1059:六十四層の終わり 2/2
ダンジョンで潮干狩りを
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食休みをしっかり終えて動けることを確認すると、芽生さんと二人、六十四層へ下りての地図の続きを作り始める。まずは午前中と被る場面にもなるが、水路のチェックだ。水路がちゃんと最下流までたどれるかどうか、その途中に階段があるのかどうか。そして水路のある範囲から考えて、どのくらいのマップの広さを有しているのか。
確認するためには水路をきっちり下流までたどってその水路を中心にしていくらかの幅でもってダンジョンが作られているということを確認する為でもある。
しばらく戦闘を行いながら、索敵を最大範囲まで広げながらマップを確認すると、ちょっとした横道がすぐに行き止まりになっているとか、そういう部分についてはざっとだが解るようになった。きっと芽生さんも同じような視点を、俺より広い範囲で把握しているのだろう。索敵も多重化する意味は確かに出てきたな。
今多重化して価値のあるスキルは各種耐性スキルとそれぞれが伸ばしたいスキル、そして索敵。後趣味の範囲で【生活魔法】となった。
もしかしたら【生活魔法】も極めればゴミとして出すものをすべて魔素に変換してしまうことも可能になるかもしれない。そうなれば指定のゴミ袋代が浮く。でも地上でそれだけのゴミを魔素化させるには相当な修練が必要だろう。ゴミをわざわざダンジョンまで持ってきて魔素化するというのも馬鹿馬鹿しいので、やはり趣味の範囲以上の意味はないだろうな。
下流に沿って戦闘をしながら進み、三十分ほどしてさっきの十字路まで来た。ここを直進するのが目的で来たようなものである。
「隊長、この十字路には見覚えがあります」
「芽生さんよくそんな古い映画知ってるね」
ほんの二時間ほど前に来たばかりだからそりゃ覚えてるだろうさ。ついでに言えばこの十字路の先も通ったばかりと言える。さっきの合流点までは解ってる道だ。
モンスターはさすがに湧きなおしているものの、三匹編成が少ないのは水路がある分モンスターの湧く幅が狭い、という事だろうか。また広間っぽい所に出たら多分亀かワニが三匹屯っているんだろうな。
「さっきの合流地点までは一度来たからな。問題はその先だ」
「早く見つかってくれると良いんですけどね。そうすれば安心してこのマップを歩き回れます」
芽生さんもこの先まではさすがに見通せないらしい。それだけ複雑なのか、それともモンスターが少なくて情報が足りないのか、真っ直ぐ一本道なのか。でもこの湧きの量ならモンスターで道が出来ていてもおかしくはないので多分切れ目みたいなのが連続で出来ているんだろう。全体を見通すには情報が足りないんだな、きっと。
大人しく索敵を回しつつ周囲を観察して水路沿いに歩いていく芽生さん。モンスターが出てくるたびに率先して攻撃しに行っている。ここら辺はワニが多いとはいえ、二匹のグループが断続的に襲ってくるのでそれほど通り抜ける難易度は高くない。ワニ三匹が出てきた時が要注意かな。
さっきの十字路を右に曲がってぐねっと進み、水路に合流する地点まで戻ってきた。ここからはまたしばらく一本道かな? 合流地点にはさっきいなかった亀が居たので対処。亀を転がすのにも、転がした後若干濡れた服を乾かすのも慣れてきた。ここの危険度はかなり下がったので大丈夫だと言えるようにはなってきた。
水路をしばらく進んでワニを倒している間に【身体強化】が一段階スキルアップする。
「そういえば、ステータスブースト……【身体強化】のスキルレベルって今いくつぐらいなんだろうな。何回いままでに上がってきているのか数えていればよかったか」
「私も数えてませんね。その辺ははっきりと測定することも難しそうですし、上がったわーいで済ませてそれでよしにしません? 」
「一応そういうつもりでいるが、後学のためには何回上がればこの階層でも十全に戦えるようになる、みたいな知識の積み重ねがされていくことになるんだろうと考えると、先達者がしっかりしてないといけないような気がしてきた」
