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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第二十章:順風満帆の終わり
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1058:六十四層の終わり 1/2

ダンジョンで潮干狩りを

Renta!等いろいろなサイトで発売中です。是非とも続刊のためにもご購入のほうよろしくお願いします。

 水路を下流へ向けて進む。どうやら下流へ向かうのでも上流へ向かうのでも、モンスターの密度に違いはないようでかなりの密度でモンスターが通せんぼをしている。ここのポーションが金になるようになったら相当稼げるんだろうな、と予想はしておくものの、おそらく次のマップのドロップ率に比べればここのモンスターは比較的安値である可能性が高い。


 それに亀の対処の面倒くささを考えると、気軽にスキルと物理攻撃だけであっさり倒せる五十九層のほうが手軽さは上であるような気もする。指輪も出るしな。やはり五十九層のほうが最終的な資産を考えると金になるんじゃないかな。


 水路は適度に曲がりくねっていて、視界を切り続けるためモンスターリポップもしやすい構造になっている。ただ上流側とは違って曲がりくねってはいるものの斜めに水路が通っていないぶんだけ地図は描きやすいな、という感想である。


「階段が水路沿いにあると解りやすいんですけどねえ。希望は達成されるんでしょうかねえ」


 そう言っていると十字路に差し掛かり、水路はここで二分割された、直進か、それとも左に曲がるか、関係ない右に曲がるか。午後からの探索なら水路に沿ってまず地図を完成させることを重点に置くところだが、肩慣らしついでで潜っている都合上どちらを選んでも大きく変わりがない、という状況が少し頭を悩ませる。


「地図全体を考えると、右へ行っても行き止まりの可能性があるからあえて右へ行くというのはありだと思う。ちゃんと行き止まりでしたと地図を描きあげられるのは大きい」

「じゃあ右に行きますか。洋一さんが言うんですから、きっとどこかにつながっている道なんでしょう」


 俺の方向選択への信頼度が高い。もしまた水路にぶつかった時は水路を逆流してこの十字路まで戻ってくればいいという事だな。


 右へ曲がって三分でワニがバラバラに合計六匹。固まって生息していなかったので順次対応という形になり、非常に楽に戦いを進めることが出来た。


「グループ化してないモンスターを見るのはこのマップでは初めてだな。何かこの道には理由が有ったりするのだろうか」

「道がちょっと細いからじゃないですかね。塊でリポップさせるには空間体積が必要なんでしょう、ほら、ゴーレムとか亀もそういう理由で二匹だったり三匹だったりするじゃないですか」

「なるほどな。道の狭さか。そういうダンジョン作成理由があるなら納得だ。なら、五層と八層はなんであんなにモンスターが少なかったんだろう? 」

「そこはその分のリソースが広さに持っていかれたと考えておきましょう。あそこももう少し多ければスキルオーブも落ちやすいでしょうに」

「でも実際に八層でもスキルオーブは落ちてるからな。ここもスキルオーブが出るまで粘る、という手もあるか。真新しいスキルが出なくても、スキルオーブで何かしら自分たちの強化が出来ればそれも一つ万歳するところだ」


 亀とワニから出そうなスキルオーブ……亀からは【魔法耐性】と【水魔法】が出そうではあるな。ワニはどうだろう。対となるなら【物理耐性】だが、それ以外に何か落とすのだろうか。出た時に考えればいいか。今考えたから落ちるならスキルオーブは世の中にもっとたくさん出ててもいいはずだしな。


 芽生さんの目論見通り、曲がった先で更に左に曲がり、水路に合流した。水路を逆に上流へ辿っていくと、先ほどの十字路に帰ってきたらしいことが解る。


「ね、大体言った通りでしょう? 洋一さんの道決定スキルはなかなかのものなんですよ」

「午前中で良かった、という所かな。午後だったらちょっとイラっと来ていたかもしれない。さて、じゃあ改めて戻って水路の続きを探しに行くか」

「いえ、ここは私の勘が上流方向から見て左方向、つまりあっちへ行けばちょうどいい感じの時間で戻って来れると噂しています。是非こっちへ行きましょう」


 またもキャンセルされる俺の方向指示。それでいいならいいよ、もう。俺は諦めた。今後は俺が適当に指示を出して芽生さんに決めてもらう、今更だがその流れで上手くいってるんだから俺がへそを曲げたところでどうしようもない。おっさんの懐の広さをここで見せずしてなんとしようか。


