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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第二十章:順風満帆の終わり
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1049:買い足し買いたし

ダンジョンで潮干狩りを

Renta!等いろいろなサイトで発売中です。是非とも続刊のためにもご購入のほうよろしくお願いします。

 ギルマスは報告を聞いて満足そうにしている。おそらく、二十八層が狭すぎてテントが張れないとかそういう苦情が出始めていたのかもしれないな。


「なるほど。君らも一応テントは張ってるけど使ってないという辺りかな? 」

「そうですねえ。私はソロで潜ることがほとんどないので途中に張ってきたテントたちも含めて置きっぱなしにしてる状態です。もし邪魔なら撤去しても? 」


 芽生さんが質問気にこちらに目線を送ってきた。ここは俺が対応しなきゃいけない所か。


「そうですね。本当にひっ迫しているようならテントを撤収するつもりではあります。二十八層で一服して……という可能性は今のところ低いですし、そもそもテントはここまで潜ってきてる探索者が居るぞ、というアピールの意味もありますので、他の探索者が潤沢に存在する以上テントを張ったままにしておく意味は薄いかもしれません」


 ギルマスは返答を聞くと、満足をしたようだ。


「まあ、テントに関しては実際に苦情みたいなものが出ては来ている。エレベーターで上り下りすれば解決する問題ではあるんだけどその費用を少しでも減らしたい人からすれば問題だろうからね。もしも映像か何かで今の状態が撮影されてきて、こんな状態ですけどどうすればいいですか? みたいな話が舞い込んできたらテントの設営場所を空けてもらうことは考えてはいる、とだけ伝えておくよ。今のところは苦情を耳にした程度だからまだ大丈夫かな」


 ギルマスが一息つく。どうやら面接テストは終わったらしい。


「で、ダンジョン庁に鑑定をお願いしたいものってのは何かな。ドロップ品かな? 」


 また芽生さんのほうへ目線が向く。芽生さんはまた私か、という気持ちをゆらりと出しつつも、再び説明を始めた。


「洋一さん、ポーション出してください」

「あいよ」


 保管庫からポーションを四本取り出す。ギルマスの机の上に置くと、芽生さんが説明を始める。


「これは六十一層から初めてドロップした種類のポーションになります。洋一さんの保管庫の簡易鑑定の結果でも「ポーション」としか表示されなかったので、完全に新規のポーション……今までの流れと順番から言えば、キュアポーションのランク5に相当する品物だと考えられます。ダンジョン庁にはこのポーションの効力と価格を決めて、査定にかけられるようにお願いをします」

「これまでの流れの価格だと、これはいくらになりそうだね? 」

「ええと……五千……五千……洋一さんパス」


 値段までは暗記してなかったらしい。これは減点対象だな。


「これまで通りポーションが新しくなるたびに三倍の値段が付く場合、五千八百三十二万円になるはずです」

「です」

「つまり、この四本だけで二億円ちょっとの値段がするわけか。いったいどれほどの効力を持っているんだろうね」


 そんな高級の可能性があるポーションをギルマスが指先でチョンとつまんでぶらぶらさせている。落として割りでもしたらどうするつもりなのか。芽生さんは若干慌てているが、それを狙っての行動だろうな。


「これはダンジョン庁本部に送ってキュアポーションのランク5であるかどうかの確認と、どれだけの治療薬としての価値があるかを見定めるために、間違いなく私が預かって報告と輸送、それから効力の確認を請け負うよ。いくらになるか……まではさすがに私が関与できる範囲ではないかな。もしかしたらいくらなんでも高すぎる、と使う側から苦情が飛んでくるかもしれないからね」

「あ、やっぱりそう思いますか」

「五千万で治る病気が安いと感じるかどうか、かな。現状ランク4でも治療待ちだったりする患者が居るらしいからね。それに、ランク4でも治らなかった病気がランク5なら治るという保証があるわけではない。やはり不治の病にあたる方面の病気で使われることになるだろうね」


 キュアポーションのランク5か。一体どんな病気に効く事やら。すくなくともランク3でも慢性腰痛に効くことは自分の目で見て解ったので、もっと難しい病気に効果を発揮するんだという気はしている。もし効かなかったり効く適用範囲が狭いなら、今回の価格改定でキュアポーションの値段が下がっているだろうからそういうわけではない、というのは何となく肌で感じる所ではある。