この【身体強化】がプレイヤーレベルみたいなものだと考えると、今の自分のレベルがいくつになるのか。それを表示させるような能力や測定器なんかもそのうち出てくるのだろうか。それともいくつになったとはいえベースは自分の肉体なのだから、やはり体力測定みたいなことをしてそれで判断するしかないのか。悩ましい所だな。
まあ気にしたところでいきなり気づいて強くなるわけでも無し、競い合う部分があるわけでも無し。そしてダンジョン外ではそれほど強く作用しないのだから、ダンジョン内でだけ強くても探索以外にその強さを発揮する場面なんてないだろうしな。
水路を辿っていくと、三叉路に出た。左に曲がって水路のない道へ行くか、水路に沿っていくかの二択だ。【索敵】を最大限の距離で測定すると、水路のほうは途中で止まっている。左に曲がるほうはそれなりにモンスターが湧いていることが解る。
「もしかして、もう少し進んだら水路終わりかな? 」
「洋一さんにしては勘が良いですね。多分そろそろ終点です。索敵の大事さが伝わってきたと思うのですがどうでしょう? 」
「迷宮マップとしては大いに活躍するのは間違いないな、というのが身に染みたよ。今後は索敵もサボらず頑張っていこうという気がしてきたし、今度索敵が出たら芽生さんに多重化して覚えてもらってより確実な斥候として働いてもらうことにしようかな」
これで索敵が出た場合のどっちが覚えるかは行き先が決まった、と。押し付け合いが無いようにしていくのがベスト。足りない部分は相互で補い合う、パーティーとして必要なことでもあるな。今更だが再確認。
三叉路を水路に従って直進。三回ほどの戦闘の後、水路はぱったりと消え、いつも通り地面の下を通って何処かに流れ込んでいた。当然水路には鉄格子。
「実は鉄格子は簡単に外すことが出来てその向こうには何かが……なんてことは今更ないよな」
「じゃあ洋一さん潜ってみます? 温風乾燥が使えることですし、試してみるのも一興かもしれませんよ。ちなみに私は外せないほうに賭けます」
「それじゃ賭けは成立しないな。ミルコからやってみたら? なんて言い出されない限りは何もない可能性が高い。でも実際問題としてこの先がどうなってるかはちょっと気になるのも確かだ」
水路の先は異次元だから消滅しているのか、それとも何処かに汲み上げポンプみたいなものがあって、そこから異次元を通してループし、反対側にある上流側から再度流れて来るような形になっているのか。
その為に何か通り抜けるようなもの、防水でそこそこ水に浮いて安全に流れていくようなものを流してみて、上流でそれが流れ出てくるのか確認する作業、なんてこともできなくはないが正直面倒くさいな。ダンジョンの謎ってことにしておこう。
下流から三叉路に戻り、さっきは曲がらなかった上流から向かって左へ曲がるルートを選択してグリグリとまた水路の無い道を探索し続ける。ここまででざっと一時間。あと何時間ほど彷徨えば全体が見えてくるのか。ちょっとまだ解らないが、出来るだけ短くたどり着けるルートを見つけるまでが今日の目的だ。
そのまま三十分ほど曲がり角や分かれ道を彷徨いつつ探索し、ようやく目的の六十五層への階段を見つけることが出来た。
階段は、六十三層の階段を中間にすると下流側の、水路沿いの道からは意外と近い部分に通りがかるような形で設置されていた。ちょっと遠回りしてここまで来たということになる。行き止まりに階段、では無かったので、ここからは最短ルートを探すシークエンスに入る。
「やーっと見つかったか。てこずらせてくれやがって、六十四層め。これでようやく最短経路を探す作業に取り掛かれるな」
「反対側から抜けてみて、水路に近い道を探していきましょうかね。ついでにその周りもしっかり確認して道を確認して行きましょう」
六十四層の遠回りルートはできた。一時間半ほどかかるルートになるので、もっと短いルートがどこかにあるはずだ。もし行き止まりに階段があるような形だったらかなり手前に戻っての道探しになるが、この階段を通り抜けて向こう側に水路までの最短経路があるかどうかを、いやむしろ水路に頼らず一番近く六十三層の階段へ近づく道を探すことになるのか。
