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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第二十一章:夏休み、あー夏休み、夏休み

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1078:忘れてた

ダンジョンで潮干狩りを

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 五十六層へ向かう間とはいえ、さっきまで向かってきた道を引き返すだけなのだが、横からモンスターがやけにちょっかいを出しに来ている。さっきまでは反応しなかった範囲のモンスターもこちらを向いて襲ってくるので行きと同じぐらいの戦闘回数をこなすことになった。


「結衣さん達、モンスター寄せのアイテムとか持ってないよね? なんかやけにモンスターが寄り付いてくるけど」

「そんなアイテムが有ったら全力で使って上の階層で楽に数を倒して自己研鑽に努める所だわ。むしろ、この階層はこれだけの密度のモンスターが一気に来るから戦いにくいものだと思っていたけど」


 そんなにここのモンスターは反応が良かったかな? と疑問が湧いてきた。とすると逆の原因で、俺達がモンスターに避けられているのか、それとも気づかれないように行動しているかのどっちかだな。


「洋一さん、【隠蔽】のせいじゃないですか? 」

「あぁ、そういえば常時使ってるおかげですっかり忘れてたな。そういうことか。これ切ってもっと寄せ集めて戦った方がより儲かるな。この階層で戦うときは切っておくことにするか」

「なんです、モンスター避けのスキルみたいなもんでもあるんですか? 」


 平田さんが興味ありげに質問してくる。モンスター避けと言えば……あぁ、そういうことか。


「ほら、前にスノーオウルがくれた【隠蔽】っていうスキル。多村さんなら覚えてると思いますけど」

「あー、前にあったねそんなの。索敵範囲から離れるか、索敵の反応が弱くなる奴だね」

「アレを二人とも覚えてるおかげでモンスターに探知されにくい状態で動き回ってることになってると思います。新浜パーティーでは多分一人も持ってないか、全員で使用してないからそれだけ本来のモンスターの探知範囲が適用されてそれだけの数が寄ってくることになってるんだと思います」

「じゃあ安村さん達は随分楽してここを潜り抜けてるって事になるんですなあ」


 そう言われるとそうだったのかもしれない。


「でもおかげでこれでもっと稼いで帰れる算段が立ちました。隠蔽OFFにしてうろつけばもっと短い時間で多くのモンスターを相手に出来ますしその分だけインゴットも魔結晶もポーションも大量に持ち帰ることが出来ます。もしかしたら下の階層より多く稼げるかもしれませんね」

「言われるまで完全に忘れてましたね。これでまた美味しい思いが出来ます……っと」


 戦闘をしながら雑談する余裕があるので、隠蔽の効果によるモンスターの誘因範囲は新浜パーティーが増えた分だけの戦力で対応しきることが出来る程度のレベルしかないということも解ってしまったが、二人そろって隠蔽しながら戦うよりは儲けの額は多くなる。思い出せてよかったと思う所だろう。


「しっかし、目印もなにもないところですなあ。草原マップを思い出しますなあ」

「草原マップよりはそれっぽいオブジェクトはありますよ? 巨大な骨の置物とか。あと、来る途中に塩湖みたいな場所ありませんでしたか」

「ありました。中々にしょっぱかったですな」


 舐めたんかい。まあ本人がぴんぴんしてるところを見ると本当に塩だったんだろう。……あ。


「そういえばあそこで採取した岩塩、ギルドに提出してないな。ずっと保管庫に入ったままだ」

「保管庫に放りっぱなしにしておくのは洋一さんの悪い癖ですね。でも今更ですしどうしますか。せっかく採取したものを捨てるのももったいないですし、美味しくて美容に良いなら日々の食事に少しずつ加えていただきたいところですが」

「そうだなあ。成分分析かけてもらわないとどうにもならないものではあるが……結衣さん達、これ五十六層到着の証拠としてギルドに提出する気、ある? 」


 袋をブランブランさせながら聞いてみる。結衣さんは少し考えるふりをした後、袋をがしっとつかんだ。


「解ったわ、私たちの名義で提出しておくことにする。今更安村さん達が持っていっても完全に忘れてたよね、そういう大事なことは忘れず報告してくれると助かるんだけど? とお小言を言われることになるでしょうし、私たちもただ遊んでるだけじゃなくて必要なものがあるならそれなりに対応は出来ますよ、ということを見せるためにも必要……違うわね、是非成果の一端として提出させてもらえると助かる、のほうが正しいわね」

