1077:合流
ダンジョンで潮干狩りを
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マツさんのゲル
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帰還勇者の内事六課異能録
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五十五層を時間を区切って探索し、時間が来たところでくるっと折り返し階段のほうへ戻る。昼飯は五十六層で食べるほうが安全だし、今日の昼食は食べながら移動、という形の飯ではない。椅子と机でゆっくりと食べるほうだ。
その辺は日によってころころ変わるが、日替わりサンドイッチなるものを計画してその間は食べながら探索、というのも悪くないかもしれんな。その内計画しておこう。俺の頭の中にサンドイッチの具の種類で一週間分のレシピが思い浮かぶかはまた別の話、食事が終わったら軽くメモって具材を色々と模索していこう。
「サンドイッチなら食べながらでも活動できるが毎回お昼はサンドイッチ、では飽きるからな。メリハリをつける意味でもちゃんと昼食は落ち着いてとろう」
「マップがマップですからね。ちゃんと体をクールダウンさせる意味でもちゃんとご飯を食べるという行為は必要かもしれませんねえ」
芽生さんも毎回サンドイッチよりはローテーションの中だとしても違いのある食事のほうが楽しみがいがあっていいらしいという反応を得られた。ローテーションにこだわり続けるつもりもないが、あくまで自分自身が少し楽をするためでもあるので、と。そういえば他のローテーションレシピも何か変化させていこうという話を前にしてその途中だった気もする。
ひとまず五十六層の階段まで戻ってきたので食事の時間とする。六十四層まで行ってパワーアップしてきた分の強さは間違いなくこの階層でもいかんなく発揮することが出来、俺も芽生さんもかなりの楽をして戦って勝てるようになっている。
戦闘時間を短く出来た分歩く時間が増え、そしてエンカウントの回数も増える。以前よりも一割から二割ほどモンスターを倒す回数が増えているのは確からしい。
「今日はなんですかねーっと……他人丼ですか」
「漬物とサラダ付きだ。当初は丼のみの予定だったがなんかちょっと物足りない感じがしたんでちょっと足してみた」
「栄養バランスを考えてくれたんですね。早速頂きましょう」
他人丼とサラダ、まずサラダからだな。一言で言ってしまえばポテマヨチーズサラダ。サラダの内容こそそう多くはないが、生野菜サラダを食べないよりは食べたほうが色んなミネラルが取れることは確実ではある。
他人丼には完全栄養食品である卵が使われているし、生野菜で卵には含まれないビタミンCと食物繊維がそれなりに含まれている。栄養バランスは今日はそう悪くないはずだ。
サラダを口に入れ、いつも通り胃袋が試運転を始めてからの他人丼に向かう。サラダのほうはいつもの野菜であり、別に高級品であるとかブランド野菜を使ったわけではないのでナニコレ美味! とかなるわけではない。出来上がりを予想できる普通のサラダだ。
それで胃袋をある程度動かすと、メインの他人丼に入る。オーク肉の脂が程よく全体に馴染んでおり、味付けと共にいい感じにバランスになっている。脂が多い分少し味付けを濃いめにしておいたのが良い感じに味を薄めず、口の中を油まみれにせず、それぞれが口の中で主張し合うかなり濃い味つけになっている。
いつもなら味付けを薄めにして喉が乾かないようにしているところだが、そもそも喉が渇きやすい場所である五十五層。どうせ喉が渇くなら、とあえて濃い味付けにしてみた。気づかない内に水分不足になるよりは濃い味付けにして意図的に水分を摂取するように仕向けようとする方向性で今日は考えてみた。
芽生さんは無言でサラダと他人丼を食している。ひたすら食べている時は気に入っている時なのでそのまま食べ続けていてもらおう。今は自分の作った飯について評価し、次回はどうするかを考えることにしよう。
うむ……もう少し醤油と酒を少なめにしてその分うま味調味料でごまかしても問題ないな。次回はもうちょっと手を抜いて作れるだろう。次回に活かすんだ。