 そのまま分割された水路を進むと、交互に来るワニと亀を通り抜けた後で左に道が曲がって、また数度の戦闘の後左に曲がった。つまり一周して戻ってきたことになる。さて、出口の目印になる場所までそのまま連れて行ってもらうか。


 しばらくすると水路に合流した。前に作った地図と見比べると、階段より少し上流側で合流したことになる。ここはこう繋がっていたのか。埋め切れてなかったマップを一つ埋めたところで時間を見ると、戻るには程よい時間になっていた。芽生さんの計算通りというわけか。


「ほんとだ、言われたとおりにいい時間になった。なんで解ったんだろう? 」

「ほら、【索敵】を鍛えるとモンスターの湧き具合で道が見えますから、モンスターの居る方向やモンスター密度である程度道みたいなものが見えてくるのでそれを参考にしてるんですよ」


 なるほど。そこを展開していけば【索敵】の多重化という新しい可能性を見出せるのか。より範囲の広い索敵が行えるのであれば、モンスターが居る所は道、つまり逆に言えばモンスターの居ない所は空き部屋か壁。モンスターの居る場所を認識し続けることで簡易地図が脳内で作成できるということになる。芽生さんへの期待値ポイントがまた一つ上がったな。


「さて、じゃあ戻って昼食にするか。昼食は回鍋肉とエンペラ三品セットだ。回鍋肉にもエンペラは入れてあるぞ」

「戻ってお肌をプルプルにしましょう。コラーゲンたっぷりで美味しそうです」


 本当にダンジョンドロップの肉にコラーゲンが豊富に含まれているかは数値を測ってみないことには解らないが、あのコリコリ食感は確かにお肌には良さそうだ。後になって実は含まれてませんでした、となってもプラシーボ効果でお肌がきれいになってくれればそれはそれでいいんだろう。


 上り階段を中心にして上流から下流へと歩みを進めていく。索敵範囲を出来るだけ拡大しながら辿ると、なるほど確かにモンスターで道が見えている。迷宮系階層での索敵によるマップ作りというのは確かに効果があるのかもしれないな。


 戦闘を行いながら階段までたどり着いて、六十三層へ一時的に戻る。お昼ご飯は何をするにしても確実に食べておきたい。途中で疲れを感じないためにも、【身体強化】で過剰気味に消費しているカロリーを補給するにも、まずは食べることが大切だ。


 机と椅子を出して炊飯器からご飯をよそって保管庫から料理を取り出す。量はいつも通りだが、午前中はそれほど激しく活動してないためお腹が空いた! ご飯! というほどのテンションではないが、午後からしっかり探索することを考えたら多少過剰気味でも多めに胃袋に入れておいて、しっかり休んで体内にカロリーを溜めこむのも大事だろう。


「やっぱり、D部隊には身体強化用の増加食とか出てるんだろうか。前も気になったような気がするんだが、明らかにレーションだけでは彼らの肉体を保持できないような気がしてきた」

「今度会ったら聞いてみましょう。何なら分けてもらって味のほうを確かめさせてもらうのもいいかもしれません。こっちからはドライフルーツとそれ以外の何か保管庫に入ってるものとか冷えたコーラとかなら交換対象になるかもしれません」


 もぐもぐと良いペースで箸を進めながら、口の中でコリコリと静かに音をさせながら食べる芽生さんから、今日の食事は悪くないという事を感じ取る。味見はしたが好みの味付けではない、という可能性もあるからな。その辺は見た目と箸の進め具合から判断するしかない。


 芽生さんはおごりの飯に文句を言わない今時よく出来た女性なので、お世辞なのか感想なのか解らない時がある。自信がない時はちゃんと正面切って尋ねて感想を聞くことにしているが、こういうちょっとしたメニューなら、表情と箸の進み具合である程度解るようになってきた。


 今日のご飯は中々気に入っている。箸の進め具合からそう教えてくれている。安心して回鍋肉を口にする。ウルフ肉の弾力とキャベツとピーマンのまだシャキシャキ感の残るいい感じに炒められたんだなという食感がいい。


 豆板醤を入れない分辛味が少ないのでその点では他の人には物足りなく感じるかもしれないな。辛味に当たる何かを加えてやってもいいかもしれない。汗をかくほどや水分が欲しくなるほどではないが辛味が感じられるような食材を探してそれを入れてみるのもいいだろう。


 そしてこれは何だろう? よく火の通ったキクラゲのような、コリプリッとしたこの独特の食感がまた楽しい。回鍋肉以外でも何か……そうだな、鍋にでもすると良さそうな具材かもしれない。俺の食レポではちょっと表現しきれない不思議な味わいだ。決して不味くない、とても美味しい。