「じゃ、任せた。五十六層へ到着した証拠の一つになるだろうし、後は五十六層の風景でも写真にとっておけば証拠としては充分だと思うよ」


 話しながらも戦闘しつつ、戦闘の合間にはちゃんと前を見て歩くが、まだ正面方向は湧いてないとはいえ、芽生さん曰く視界内でも結構な数が赤くなってはこちらに向かってきているよう。左右からの挟撃もされつつ、割と多い戦闘回数の中を進んでいく。普段の五割増しぐらいかな。つまり隠蔽をOFFにして進むだけで移動時間含めてもかなりの収入を得られることが解ってきた。


 これは一気に美味しい階層化したな。遮蔽物も無いので視界内のモンスターはすべて自分たちのものだと主張する事だってできる。それを味わえるのも今の内なら、夏休みの間は五十九層と五十五層でしっかり稼いで帰るというのは選択肢として十分に入ることが解った。それだけでも大きな成果だ。これも結衣さん達のおかげと言えるかもしれない。


 根本的には【隠蔽】のことをすっかり忘れたままここまで来ていた自分達にも問題はあったわけだが、そこには突っ込まないでおく。二人そろって忘れることもたまには、まあ、あるさ。


 やがて、視界の奥に大岩が現れた。一時間強の帰り道、無事に階段が見える距離までは帰ってくることが出来た。ただ、視界外であったこともあり、隠蔽を切っていることもあり、階段までにはかなりの量のモンスターが湧いている。つまり、入れ食いということである。


「さて最後の一直線、気合入れて倒していくか。来た道より帰り道のほうがいっぱい稼げるのは間違いないんだ」

「足を引っ張らないようにはするつもりだけど、なんか二人で倒しきってしまいそうな気もするわね」

「出来無くはないとは思いますが、それではちょっと結衣さん達も楽しすぎでしょうし、適度にそちらに流す感じで行きます」

「じゃあ私たちは後詰みたいなイメージで良いのね。打ち漏らしを頂くような形でサポートするわ」


 残り数百メートルの距離をゆっくりと歩きながらモンスターがこちらに寄ってくるのを待ち、手が届く段階になったところでスキルで先取り攻撃。全力雷撃一発で一グループがまとめて蒸発する。


 前も全力雷撃ならアルファ型を一撃で倒せてはいたが、あの後更に多重化したことで雷撃が分散、周辺にいるモンスターにまとめてチェインライトニングのような効果まで発生しだしたのは良い傾向だ。楽が出来てとても良い。


 芽生さんのほうも魔法矢の連射でベータ型を穴だらけにしつつ、アルファ型をスパスパと切り裂き、手数で圧倒している。こっちの二人は問題なし、と。


 結衣さん達はさすがに遠距離での攻撃手段が二種類しかなくどちらもまだ多重化が甘いため、弱らせたところに近接勢が止めを刺しに行くというパターンがきちんと機能している。こっちも一グループ押し付けるぐらいなら問題はないな。


 最悪同時に三グループほどがまとまってくるが、保管庫からの射出が必要なほどではない。ここは通常スキルのみで対応できる。流石に七人も居ればここは安定して稼ぐことが出来るらしい。結衣さん達の援護無しで何処まで移動速度を下げずに戦い抜けられるかを後で考えよう。


 階段が見えてからそこそこ時間が経過し、思ったよりも牛歩での歩みになったが、階段にたどり着くことは出来た。結衣さん達曰く、この階層は牛歩で進むことになるのが普通らしい。そう言えば最初に来た時はそんな感じだったな。まだ慣れてなく、スキルも三重化できていなかった分だけ遅かったような気がしてきた。その状態で隠蔽が無かったら、もしかしたら二人でここを抜け出すのは非常に厳しい状態での到着になっていたかもしれない。


「ふー到着。長かったー。久しぶりにこれだけの密度を味わった気がします。たまにやると楽しいですねこういうのも」


 芽生さんが階段にたどり着いてようやく一息、と感想を漏らす。


「やっとたどり着けたわね。四回目でたどり着けたのは短いほうなのかしら」

「どうでしょう。自分たちの時は……たしか一回で通り抜けてしまったような」

「その試行回数の違いが【隠蔽】の有無って事は、かなり楽できるスキルみたいだけど、ドロップするモンスターはスノーオウル以外に居るのかしら? 」

「今のところは不明かな。持ってそうなモンスターも含めてまだ調査中じゃないのかな。スレッドでも見かけたって報告がないあたり、スノーオウル以外で落としそうな心当たりは今のところないね」


