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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第二十章:順風満帆の終わり
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1043:六十三層強行軍 2/2

ダンジョンで潮干狩りを

Renta!等いろいろなサイトで発売中です。是非とも続刊のためにもご購入のほうよろしくお願いします。

 六十二層をうろうろ。地図は良い感じに描けて来た。今のところ見た感じ、東西に大きく伸びて細かい所を埋めてきた形になる。やはり地下でも方位磁石は有効らしい。


 どうやら水路は東西に流れているらしく、このまま水路沿いに階段があってくれれば解りやすいものなのになあ、という思いがある。しかし、そんな思いもどうやら思っただけで終わってしまったらしいな。


「行き止まりですね。しかも壁の下から水が流れて来ています」


 芽生さんの解説通り、壁の下から水路が出てきている。ご丁寧に鉄格子まではめてある。


「これは六十一層で見たアレと同じでこっちがこの階層の始点、ということだろうな。つまりここが東西の端っこか。これはますます六十三層への階段のあてが外れた。飛ばしてきた脇道を一つ一つ確認しながら戻るか」

「それしか方法は無さそうですね。私の予想もここまでで終わりですか」

「ここからは一つ一つ丁寧に脇道を潰していくしかないな。とりあえず一つ戻って手前の道から進んでいこう」


 奥まで行きついたところで道を戻って、水路沿いではない水なき道まで戻って進む。六十一層はともかくとして、六十二層は東西に水路が長く流れていて、最上流には何もないということが解った。そして六十一層への階段は割と中途半端な所にある。とすれば六十三層への階段も中途半端な所にあるということだ。作った道なりにオブジェクトがあるというわけではないんだな。


 歩いて戻った脇道の手前にワニ三匹。雷撃で焼きながら芽生さんにトドメを任せ、こちらはスタンに集中する。思えばこの戦い方は芽生さんに肉体的負担が大きめだな。お疲れだったのはそのせいかもしれない。他の戦い方も模索していこう。


 そして、三匹目のワニを倒した時に、ついにポーションがドロップされた。


「お、これはまた見たことないポーションですね。色も……色は無いですね」

「保管庫に入れて水と表示されなければポーションだろうな。これで水路の水だったりしたらさすがにがっかりしてもう二度とこのマップは利用しないかもしれん」


 保管庫に早速入れてみると、何かのポーションと表示されたので水ではないことは確定した。お値段はまだ解らないが、ここまでの法則通りに価格が設定されるならば五千七百二十万円のポーションということになる。


「さすがに一本だけ渡してサンプルです、と言い張るのは難しいだろうからな。三本ぐらい集めた後サンプル提出って事にしておこう。それまではドロップが渋かったと言い訳が出来る」

「大丈夫ですか? 三本集めるのに相当かかりますよこのペースだと」

「この階層だと三時間粘って一本ってぐらいだろうからな。六十四層に潜るようにすればもうちっとマシなモンスター密度になるだろうからドロップは見込めそうではあるけど、それでもドロップ率が低いことに変わりはない。むしろさっさと次のマップへ行ってしまうほうがドロップ率は高いかもしれない。そう考えると急いでかき集める、という行為はそれほど重要じゃないと思うね。落ち着いていこう、まだ今日この階層に来たばかりなんだ」


 焦って出るなら俺もそうしたいし、もしこれが明日届かなければ死んでしまう人……いや、実際に居るのかもしれないが、そこまで俺は責任を取れないしその責任まで背負って探索者をやるべきではない。


 それを言い出すと我々は二十四時間働いてより多くのポーションを医療現場に運ぶべきなんだと言われてしまうからな。そこまでの責任を背負って探索者をやらねばならんのならみんな探索者なんてやらないだろう。


 今は落ち着いて証拠集めをする時間だ。ついでに言えば六十三層の階段を見つけてここまで楽に潜り込めるようになることを優先する。ここで焦って取り返しのつかないことに発展する前に心を落ち着ける方が大事だ。


「とりあえずポーションは落ちる。それが確認されただけでも充分戦果としては上がっているのだから心配しなくていいと思うよ」

「そうですね。そのぐらい気楽に行く方が案外うまくいくかもしれません」


 先へ進む。今ポーションが落ちたのだからしばらくはポーションが落ちなくても不思議はない。ある意味では安心して戦闘に挑める環境が出来上がりだ。これで地図作りにも身が入ろうというもの。