 本来のすっぽんなら生臭さがあるのかもしれないが、生臭さをほとんど感じさせないこのエンペラはどこの清流で育てられたのか、と問いそうになるぐらいだ。きっと大事に育てられたのだろう。


 この地下水路マップの水は生臭くなく、おそらく魔素を大量に含んでいる。四十二層もそうだったし、生臭い滞ったドブのような場所というものを表現することにそこまで拘らなかったのだろうな。


 おっと、考え事をしていると全部芽生さんに喰われてしまいそうだ。こっちも負けずと食べないとな。量が足りない訳ではないが物足りなさを覚えない程度には食べておきたいし、次回の味付けにちょっと気になることもできた。この味を覚えておいて、次回の味変に活かしていこう。


 一通り料理の自己評価をして腹を満たしたので満足した。料理は芽生さんが綺麗に平らげてくれたので夕食に回す分の食材は無い。夕食は軽めのタンドリーボア肉なのでちょっと不満が残る可能性があるが、まあ足りなかったら帰り道に何か買いたすということにしておこう。


「休憩したら本番ですね。階段は何処にあるんでしょう? まだサッパリ影も形も見えませんが」


 片付けを終えた机の上に地図を広げて、今までに巡った部分について論議する。


「水路がここまで来ていることは確実なので、おそらくこの水路と水路の間の範囲も地図上に存在する場所だとは思われる。なので全体を見回すためにもまず当初の予定通り下流の端っこまで見てから階段探しって手順になるかな」

「下流が短いと無駄に歩く範囲が少なくて済みそうですが、下流までたどり着いたらその後はどうする予定ですか? 」

「出来るだけ六十三層への階段から近いほうから埋めていくことになるかな。上流のほうに無かったからといって下流のほうにあるとは限らないし、階段と階段の間が常に遠くにある、常に近くにある、という法則は無いから、そこそこの距離にあるような気がする。なので……この辺から探索かな」


 六十三層への階段から一定距離になる範囲を鉛筆でちょこんとマーキングすると、この辺りをまず試しに探してみようと提案。解っていない範囲がまだまだ多いしこの階層は解りにくい曲がり角や分かれ道が多い。傾向もはっきり解らないのでこういう地形にはここにこれがある、というものはなかなか判断できない。


「下手にうろつくよりそのほうが解りやすいですし、普段の巡り方からするにそのやり方がシンプルで良さそうですね」


 芽生さんも納得している。芽生さんの納得が得られたということは、睨んだ場所付近に階段がある可能性はかなり高まった。これは今日中に六十五層行けるな。


 満腹ではないが腹六分から八分というあたり。昼食としてはそこそこの質量を胃に優しく流し込んで、お肌のために少し横になる。起きてお肌がプルプルになっていればこのエンペラの美容効果はかなり高いものだということになる。さすがに三十分そこらでは変わらないとは思うが、それでもちょっと期待してしまうあたり、芽生さんと同類なのかもしれんな。


 しかし、テントで広く横になれるのは中々良い。マップが大自然のど真ん中、七層や五十六層ならばよりキャンプで寝てる感は出てるだろうが、残念ながら地下の少しジメッとしてそうな、あまり環境としてはよろしく無さそう。それでもカビが生えたりという心配が無いのはダンジョンならではなのかもしれない。


 ダンジョンの中でテントにカビが生えてそこから周りに迷惑をかけている、という話は聞いたことが無いので、もしかしたら次元の壁をくぐるあのつぷんとした感触の時点で細菌類やらカビやらの胞子はある程度遮断されているのかもしれないな。またダンジョンの謎が増えた。いずれ何かの際にミルコに問い合わせでもしてみるか……と、忘れてた。ミルコにお土産渡さないとな。


 机の上にお菓子とコーラとミントタブレットを忘れずに備えるとパンパンと手二拍。数秒の間の後、お菓子は消え去っていった。よし、これで後ぐされなく潜れるな。

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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ウルフ肉って要は犬肉だよね 普通に食べてるけど抵抗あるな~
> 洋一さんの道決定スキルはなかなかのもの」 逆に > コラーゲンが豊富に含まれているか」 マコラーゲンなら ドロップ食品 →カロリーは無い? →魔素が摂取できる →体内で魔素を元にエネルギーや必…
見た目とか雰囲気の再現くらいで衛生面とか臭いの不快さまで再現なくてよかったですよねえ新マップ
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