「じゃ、報告はこの辺で終わりかな。後はまあ、昨日も朝早くから査定作業してたって話は聞いてるし、本当にゆっくり休んでね。今日は何か予定あったりするの? 」


 ギルマスがいつもの調子に戻った。報告会はこれで終了、通常業務に戻るといった感じだ。


「私は今日はゆっくり休んで明日面接ですね。さっきのは予行演習だと思っておきます」

「お、気づいたかね。まあそんなに頭に詰め込んで色々質疑応答するようなことはないとは思うけど、自分のやりたいこととやれること、今後の展開については話せるようになっておいたほうが良いとは思うよ。今更言われても、とは思うかもしれないけど経験者としてはそのぐらいかな」


 そう言えばこの人も公務員だったな。昔を懐かしむような感じで話すあたり、初々しい新人が目の前にいる、という形なのだろう。そう言えばこの人、ダンジョン庁に来る前は何処に所属していたんだろう。ちょっと気になるがまあ聞かないでおこうかな。蛇が出てきても困るし。


「俺のほうは六十三層用のテントがまだ手元にないのでそれの買い出しですかね。後はエレベーター脇に設置してる机とノートのセットも補充したいですし」

「あれは中々活躍しているようだね。横のつながりが取りやすくて便利だという評判が上がっているよ。他のダンジョンでも同じようなことを導入してみたらどうだろう? という意見もあった。たまに確認したりしてるのかな? 」


 あれは評判がいいらしい。確かに地上に戻ってネットで調べて……とやるより、現地のノートでそれぞれ情報交換した方が早いのは確かだ。ネットが繋がらないダンジョンが大勢である現状、各階層のスキルオーブの出現状況やボス退治の時間なんかを知るためにも今後も活用されていくことだろう。特に活動が念入りなのはおそらく二十一層と二十八層だ。


 その内三十五層も使われていくような気がする。またノートの補充がてら色々見に行くか。


「じゃ、仕事のお邪魔でしょうから俺達は退散しますよ。また連絡することがあれば伝えに来ますので」

「よろしくねー」


 ギルマスルームを後にして休憩室に戻り、座り込んでいつもの冷えた水を飲む。ふぅ、お仕事モード解除。さて、帰るか。


「この後どうする? 暇なんだったよね」

「洋一さんは大きめの買い出しでしたよね。余裕がおありなら買い出しデートでも行こうかとも思いますが」

「体のほうは大丈夫? 疲れ溜まったりしてないか? 」


 芽生さんのあちこちをチェック。ふくらはぎが張ってないかとか肩の様子とか色々チェックする。


「さすがに歩き疲れはしましたねえ。でもそのぐらいですね。それにデートは別腹ですから」

「だとしたら昼食もかねてお出かけということにするか。一旦家に帰って荷物置いてから車で行くぞ。買い足すものが結構あるんだ。そういえば明日面接だって言ってるのに大丈夫か? 」

「まあ、なんとかなるでしょう。出来ることはやってきたつもりですし。今日はしっかり寝て明日早起きですがそれまでは何か一緒に居たいというか、今の内に疑問があればすぐ横に解説者が居れば安心できますし」


 帰り道のバスを待ちながら既に気温が上がり始めているこの朝の時間でも、数分待つのはちょっと辛い。やはり温暖化は進んでいるらしいな。朝でこれなんだから昼で上がって帰るような連中はもっと大変なことになるだろう。


 生活魔法で冷風を出して二人分だけ軽く冷やす。


「あー涼しい。扇風機ほどではないにせよ便利ですねえ。多重化させたらエアコンぐらいの出力は得られるようになるんでしょうか」

「どうだろうな。それも考えないでもないけど【生活魔法】にはまだまだ発展の余地があると俺は考えている。前に試しにペットボトルをゴミと認識させて、ダンジョン内でウォッシュで分解しようと試みたが半分までしか達成することが出来なかった。多重化させたらペットボトル一本ぐらいは完全に消滅させることは不可能じゃなさそうだ」

「そのために多重化させるんですか? なんか非効率ですね」

「それならまだ【雷魔法】を多重化させてより高威力を目指した方が有意義であるのは確かだ。その辺の分別は付いてるから心配しなくても大丈夫だぞ。もし何かの拍子で【生活魔法】が出て、芽生さんが覚えないなら多重化させるのも悪くないなレベルの話だ」