 安心しながら亀を転がす。もうポーションは出ないからしばらく気持ちよく探索が出来るなあ……と、亀の腹を柔らかく切り刻んで黒い粒子に還したところでドロップを見る。青い魔結晶、エンペラ、そしてポーション。


「……稀によくあるって奴かな、これは」

「あっさり二本目手に入ってしまいましたね」

「これは三本目に期待してはいけない奴だな。良いことばかり起きて悪いことが起きないように。うっかり事故しないように気を付けていこう、うん」


 レアドロップの偏在を確認したところで道をたどって階段を探す。足をいったん止めて、地図全体をよく俯瞰して観察してみる。


 東西に大きく水路が通っており、西の端っこはさっき確認した。東の端っこは確認していないが、進んできた地点を考えると、残り五分の一ほどが未確認であるから、そっちに端っこがあるんだろう。水路を乗り越える橋のような建造物は今回は確認されていない。つまり、東西で言う所の南側だけにこの六十二層はマップが存在している、ということになる。


 と、すると最初に俺が真っ直ぐ奥に行こうと言ったその先が東の端っこだった可能性は非常に高い。この場合俺の進むがままに歩いた場合マップ全体を広く探索することは叶わなかった可能性が高いので、今回も芽生さんは最初の地点については当たりを引いたことになるな。


 下流側には多分何もないだろう。これはマップをよく練り歩いてみないとはっきりしたことは言えないが、階段から考えてこの近さにもう一つ階段を設置する、というのは明らかにダンジョンとしては設計ミスと言える。だとすれば、中央のほうに近寄っていってその先を探す方が確率は高そうだな。


「地図の再確認は終わりましたか……と、この辺怪しいですね」


 俺が行こうと提案しようとしたエリアあたりを指さす。こういう時の女の勘は当たるんだ、と自分に言い聞かせ、そして俺もそこが怪しいと思ってるんだとは口に出さずにおく。そうするとじゃあこっちじゃないですね、と言い出しそうな予感すらある。


「じゃあ指示通りに向かってみますか」

「任せてください。方向感覚には自信があるんです」


 また水路の無い道を曲がったり折れたりしながら、戦闘を繰り返して進む。目標の場所までは真っ直ぐ行けば十五分、戦闘込みで二十分、曲がりくねってたら更に五分、というところだろう。


「さすがにそろそろ階段が見つかって欲しいな。結構迷った気がする」

「そうですねえ。最短ルートを確保するのもありますし、無事に六十三層に下りれたらその次は最短ルートの確保に向かいますか」


 芽生さんも最短ルートでは来れていない、と感じているのだろう。五十六層で休憩したら六十二層の全容解明に向かうのがベターかな。六十四層はまた次に潜った時に残しておくことにしよう。


 ワニ、亀、亀、ワニ、ワニ、亀、ワニ。戦闘を繰り返しながら目標となる地点までやってきた。階段は……あった。女の勘はちゃんと機能していたらしい。


「やっとたどり着きましたね」

「そうだな、ここは結構長かったな。東西に突っ切った後真ん中まで戻ってくるという遠回りではあったが、無事に階段に到着したことをまず喜ぼう、わーい」

「わーい。さあ下りましょう」


 階段を下りて六十三層へ到着した。六十三層に下りた先は水路が目の前。そして下りたすぐ先にマップの端っこの表示である、鉄格子のはまった水路と壁。端っこスタートで解りやすくてよろしい。


 しばらく進むと、相当広い場所へ出た。天井も他の区域に比べて高く、直径五十メートルほどのドーム状に広がっている。水路は端っこのほうに押しのけられ、真ん中に広いスペースが出来ている。ここでテントを張れ、ということだろうな。所々には柱もあり、天井を支えている雰囲気が出ている。


 たしか東京のほうには巨大な地下放水路があったはずだが、イメージ的にはそれの何周りか小さいもの、という感じだろう。


「ふむ……休憩場所としては悪くないがエレベーターの解りやすさを表現するにはもう一工夫必要だな。他も回ってみよう。エレベータールームらしいところが見つかればそこでミルコを呼び出してここに頼む、とやるのが正解だろうな」

