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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第二十章:順風満帆の終わり
1046/1207

1046:深夜の六十四層 1/2

ダンジョンで潮干狩りを

Renta!等いろいろなサイトで発売中です。是非とも続刊のためにもご購入のほうよろしくお願いします。

 やはりワニのほうが生息数が多い。地下水路マップ全体の共通点としてそう感じる。ワニが七で亀が三か、ワニが六で亀が四、もしくはその中間あたりだ。魔結晶の数からしてそれを見出すことが可能になっているのは保管庫の便利な点だ。


 他の探索者なら重さ換算だからとまとめてぽいぽい同じバッグに入れていって、事細かに数をそれぞれで管理している探索者はそう多くないだろう。検証スレの人たちは各階層のモンスター分布や一階層潜る間のモンスター数とその傾向なんかを分析するためにカウントはしているだろうが、それぐらいのものだろうな。


 ワニを雷撃で焼き続けながら進軍していくと、ちょっと広間に出た。広間には亀が三匹。やはり出てきたか三匹セット。さて、どうするかな?


「近づいてくる順番に焼いて転がすか、一匹を黙らせておく間に、残りの二匹を一匹ずつ担当して内部を攻撃する方法で処理するか、やり方はいくつかあるな。どうするね」

「極太雷撃でやるにしても背中の甲羅には魔法が通じにくいですから、やるにも転がしてからでしょうし、難しいですね」


 まだ亀が気が付いていない内に戦術確認タイム。手持ちで使える戦術はそう多くないし、相手の攻撃力、噛みつきの力や実際受けた時の【水魔法】の威力は未知数だ。


「とりあえず一匹の相手任せた。その間に二匹目転がして……その後で三匹目を転がす作戦で行ってみようか。間に合わなかったら三匹目は転がさずにそのまま相手の内部に刃を入れる感じで。油断すると転がしても首だけ伸ばして【水魔法】を撃ちこんでくる可能性があるからね」

「なら、今回は完全に一匹任せてもらうことにしましょう。最初の牽制の雷撃だけお願いします。残りはこっちの進捗にも依りますが戦い終えた段階でヘルプに入りますので」

「後は念のため両耐性の指輪を装着しておこう。こういう時に防御力の底上げをしておけばダメージ軽減措置としては必要なことだろうし、怪我してからはめときゃ良かったとなるよりあらかじめ準備しておくほうがいい」


 保管庫からそれぞれの指輪を取り出すと両手の中指に装着。ちゃんとジャストサイズで締め付け過ぎず緩すぎず、良い感じに指にフィットしてくれた。これでどのぐらいダメージを軽減できるのかは解らないが、無いよりはマシだろう。


 芽生さんはどの指に着けるか少し悩んだ後、こっちを見て同じく中指にはめた。


「よし、では行きますか」

「多少の失敗は次回への教訓として生かしていく形で。まずは当たって砕いてみることにする」


 亀に対して牽制の全力雷撃。亀三匹は探知外からの攻撃に驚いて首を引っ込める。一番手前に居る亀は芽生さんに任せて、俺のほうは奥の二匹を転がすべく、更に追撃の雷撃を放って頭を出さないように注意をしておく。もしかしたら噛みつかれるかもしれないし、すっぽんみたいに噛みついたら食いちぎられるまで離してくれないかもしれない。それは困る。


 早速手前の亀を転がすと、首がこっちと芽生さんのほうへ向かないように軽く角度を調節してから三匹目の転がしに入る。転がした亀はじたばたしているが、自力で元に戻るのは中々難しいらしい。時間をかければ自力で戻ってくれるかもしれないが、それをじっくり観察するのは今ではない。


 三匹目も転がすと、芽生さんのほうへ視線を向ける。芽生さんは魔法矢の連射で頭を完全に出させない間に槍を差し込み、その中で魔法矢を炸裂させたらしい。亀の甲羅の内側から中々の勢いで黒い粒子が噴き出す。どうやらいい感じのところに槍が入ったらしいな。そういう倒し方もできるってことが一つ解った。


 こっちもトドメをさしに入るか。亀の甲羅の腹の柔らかい部分に雷切を差し込み、全力雷撃をさらに追加で重ねる。亀は一瞬で蒸発し、甲羅を最後に残すように腹側から黒い粒子が噴き出していく。


 これで二匹。残り一匹は……顔が出て来ているのでもういっちょ雷撃。流石に腹側から喰らっているからか、雷撃に応じた分の黒い粒子が噴き出し、亀の肉体を焼く。流石に同時に三匹出てくると面倒が増えるな。