食事の後、休憩と称してダラーっと机に倒れ込む。先日の疲労を溜めこんでいる様を防ぐためというわけではないんだが、休む時は休む、という姿勢で臨んだほうが疲労は蓄積しにくいはずだ。午後もこの暑い中冷えた飲料片手に探索することになる。呼吸するたびに身体から水分が少しずつ抜け出していくよう、とまではいかないにせよ、ここではとにかく他の階層より喉が渇く。水分補給はこまめに。
アラームが鳴るまで目を閉じ、耳を片方枕に傾け、何も音がしない静かな光景の中でぼーっとする。涼しくありたいならテントの中に入れば多少マシにはなるが、テントで涼んでいたら多分また暑い所に出るのが嫌になるだろうな。
大人しく枕に突っ伏して胃袋の中身の消化と体力の補充に従事することにする。芽生さんも先日の俺の体たらくを見てか、フラフラしたりせずにせがまれた雑誌を出して読みながら半分寝ているような様子。午前中だけでもそれなりに消耗したであろうことが推察される。
アラームが鳴り、出立の時間だ。お腹の調子は……うむ、大体消化し切った感じだ。一口コーヒーを飲むと、色々と片付け始める。
「さて行くか。午後から休憩を挟みつつ五時間ぐらいササっと戦って集める物は集めて、今日の収入をしっかり手に入れよう」
「そうですね、体調も問題なさそうですし行きますか」
再び五十五層へ戻る。ここのモンスターは俺にも芽生さんにも、一人でも一グループを倒しきるのは難しくなくなってきた。これも日々きつい所へ潜って探索をしていたおかげともいえる。ここを初めて通過しようとしたときの事を考えればかなりのレベルアップを施したことになる。
「まずは向こう側の階段へ向かって、戻ってくるルートで行くか」
「道は解ってるので難しくはないルートですし、密度も良い感じですから、出来るだけ足早に動いて戻ってくる感じで行きますか」
五十五層の密度を難なくこなして真っ直ぐ五十四層への階段へ向かう。五十五層には籠っていた時期があるためそこそこ歩き慣れている。階段への方角もバッチリ頭に入っているし、モンスターは一発で消し炭にできる。
日差しはきついがモンスターはきつくないし収入は美味しい。暑さ以外には負けないような状態になっていると言える。もし暑さでダウンしそうになった時はスーツをちょいと濡らして乾かし、気化熱で体温を奪う形で涼むこともできるようになっている。ますますお得感が強いマップになったな。
「前に通った時より数段楽だな。手数も少ないしドロップを拾う手間だけは同じだが、同じ気力で二倍の敵を相手できると考えても実際の効率では三割増しぐらいか。もっと片っ端から寄ってきてくれてもいいような気がしてきた」
「それだけ成長したってことですよ。この暑ささえなければしばらくここでお金稼ぎというのも悪くない気がしてきました」
稼げるということはそれだけ忙しいということでもあるのだが、手数で押すのは元々嫌いじゃない芽生さんにとってもモンスター数が多いのは暇で歩くことに比べれば働いているという実感がわくのだろう。
「水分だけはこまめにな。砂漠ではスーツがいい服装だという漫画があったが、実際に通気性も良いし過ごすにはちょうどいい感じだ。水分は自己補給できるしお腹が空いたらカロリーバーもある。実に良い環境を整えて探索が出来ているのは間違いないな」
「そうですね……と、お客さんが居ますね」
芽生さんが遠くのほうを指さす。言われてみて遠くのほうを見ると、地平線ギリギリ辺りのところで戦闘を行っている一団が見える。手が空いて暇になった段階でドローンを飛ばし、ドローン越しで確認したところ、結衣さん達だろう一団を見つけた。ここまで頑張って下りてきたということだろう。
「せっかくだし挨拶していくか。もしかしたらそのまま五十六層まで連れてって欲しいと言い出す可能性もあるが、その時は素直に先導するか」
「そうですね、ここの湧き方を考えると結衣さん達には少々通過が厳しいかもしれません」
そっちに近づきながら道中に複数グループ居るモンスターを倒しながら寄っていくことにした。あちらも戦闘音でこちらが近づいていることに気づいたらしく、間のモンスターを倒しながらこちらに寄ってきた。
「ヤッホー結衣さーん」
「芽生ちゃんだぁー」
二人、手を繋いでその場でぴょんぴょんしている。ほほえましい。ここは何かしら対抗しなければピンク色の女性の空間が出来てしまう。