 そもそも多重化させたからうまくいくかどうかも解らないし、ペットボトルを一本、黒い粒子に変えてみてそれがどうだと言われたらそれまでである。大道芸でももうちょっと派手な演出をするだろうし面白さで言えば【雷魔法】でなにもないところから雷玉を出現させて自由にコントロールするなら今でもできる。完全に無駄と言い切ることは出来ないが無駄に近い話ではある。


 バスが到着したので乗り込み、生活魔法の送風を切る。バスの中はそこそこ冷房が効いているので大丈夫だ。そのまま駅へ到着すると最寄り駅まで電車で帰り、家に着いた。


「お邪魔しまーす」

「ただいま」

「おかえりー」


 二人で一芝居うった後、洗い物と片付け物をした後で車で早速買い出しに出かける。行く先はいつものホームセンターだが、今日は買う物が多い。普段の生活雑貨もそうだが、経費で落ちるテントと経費で落ちない机セット、そして経費で落ちないだろう食料品。まずは経費で落ちるものから買っていこう。


 まず、二人一緒に過ごせる様な前にも買ったテント、四十九層や五十六層と同じタイプの大きいテントを一つ選んで買う。エアマットもいつものを仕入れる。


「せっかくお金あるんですし色々いいものを見て回っては? 」


 芽生さんが良い質問をしてくるので、ちゃんと同じものを購入している理由を答える。


「なら芽生さん自分の分好きなのを選びなよ。俺は寝慣れてるいつものを選ぶから。階層によってエアマットが違うとあの階層で寝たほうが良く眠れるからって移動するようなことになってしまわないように同じものを使うことを心がけてる。確実にこれは眠れるぜ、というエアマットがあればまた別だろうけど、そういうものは無さそうだからいつもので良いんだ」

「なるほど、そういう意味で同じのを使いまわしてたんですか。そう言われると選択する気が無くなってきました。確かに階層で寝てる実感が変わると寝起きの気分も変わりますからね」


 いつもの物を使うことで納得したらしい。しかし、芽生さんの言にも一理ある。確実に快眠を保証してくれるようなエアマットがあるなら一度見てみたいし使ってみたいという欲求もまたある。今度アウトドア専門店でも巡ってエアマットの寝比べが出来るなら試してみたいところではあるな。明日は休みにして専門店を回って良い一品を探してみるというのも悪くないだろう。


「とりあえず今日のところはこれでいいとして、後日もっといい一品が有ったら試しに二人分買ってみて寝心地を試してみるのも有りだな。明日は早速休みにして色々試してくることにしよう」

「ぐぬぬ……ついていきたいところではありますが、専門店でないと手に入らないというのも問題点ですし、そもそも明日は大事な面接ですし我慢しておきましょう。後で感想を聞くことにします」


 とりあえず経費で落ちる物を先に購入して会計。全部で七万円ほどになった。まあテントとエアマットだけならこんなものだろう。


 一旦荷物を車に置きに行って保管庫に収納すると、次の買い物。次は私物全般だ。机セットも表向きは俺の私物……ということになっているのでこれは経費で落ちるものではないと考えている。


 ダンジョン庁にこの分も経費で出してくれと申請すれば多分購入分については経費というかダンジョン庁持ちの分として支払われる可能性はあるが、そこまでけち臭いことを言うつもりはないのでこれも個人出費で良いだろう。


 据え置き用の机と椅子と補充用ノートとペンと、それらを収納しておくラックとを一通りそろえたところでコーヒーの買い置きや消耗品の買い出し、あとは気になるようなものがあれば何かあれば、というところだ。芽生さんは途中からフラフラと見たいものが出来たようで飛んでいった。会計までには戻ってきて欲しい。

作者からのお願い


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続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
> 買い出しデート」 それは買い出しでは > あちこちをチェック」 公然検品作業に励むおじさん > 何か一緒に居たい」 温度上がっちゃった > 試しに二人分」 試しじゃ無かったら何人分なんだろう…
ポーションが出回り出したら現代医学が衰退しそうやなぁ(;´∀`) 金さえ払えば飲んで治るってなると研究する意義が薄れそうだ、、、まぁそうなっても変わり者はどの時代にもいるから研究はしていくんだろうけ…
こんなデジタル時代になってきても場所によってはアナログなノートがしっかり活躍してるってなんかいいなー
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