバーで連絡を取る。


「こちら安村、三層に到着、どうぞ」

「こちら文月、三層に到着了解」


 どうやら三層まではあまり人が増えていない様で、いつも通りのお出迎えが来た。ゴブリン三匹相手に今更苦戦することも無く、順番に撃破していく。振り回してくる棍棒は素手でも出来るが小盾で叩き落として危なげなくその心臓か脳にお返しの一撃を与えることであっという間に処理してしまっていた。ドロップは魔結晶か。三分の一ででるのは悪くない。


 その後も三パーティーほどゴブリンが襲撃してきたが、同様の手順で黒い粒子になっていただいた。ここまでゴブリンの魔結晶三つとウルフ肉一つが出た。やはりいつもより人は多いんだろう。今までなら俺はもっと大人気だったはずだ。背中のバッグが軽い分、少し寂しさを感じる。


 四層への階段へたどり着いた。相棒の姿は見えない。多分待ってるだけじゃ暇なので側道へ向かったんだろう。とりあえず少し休憩するか。


 保管庫からアイスバッグをバッグ経由で取り出すとアイスバッグから冷えたミネラルウォーターを取り出し飲む。やっぱ冷えてると体に染み渡るな。冷やして持ってきたのは正解だった。


 一本飲み切ってしまうのはちょっと胃にもたれるので、残りをもう一度アイスバッグに入れなおし、アイスバッグをバッグに仕舞うフリして保管庫に入れる。


「マトリョーシカごっこですか? 楽しそうですね」

「まぁそんなとこ」


 相棒こと文月さんと合流出来た。


「今日の稼ぎはどんなもん? 」

「ここ二日はダメねー。人増えちゃって三層が今までみたいに狩り放題じゃなくなっちゃった」

「じゃぁとりあえず下行こうか、休憩は? 」

「さっき取ってたから大丈夫。道すがらキャンプ体験記でも教えて」


 四層に降りる。四層から下は前も言ったが真面目な装備をしないと怪我するエリアだ。その為にツナギもヘルメットも武器も変えた。今は油断しない限り怪我するエリアではない。


「清州の七層は言った通り、イベント会場みたいだったよ。ドロップ品買い取りの屋台もあれば食品販売の屋台もあったし、雑貨屋もあった」

「ドロップ品買い取りの屋台なんてあるんだ」

「嵩張る物、革とか羽根とかをギルド査定より安く買い取って、その差額で儲けるらしい」

「で、探索者側は魔結晶とかポーションだけを持ち帰れるんでその分荷物が一杯持てると」

「上手くできてるもんだよな」


 この辺で早速ソードゴブリンと御付きの方四名様がご来店した。ソードゴブリンがでてきたら俺が対処する流れになっている。別にそう決めた訳ではないが、自然とそうなった。


 ソードゴブリンの剣がこちらに振りかぶられる前に相手の握り手を抑え込む。懐に入ればこっちのものだ。そのままヘルメットで頭突き。ふらついたところに一刀。慣れたものである。


「相変わらず変な素早い動きですね」

「頭を使ってるのよ? これでも」

「確かに頭突きはしてるけど」


 今の文月さんはゴブリン相手なら一対四でも普通にこなせる。相対してるゴブリン以外のゴブリンを積極的に狙いに行く。ゴブリンは相変わらず女性が好きらしい。こっちをだれも振り向いてくれない。寂しい。仕方が無いので後頭部を一撃殴らせてもらった。刃で。


 その間に二匹を始末してもらった。最後の一匹は脳天を槍で貫かれると黒い粒子となって消えていく。出たドロップは魔結晶だ。


「キャンプしてる探索者いっぱいいた? 」

「小西比で言えばいっぱい居た。多分ここだと居て二パーティーじゃないかな」

「キャンプしてる人に心当たりあるんだ」

「この間六層であった人たちだよ」

「あー、あの人たちね」

「今日いるかどうか解んないけどね」


 今日は居ないかもね、ずっとキャンプし続けられるほど予定が組んであるわけでもないだろうし。


 四層はいつも通りって感じがする。おそらくスライム狩りの為にわざわざ小西へ来た人がほとんどなのだろう、それより下に潜るなら片手にカロリーバー持ちながらの戦闘は厳しいってところだろうか。


「空いてますね」

「空いてるな。やっぱりスライム狩りは三層が限界ってことなのかねぇ」

「ソードゴブリンが嫌われてるってことかなぁ」

「まぁ、浮いてるって感じはするな。居なかったら多分四層もスライム狩りでいっぱいだろうね」

「ゴブリンなら大丈夫でソードゴブリンじゃ大丈夫じゃない理由はなんだろ? 」


 俺も確かにゴブリンだけの階層とソードゴブリンの混じってる階層どっちがいいか問われれば、ゴブリンだけの階層を選ぶだろう。


「明らかに殺傷力のある武器を持ってるか否か? 」

「グレイウルフも殺傷力はあると思うんですけど」

「ほら、ゴブリンは俺みたいな初心者探索者でもそろえやすい恰好でも戦えたし」

「あ、次きました剣一ゴブ三。おいしい狩場だと思うんだけどなぁ」

「それは慣れてる感想だからでは? 」


 ソードゴブリンを軽くいなしつつ会話を止めずに対処が出来る程度に二人とも慣れている。実際の所、一人で対応してたら考え事をしてる余裕は無いだろう。喋っている間に四人様ご退場されてしまった。


「やっぱり戦いなれてるかどうかじゃないかなぁ」


 ドロップのヒールポーションを拾いつつ確認する。


「なんですかねぇ」

「で、どうする? 五層行く? 六層行く? 七層行く? 」

「七層行ってみたくはあるんですけど、多分小西じゃ何もないですよねぇ」

「何もないだろうねえ。一応受付に帰らなかったらご宿泊って伝えといたけど」

「明日講義あるんですよね」


 そうか、じゃぁ今日は宿泊するのは最悪俺だけだな。


「じゃぁ今日は日帰りコースか。ならダーククロウいっぱい倒せるな」

「清州の時はどうしてたんですか? 」

「魔結晶と交換でダーククロウの羽根をバッグに無理やり詰め込んで帰ってきた」

「商売人と同じようなことしてきた訳ですね」

「あぁ、大分喜ばれたぞ。おかげで一つ縁も結べた」


 今度清州に行くときはビールを差し入れるんだったな。多分喜ばれるだろう。


「じゃ、五層へ向かうという事で」

「あれ、剣は良いんですか? 」

「それより、七層覗いてみたいんじゃ? 」

「みたい! 見てみたい! 」

「じゃ、行くか七層。道中経路を確認するだけでも経験になる、それに往復して帰ったらちょうどいい時間になるんじゃないかな」

「いいんですか? やったー! 」

「五層六層がモンスターだらけだったら保証できないけどね」



作者からのお願い


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続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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[一言] カロリーバーのライン増設に踏み切るなら41g塊を数個詰めた屠殺手順書付きパッケージにすると良さげな予感。(作ってる社員さんは今回の祭りの経緯を知って泣くが) なんなら釣りの餌とか入れるみたい…
[一言] せっかく待っていてくれた2階のスライムさんかわいそうw
[一言] ダンジョンには製作者の何らかの意図が見える 悪辣さの無いシステム、どうやら人間に対して悪意は無さそう しかしダンジョン毎の特性らしきものは無いようだ …とすると、単純に神の娯楽というセンも無…
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