「そうですね、焦ってエレベーターをお願いして後で都合が悪くなることもあるでしょうし、より便利な所を見つけられるかもしれません」


 そのまま部屋のど真ん中を歩き、反対側へ抜ける。水路は再び横を流れそして水路の先に階段。ほぼ一本道だな。十四層と同じだ、ここまでの間にエレベーターを設置してくれ、ということだろう。


「他の道がどうなっているかを確認するか。解りやすい目印は大事だからな」

「もし小西ダンジョンの十四層にエレベーターを設置していた場合、やっぱり中央の何処かに設置するって形になっていたんでしょうかねえ? 」

「かもしれないが、とりあえず今は他の場所も調べておこう。もっとわかりやすい場所があるかもしれない」


 広間に戻り、東西南北を確認する。南北に水路が渡っており、東側に水路を跨ぐ橋。西側には水気のない道が通る。うーん、水路を渡った先にエレベーターがあるほうがまだ解りやすいかな。


「水路を跨いだ向こう側へ行ってみよう。水路側にエレベーターがある、というのは視認しやすい確認点だ」


 水路を小さな橋で渡って反対側へ。橋が無かったらここはグレーチングか何かで塞がっていたんだろうな。橋の強度は充分にある。水路を渡ると、道が曲がってすぐに行き止まりになった。解りやすさという点ではここは第一候補だな。難点は曲がって行き止まり、という視認性の悪さだろう。


「とりあえず第一候補にここを挙げておこう。西側もちゃんと巡って確認してからだな。もしかしたら向こう側のほうがより見やすい形になっているかもしれないし


 東側の調査を終わり、西側へ行く。西側の道は同じく、少し折れ曲がった後行き止まりになっていた。


「ふむ……なんか地図記号の発電所みたいな形してるな」

「中央部に作るのはかえって邪魔でしょうし、東西どちらかの通路に作るのが無難でしょうかね」


 どっちに作るか、それだけだな。気分的には水路を飛び越えなくていいぶんだけ西側のほうが移動しやすくはあるな。


「よし、ここにするか。というわけでミルコ、取り掛かってくれるか」


 虚空に向かってミルコの名を呼ぶ。三十秒ほどの間隔があいた後、ミルコが転移してきた。


「今日は余裕のあるご登場だな。風呂でも入ってたか」

「ウォッシュがあるから風呂ではないね。まあ、ダンジョンマスターにも色々あるんだよ、着替えとか身支度とか」


 なにやらやっていたことに間違いはないらしい、忙しい時に呼んでしまったかな?


「忙しかったら若干後回しでも良いぞ、俺達は休憩兼飯の時間にするけど」

「今日のご飯は何なんだい? もし余りが有れば僕もご相伴に与りたいところだけど」


 余り……というほど余裕はないな。どっちかというと今日の夕食が昼食の余りになるから新しく何か作らないとな。


「ミルコの分を考えるとここで何か料理しておかないと明らかに量が足りないな。なんか久しぶりな気がするな、ダンジョンでまともに料理するの」

「はいはい、わたしエンペラ食べたいですエンペラ。どういう食感なのかも気になりますし、お肌にもいいらしいですし、なんかこう、良い感じでお願いします」


 ふむ……エンペラか。イカのエンペラ部分なら焼いて食べたこともあるがはてさて、どういう味付けにするか。ここは趣味料理である俺の腕の見せ所。


 かといって下手に調理するとかえって美味しさを無くしてしまうかもしれない。ダンジョン食材の信頼性に従って、まずは生でそのまま行ってみることにするか。


 エレベーターを作り始めてもらう前にミルコにいつものお菓子とコーラを渡し、それを食べてもらってる間に夕食の準備を始める。シチューを温めなおし、三人分の皿を用意する。普段の人数分だけでなくまかり間違って二桁人数が寄り集まってもいいように多めに用意しておいたのが効いてきたな。後の洗い物が増えるがたとえウォッシュがあるとしても生理的に昼に食べた皿を使いまわすのはちょっとどうかと思うところがあるのでちょうどよかった。

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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芋ジャージでくつろぐダンジョンマスター?
> ついにポーションがドロップされた」 エリクサーきちゃ > 五千七百二十万円のポーション」 命の価値は > 俺が行こうと提案しようとした」 のに言うんだもんなー > じゃあこっちじゃないですね…
次のエレベーター乗り場が出来てより深く潜りやすくなりますねえ エンペラってどう食べるのがいいんだろか スッポン鍋の具の1つくらいなイメージしかないなあ
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