「二パターン、道を探そう。一つは水路に抜ける道。もう一つは直接階段近くまでアクセスできる道。階段同士で最短経路を探すのも大事だが、水路沿いにある程度近づいてアプローチできるならそれも次に近い道になるんじゃないかな」
「面倒くさそうですが次回以降のための手間と考えれば三十分でも一時間でも短くできるのは後日その分だけ楽が出来ますからね。ここでしっかり苦労しておきましょう」
階段を通り抜けて水路のない道を進む。方位磁石を時々確認しながらなので方向感覚は失ってはいない。今歩いてる方向に対してどちらに水路があるのか、というのは大まかにだが把握できている。
その向きに向かえるようになっている道を探す。目視だけでなく、索敵も利用してモンスターによる道が出来ているかどうか、そのあたりも意識しながら歩くとおおよその道が見えてくる。
「ここは真っ直ぐか」
「左へ行くと多分行き止まりですね。試しに確認してみましょう」
左へ曲がると、モンスター六匹を乗り越えると確かに行き止まりになっていた。うん、索敵によるマップ作り、悪くない。目をもう一つ付けたような気分になってくる。もっと早く知れてたら……いや、そこまで索敵を鍛え上げてなかった自分にも問題はある。次はもっとうまくやろう。
先ほどの曲がり角をまっすぐ進んで今度は十字路。心理的にはまず左から選んで階段方向に続いてないかどうかを確認したいところ。モンスターの湧き具合を見るに……道は繋がってそうだな。
「左行ってみていい? なんか繋がってそうな雰囲気なんだけど」
「いいんじゃないですかねえ。向かって左側に水路があるのは確実性の高い話ですし、一旦合流してその後もう一度戻って更に階段に近い道を探すというのでも良いですから」
芽生さんの合意が取れた。つまり芽生さんからも見えているという事だ。これは信頼性が高い情報になる。左に曲がりモンスターを倒し、少し進むと水路に合流することが出来た。水路までの合流ヨシ……と。これで今までよりちょっとだけ解りやすい地図が作れた。
「さて、戻ってもう一段階解りやすい道を探すか。ここより階段に近い道があるならさっきの分かれ道を直進するルートになるだろうからな」
「なんか洋一さんが絶好調ですね。これは何かある前触れかもしれません。よく注意していく必要があるでしょうね」
そんな事は無いと思うんだけどなあ。まあ言わせておくか。つまらない苦情には実績を積み重ねてそうじゃないと見せつけることにしよう。
道を戻ってさっきの十字路を直進方向、つまり向かってもう一度左の道へ進む。ワニだらけの道だがひっくり返す亀の手間を考えるとこっちのほうが戦いやすい。どうせポーションもドロップ品も金にならないのは同じなのだ。エンペラの在庫は充分にあるし、急いで亀を大量に処理する理由もない。
しばらくワニだらけの通路を進むと、左に折れ曲がってそのまま水路に合流した。合流地点を確認して……よし、ここが最短経路っぽいな。階段までおよそ一時間といったところ。やはり、最短距離でつないでみてもこのマップが広いことは間違いないらしい。
「これで最短経路は完成、と。後は解りやすいように道に目印になるようなものがあるかどうかと、曲がる本数、曲がる個数を書き加えて……よし、地図第一号完成だ」
「これでいつでも六十五層に最短で潜り込める形になりましたか」
「細かい所を詰めながら後は道を完成させていくか。全容解明にはまだ時間がかかるが、必要な情報はそろったという所か」
さて、今からどうするか。空いてる地図を埋めにかかるか、それとも六十五層を覗いて帰るか。時間をみると、もう一往復するぐらいの時間はのこっている、というところ。
「時間的に考えると六十五層覗いて帰るぐらいが限界か。チラ見して帰ることにしようか」
「そうですね。次のマップを見ておくぐらいはしておいても次回の参考にはなりそうですし」
早速まだ湧き切っていない道を戻って六十五層側の階段へ到着。さぁ、六十五層以降のマップはどんなんかな。ちょっと楽しみ。
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