「ヤッホー平田さーん」
「ヤッホー安村さーん」
空気の変化をさせようとした俺の行動を察したのか、俺と手を繋いで男同士でその場でぴょんぴょんし始める。
「え、あれ、何。僕らもやるべき? 」
「うーん、やりたい人だけやればいいんじゃないですか? 」
「私は荷物が重いので遠慮しておきます」
他の三人は乗ってくれないらしい。そもそも、三人でぴょんぴょんするのは難易度が高い。そこは止めておいて正解だと思う。
「さて、再会を楽しんだところで五人とも五十六層へ向かえばいいのかな? 」
ぴょんぴょんしすぎて疲れる前にほどほどで抑えておく。ギャグのためにここで体力を使ってしまうのは賢い選択とは言えない。
「そうですね、五十六層にキャンプさえ張ってしまえば後は階段周りをグルグルしながら実力アップも望めますし、ここまで上からやってくるという苦労もしなくて済みます」
ぴょんぴょんしなかった横田さんが真面目に話しだす。
「ところで安村さん、一つお手をお貸し願いたいんですが」
「荷物なら負担するよ。途中でへばっても困るだろうし、インゴット重いでしょ」
「話が早くて助かります。出来れば手持ちの分を全部お任せしたいのですが」
保管庫の今のインゴットの個数を記録しておき、インゴットを受け取ると収納。収納した分の数を書いてメモに残しておく。荷運び料にいくらか貰っても文句は出ない所だろうが、そこはキッチリしておくし数少ない秘密の共有仲間だ、けち臭いことを言うのはなしにしておく。
横田さんが背中のバッグからインゴットを次々にと出す。俺がそのまま次々に何処かへ収納していく。結構な数持ち歩いていたんだな……と、バッグを見ると、背負子スタイルで行動をしていたらしい。これなら腰への負担も少なくバッグが破れることも無かっただろう。その選択は俺の頭の中には存在しなかったな。
三十二個のインゴットを受け取ってメモに記すと、横田さんも肩を鳴らし首を左右に曲げ、やっと重さから解放されたと言わんばかりの表情である。
「ふぅ……助かりました。ここから先はインゴットももったいないけど捨てていこうかどうか話し合ってたところなんですよ」
「それはベストタイミングでしたね。じゃあみんな身軽になったところで揃っていきますか。ドロップは半々で良いですかね」
「助かるわ。むしろ楽をさせてもらう分こっちの取り分は無しでも良かったぐらいなんだけど」
ぴょんぴょんを止めた結衣さんが話の輪に入りだす。
「まあ、一応形式上は共同探索って事で。五十六層の階段までこっちはそのまま真っ直ぐ戻るだけだしね。ちょうど戻りには適したタイミングだったってことにしとく……よ」
話ながら芽生さんのほうを向くと、うんうんと頷いている。相棒の認可は下りたらしい。
「この階層でこの調子なら、五十六層にキャンプを張った後はしばらく五十五層で鍛える方向性で行こうと思ってるわ。ここでこの調子ならこの先はもっと厳しいでしょうし、ここで一度足踏みパワーアップの時間が必要ね」
他の四人もそう頷く。やはり、若干無理をしながらこの階層まで下りてきた、というよりこの階層の難易度は相当高いと各自感じていたんだろう。
「じゃ、戻ろうか……と、念のため方向確認」
ドローンを飛ばして来た方向を確認。まだ何も見えないが、地図とドローンの見えている範囲と、モンスターが湧きなおしていない場所を計算に入れてこっちだろうという見込みを立てる。
芽生さんも索敵を最大限広くして観測しているのか、同じ方向を向いている。二人とも同じと感じたならそっちが帰り道で正解なのだろう。
ここからは七人で五十六層へ向かう。過剰戦力も良いところだが、他の五人と俺一人で同じぐらいの戦力だと見積もるとそこまで過剰というわけでもない気がしてきた。
結衣さん達にはまだまだパワーアップしてもらわないといけないからな。今年中に追いつくという目標を是非達成して欲しいところ。一ヶ月ぐらい五十五層に居座って、その後で下の階層へ向かう、という形になりそうではある。その間に更に下の新規B+探索者が何処まで追いついてくるのか。色々と気になることは一杯だ。
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後毎度の誤字修正、感謝しております。