 そういえば結衣さん達は【毒耐性】を全員分揃えてからここに来たのだろうか、それともある程度揃ったところで突破してきたんだろうか。まぁ、いい。


 とりあえず五十六層へ到着して全員一服。机と椅子と飲み物をお出ししておく。


「四十九層のキャンプはどうするの、撤収してこっちへ持ってくる感じ? 」


 新浜パーティーのキャンプについて聞けることは聞いておく。今なら俺という便利な保管庫がついてくるので移動するにも楽にできるからだ。


「んー、ちょっと悩んでるところかな。四十九層にもキャンプはあっても良いと思うのよね。新しいキャンプ装備を人数分そろえて買ってくるのでも問題ないし……でも、それを聞いてくるってことは今移動させるなら手伝ってくれるってことで良いのかしら? 」

「それは構わないかな。十五分もあれば済むことだし、その十五分のロスは今教えてもらった隠蔽のOFFで充分に補填が出来る……よね」

「ですねえ」


 芽生さんの許可は下りた。後は結衣さん達がどうするかだけだ。五十五層をメインにしてキャンプを張っていくのか、それとも後日なのか。まあ急ぎで結論付ける話でもないので、手が空いてたら手伝うよ、ぐらいのつもりだが、本人たちにとっては割と深刻な悩みらしい。五人そろって相談を始めた。


「気楽に探索が出来るって言うのと、【毒耐性】を人数分そろえるって意味では四十九層にキャンプは確実に欲しいかな」

「でもこの先【毒耐性】がどのくらい必要になるか解らない現状だとあまり意味はないかも? そういう意味ではこっちに移してきたほうが……」


 かなり長い相談になりそうなので、その間に結衣さん達と合流してから拾ったドロップ品を等分にする計算でもしておくか。


 メモ帳から数字を引っ張り出して保管庫の中の物品と照らし合わせて、出会うまでの数、出会ってから引き取った数、ここに戻ってくるまでに拾った数を抽出して結衣さん達に渡す分を計算してしまう。


 計算が終わり、結衣さん達に渡す分を確定させると、横田さんにだけ声をかけてそれなりに重さがあることとかを伝える。


「実は私たちもリヤカー借りてきてるんで、一回は四十九層に戻る必要があるんですよね。その時に安村さんに付いて来てもらってついでにキャンプごと収納してもらおうか、というあたりまでは話をつけ始めてます」


 なるほど、それならそうするほうが合理的だろうな。四十九層に潜りたくなった時に改めて一揃い持ってくればいい。精々が食事をどこで取るかとかそのあたりになりそうなので、食器や調理道具を二階層分用意するのかどうか、あたりで悩みそうではあるが。


「決めたわ、私たちも五十六層に本拠点を移すことにする。安村さんには荷物の移動を手伝ってほしいのだけれどいいかしら? 」

「じゃ、芽生さんちょっと行ってくるね」

「いってらっしゃーい、私はここで休憩してますので何か適当に一冊ください」


 新しそうな雑誌を一冊だし、芽生さんを置き去りにすると新浜パーティーと共に四十九層へ。到着次第四十九層にあるみんなのテントを中身ごと収納、リヤカーも収納。一通りのものを全部入れると五十六層に戻り、指定された位置に取り出して設置。久々にこういう使い方した気がするな。


 休憩場所に戻って一息。アイスコーヒーを飲む。やはり喉が良い感じに乾いていたのか、コーヒーが体に染み込んでいくのを感じる。


「お疲れ様でした。おかげでこれで私たちも五十六層仲間ですね」


 結衣さん達にもコーヒーを出す。コップを触って冷えていることに一瞬びっくりしていたが、まぁ俺だし、みたいな顔をすると思い思いのペースで飲み始めた。


「しばらく五十五層できたえる感じなのかな? 見た感じ」


 一応尋ねておく。狩場が被るのもあるが、無理に深くへ行って怪我してほしくないというのもある。五十五層でしばらくパワーアップして欲しいものだ。俺達もそうした。結衣さん達も是非そうして欲しい。ここは特訓場としてなかなか出来がいい。後はカニうまダッシュだが、荷物の重さを考えたらお薦めは出来ないな。


「そのつもりでいるわ。【身体強化】のレベルをいくつも重ねてあげて行くのが目標ね。とりあえず……五段階ぐらいが目標かな」

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

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― 新着の感想 ―
> すっかり忘れてたな」 二人揃ってである > しょっぱかった」 むっ、これは…塩?! > 袋をがしっとつかんだ」 自前で調達してもろて > 完全に忘れてたよね」 長官から言葉責めされるおじさん…
すっかり忘れてたなw
そういえば隠蔽もあったなぁ
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