 芽生さんが突出して前へ出て、亀の腹に槍を差し込み、槍の先端から魔法矢を複数同時に射出して穂先を中心に魔法矢が何本も亀の腹に刺さる。刺さったところから黒い粒子に変わっていく。もう一息だな。最後に雷切を頭の出てくる部分から刺しこみ、全力雷撃を流す。これで三匹目も黒い粒子に還ることになった。


「ふぅ……なんとかなったな」

「攻撃を受けなかったのが大きいですね。攻撃されてた場合もっと違う形での戦闘になっていたと思います」

「とりあえず指輪はこのまま着けて進むか。ワニに噛まれたらこんな指輪では耐えきれないぐらいのダメージになるかもしれないが念には念をだ。指輪の個数が足りないならまた五十九層あたりでかき集めればいいしな」

「無くさないように注意だけしないといけませんね。いくらするのかもまだ解ってませんし」


 まあ、忘れなければ大事にしてくれる事だろう。そもそも【物理耐性】も【魔法耐性】も、どうすればより強固になっていくのかが解っていない。もしかしたらダメージを受けないと成長しないようなスキルだった場合、異世界転移用のトラックにぶつかり続けて耐久力を付けるとかそういう行為が必要になってくるかもしれない。


 もし【魔法耐性】も同じならば俺と芽生さんが互いにスキルを打ち合って耐性を鍛えるような事態が必要になってくるのか。これはこれで気が引けるので何かもっと別の方法があるのか、それともスキルを重ねるか、指輪みたいに外から補助することでより強化していく形になるのか。


 とりあえず今は指輪の個数を稼ぐことでごまかしていく形にするか。【魔法耐性】については……ケルピーかドウラクあたりの【水魔法】をひたすら受け続けて耐性を得るなんて方法もあるかもしれない。誰か検証スレで検証してないものか。帰ったら調べてみるか。


 引き続き亀三匹が出てきた時の対処法を話し合いながら、ワニ三匹を気軽に焼いて回る。こっちは口を開けていれば中を直接焼くこともできるので亀ほど手間取ることは無い。口を開けてこっちへ寄ってくるようなおまぬけさんにはちょうどいいお灸の据え時というわけだ。


 ワニ四匹の場合でも同様だが、全力雷撃二発で動きが鈍くなるので、そのぐらいの蓄積ダメージになるように極太雷撃を全体に振りかけると良い感じに手間取らずに倒すことが出来る。やはり問題は亀の対処か。でもエンペラ美味しかったから気軽に食べたいところではある。


 気楽さを考えると六十二層あたりの密度で我慢して頑張るか、それとももう二段階ぐらい【身体強化】と【雷魔法】の熟練が上がるまで六十四層で戦い続けるか。どちらにせよこの階層では指輪は手に入らないのでもう少し数が欲しい所ではある。今後の活動方針にもよるが色々考えて行かなくてはな。


 マップ埋めの行程に関してはモンスターの密度がそれなりに高いためゆっくりではあるが、確実に進捗が進んでいる。もしかしたらここが一番下流になっていて、上流が実は遠かった、というオチが待っている可能性もあるが、水路を見失わない限り地図を描き間違えても階段にはたどり着けるという一つの安心感があるので大丈夫だろう。


 そう言えばワニも亀もまだ見ぬスキルを何か持っていたりするんだろうか。スキルの内容によっては乱獲による絶滅も視野に入れて戦う所だが、いかんせんポーションのドロップ率があまり芳しくない。体感一%かそこらだろう。これは他のランクのポーションも同じだが、最初に出始めた時は非常にドロップ率が低い。マップを切り替えてモンスターが新調されるとともにドロップ率が向上していく傾向にある。


 このマップで一%なら次のマップでは二%ぐらいまで上がっている可能性が高い。次のマップに向けて頑張ることにするか。ここは青魔結晶とエンペラの美味しさとまだ解らないワニ革と亀の甲羅の利用方法に思いを馳せつつワニを雷撃で焼く。


 ワニの革……というかクロコダイルの革は乱獲を防ぐ目的で色んな方面から非難を受ける素材ではあるが、牛や他の革よりも耐久性が優れているらしいとどっかで読んだな。だから人気の品であるが、素材の素になるクロコダイルの数が減少しすぎないように調整をしているらしい。


 こんなダンジョン深くまで潜ってくる必要こそあるものの、クロコダイルの革が半無限に採取できるという環境は探索者にとっても皮革業者にとっても美味しい話に違いない。いくらの値が付くか楽しみではある。


 家に帰ったら手芸用の革売りのクロコダイルの値段を調べてみるのも有りだな。大きさもそうだが、品質で言えば既になめしてくれてあるそのまま出荷できる状態の革っぽいので値段が割と近い所でギルドから引き取られるかもしれない。異世界でもワニ革の服飾品は高価だったりするのかな。


 そのまま水路沿いに進む。水路からよくワニが上がってくるのでちょくちょく乾燥をかけて靴やズボンが濡れても大丈夫なようにしているし、何より靴下が濡れたまま行動するというのは精神的に割とくるものがある。


 さすがに【生活魔法】もここまで来ると便利を越えて、無いと不便という感じになってきたな。出来るだけ自分たちも濡れないように水しぶきを浴びないようにと注意をしてはいるものの、近接で戦闘に入る都合上どうしても多少は濡れてしまう。


 もし【生活魔法】無しでここまで足を踏み入れていたらと考えると、五十層に引き続きここも諸般の理由で通過が難しいマップとしてカテゴライズされていくのだろう。


 水路は一直線ではなく、曲がったり複数個所の三叉路十字路を越えて流れている。分流地点には出会っていないので、一本の大きな流れ、という感じではある。壁から細い溝のようなものから地面を通って小さな流れを作り、そのまま水路に合流するような細い流れはいくつかあったので、これも地図の参考にとマップには記してある。数はそれほど多くは無い。


 戦い続けている間に、ついに上流が二つに分かれた。少し細くなった水路が二つあり、そこからここまで歩いてきた真横の水路に対して水が流れ込んでいる。ついにどっちへ行くかを選ぶ選択肢が出来てしまった。


「どうしますかね? どっちに行きましょうかね? 」

「芽生さんが選択すればいいんじゃない? 俺が選択したとしてもそっちへ行かないんだから」

「あれ、もしかして拗ねてます? 」


 ちょっといたずらしすぎたかな? という感じで芽生さんに心配させてしまった。


「そんなことないですーすねてないですー」

「じゃあ、洋一さんならどっちに行くんですか? 」


 お、選択の自由を与えられた。これはどっちへ行くべきか。十字路になっていて一つは水が流れていない方向。進んできた道基準に言えば奥側か左側から水は流れてきている。これは水の流れの都合上水のあるどちらかへ進んだほうが迷わないだろう。


「じゃあ、左へ行こうかな」

「たまには信じて向かってみましょう。しばらく信じない間に野生の勘が磨かれているかもしれませんからね」


 素直に俺の言うほうに進むらしい。さて、当たりを引いたら……そもそも当たりってどういう状況を指すんだろう。行き止まりなのか、それとも階段なのか。そこを意識せずに左と言ってしまったな。もうちょっと熟考を重ねるべきだったか。


 水流の合流地点を左に曲がって十分、行き止まりにたどり着いた。


「行き止まりがすぐにわかっていい選択でしたね。合流地点からもう片方がどうなってるか考えずに済むようになったと言えます」

「そうか。地図的には確かに大事なことかもな。そして俺の進路はまたあてにならないことがひとつ積み重なった」

「気にせずに行きましょう。これで余計な気を回さずに上流を目指していくことが出来るようになったのも一つの進歩だと前向きにとらえていくことが必要です」


 そうか……そうだな。たしかに、階段が見つからない間にやっぱりあっちに行けばよかったんじゃ、と気にならなくて済むのは戦闘に集中することもできるし、悪い選択では無かったということか。


「よし、前向きに考えよう。さあ、もう片方の上流へ行って行きつくところまで進んでみるか」

「その意気です。戻りましょう」


 道を戻り、水路の合流地点まで帰ってきた。今度は水路を確実にたどっていける。もう一回か二回ぐらい合流地点が現れるかもしれないが、少なくとも帰り道は水路を戻ったところにあるので迷う心配はない。さあ、次の目標物を見つけにまた戦いながら歩こう。

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
> どの指に着けるか少し悩んだ後」 指輪をそのまま渡しちゃうおじさんと、嵌めてと言えない芽生さん > 当たって砕いてみることにする」 モノローグをぶつぶつ呟くおじさん > 角度を調節」 ひっくり返…
これからも芽生さんの勘に頼る事になりそうですなw
( ◠‿◠ )
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